放課後等デイサービスは、小学生、中学生、高校生の支援を必要とする就学児童を対象とした福祉サービスで、障がいのあるお子さまや発達に特性のあるお子さまが放課後や長期休暇に利用できる施設です。このサービスでは、個別の発達支援や集団活動を通して、家や学校以外の居場所づくりやお友だちとの交流を促進することができます。
放課後等デイサービスは、障害のあるお子さまや発達に特性のあるお子さまを支援する通所施設として、学校や家庭以外の場で日常生活で必要な訓練を提供し、学校や学童などと連携しています。ただし、施設ごとに提供されるサービスが異なるため、「具体的にどのようなサービスが提供されているのかわかりにくい」という声もあります。
今回は、放課後等デイサービスについて、対象者や利用料金、利用までの流れについて詳しく解説していきます。

放課後等デイサービスとは?役割や目的・支援内容は?
放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく福祉サービスの一環で、6歳から18歳の小学生・中学生・高校生を対象とした通所支援サービスです。主に、放課後や休日、長期休暇(夏休みや冬休みなど)に利用でき、障害のあるお子さまや発達に特性のあるお子さまが広く利用しています。
このサービスは、自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、LDなどの発達障害を抱えるお子さんや発達に特性のあるお子さんを支援するためのもので、児童発達管理責任者が作成する個別支援計画に基づいて、自立支援や日常生活の充実を図るための活動を提供します。
放課後等デイサービスは、お子さんにとって新しい居場所となり、家庭や学校の外で安心して充実した生活をサポートします。通所する際には、基本的な動作の指導や自立支援、集団生活への適応訓練などが提供され、日常生活の向上に寄与します。
参考:児童発達管理責任者とは?
障害児通所支援の種類と支給量基準
障害児の支援には以下のようなものがあり、障害内容や特性に合わせた支援が行われています。
障害児通所支援の種類 | 内容 | 支給量基準 |
児童発達支援 | 日常生活における身支度や整理整頓などの基本的指導、知識技術の付与、集団生活への適応訓練等を行います。 | 23日/月 |
医療型児童発達支援 | 身体障害の上肢、下肢又は体幹の機能の障がいのある児童について、児童発達支援及び治療を行います。 | 23日/月 |
放課後等デイサービス | 小・中・高校に就学している児童について、放課後又は休業日に生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進等を行います。 | 23日/月 |
居宅訪問型児童発達支援 | 重度心身障害児など重度の障がいのある児童に対しての支援になります。児童発達支援等の障害児通所支援を受けるために外出することが著しく困難な児童について、自宅訪問し、日常生活における基本的な動作の指導、知識技術の付与等の支援を行います。 | 10日/月 |
保育所等訪問支援 | 保育所等を訪問し、他の児童との集団生活への適応のため専門的な支援を行います。 | 5日/月 |
(注釈2)基準の適用は、平成29年10月1日からになります。
いくつかある障害児通所支援の中で今回は「放課後等デイサービス」について書いていきます。
放課後等デイサービスはいつからできた
放課後等デイサービスは、2012年4月に児童福祉法に基づく福祉サービスとして始まりました。以前は未就学児と就学児が共に通所できるサービスでしたが、2012年の児童福祉法の改正により、未就学児向けの「児童発達支援」と就学児向けの「放課後等デイサービス」に分かれ、新たな支援として導入されました。
参考:てんかんとは?
参考:ハビットリハーサルとは?
参考:児童福祉法とは?
児童福祉法により以下のように定義されています。
この法律で、放課後等デイサービスとは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障がい児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。(児童福祉法第六条の二の二)
参考:学校教育法とは?
放課後等デイサービスの役割と目的
厚生労働省では以下の3つを放課後等デイサービスが持つ目的と役割と定義しています。
・児童の最善の利益の保障
・共生社会の実現に向けた後方支援
・保護者支援
児童の最善の利益の保障
児童福祉法第6条に基づき、障害のある就学児を対象として、日常生活で必要な自立につながるトレーニングや社会との交流を行うことにより、個々の子どもの状況に合わせた発達支援を提供し、子どもの最善の利益と健全な成長を保障しています。また、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、経験などを通じて支援を行います。
参考:児童福祉法第6条とは?
