軽度知的障害とは?診断基準や発達障害との関係。困りごとと対処法。受けられる福祉について

発達障害知的障害
  1. 軽度知的障害とは?
    1. 知能指数(IQ)
    2. 適応能力
    3. 発達期
  2. 知的障害の種類(分類)について
    1. 知能水準の区分
    2. 日常生活能力水準
    3. 保健面・行動面の判断
  3. 軽度知的障害の特徴
  4. 中度知的障害の特徴
  5. 重度知的障害の特徴
  6. 最重度知的障害の特徴
  7. 年齢別に見た軽度知的障害の症状の表れ方
    1. 軽度知的障害は早期発見が難しい
      1. ◆乳幼児期(0歳〜未就学児)
      2. ◆ 学齢期(6歳〜15歳)
      3. ◆ 成人期(16歳以上)
  8. 軽度知的障害の原因
    1. ◆内的要因
    2. ◆外的要因
    3. ◆環境要因
  9. 知的障害と遺伝の関係
  10. 軽度知的障害の診断方法は?
    1. 問診
  11. 知能検査
    1. 田中ビネー知能検査 V(ファイブ)
    2. 新版K式発達検査
    3. ウェクスラー式知能検査
  12. 軽度知的障害のある子どもの困りごとと対処法
    1. 絵や写真などを使って覚える
    2. 具体的に伝える
    3. スモールステップに分けて説明する
    4. アプリなどのツールを使用する
    5. 合理的配慮を相談する
  13. 療育手帳を取得する
  14. 軽度知的障害を本人や保護者が受け入れづらい場合
  15. 軽度知的障害のある子どもが受けられる支援や相談先
    1. 学校教育について
      1. 特別支援学級
      2. 特別支援学校
    2. 支援機関について
      1. 保健センター
      2. 子ども家庭支援センター
      3. 児童相談所
      4. 児童発達支援センター
  16. 軽度知的障害と診断を受けた人が利用できる福祉サービス・支援(大人の場合)
    1. 知的障害者更生相談所を利用する
    2. ハローワークや就労移行支援事業所で就職の相談をする
  17. 成年後見制度の利用
  18. 年金・手当等の利用

軽度知的障害とは?

軽度知的障害は、知的障害の基準の中で「軽度」に該当する状態を指します。日常会話や日常動作をこなせるため、周囲からは気づかれにくい傾向があります。しかし、「学業が遅れている」「コミュニケーションに苦労している」「柔軟な対応が難しい」といった様々な困難を抱えることもあります。

軽度知的障害は自閉スペクトラム症と併存することや、うつ病や不安障害などの二次障害につながることがあるため、早期に気づいて適切な支援を行うことが重要です。

この記事では軽度知的障害の特徴や診断基準、よくある問題に対する対応策、相談できる支援機関について紹介しています。

軽度知的障害と言われる指標は以下を基に診断します。

・知能指数(IQ)

・適応能力

・発達期

ひとつづつ説明していきます。

知能指数(IQ)

軽度知的障害の知能指数(IQ)の基準は、通常70未満であることを意味します。自治体によって療育手帳交付の基準は若干異なります。知的能力には読み書きや計算、物事を理解し判断する能力が含まれます。これらは知能検査によって測定されます。

適応能力

適応能力の基準は、日常生活や社会生活における適応スキルが低いことを意味します。これには、集団のルールを守ったり、自身の役割を果たしたり、他者と良好な関係を築く能力が含まれます。知能が正常範囲のASDなどにもこの傾向が見られるため、あくまで指標の一つとなっています。適応能力は、臨床評価や標準化された評価尺度に基づいて評価されます。

