
療育手帳(愛の手帳)とは?
療育手帳(愛の手帳)は、知的障害を持つ方が取得できる手帳です。療育手帳を持つことで、家庭や学校、地域での生活が円滑に行えるように、さまざまな特典やサービスが提供されます。
参考:知的障害とは?
例えば、医療機関や施設への優先的な受診、学校での特別支援教育の受け入れ、公共交通機関の割引、各種福祉サービスの利用などが含まれます。また、療育手帳はその内容によって障害の程度に合わせて区分され、それに応じたサポートが提供される仕組みとなっています。
名称は自治体によって異なり、「療育手帳」や「愛の手帳」と呼ばれています。
呼び方の一例
・「愛の手帳」(東京都・横浜市)
・愛護手帳(青森県・名古屋市)
療育手帳(愛の手帳)の対象者
療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。知的機能の障がいが発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの援助を必要とする状態にあります。
取得対象者の目安
療育手帳の主な交付対象は、知的障害があると診断された方です。18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で判定を受けることになります。多くの方が、子供の頃に知的障害があると判断された段階で、自治体に手帳の申請を行っていますが、大人になってから知的障害の診断を受けて取得するケースもあります。
参考資料(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000639205.pdf
療育手帳(愛の手帳)の等級とは?発達障害者は取得できる?
発達障害の療育手帳の交付に関しては自治体によって対応が分かれるようです。
総務省が16地方公共団体に「発達障がい者に対する療育手帳による支援の状況」にアンケートをとったところ、以下のような結果になりました。
・IQの上限を70ないし75に設定してそれ以下の障害者に交付 →16地方公共団体すべてで実施
・IQの上限を超える者に対する療育手帳の交付 →12地方公共団体が交付
IQの上限を超えていても、12の自治体が療育手帳を交付していました。
交付理由に関しては以下の通りです。
・ 生活能力が低く、日常生活に支障があり、援助が必要とされる場合
・ 発達障がいであることを条件とする自治体は7自治体
手帳の取得を考えている方はお住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口へ相談してみましょう。
参考資料(総務省):https://www.soumu.go.jp/main_content/000088917.pdf
療育手帳(愛の手帳)の等級とは?
児童相談所・知的障害者更生相談所にて、知的障害があると判定された人に交付されますが、この療育手帳がもらえるか、もらえないかの境界は、それぞれの都道府県が独自に決めています。
判定基準が、国(厚生労働省)のガイドラインなどで、全国で統一されれば、不公平がなくなりますが、療育手帳の制度は、都道府県が主体となって実施する制度なので、統一の判定基準は、今のところありません。
療育手帳の等級と判定方法

都道府県ごとに療育手帳の区分は異なります。大まかな目安として、重度をA、その他をBと区分している。IQと生活面、行動面や身体障害との重複で等級が決まる仕組みになっています。
知的障害の検査には、知能検査や発達検査を実施します。
以下の一例として、各都道府県における等級区分をご紹介します。
北海道 重度A : 最重度、重度、中度+身障1~3級
その他B:中度、軽度
宮城県 重度A:最重度、重度、中度・軽度で IQ50 以下+身障 1~3 級
その他B:中度、軽度
東京都 重度A:1度 最重度 、2度 重度
その他B:重度3度 中度4度 軽度
各自治体における療育手帳の等級区分(参考) :http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/read/jp/archive/statistics/leaf11031504p04.pdf
A判定の認定基準について
厚生労働省が出している重度障害者における定義よりA(重度)の基準を以下に記載します
○重度(A)の基準
①知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者
○食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。
○異食、興奮などの問題行動を有する。
②知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者療育手帳制度における重度障害とは(厚生労働省「療育手帳制度の概要」より)