こちらも参考に:メンタルケアの新手法、オープンダイアローグとは?役割や7つの原則
共生社会の実現に向けた後方支援
お子さまが地域社会へ参加できるようになるためには、他のお子さまと一緒に集団生活を送る機会を確保する視点が重要です。同時に、放課後児童クラブや児童館などの一般的な子育て支援施策を、「後方支援」として位置づけ、必要に応じてこれらの施設と連携しながら、適切な事業運営を行うことも重要です。
日本のニューロユニバーサリティ教育が仇となり、異色な者を排除する国民性が根付いてしまいましたが、これからの社会では共生が求められています。
参考:ニューロダイバーシティとは「標準」を変えていく実践的活動
参考:放課後児童クラブとは?
保護者支援
児童だけでなく、保護者に対しても社会的に支援する側面もあります。例を挙げますと、
・子育ての悩み等に対する相談を実施
・家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等活用しながら児童の独り立ちを支える力をつけられるよう支援すること
・保護者の休息時間を保障するために、ケアを一時的に代行する支援をおこなうこと
これらの支援によって保護者が児童に向き合う精神状態と自信を回復することも、お子さまの発達に好ましい影響を及ぼすものと期待されています。
つまり、放課後等デイサービスは、学校以外での集団活動を通じて児童の自立を促進し、自分の力で困難を乗り越えるための訓練を提供することを目的としています。また、障害のある児童を持つ保護者にもサポートを提供し、居場所を提供する役割も果たしています。
放課後等デイサービスと児童発達支援の違いは?
放課後等デイサービスと同じく通所支援サービスで、障害のあるお子さまをサポートする「児童発達支援」と放課後等デイサービスとの主な違いは、対象となるお子さまの年齢です。両者の支援内容においては、大きな差異は見られません。具体的な違いとしては、放課後等デイサービスが小学生から高校生(6歳~18歳)を対象としているのに対し、児童発達支援は小学校に上がる前の未就学児を対象としています。
放課後等デイサービスの対象者は?
放課後等デイサービスは、利用対象者には特定の条件があります。以下では、具体的にどのような人がこのサービスを利用できるのかを説明いたします。
先に述べた通り、基本的には小学生から高校生まで(6歳~18歳)が対象となります。ただし、18歳を超えても利用が必要と認められる場合、最大20歳まで継続して受けることができます。
自治体によっては、医師などの専門家がサービスの必要性を認定すれば、診断書や療育手帳の取得は不要な場合もありますが、原則として6歳から18歳までの就学児童で、障がい手帳、療育手帳(※「愛の手帳」「みどりの手帳」などと呼ぶ地域もある)、精神障がい者保健福祉手帳などの手帳を所持する児童または、発達障害の特性について医師の診断書がある児童。
厚生労働省によれば、以下の条件を満たす子どもが対象とされています。
・学校教育法で定められる学校(幼稚園、大学は除く)に在籍し、かつ障がいがある児童
・放課後等デイサービスを受けなければその福祉を損なうおそれがあり、医師等により必要性が認められる場合
・満20歳未満の範囲で利用する場合
なお、障がいの定義は児童発達支援と同様に、身体的な障がい、知的障がい、精神的な障がい(発達障害も含む)を指します。
したがって、放課後等デイサービスの利用条件は「就学」が基本となります。これにより、中卒で高校進学しなかった場合や高校中退者は、学校に在籍していないため、児童発達支援のサービスを受けることになります。ただし、学校に在籍している場合であれば、不登校であっても引き続き放課後等デイサービスを利用することができます。
放課後等デイサービスの支援内容は?