こちらも参考に:大人の発達障害【ASD女性の特徴】女性特有の事例と対策6選

発達期

基準としては、幼少期から現在まで一貫して困りごとが生じている状態を指します。こちらは生まれつきである発達障害なども共通した指標になります。

こちらも参考に:ADHDの顔つき、行動の特徴。見た目では分からない困りごとなどなどを解説

知的障害の種類(分類)について

知的障害は「知的機能の障害」と「日常生活能力」に基づいて、一般的に「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つに分類されます。

知的機能の障害は、IQ値を基準に評価され、「日常生活能力」の指標は自己管理や他者とのコミュニケーション能力などから判断されます。

評価に基づいて、知的障害はI~IVに分類されます。各障害度の範囲は以下の通りです。

知能水準の区分

・I ・・・ IQ約20以下(最重度)

・II ・・・ IQ約21~35(重度)

・III ・・・ IQ約36~50(中度)

・IV ・・・ IQ約51~70(軽度)

日常生活能力水準

日常生活能力の「a~d」は、aに近いほど自立した生活が困難であり、dに近いほど自立した生活が容易であることを示しています。

生活能力a生活能力b生活能力c生活能力d
I (IQ ~20)最重度最重度最重度最重度
II (IQ 21〜35)最重・重度重度重度重中度
III (IQ 36~50)重中度中度中度中軽度
IV (IQ 51~70)中軽度軽度軽度軽度
厚生労働省『平成17年度知的障害児(者)基礎調査結果の概要』

程度判定は、日常生活能力が優先されるため、IQがIII(36〜50)でありながら日常生活能力がdである場合は、「中軽度」と判定されます。

保健面・行動面の判断

上記の2つに比べて参考程度になりますが、保健面・行動面についても、それぞれの程度が判定されて、程度判定に付記されます。

1度2度3度4度5度
保健面身体的健康に厳重な看護が必要。生命維持の危険が常にある身体的健康に常に注意、看護が必要。発作頻発傾向発作が時々あり、あるいは周期的に変調がある等のため一時的又は時々看護の必要がある服薬などに対する配慮程度特に配慮の必要はない
行動面行動上の障害が顕著で、常時付添い注意が必要行動上の障害があり、常時注意が必要行動面での問題に対し注意したり、時々指導したりすることが必要行動面での問題に注意する程度特に配慮する必要はない
行動上の障害とは多動、自傷、破壊行動や拒食問題などを指します。

厚生労働省「知的障害児(者)基礎調査:調査の結果」

こちらも参考に:放課後デイサービス(放デイ)とは? 利用条件や支援内容、児童発達支援との違いをわかりやすく解説

軽度知的障害の特徴

軽度知的障害(軽度知的発達症)は、一般的にIQが50~70の知的障害(知的発達症)を指します。日常生活における食事や衣服の着脱、排せつなどのスキルには問題がありません。ただし、言語の発達がゆっくりと進み、成人しても小学生程度の学力にとどまることが一般的とされています。

軽度知的障害(軽度知的発達症)の特徴の例としては、次のような点が挙げられます。

・清潔さや基本的な生活習慣が確立している

・簡単な文章での意思表示や理解が可能

・漢字の習得が困難である

・集団参加や友人との交流は可能である などがあります。

日常的な生活の補助はそこまで必要ありませんが、書類を書くことや、法的な手続きを取る場面では助けが必要でしょう。

中度知的障害の特徴

中度知的障害(中度知的発達症)は、一般的にIQが35~50の知的障害(知的発達症)を指します。言語の発達や運動能力の遅れが見られます。身辺の自立については一部は可能ですが、全般的には困難を伴います。

中度知的障害(中度知的発達症)の具体的な特徴の例としては、次のような点が挙げられます。

・指示があれば衣服の着脱は可能ですが、適切な選択や調整が困難

・入浴時には自分で身体を洗うことができますが、プライベートゾーンなどの洗い残しがあることがあります

・お釣りの計算が苦手

・新しい場所への移動や交通機関の利用が困難

・ひらがなでの読み書きはある程度可能

などがあります。生活において何らかの補助が必要でしょう。

重度知的障害の特徴

重度知的障害(重度知的発達症)は、一般的にIQが20~35の知的障害(知的発達症)を指します。言語や運動機能の発達が遅れ、学習面ではひらがなの読み書き程度にとどまることが多いです。情緒面の発達が未熟で、日常生活の自立には保護や介助が必要な場合もあります。

