【2023年最新】精神保健福祉士(PSW)とは? | 国家試験・難易度・年収、やりがいについて解説

支援

精神保健福祉士(PSW)とは?仕事内容ややりがいは?

心に病を抱えた人がスムーズに生活を営めるように、相談や生活支援、助言、訓練、社会参加の手助け、環境調整などを行う仕事です。歴史は1997年から始まり、「精神保健福祉士法」施行に伴って誕生しました。2012年からは「障害者総合支援法」が制定され、精神保健福祉士資格への注目が高まっています。PWSやMHSWなどと省略して呼ばれたりします。

参考:支援について

心の病や悩みを抱えた人の生活を、さまざまな領域からサポートする

精神保健福祉士の主な仕事の例をあげるとすると、「医療費と生活費の管理」があげられます。障害者自身はもちろんですが、その家族にとっても医療機関にかかる費用は大きな負担になります。精神障害と一口に言っても症状はさまざまで、生活費の管理ができない方や、躁状態で散財してしまう方など、その方に合った助けを提供していく必要があります。

医療費や生活費として活用できる公的支援制度を斡旋したり、自立した生活ができるように導いて金銭計画をサポートすることも業務のひとつと言えるでしょう。

また、社会復帰に向けて、日常生活に必要な訓練や会話の練習など直接障害者と向き合ったり、再び社会に出て働くための支援や、就職を果たした後も仕事に定着できるまでのサポートなども行います。

職場により仕事内容も異なる

職場によって精神保健福祉士の仕事内容は大きく変わります。活躍の場が、病院から支援機関、学校など多岐に渡るため、職場によって求められるアプローチも変わってきます。

例えば学校でスクールソーシャルワーカーとして働き、家庭内や教師からの暴力で心のバランスを崩したり、いじめで不登校になった子どもの支援を行なったりすることもあります。児童本人だけでなく、教職員や保護者、近隣住民との調整も行います。

精神科の医療現場では、受診前の相談から初回の面接、入院中の相談業務や社会復帰のための助言・関係各所との調整などをおこないます。

精神保健福祉士として8年以上の実務経験がある場合は、「社会復帰調整官」として保護観察所に配置され、重大な他害行為を行った精神障害のある人の処遇、関連機関のコーディネータ役などを行うケースもあります。

このように、ケースバイケースで柔軟な対応を求められる仕事の側面を持っています。

社会福祉士・介護福祉士、カウンセラーとの違い

上記の仕事例を見て、「カウンセラーや介護士と同じではないか?」と思った方もおられるのではないでしょうか?これらの仕事には「社会をより良くして、患者に寄り添う」といった共通項がありますが、精神保健福祉士が対象とするのは、うつ病や統合失調症、認知症など精神障がいがある方です。

社会福祉士は高齢者・子ども・障がい者・低所得者など、精神疾患患者に関わらず、保護対象に当たる幅広い方々を対象にお仕事をしています。介護福祉士は、高齢者の介護分野にて活躍する職業です。

精神保健福祉士も社会福祉士も名称独占資格

国家資格には「業務独占資格」「名称独占資格」があり、業務独占資格は免許を所有していない人が治療を行なった場合、違法行為にあたる資格のことを言います。

精神保健福祉士は名称独占資格に該当しますので、免許を取得しなくても精神障害者を対象とした相談支援の仕事に就くことは可能です。

しかし、精神障害者を支援する職場では精神保健福祉士資格が応募要件となっていることが多いため、資格を持っていると職場の選択肢が広がります。

精神保健福祉士と社会福祉士のダブルライセンス

精神保健福祉士と社会福祉士のダブルライセンスで活躍の場を広げる働き方も可能になります。

「精神障害の有無に関わらず、幅広く困っている人を支えたい」と考える方にはとても良い選択肢でしょう。福祉のエキスパートとして幅広い専門知識を備えた人材の証明になりますし、精神保健福祉士単独よりも社会福祉士とペアで持っていた方が就職においても有利です。また、将来的には管理職などへのキャリアアップにつながったり、もっと待遇の良い職場を求めて転職する際にも役立ちます。

精神保健福祉士になるには?

精神保健福祉士資格が必要

精神保険福祉士になるには以下の3つのルートがあります。

いずれの場合も「精神保険福祉士国家試験」を受験する前に大学や養成施設、社会福祉士などを経ている必要があります。1つづつ説明していきます。

・保健福祉系大学ルート

・短期養成施設ルート

・一般養成施設ルート

保健福祉系大学ルート

保健福祉系大学で指定科目を履修することが前提条件になっています。

① 保健福祉系大学4年+精神保険福祉士国家試験

② 保健福祉系大学3年+相談援助1年+精神保険福祉士国家試験

保健福祉系短大など2年+相談援助2年+精神保険福祉士国家試験

指定科目とは厚生労働大臣が指定する以下の科目を指します。

指定科目

  1. 人体の構造と機能及び疾病、心理学理論と心理的支援、社会理論と社会システム のうち1科目
  2. 現代社会と福祉
  3. 地域福祉の理論と方法
  4. 社会保障
  5. 低所得者に対する支援と生活保護制度
  6. 福祉行財政と福祉計画
  7. 保健医療サービス
  8. 権利擁護と成年後見制度
  9. 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
  10. 精神疾患とその治療
  11. 精神保健の課題と支援
  12. 精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)
  13. 精神保健福祉相談援助の基盤(専門)
  14. 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
  15. 精神保健福祉に関する制度とサービス
  16. 精神障害者の生活支援システム
  17. 精神保健福祉援助演習(基礎)
  18. 精神保健福祉援助演習(専門)
  19. 精神保健福祉援助実習指導
  20. 精神保健福祉援助実習