放課後等デイサービスは、将来的な自立を目指す障害のあるお子さまをサポートするため、多様な活動を通じて支援を行っています。以下は、厚生労働省の放課後等デイサービスガイドラインに基づき、提供されるサービスの一例を紹介します。
参考:厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」
自立支援や日常活動の充実を目指す
お子さまが基本的な生活習慣を身につけ、将来的な自立を支援することを目指す活動が行われます。
厚生労働省の『放課後等デイサービスガイドライン』に基づき、ひとりひとりの個別支援計画に合わせて、以下の活動を組み合わせて支援を行います。
1. 自立支援と日常生活の充実のための活動
2. 創作活動
3. 地域交流の機会の提供
4. 余暇の提供
障害のあるお子さまが積極的に参加できる遊びを通じて、成功体験を積み重ね、個々の自己肯定感を向上させるような活動が重要とされています。
また、将来の自立を見据えた活動にも焦点を当て、お子さまの学校での活動を考慮し、連携を図りながら支援することが求められています。
地域との交流を大切にする
障害のあるお子さまが社会経験を豊かにし、幅広い交流を築くために、積極的に地域との交流活動が展開されます。
地域のイベントや様々な学習・体験活動を提供する施設と連携し、またボランティアを積極的に受け入れて、人とのふれあいの機会を増やすことが目指されます。
創作活動、余暇の提供をおこなう
創作活動では、多岐にわたるプログラムを提供し、表現の楽しさを実感するとともに、自然と触れ合い、四季の変化に対する感受性を高めることが重要視されています。
余暇の提供では、落ち着いた雰囲気での活動を工夫し、お子さまが自分の希望に応じた遊びや練習などを選択し、主体的に取り組む経験を積むことが強調されています。
放課後等デイサービスは、これらの活動を通じて、学校や家庭では得られないような機会を提供し、様々な経験を重ねていくための支援を行っています。
放課後等デイサービスで受けられるプログラム
放課後等デイサービスでは、利用者全員に均一な支援が提供されるのではなく、障害のあるお子さまや発達に特性のあるお子さまに合わせたサービスが展開されています。このため、個々の状況に応じたサポートが可能であり、その柔軟性が大きな特徴です。
児童発達支援管理責任者が、利用者それぞれの目標に合わせて「個別支援計画書」を作成し、それをもとに各施設で個別に構築された支援プログラムが実施されます。
プログラムの中には、社会性の向上を図るための工夫が盛り込まれています。以下は一例ですが、
・運動プログラム
・音楽プログラム(楽器の演奏など)
・創作活動プログラム(アートなど)
・パソコンを活用したプログラム
・社会で必要なスキルを身につけるソーシャルスキルプログラム
・学習支援プログラム(宿題など)
などが挙げられます。ただし、施設ごとに提供されるプログラムは異なるため、お子さまの目的に応じて最適な施設の選択が重要です。
施設の形態も多岐にわたり、療育を提供する専門スタッフが在籍する施設や、習い事のような通いやすい施設、長時間自由に遊べる学童のような場所などが存在します。
利用者負担について
放課後等デイサービスを利用する際の費用について、具体的な負担額や支援内容はいくつかのポイントがあります。
まず、放課後等デイサービスは、障害児給付費の対象となる福祉サービスです。このため、自治体によって設定された利用料金が一部給付され、利用者はその一部を自己負担することになります。
具体的な支援は、自治体が発行する受給者証を取得することで行われます。この際、利用料金のうち9割が給付され、残りの1割が利用者の自己負担となります。ただし、これは一般的なケースであり、自治体によっては異なるケースも考えられます。
個別のケースによって異なるため、利用者は必ず自治体のガイドラインを確認し、具体的な利用料金や給付の条件を確認する必要があります。さらに、自治体によっては独自の助成金や支援策が存在することもありますので、これらも合わせて確認することが重要です。
以下は東京都大田区の例になりますので参考にしてください。
東京都大田区の利用者負担額上限月額表
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 区市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 区市町村民税課税世帯(区市町村民税所得割28万円未満) | 4,600円 |
一般2 | 区市町村民税課税世帯(区市町村民税所得割28万円以上) | 37,200円 |
- 「住宅借入金等特別税額控除」及び「寄付金税額控除」による税額控除前の額で算定します。
- 地方税法が改正され一部の扶養控除が廃止されましたが、「16歳未満の扶養親族及び16歳以上19歳未満の特定扶養親族に関する控除」がなされたものとして算定します。
利用者負担は、原則1割の定率負担とその他実費の負担があります。定率負担は、前年の世帯の所得に応じて次の4区分の利用者負担上限月額が設定されます。なお、相談支援事業所の利用に係る利用者負担はありません。
所得に応じて負担上限月額が決められている
放課後等デイサービスの利用料金(月額)は、家庭の所得に基づいて変動します。
おおよその目安として、1日あたり1,000円前後で、一般的には月額4,600円でのご利用が可能です。この場合、利用者の負担割合は一般的に「1割負担」となります。
また、所得によっては最高負担月額が設定されており、上限を超えた金額はかかりません。なお、所得の判断基準は、障害児の場合、保護者の属する住民基本台帳での世帯が適用されます。
その他の費用として、施設によってはおやつ代や制作物の材料代、外出交通費などが実費で発生する場合があります。事前に各施設に確認し、サービス内容や費用について理解しておくことが重要です。
参考:障害者の利用者負担
利用には受給者証が必要
放課後等デイサービスを利用する場合、自治体で発行されている「通所受給者証」が必要となります。
住民票がある市役所や区役所にて、事前に相談・申請をおこなってください。
参考:通所受給者証とは?