重度知的障害(重度知的発達症)の具体的な特徴の例としては、次のような点が挙げられます。

・着替えや入浴、食事などの日常生活においては指示や手助けが必要

・簡単な挨拶や受け答え以外のコミュニケーションが苦手

・体の汚れや服の乱れをあまり気にしない

・一人での移動が困難

などがあります。付きっきりで介護しなくはならない状態です。

最重度知的障害の特徴

最重度知的障害(最重度知的発達症)は、一般的にIQが20以下の知的障害(知的発達症)を指します。声を出すことはできる場合でも、言葉を発することが難しいとされています。日常生活の処理は一切できず、親を区別して認識することも難しい場合があります。ただし、適切な訓練によって、簡単な単語を話すことができるケースもあります。

最重度知的障害(最重度知的発達症)の具体的な特徴の例としては、次のような点が挙げられます。

・衣服の着脱ができない

・便意を伝えられない

・言葉がなく、身振りや簡単な単語で意思を表そうとすることもある

・食事には見守りや介助が必要

などが挙げられます。24時間つきっきりの介護が必要でしょう。

年齢別に見た軽度知的障害の症状の表れ方

話を今回の主題である「軽度知的障害」に戻しましょう。以下では年齢によって現れる軽度知的障害の特徴を書いていきます。

軽度知的障害は早期発見が難しい

知的障害は、ダウン症や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)、てんかんなど、様々な他の障害と併発することがあります。

例えば、他の障害が目立っているパターンだと知的障害が見落とされる場合もあります。また、言語によるコミュニケーションや日常生活スキルに一定の能力があるため、知的障害を気付きにくいケースもあります。

以下に年齢別に見られる軽度知的障害の症状を挙げますが、他の障害の特性として表れている可能性もあるため、参考程度にご確認ください。

◆乳幼児期(0歳〜未就学児)

・言葉の発達が遅れている

・抽象的な時間や数量の概念を理解するのが難しい

・簡単な質問に答えられない

・周囲の友だちとうまく遊べない

◆ 学齢期(6歳〜15歳)

・学校の勉強についていけない、読み書きや計算に困難がある

・日常生活の行動がスムーズにできない、時間がかかる(指示があればできるなど)

・対人関係がうまく築けない、学校生活に不適応が見られる

・自分なりのこだわりが強い

・言葉に幼さがある

◆ 成人期(16歳以上)

・見通しを立てたり計画的に行動することが苦手

・物事を記憶することが難しい、言われたことを覚えていない

・自分の考えに基づいて意思決定することが苦手、金銭トラブルに巻き込まれやすい

・複数のことを並行して実施することに困難を感じる

こちらも参考に:発達障害の方に向いている仕事(一般雇用・障害者雇用)|活用できる支援機関をご紹介

軽度知的障害の原因

そもそも知的障害の原因は何でしょうか?考えられる要因は大きく3つに分けられます。

◆内的要因

簡単に言えば「遺伝」です。遺伝子や染色体の異常など、先天的な要因を持つケースになります。

病気や外傷など脳障害を引き起こす疾患を持ち、これらの病気の併存症として知的障害が発生する場合は「病理的要因」と呼ばれます。

一方、特に疾患がなくても内的な原因によって知的障害が生じる場合は「生理的要因」として区別されます。

軽度知的障害および知的障害の原因の約8割は内的要因とされています。

参考:病理的要因とは?
参考:生理的要因とは?