短期養成施設ルート

福祉系大学で基礎科目を履修する or 社会福祉士を取得していることが前提条件になっています。

① 福祉系大学4年 + 短期養成施設半年以上 + 精神保険福祉士国家試験

② 福祉系大学3年 + 相談援助 + 短期養成施設半年以上 + 精神保険福祉士国家試験

③ 社会福祉資格登録 + 短期養成施設半年以上 + 精神保険福祉士国家試験

基礎科目とは厚生労働大臣が指定する以下の科目を指します。

基礎科目

  1. 人体の構造と機能及び疾病、心理学理論と心理的支援、社会理論と社会システム のうち1科目
  2. 現代社会と福祉
  3. 地域福祉の理論と方法
  4. 社会保障
  5. 低所得者に対する支援と生活保護制度
  6. 福祉行財政と福祉計画
  7. 保健医療サービス
  8. 権利擁護と成年後見制度
  9. 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
  10. 精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)
  11. 精神保健福祉援助演習(基礎)

一般養成施設ルート

一般の大学や短大を卒業する or 社会福祉士の有資格者が一般養成施設を経て精神保険福祉士を目指すルートになります。

① 一般大学など4年 + 一般養成施設1年以上 + 精神保険福祉士国家試験

② 一般短大など2年 + 相談援助2年 + 一般養成施設1年以上 + 精神保険福祉士国家試験

相談援助4年 + 一般養成施設1年以上 + 精神保険福祉士国家試験

どのルートを選んでもかなりの時間と労力を掛けて精神保健福祉士を取得したことがわかりますね。精神障害者は非常にデリケートな方が多く、たった一つの言葉が引っかかって自殺を起こす可能性もあります。そういったリスクを最小限に抑え、障害者を前向きにサポートをするためには事前の知識は欠かせないものになってきます。

精神保健福祉士のやりがい

精神保健福祉士が仕事で接する方々は精神疾患を患っていて、環境的にも金銭的にも厳しい方がほとんどです。そういった方々に共感できたり、環境が少しでも改善されることに喜びを感じる方にとってはやりがいを感じられるでしょう。社会にも大きく貢献できます。

精神保健福祉士(PSW)に向いている人とは

精神保健への興味

前提条件として精神保健への興味・関心があることが大事になってきます。ひとくちに精神障害と言っても依存症から発達障害、統合失調症までさまざまな疾患があり、それらの症状や特性は環境や性格、考え方の癖などの背景から「困りごと」という形で現れてきます。

それらのケースに対して常に患者さんの背景を想像し、勉強する姿勢を持ち続ける方も精神保健福祉士に向いているといえるでしょう。

コミュニケーション能力

精神保健福祉士は多くの方々とのコミュニケーション能力を必要とします。精神障害者だけでなく、医療分野や地域社会などとの連携が欠かせません。精神障がいを持つ方が置かれている経済的な問題については、行政との連携も必要になります。

問題解決するためのコーディネート力

精神保健福祉士は心に寄り添うだけでなく、具体的に行動し、適切な支援機関や制度に繋げるコーディネート力も求められます。関係各所がどのようなことをしている機関なのかに精通し、どの人物につなげば問題が解決に向かうのかを判断できなくてはなりません。

社会の役に立ちたいという熱い思い

精神保健福祉士は、悲惨な状況に置かれている方たちともたくさん出会います。一喜一憂して仕事が終わった後もその感情を引きずっていては仕事になりません。「困っている人の役に立ちたい」という気持ちと共に現実を冷静に見つめて、物事を客観的に考えられる能力も必要になります。強い精神力で根気強く対話を交渉を続けていく人が精神保健福祉士に向いていると言えます。

精神保健福祉士国家試験の概要

精神保健福祉士国家試験は、精神保健福祉の分野でのプロフェッショナルとして活動したいと考える人々にとって重要な一歩です。年々人気が高まってきており、過去5年間で、精神保健福祉士の登録者数は約4,000人のペースで増え続け、2021年時点での登録者数は10万人程度となっています(社会福祉振興・試験センター

精神保健福祉士試験の合格率の推移

精神保健福祉士試験の合格率の5年間(2018年〜2023年)の平均は65%です。

2023年度(令和5年度)の精神保健福祉士試験では、合格率71.1%と過去最高の合格率になっています。

年1回、2日間の日程で行われます。出題形式はマークシートによる選択式回答となります。試験日の午前と午後に行われ、各100問の計200問です。

国家試験の勉強方法

試験の合格率は比較的高いといえますが、試験対策は必須です。

過去問や国家試験対策アプリを使い、移動時間やすきま時間を使って繰り返し学習しましょう。

精神保健福祉士の仕事内容

日本は精神障害者の社会参加が遅れていることが長年の課題でしたが、障害者自立支援法(2006年)や障害者総合支援法(2012年)などの法整備により社会参加を強く求められています。

精神障害者の社会参加には様々な障壁があり、企業や医療、家庭などを包括的に支える精神保健福祉士の存在が重視されるようになってきました。主な支援は次の通りです。

参考:障害者自立支援法とは?