https://hataraku-nippon.jp/forum-fukuoka/dl/SFN_FUKUOKA_booklet_add_panel_shiga.pdf
B判定(B1、B2)の認定基準について
A判定以外に該当するもの
各都道府県によって療育手帳は運用されているため、独自の基準で区分を変えている場合もあります。
療育手帳取得のメリット・デメリット
療育手帳を取得することで国や自治体、あるいは民間のサービスや控除を受けることができます。自治体によってもサービス内容は変わってくるので、詳しくは各自治体にお問い合わせください
療育手帳の給付金
申請をすると貰えるお金になります
障害児福祉手当
精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の者に支給されます。
支給月額(令和5年4月より適用): 15,220円
所得の目安:扶養家族がいない場合は、おおよそ「本人収入:518万、親の収入814万以内」であれば受給可能(令和3年8月以降適用)
障害児福祉手当について https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/hukushi.html
特別児童扶養手当
20歳未満で精神又は身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母等に支給されます。
支給月額(令和5年4月より適用): 1級 53,700円 2級 35,760円
所得の目安:扶養家族がいない場合は、おおよそ「本人収入:642万、親の収入832万以内」であれば受給可能(令和3年8月以降適用)
特別児童扶養手当について https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html
療育手帳の税金控除
所得税
本人、同一生計の配偶者または扶養親族に障害がある場合、控除を受けることができます。
障害者(療育手帳の等級がB相当):27万円
特別障害者(療育手帳の等級がA相当):40万円
特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族:75万
住民税
本人、同一生計の配偶者または扶養親族に障害がある場合、控除を受けることができます。
障害者(療育手帳の等級がB相当):26万円
特別障害者(療育手帳の等級がA相当):30万円
特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族:53万
自動車税
本人、または生計を同じくする方、もしくは生計を同じくする方
該当:愛手帳1〜3級相当
自動車税種別割の減免上限額:4.5万円
自動車税環境性能割(エコカー)のの減免上限額:課税標準額300万円相当分に税率を乗じて得た額
東京都主税局(自動車税環境性能割・自動車税種別割の減免制度のご案内)https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/info/car-genmen.html
収入が850万円を超える場合は所得金額調整控除が受けられる
令和2年度より開始した新しい制度で、収入が850万円を超える本人や保護者は、「所得金額調整控除」を受けられます。制度の適用を受けるには「所得金額調整控除申告書」を提出します。
適用条件は、次のいずれかに該当していることです。
- 特別障害者本人
- 年齢が23歳未満の扶養家族がいる
- 同一生計の配偶者と扶養親族に特別障害者がいる
その程度の年収の方は障害児福祉手当や特別児童扶養手当の対象外ですが、所得金額調整控除を使うことによって節税が可能になるでしょう。
公営住宅の優先権
自治体によって優先権の基準は異なりますが、多くの場合は当選率の高くなる抽選確率の優遇がされています。詳しくは各自治体のHPをご確認ください
公共交通機関の割引
・電車の割引(居住地域の交通機関が割引になります)
・バスの割引(居住地域の交通機関が割引になります)
・タクシーの割引
・船の割引
・飛行機の割引 (割引率は航空会社によって異なります)
・高速道路の割引
公共料金の割引
携帯電話料金の割引
基本使用料などの割引を受けることができます。会社によって割引率などは異なります。
NHK受信料の割引
全額または半額免除されます。免除の割合は障害程度によって異なります。
ホテルや施設の割引
国営、県営の施設やアミューズメントパーク、映画館など割引があります。
詳しくい情報はこちら を参考にするとよいと思います
障害者手帳アプリ「ミライロ」
こちらからミライロIDをダウンロード
障害者手帳と同等の役割を果たすアプリ。利用には障害者手帳の登録が必要です。独自の飲食店割引クーポンも配信しています。
児童発達支援・放課後等デイサービスの利用
療育手帳が必須ではないものの、発育指標の目安となるため子どもが支援を受けやすくなることがあります。
療育手帳を持つデメリットはある?