◆外的要因

出生前後に発生した事故や育成環境による外的要因が原因となるケースです。

具体的には、出生前に母体を通じて感染症や薬物・アルコールの過剰摂取があった場合や、乳幼児期に栄養不良だった場合などが考えられます。

◆環境要因

出生時のトラブルで脳蓋内出血が起きたり、へその緒がねじれて脳に酸素が行かないことにより脳に重大な障害が残った場合などを指します。

周産期医療の充実や進歩により発生しにくくなっていますが、外的要因も環境要因の一部と考える場合もあります。

知的障害と遺伝の関係

知的障害の一部は確かに遺伝子的な原因により引き起こされることがあります。しかしこれは「知的障害が親から子へ単純に遺伝する」という意味ではありません。

親が知的障害の原因となる素因を持っている場合でも、必ずしも子どもに遺伝するわけではなく、逆に親が知的障害の原因となる素因を持っていないからといって、子どもが知的障害になる可能性がまったくないと断定することはできません。

 知的障害の要因は、遺伝が全てではないことがわかっていますが、どうして発症するのかはまだわかっていません。

遺伝性疾患のほとんどは正常な遺伝子や染色体が突然変異を起こすことによって発症するため、遺伝子の変異は誰にでも起こり得るものであるという認識を持つことが大切です。

軽度知的障害の診断方法は?

この章では軽度知的障害の「診断方法」について説明します。

軽度知的障害の診断は医師のみができるものです。診断のための問診や知能検査を専門機関で行い、最終判断がなされます。

診断可能な機関を見つけることが難しい場合は、まずは児童相談所や保健センターなどに相談してみると良いでしょう。相談先については後ほど詳しく紹介します。

参考:児童相談所とは?

参考:保健センターとは?

問診

問診では、生後から診察を受けるまでの言葉の発達や家庭、幼稚園、保育園、学校での様子が聞かれます。病院や保健センターでも同様の流れとなっています。さらに、成長過程として1歳半健診や3歳児健診での経過もヒアリングされることがあります。保護者からの気になる点も聞かれるため、事前にメモを用意しておくと良いでしょう。

また、子どもを別の場所で遊ばせて、その様子を観察しながら保護者へヒアリングする「行動観察」も行われることがあります。集団での関わり方を見るためのイベントが教育センターなどで開催されていることがあるので繋がりを作っておきましょう。

参考:教育センターとは?

知能検査

知能検査では通常、「田中ビネー知能検査 V(ファイブ)」、「新版K式発達検査」、「ウェクスラー式知能検査」などの手法が使用されます。これらは子どもの年齢や状況に応じて適切なものが選択されます。以下で解説していきます。

田中ビネー知能検査 V(ファイブ)

田中ビネー知能検査 V(ファイブ)は、日本人向けに開発された知能検査の一つです。知的障害や発達障害などの診断や知能レベルの測定に用いられます。この検査は幼児から成人までの広い年齢範囲に対応しており、一般的な知能検査としてよく利用されています。

田中ビネー知能検査 Vは、知的発達の様々な側面を測定するためのさまざまな課題で構成されています。言語理解や推論、数学的能力、抽象的な思考、記憶、処理速度などの要素を評価します。結果は知能指数として示され、その数値に基づいて知能レベルや障害の程度を判定することができます。

田中ビネー知能検査 Vは、日本の教育現場や臨床現場で広く用いられており、個々の認知機能の特徴や発達段階を詳細に把握するために有用です。ただし、一つの検査結果だけで全ての能力や特性を評価することは難しいため、他の評価方法と併用することが推奨されます。

新版K式発達検査

新版K式発達検査は、日本で幼児・児童の発達障害や発達レベルを評価するために用いられる検査です。Kは「児童」を意味し、幼稚園児から小学生までの幅広い年齢層に適用されます。この検査は子どもの発達に関わる様々な側面を評価することで、発達の遅れや問題を把握するのに役立ちます。