参考:障害者総合支援法とは?

医療に関する支援

以下のような支援を行います。

・医療機関にかかっていない患者を適切な医療につなげる

・患者の退院や退院後の社会生活への移行をサポート

住居に関する支援

以下のような支援を行います。

・退院後の住まいの確保

・保証人がいない等の理由により入居が困難な障害者に対し、入居に必要な調整等に係る支援を行う

・家主等 への相談・助言を通じて障害者の地域生活を支援

就労・就学に関する支援

以下のような支援を行います。

・就労支援サービスの利用を援助

・一般企業への就職を目指して必要な知識やスキルを身に付ける就労移行支援を紹介

・一般企業での就職が困難な人へ働く場を提供する就労継続支援を紹介

家族への支援

・障害者の家族に障がいに対する理解を深めてもらうため、家族に対して説明する

・患者の精神疾患の原因が家庭内暴力などの場合は原因の解消にも努める

人権擁護

・患者が健康で文化的な生活を営む権利を擁護する。

・不必要な行動制限や治療内容の不満などの解消に努める

精神保健福祉士の勤務先

 精神保健福祉士の勤務先の約8割は福祉関係や医療関係です。(精神保健福祉士就労状況調査

近年では行政や教育機関など様々な場所に活躍の場が広がっています。

障害者福祉関係

以下のような勤務先があります。

相談支援事業所:障害者への相談支援をおこなう

基幹相談支援センター:地域の相談支援の中核

障害者支援施設:通所訓練が難しく夜間の生活介護が必要な人向け

障害者グループホーム:医療費や生活費に関するアドバイスを行うほか、適切な福祉サービスを利用できる出来るようにサポートする。

依存症回復支援施設:依存対象物なしで日常生活を送れるようになるようサポートする。

高齢者福祉関係

介護保険関連施設:認知症の高齢者のケアや相談業務が主な仕事になる。介護施設や、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設が含まれます。

医療関係

精神保健福祉士が居る医療関係施設は主に入院が出来る精神科が設置されている病院やクリニックになります。患者の入退院をサポートし、必要に応じて精神療法を実施します。退院後の支援機関との橋渡しも大事な業務の一環です。

行政機関

精神保健福祉士が精神保健福祉相談員として勤務するケースです。この場合は精神保健福祉士以外に地方公務員試験に合格する必要があります。患者が快適な日常生活が送れるよう、住まい、就職先探しの相談や、各関係機関と患者さんの間に立って連携・調整を行うことが仕事になります。

学校教育関係

精神保健福祉士がスクールソーシャルワーカーとして勤務するケースです。社会福祉の専門性を持ち、問題を抱えている児童・生徒が置かれている環境に働きかけることで、問題の解決に向けてサポートする仕事になります。

司法関係

保護観察所矯正施設が該当します。精神疾患によって犯罪を犯した患者を対象に社会復帰に向けた訓練や矯正を行います。保護観察所では社会復帰調整官と呼ばれ、社会復帰調整官採用試験を受けることによって採用されます。

精神保健福祉士(PSW)の年収・給料は?

精神保健福祉士の年収分布・年収相場は平均額は404万円。300〜400万円未満がボリュームゾーンでアルバイトやパートなどの非正規雇用と正社員雇用、職場などによっても年収に大きな開きがあります。

精神保健福祉士就労状況調査結果

年収約300万~400万円、月給は大卒で約20万円

精神保健福祉士の給料は、大卒の方の初任給が20万円程度で決して高い給与とは言えません。キャリアを積んでいくことで徐々に給料は上がっていき、総合的な平均年収としては約300万円~400万円になるようです。研修や自己研鑽が推奨される職場が多く(81.5%)、仕事以外でもキャリアアップに熱心な方が多いです。

年収・給与アップさせる方法は?

実務経験を積んでキャリアアップを目指す!

精神保健福祉士として年収アップを目指すのであれば、実務経験を積んでキャリアアップを目指しましょう。多くの職場は資格手当があり、精神保健福祉士以外の資格を取得すれば資格手当により給与を上げることが可能です。役職がつけば役職手当が貰え、より給料を上げることが可能です。

まとめ

精神保健福祉士の仕事は、様々な障害者をサポートするやりがいと使命感に満ちたものです。患者との信頼関係を築き、カウンセリングや支援サービスを提供することで、精神的な問題や心の不調に対処します。

職務には感情的な負担やストレスが伴うこともありますが、困難な状況や苦悩に向き合い、粘り強くサポートを続ける中で障害者の生活に希望と前進をもたらすことが出来るでしょう。

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