取得するメリットに比べてデメリットはほぼ無いと言えますが、子供の心理的な負担になることもあります。本人の自尊心を傷つけることになり、成長に悪影響が出るとしたら、療育手帳唯一のデメリットとなるでしょう
療育手帳を就職で活用
療育手帳を持っていると、就職の際の支援やサービスを受けることが出来ます。
障害者求人に応募できる
障害者雇用に応募できるのは、「身体障害者手帳、精神福祉手帳、療育手帳」を持った方に限られ、各障害における配慮を受けながら働くことができます。企業は従業員数に応じて、一定の人数の障害のある方を雇う義務があります。
公共職業安定所(ハローワーク)
ハローワークでは障害者求人も取り扱っています。障害者専用窓口があるので、職員と相談しながら求人の選択や面接の対策を行うことができます。
障害者職業センター
障害のある方が働くための訓練や職業適正検査などを行い、支援計画を立ててくれます。
障害福祉サービス
就労継続支援A型
障害や難病のある方が支援のある職場で雇用契約を結んで働く形態の福祉サービスになります。
障害福祉サービスとしての位置付けになりますので、就労移行支援同様、前年度に収入があった場合は利用料を払う必要があります。令和三年のA型事業所の平均時給は「926円」。 平均月収は「81,645円」となっています。
就労継続支援A型の対象者
一般企業での勤務が難しい原則18歳~65歳未満の方が対象となっています。最低賃金額以上の給料が保障されていて、利用期間の定めはありません。
就労継続支援B型
非雇用型の障害福祉サービスであり、利用者は事業所と雇用契約は結びません。作業時間に応じて賃金が支払われ、就労継続支援A型や障害者雇用に向けた訓練が行われます。賃金は就労継続支援A型より安く、令和3年のB型事業所の平均時給は「233円」。平均月収は「16,507円」となっています。
就労継続支援B型の対象者
- 就労経験がある方で、年齢や体力面で一般企業に雇用されることが困難な方
- 50歳に達している方または障害基礎年金1級を受給している方
- 1及び2のどちらにも該当しない方で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている方
就労移行支援
就労移行支援とは、障害者が適切なサポートを受けながら、社会参加や就労に向けて移行するための支援プログラムやサービスのことを指します。この支援は、障害を持つ個人が社会での役割を果たし、自立した生活を送るためのスキルや準備を行うことを目的としています。
就労定着支援
就労定着支援とは、障害者が職場で長期間にわたって働くための支援を提供するプログラムやサービスを指します。ジョブコーチが職場に定期的に出向き、企業と障害者と面談を重ねて、安定した就労を続けるためのサポートをします。
療育手帳の申請方法と更新時期
療育手帳の申請方法
申請書を入手して申請: 療育手帳の申請に必要な申請書や必要書類は、市区町村役場や障害者支援施設、福祉事務所などで入手できます。また、オンラインでの申請手続きが可能な場合もあります。
審査と認定: 提出された申請書類が審査され、申請者の障害の程度や条件に応じて療育手帳が認定されるかどうかが判断されます。
交付:18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で受けることができます。
新規交付に必要なもの
・療育手帳交付申請書
・写真
・印鑑
※自治体によって必要な書類が変わってくるので、ご確認ください
18歳以上で判定を受ける場合は、知的障害者更生相談所で受ける必要があります。その場合は学生の頃の記録や家族や周りの方からの証言が必要となることがありますので、準備しておくとスムーズに進みます。判定を受けて申請が認められると、通常2ヶ月ほどで療育手帳が交付されます。
療育手帳の判定テストについて
療育手帳を交付する前には、該当者かどうかを判断するための「判定検査」が行われます。
全国で統一された制度ではなく、各自治体が規定・運用しているため、使用するテストも異なります。
使用する主なテストは以下の通りです。
ビネー式知能検査
- 田中ビネー式知能検査
- 鈴木ビネー式知能検査
ウェクスラー式知能検査
- WPPSI(ウイプシイ):幼児が対象
- WISC(ウィスク):児童が対象
- WAIS(ウェイス):成人が対象
心理判定員から本人や保護者へのヒアリングや精神的・身体的合併症や問題行動についてなどを経て、
精神科医、心理判定員などの協議により総合判定が行われます。
療育手帳の再判定と更新について
療育手帳には「再判定」および「更新」があり、18歳未満の場合は児童相談所でおおむね2~4年ごとに行われ、18歳以上は知的障害者更生相談所でおおむね10年ごとに再判定をうけます。自治体によっては永久認定で更新の必要がない場合もありますので、詳しくは自治体の障害福祉課にお問い合わせください。
また、障害の程度が大きく変わった場合、更新の時期に関係なく、申請すると再判定を受けることができます。
療育手帳の更新以外にも手続きが必要な場合
療育手帳は以下のような場合(紛失や返納の際)にも手続きが必要となります。なるべく早く手続きを行うようにしましょう。
- 療育手帳を破損・紛失した場合
- 本人または保護者の住所・氏名が変更になった場合
- 療育手帳を返納したい場合
療育手帳(愛の手帳)のまとめ
療育手帳は、障害を持つ人々が社会での生活をより良くするための道具として重要です。個々のニーズに合わせたサポートを受けながら、自己実現や自立を追求する手助けとなる制度です。手帳の内容や利点は地域によって異なりますが、。早期に療育手帳を取得することで、早くから適切な支援やサポートに繋がることが出来、社会適応しやすくなります。
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