新版K式発達検査では、身体発達や精神発達、社会性などの領域を含む、総合的な評価が行われます。検査内容には、言語や思考能力、運動機能、感覚統合、行動面などが含まれ、個々の発達領域ごとにスコアリングされます。その結果に基づいて、児童の発達段階や特性を評価し、必要な支援や介入を計画することが可能です。

新版K式発達検査は、日本の教育現場や臨床現場で広く使用されています。特に、幼児や児童の発達の早期評価や発達障害の早期発見に役立つことが期待されています。ただし、検査結果だけでなく総合的な観察や評価が重要であるため、他の評価方法と併用して使用されることが推奨されます。

ウェクスラー式知能検査

ウェクスラー式知能検査は、知能を総合的に評価するために用いられる検査で、一般的に知能指数(IQ)を算出するために利用されます。この検査は、知的能力の測定において広く使われ、幅広い年齢層に適用されています。

ウェクスラー式知能検査には複数のバージョンがあり、主に「WAIS(成人用)」「WISC(児童用)」「WPPSI(幼児用)」などがあります。それぞれ、対象とする年齢層や評価項目が異なりますが、基本的な構成は似ています。

この検査では、言語理解、知識、抽象的推理、処理速度、作業記憶などの複数の認知能力をテストし、その結果に基づいて知能指数を算出します。IQは一般的に100を基準としており、それより高い値は平均以上の知能、低い値は平均未満の知能を示します。

ウェクスラー式知能検査は臨床心理学や教育心理学の分野でよく活用され、知的障害や学習障害の評価、早期介入プログラムの設計などに役立てられています。ただし、単独での評価だけではなく、総合的な観察と評価が重要であることを念頭に置くことが重要です。

上記にも記載がある通り、年齢によって使うウェクスラー式テストが異なってきます

・WPPSI:幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)

・WISC:学生児(5歳から16歳11ヶ月)

・WAIS:成人(16歳〜)

医師により診断の基準は異なりますが、ほかにも発達検査や、行動や情緒の傾向を測定する検査をおこなった上での総合判定になります。

軽度知的障害のある子どもの困りごとと対処法

軽度知的障害の子どもが直面する困難と対処法について紹介します。

軽度知的障害の子どもは、環境や対人関係のストレスなどから精神面での二次障害が生じる可能性があります。そのため、個々に合わせた学習方法を取り入れることや、適切なサポートを提供することが重要です。

絵や写真などを使って覚える

軽度知的障害の子どもは、ワーキングメモリの少なさも手伝い、情報を保持できる能力が限られている傾向があります。

複数の指示を一度に覚えることが難しかったり、短時間で情報を忘れることがあります。

口頭だけでなく絵や写真を使用することで、子どもが覚えやすく、認識しやすい工夫をしましょう。

また、反復することで情報が定着しやすくなることもあるため、絵や写真を併用して情報を繰り返し提示することを支援項目として入れておきましょう。

具体的に伝える

軽度知的障害の子どもは、抽象的な概念を理解することが難しい傾向にあります。

大人からの一般的な励ましの言葉に対して、具体的な行動指示がないとどの程度の努力が必要かイメージしづらい場合があります。

そのため、具体的な行動指示を与えることで取り組みやすくなることがあります。例としては、「今から算数の問題を10個解こうね」などと具体的なタスクを伝えることで、理解しやすくなるでしょう。

スモールステップに分けて説明する

軽度知的障害の子どもは、一度に全ての情報を受け取ると理解が追いつかないことがあります。

そのような場合、タスクをスモールステップに分解して説明する方法が有効です。次のステップに進むと前のステップを忘れてしまう場合は全体図を絵で示し、今がどこのステップにいるのか図解を使うと有効です。