利用回数の上限は?
放課後等デイサービスの利用回数は、受給者証によりひと月に設定された上限が一人ひとりに決まります。
受給者証の申請には審査があり、お子さまや保護者の状況、家庭環境などが考慮されて利用回数が定められます。
通常、設定された利用回数内であれば、複数の施設を組み合わせて利用することが認められています。
各施設は異なる特色を持っており、例えば以下のような組み合わせが考えられます。
- 小学校低学年の一週間の例
- 火曜日:運動プログラムに力を入れている施設(15:00~17:00)
- 水・金曜日:ソーシャルスキルプログラムを取り入れている施設(16:00~17:00)
- 日曜日:午前中から夕方までのプログラムを組んでいる施設(10:00~17:00)
1つの施設だけを利用することも、複数の施設を併用することも可能です。お子さまの週のスケジュールやどの施設に通うかなど、最適な利用方法を検討する際には、ご家族と相談してみると良いでしょう。
放課後等デイサービスの利用の流れ
放課後等デイサービスの利用を考えているが、利用までの流れや手続き、金額などについてわからないという方に向けて詳しく解説します。
利用する際に必要な手続きの流れは次のとおりです。
1. 利用の相談
地域の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに、サービス利用の希望を相談してみてください。利用目的や希望する利用方法について事前に考えておくと良いでしょう。また、これらの窓口では地域内で提供されている事業所の情報を提供してくれることもあります。
2.施設の見学・体験
ご利用を希望する施設が見つかったら、直接施設に空き状況を確認したり、お子さまに関する相談を行います。空きがあることが確認できたら、事前に施設を見学したり体験することをお勧めします。その際に、具体的に利用内容や支援について相談することが大切です。
こちらも参考に:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介
3.障害児支援利用計画案の作成
サービスの利用を希望する場合、障害児支援利用計画案を作成する必要があります。計画案の作成方法は2種類あります。ひとつは「保護者が中心となり、支援者の協力を得ながら自己計画を作成するセルフプラン」です。もうひとつは、「地域の相談支援事業所に相談し、聞き取り調査を通じて計画を作成する方法」です。※相談支援事業所を利用する場合は、障害児相談支援給付費支給申請書の提出が必要です。
4.申請書などの提出
障害児支援利用計画案の作成が完了したら、計画案と障害児通所給付費支給申請書を福祉窓口に提出します。この際、保護者の所得証明書や保有している場合は療育手帳などの提出が求められます。療育手帳をお持ちでない場合は、児童相談所、市町村保健センター、医療機関などからの意見書提出が必要な場合があります。必要な書類は市区町村によって異なるため、事前に必要書類を確認しておくことが重要です。
5.調査
放課後等デイサービスを利用できるか、お子さまがその条件を満たしているか、さらに必要なサービスの量(日数)について検討されます。対象となる障害は身体障害、知的障害、精神障害、発達障害であり、障害者手帳の有無は問われません。児童相談所や保健センター、医師などによって療育の必要性が認められた子どもも対象となります。
6.審査
上記の調査結果を基に、受給者証の交付対象かどうか審査が行われます。この審査には1〜2カ月程度かかる場合もあります。
7.受給者証の交付
審査の結果、放課後等デイサービスの利用が適切と判断されると、受給者証が交付されます。受給者証の受け取り方法は市区町村によって異なるため、自宅に郵送されるか、直接受け取りに行くかなどは確認が必要です。
8.施設との契約・利用開始
受給者証と障害児支援利用計画を持って、サービス利用に関する契約手続きを行います。個別支援計画の内容の説明を受けて、契約手続きが完了すると実際のサービス利用が開始されます。
受給者証をすでに持っている場合は?
既に受給者証をお持ちの場合は、ご希望の放課後等デイサービスに空きがあるかどうか問い合わせてみてください。利用したい曜日や時間に空きがある場合は、すぐに見学や体験をして利用を検討し、施設との契約手続きを進めましょう。
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