精神科訪問看護(MHSW : 旧PWS)でできることは?サポート内容や具体的な事例をご紹介!

制度

精神科訪問看護とは?

「精神科」と付くと一般的な訪問看護とは異なるイメージがあり、その違いや需要、仕事内容、必要な資格などについて疑問が生まれることもあります。精神科訪問看護は一般的な訪問看護と比べると認知度が低く、多くの人がその対象者やサポート内容を知らないかもしれません。

精神科訪問看護が提供できるサポートについて理解しておくことで、困難や悩みに直面している方々をサポートできる可能性があります。

精神疾患の治療が医療機関から在宅へと移行する中、精神科訪問看護の需要が高まって来ており、精神科訪問看護が訪問時にどのようなサポートを提供するかに焦点を当てて解説します。

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精神科訪問看護とは?

精神科訪問看護は、「精神疾患を抱える方や精神的な理由でサポートが必要な方の自宅を訪問し、看護を提供する制度」です。利用者様の症状や状況によってサポート内容が異なり、ご家族への支援も並行して実施しています。利用者様を取り巻く環境全体を整えていく事が役割となっています。

精神疾患により医療機関を受診する人が増加傾向にあり、精神疾患の患者数は過去15年で約1.7倍に増加しました。政府の地域包括ケアシステムの推進により、精神疾患の治療の場が医療機関から在宅へと移行しており、その中で精神科訪問看護のニーズも各地で高まっています。

精神科訪問看護は、精神疾患をお持ちの方やこころのケアを必要とされる方が、地域社会の中で安心して暮らせるように、ご自宅や入所施設に看護師が訪問してケアや生活のサポートをする制度です。現在では入院患者数の減少や治療の地域移行が進み、精神科訪問看護が効果的な治療とスムーズな社会復帰の実現を支えています。

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精神科訪問看護でサポートできる方の特徴は?

(1)精神疾患と診断された方

認知症や依存症、統合失調など「精神疾患を抱えたすべての方」が対象になります。

(2)精神科や心療内科に通院中の方

精神科や心療内科へ通院中の方も対象者です。精神科訪問看護へ申し込む場合は、通院の有無に限らず、医師に指示書を書いてもらう必要があります。

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(3)精神疾患の診断はないものの睡眠障害や自宅療養などサポートが必要と医師が判断した方

医学的な精神疾患の診断名が無くても睡眠障害や自宅療養の必要があり、「精神科訪問看護」を利用した方が良いと医師が判断した場合には精神科訪問看護の対象になることがあります。

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精神科訪問看護の支援内容は?

精神科訪問介護での具体的な支援内容を以下に書いていきます。

■バイタルサイン測定

服薬や体調不良による変化を見逃さないためにバイタルサイン測定を行うことがあります。現状を数値化できるため、表情、態度のみでない客観的な判断材料になります。

精神疾患の症状は日内変動や時期に左右される部分がかなり大きいので些細な変化などを捉えるために習慣化しておくとよいでしょう。

■内服管理

精神科訪問介護では薬の効果や重要性を理解しておらず、自己判断で薬を中断している患者様もいらっしゃるので継続して支援します。予防という観点でも服薬は非常に重要ですので、薬の効果効能の説明と正しく服薬できているかを確認することは必須です。

■セルフケア援助

鬱症状や発達障害を併発していて、身だしなみや掃除など、身の回りの環境を整えるのが苦手な利用者様も少なくありません。訪問看護師は身の回りの整理や片付けの方法を一緒に考えたり、排便コントロールがしっかり行えているか確認したりと、セルフケアが行えない利用者様の援助を行っています。

■コミュニケーション

定性的な指標になりますが、精神状態の変化はコミュニケーションに現れることもあります。バイタルチェックに現れない部分を看護師の違和感で感じ取る作業になります。日常会話の中で「いつもと違う」「なぜかイライラしている」といった些細な変化にいち早く気づくことによって支援内容に厚みがでていきます。

■精神状態の観察

患者様とのコミュニケーションだけでなく、ご家族との会話やご自宅の状況なども精神状態の把握で重要視している点です。訪問看護師はご自宅やご家族のすべての状況から、利用者様の精神状態の観察を行なっています。

■ご家族への支援や説明

患者様本人と同様に、ご家族への支援は、精神科訪問看護においてとても重要な看護の1つです。患者様と日常的に接して理解されているご家族の方とお話をすることで、今後のサポートの方向性が決まることもあります。