例として料理を挙げてみましょう。ホットケーキを作る場合は全体の流れを絵で示してから、最初のステップのみを伝えます。

一つずつの項目で理解できたかを確認し、もし困難を感じる箇所があれば、説明方法を工夫して繰り返し説明することも大切です。

アプリなどのツールを使用する

軽度知的障害の子どもの困りを軽減する方法の一つとして、記憶や理解をサポートするためにアプリやツールを活用することがあります。以下に例を挙げていきます。

一度に手順を理解するのが難しい:TODOリスト

忘れ物が多い:リマインダーアプリ

計算が苦手:電卓機能

時間管理が難しい:アラームアプリ

など活用できるでしょう。それぞれの困りごとに合わせたツールを適切に利用することで困りごとを減らしていけるでしょう。

合理的配慮を相談する

現在、学校では合理的配慮が義務化されており、障害のある児童生徒が,学校教育を受ける上で生じる障壁をなくすために必要な変更及び調整を受けることが可能となっています。

軽度知的障害の子供が学校で困りを抱えている場合は、学校側に配慮を依頼することも一つの方法です。

先生やスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーと相談し、子供が学びやすくなるように配慮を行うことが重要です。具体的な配慮の例としては、指示を一つずつ与えることや集中しやすい席の配置、プリントにふりがなを振ること、テストを別室で受けることなどがあります。

自治体によって異なりますが、軽度知的障害のこどもの場合は支援級が支援学校に進学することも可能ですので、学校と話し合ってみてください。

学校内でアプリやツールの使用を許可することも配慮の一つです。軽度知的障害の子供は、自閉スペクトラム症などの発達障害を併せ持つこともあるため、個々に合った対策を行うことが重要です。

参考:スクールソーシャルワーカーとは?

参考:スクールカウンセラーとは?

療育手帳を取得する

「知的障害がある」と判定された方に児童相談所または知的障害者更生相談所によって交付される手帳を、「療育手帳」と呼びます。

療育手帳を取得することで、税金の控除や減免、各種交通機関の割引、公共料金やレジャー料金の割引や減免など、さまざまなメリットが得られます。また、保育・教育面での支援や、就労に向けたサポートにも療育手帳は役立ちます。

例えば、園や学校での加配申請(つまり、園生活や学校生活を支えるための配慮を加えるための申請)がスムーズになることがあります。

参考:療育手帳(愛の手帳)とは?交付対象や申請方法、割引などのメリットを解説します

軽度知的障害を本人や保護者が受け入れづらい場合

軽度知的障害は、他人には気づきにくい障害の一つです。学齢期になっても、本人が困難を感じてもその症状が表出されないため、診断を受けることなく気づかれないケースも少なくありません。

勉強についていけない、対人関係に困難を抱えるなどの問題がある場合でも、周囲からは「本人の努力不足」とされることがあります。このような状況では、本人の自尊感情が傷つくことも少なくありません。また、本人や保護者、周囲が「軽度知的障害である」という事実をなかなか受け入れられないケースも存在します。

このような状態が長期間続くと、本人にとってストレスが増大し、気分の落ち込みや不安といった精神疾患(抑うつなど)の発症リスクが高まることや、引きこもりや暴力、不登校などの問題行動が二次障害として現れる可能性があります。こうしたリスクを踏まえて、適切な支援が必要とされます。

軽度知的障害のある子どもが受けられる支援や相談先

軽度知的障害のある子どもへの支援や相談先について、学校教育とそれ以外の支援機関に分けて説明します。以下のような支援や相談先が存在します。

学校教育について

・特別支援学級

・特別支援学校

特別支援学級

特別支援学級とは、軽度知的障害などの障害のある生徒を対象とした少人数の学級のことです。これは小学校や中学校などに設置されており、学習や生活における困難を克服するための指導が行われています。特別支援学級では以下のような特徴が見られます。

  1. 少人数のクラス構成:生徒一人ひとりに対してより充実したサポートを提供するために、クラスの生徒数を少なくしています。
  2. 自立活動の促進:生徒の自立や社会性の向上を支援するため、日常生活での様々な活動に取り組みます。
  3. 個別の指導計画:生徒一人ひとりの特性に合わせて個別の指導計画が作成されます。これにより、それぞれの生徒が最適な学び方や生活の仕方を身につけることができます。

特別支援学校

特別支援学校とは、軽度知的障害などの障害を抱える生徒が通う学校のことを指します。特別支援学校は、特別支援学級とは異なり、障害のある生徒が主要な対象となる「学校」として設立されています。

特別支援学校では、次のような特徴が見られます。

  1. 障害のある生徒への専門的な支援:特別支援学校は障害のある生徒に特化した教育体制を整えており、それぞれの生徒のニーズに応じた教育を提供します。
  2. 個別の指導計画の策定:生徒一人ひとりに適した学び方や生活の仕方を確立するために、個別の指導計画が作成されます。
  3. 多様な学習環境の提供:特別支援学校では、様々な学習ニーズに対応できるよう、多様な学習環境が整備されています。これにより、生徒たちは自らの能力を最大限に引き出すことができます。

支援機関について

・保健センター

・子育て支援センター

・児童相談所

・児童発達支援センター

保健センター

保健センターは、地域の住民の保健や衛生を支える行政機関で、市町村を中心に設置されています。保健センターは幅広い保健サービスを提供するほか、軽度知的障害を含む子どもに関する相談にも対応しています。

保健センターでは、以下のような役割を果たしています。

  1. 相談窓口としての機能:保健センターでは、子どもに関する悩みや問題についての相談を受け付けています。子どもの状態に応じて、適切なアドバイスや医療機関・支援機関の紹介を行うことがあります。
  2. 相談方法の多様性:保健センターでは、窓口での相談受付だけでなく、電話での相談や家庭訪問を通じても相談を受け付けています。これにより、地域の住民が気軽に相談を行うことができます。

保健センターは地域の子どもたちが健やかに成長できるよう、様々な支援を行っています。

子ども家庭支援センター

子ども家庭支援センターは、子ども、家庭、地域住民などの相談に応じて、アドバイスや指導を行う施設です。子ども家庭支援センターでは、軽度知的障害のある子どもに関する相談にも対応しており、児童相談所や児童福祉施設など、関係する機関との連絡調整を行いながら対応をしています。

このセンターでは以下のような支援を行っています。

  1. 総合的な相談対応:子どもや家庭に関する悩みや問題に対して、専門のスタッフが相談を受け付けています。相談者の状況に合わせて適切なアドバイスや指導を提供し、解決に向けたサポートを行います。
  2. 関係機関との連携:軽度知的障害のある子どもに関する相談においては、児童相談所や児童福祉施設など、関連する機関との連携を図りながら、継続的なサポートを提供しています。

子ども家庭支援センターは、地域の子どもや家族が安心して生活できるよう、幅広い支援活動を展開しています。

児童相談所

児童相談所は、18歳未満の子どもに関する相談を受け付けている行政機関で、軽度知的障害を含む子育てに関する相談を受け付けています。

この相談所では、以下のようなサポートが提供されています。

  1. 幅広い相談対応:子ども本人、家族、学校の先生、地域の方々など、さまざまな関係者からの相談を受け付けています。児童福祉司、児童心理司、医師などの専門スタッフがそれぞれの相談に適したアドバイスや対応を行います。
  2. ケースワーカーの支援:児童相談所では、ケースワーカーが子どもと家族の状況を把握し、適切な支援を提供します。必要な場合は保護措置やサービスの提供なども行います。
  3. 保護者支援:子どもの障害についての悩みや問題を抱える保護者に対しても、情報提供やカウンセリングなどの支援を行います。