■主治医や保健師、セラピストなどへの報告・連絡

精神科訪問看護は主治医の指示のもと医療ワーカーが自宅に訪問するシステムのため、連携が大切になってきます。日々利用者様を観察している看護師は、チーム医療の中心となり、報告・連絡・各種調整を行っていく役割があります。

■社会復帰を目指している方への看護

社会復帰を目指す方には、地域活動支援センターでの軽作業や就労移行支援の受講を紹介することもあります。進捗や状況を管理し、社会復帰に向けて相談にのることも重要な業務です。

参考:地域活動支援センターとは?

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精神科訪問看護の導入をおすすめする方とは?

精神科訪問看護は、対象の方であればどなたでも利用できますが、特に下記のような方は導入しサポートすることで状況が改善する可能性がありますので活用をおすすめします。

・ひきこもりの方

・身の回りの掃除や買い物などが上手く行えないと感じている方

・不安感が強い方

・生活リズムが崩れがちな方

・精神科に長期入院または入退院を繰り返す方

・医師とのコミュニケーションが難しい方。言いたいことを上手く伝えられない方

・服薬管理が難しい方

精神科訪問看護に向いている人とはどんな人?

精神科訪問看護を行うためには、特定の条件をクリアする必要があります。例えば、精神科病院に1年以上勤務した経験のある者、または精神疾患を有する方に対する訪問看護の経験を1年以上有する者、専門機関が主催する精神保健に関する研修を修了している者などがこれに当たります。これらの条件をクリアしていることが前提となります。

精神科訪問看護師に向いている人に必要なスキルは、主に「利用者の強みを見つけられる」ことと「利用者との程よい距離感を保てる」ことの2つです。利用者の強みを見つけることで、より効果的なサポートが可能となります。また、程よい距離感を保つことは、利用者との信頼関係を築く上で重要であり、適切なサポートを提供する基盤となります。

利用者の強みを見つけられる

精神科訪問看護で求められる資質の一つは、利用者の本人に対して強みを見つけられる能力です。精神疾患を抱えている利用者は、しばしば自身の弱点やできていない部分に焦点を当てがちで、それが原因で落ち込みや不安を感じることがあります。そのため、本人の強みやできているところを見つけ、それを認め褒めることは、精神的な安定感を促進する重要な役割を果たします。精神科訪問看護師は、利用者が抱える悩みや課題だけでなく、彼らの強みやポジティブな側面にも注意を払い、適切なサポートを提供することが求められます。

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利用者との程よい距離感を保てる

精神疾患を抱える利用者は、心を閉ざしているケースが多く、お互いに信頼関係を築くには時間がかかります。精神科訪問看護師には、まずは利用者との心の距離を上手に縮め、信頼を築いていくスキルが求められます。ただし、適切な距離感の保持も重要です。あまりにも近づきすぎると、利用者が訪問看護師に強く依存しやすくなります。この依存関係が強くなると、訪問看護師からの指導が効果的に届かなくなり、指導が強まると利用者が再び心を閉ざす可能性もあります。そのため、程よい距離感を保てる能力が、精神科訪問看護師にとって重要な資質とされています。

参考:精神科訪問事業所とは?

参考:精神科訪問看護指示書とは?

「精神科訪問看護について」よくある質問

精神科訪問看護について少しは身近に感じていただけましたでしょうか?そのほかに「よくある質問」をまとめましたので参考にしてください。

Q
訪問看護と精神科訪問看護の違いは何ですか?
A

一般の訪問看護は、身体の状態を見て必要なケアをしたり、利用者さまに指導や助言をしたりすることがメインであり、一方、精神科の場合は、心というデータ化できないものを対象としている点が特徴です。ご家族や患者様の体験している状況を共有し、回復の糸口を一緒に探していく、一緒に考えるというスタンスで接することが大切です。

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参考:就労移行支援事業所とは?

Q
精神科訪問看護で何を話せばよいですか?
A

精神科の訪問看護は、治療中心の病院とは異なり、性格や症状とうまく付き合いながら、自分自身の環境をコントロールして生活できることを目指しています。コミュニケーションを大切に、症状なのか、本人のこだわりなのか、どんな生活歴があったのかなど、患者様やご家族から対話できちんとキャッチしていかないといけません。

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