児童相談所は地域の子どもたちが健やかに成長できるよう、綿密なサポート体制を整えています。

児童発達支援センター

児童発達支援センターは、軽度知的障害などの障害を抱える子どもたちが、日常生活や集団生活への適応をサポートするプログラムを提供しています。

このセンターには、次のような特徴があります。

  1. 福祉型と医療型の提供:児童発達支援センターには福祉サービスを提供する「福祉型」と、治療に特化した「医療型」が存在します。福祉型では就学前の子ども向けの児童発達支援や、小学校入学から18歳までの子ども向けの放課後等デイサービスが提供されています。利用するには自治体に申請して「通所受給者証」を受け取る必要があります。
  2. LITALICOジュニアの提供するサービス:LITALICOジュニアは、児童発達支援事業所と放課後等デイサービスを各地で展開しています。彼らは子どもたちの特性や興味関心に合わせてプログラムを提供し、軽度知的障害のある子どもたちへの豊富な指導実績を持っています。
  3. 通所受給者証不要の学習塾形式の教室:通所受給者証がなくても利用可能な学習塾形式の教室もあります。子どもが言葉の発達に遅れがあったり、学校の勉強についていけないなどの悩みを抱えている場合は、ぜひ相談してみてください。

軽度知的障害と診断を受けた人が利用できる福祉サービス・支援(大人の場合)

軽度知的障害の診断がある場合に利用できる支援やサービスは子どもと大人で異なります。

知的障害者更生相談所を利用する

「知的障害者更生相談所」は、18歳以上の知的障害のある方を対象としており、日常生活や職業に関する相談、職業判定、療育手帳の判定や交付などを行う施設です。これらの相談所は、都道府県や市ごとに設置されています。

知的障害者更生相談所では、利用者が日常生活における悩みや職業適性に関する疑問を相談することができます。また、利用者の知的障害の程度に基づいて、適切な支援やサービスの提供も行われます。さらに、療育手帳の申請や交付についてもサポートが受けられるため、日常生活や社会参加を支援する重要な役割を果たしています。

ハローワークや就労移行支援事業所で就職の相談をする

子どもの頃には知的障害の診断がなされていなかったにも関わらず、成人期になって仕事面で困難を感じ、専門機関での相談の結果、知的障害と診断されるケースが存在します。このような場合、働き方の変更が必要になることもあります。

ハローワークには、障害のある方の就職を支援する「専門援助部門」があり、知的障害を持った方を含め、様々な障害を持つ方々の就労をサポートしています。また、就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指す方がビジネススキルの獲得などを含め、求職から就職、そして定着までの幅広いサポートを受けられます。

さらに、障害者就業・生活支援センターでは、就業面と生活面の一体的な相談が可能など、それぞれの事業所には特徴があります。これらの機関やサービスを利用することで、知的障害を持つ方々も社会で活躍できる環境を整えることができます。

成年後見制度の利用

日常生活を送る中で、賃貸契約や売買などの重要な意思決定をする場面があります。障害が原因で判断能力に不安がある場合は、その程度に応じて「補助人」「保佐人」「成年後見人」などを選任することで、意思決定の際にサポートを受けることができます。ただし、必ずしも知的障害があるときに成年後見人制度を利用しなければならないわけではありません。制度の利用には申請や費用の負担が伴いますので、その症状の程度や抱えている困難さに合わせて判断することが重要です。障害のある方が社会生活を安心して送るために、適切なサポートや制度を利用することが大切です。

参考:成年後見人とは?

年金・手当等の利用

障害を持つ個人やその家族が受けられる経済的支援はさまざまです。障害基礎年金や障害厚生年金などの年金制度に加えて、所得税、住民税、相続税などの税金に関する控除や減免、医療費の助成などが挙げられます。これらの制度を利用するためには、自治体ごとに異なる申請手続きや要件を満たす必要があります。

具体的な手続きや要件については、それぞれの自治体の窓口で詳細を確認することが重要です。障害者手帳や医師の診断書などの提出が必要となる場合もありますので、かかりつけ医との相談も忘れずに行いましょう。これらの制度をうまく活用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。

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