
リワークプログラムとは
リワークとは「retern to work」の略で、文字通り、休職者が復職するという意味です。
職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムであり、うつ病などの精神面の不調を理由に休職した従業員に対する復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムをリワーク支援と呼びます。
適切なリワーク支援を受けることで復職へのハードルを下げることができます。リワークへの理解を深め、休職者のスムーズな復職や再休職の予防に役立てましょう。
リワークで毎年80%以上の方が職場復帰を果たしています。
この記事では、リワークの意味と効果、種類、取り組み内容などについて解説していきます。
リワークプログラムの概要
プログラムに応じて決まった時間に施設へ通うことで会社へ通勤することを想定した訓練となります。内容としては、仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、復職後にうつ病を再発しないための疾病教育や認知行動療法などの心理療法が行われます。
回復の度合いにより、4つの期に別れた訓練を行うため、初期には久しぶりの集団生活になれるための軽スポーツやレクレーションが行われることがあります。
プログラムの中期では、休職になった時の働き方や考え方を振り返ることで休職に至った要因を確認するとともに復職した時に同じ状況(休職)にならないための準備もしていきます。
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職場復帰のコーディネート
職場復帰を円滑に進めるためには、「休職中の社員」「企業の人事担当」「主治医」の3者による協働体制を作ることが重要なポイントです。
リワーク支援では、職場復帰のための活動の内容、スケジュール等の計画について、その3者との合意形成を行います。

リワークプログラムの種類(実施主体)
リワークは実施機関によって目的や費用、対象者が異なり、大きく分けて以下の3種類のリワークがあります。主治医に相談して自分に合ったリワークプログラムを紹介してもらうとよいでしょう。
・医療機関で実施(医療リワーク)
・地域障害者職業センター(職リハリワーク)
・企業内で実施(職場リワーク)
以下で1つずつ紹介していきます。
医療機関で実施(医療リワーク)
医療機関が行なっているリワークになります。再休職の予防を最終目標として働き続けるための病状の回復と安定を目指した治療プログラムになっており、復職支援に特化した内容です。
診療報酬上の枠組みで(精神科デイケア、精神科ショートケア、精神科デイ・ナイト・ケア、精神科作業療法、通院集団精神療法など)多職種の医療専門職(医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理職など)による医学的リハビリテーションとして実施されます。
健康保険制度や自立支援医療制度を利用でき、費用の一部自己負担があります。
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地域障害者職業センター(職リハリワーク)
地域障害者職業センターが実施するリワークになります。センターの担当カウンセラーが、休職者本人と雇用主、主治医をコーディネイトし三者の合意を支援し、12~16週の職業リハビリテーションを実施します。
目的は「職場への適応に向けた本人と雇用主への支援」であることが医療機関のプログラムとの大きな違いです。費用は無料ですが、公務員は利用できません。
参考:地域障害者職業センター
企業内で実施(職場リワーク)
企業内で行われる復職支援のためのプログラムを「リワーク」と呼ぶ場合があります。基本的には」自社の従業員が対象であり、休職者が円滑に職場復帰できるように支援するプログラムのことです。
休職者が所属する企業の人事担当者は、病状の回復状況を知り、復職への道筋を考える必要があります。復職させて安定した就労ができるのかを見極めることが大きな目的です。
3つの「リワーク」の違い
3種類のリワークの違いを表にまとめてみましたので参考にしてください。
医療リワーク | 職リハリワーク | 職場リワーク | |
実施機関 | 医療機関 | 障害者職業センター | 企業内、EAPなど |
費用 | 健康保険 | 労働保険 | 企業負担 |
対象 | 休職者 | 休職者事業主 | 休職者 |
主な目的 | 精神科治療再休職予防 | 支援プランに基づく支援 | 労働させてよいかの見極め |
リワークを行う場所によって目的も費用も異なってくるため、自分に合った内容のリワークを選ぶようにしてください。
医療機関によるリワークについて
医療機関で行われているリワークについて紹介します。
内容
短いものは数週間から長いものは年単位でプログラムに参加しますが、平均は3~7カ月程度となっており、休職中の身分の方(フォローアッププログラムは復職中の方)が参加可能です。
基本的には休職者本人が参加するプログラムがですが、家族や友人、同僚、上司などが参加するプログラムもあります。
「オフィスワーク(個人作業)」、「グループワーク」、「ミーティング」、「内省(休職原因の振り返りなど)」、「心理教育」、「認知行動療法・SST・アサーションなどの精神療法」、「軽スポーツ、筋弛緩法など」のリラクセーション、作業療法、芸術療法などがあります。内容から大きく以下の5つに分類されます。
医療リワークプログラムの実施形態の定義
実施形態 | プログラム内容 |
個人プログラム | 文字や数字や文章を扱う。机上で一人での事務作業。集中力や作業能力の確認の向上を図る |
特定の心理プログラム | 認知行動療法やグループカウンセリングなど、いくつかの心理療法を実施 |
教育プログラム | 症状の自己理解を主目的としたもので、主に病気に講義形式で学ぶ |
集団プログラム | 実際に役割分担をしての共同作業。対人スキルの向上を目的としている |
その他のプログラム | 運動、個人面談等 |
障害者職業センターのリワークについて
障害者職業センターで行われているリワークについて紹介します。
内容
休職している方(休職者向け説明会)と企業の担当者の方(企業担当者向け説明会)を対象に、それぞれ「リワーク支援説明会」を開催しています。お電話で申込みの上、ご参加ください。
・休職者向け説明会のご案内・リワークセンター東京(TEL 03-5246-4881)
・企業担当者向け説明会のご案内・リワークセンター東京(TEL 03-5246-4881)
利用説明会からリワーク支援のプログラム終了までの期間は、4~6か月程度を想定しています。
プログラムの開始時期、期間、内容等は、個別に相談して設定します。
障害者職業センターのリワーク支援、標準的な流れ
STEP1 休職者が「利用説明会」に参加する
各自治体のリワークセンターに連絡を取り、月2回(隔週で火曜日)行われているリワーク支援説明会に参加の予約を取りましょう。東京では元浅草にあるリワークセンター東京か多摩支所にてリワーク支援説明会を行なっております。
STEP2 利用の申込みを行う
説明会に参加して利用を希望する場合は利用の申し込みを行います。事務手続きが終了しましたら、担当カウンセラーとの初回面談になります。面談で体調やその他の問題が無ければ、STEP3に進むことができます。
STEP3 リワーク支援の利用開始
3-1 通所による体験プログラム(4週間程度)
体験プログラムを通じて、職場復帰に向けた課題、活動目標と内容の整理を行います。
3-2 リワーク支援計画の作成
担当カウンセラーと相談して、個人ごとにリワーク支援利用の目的や内容、期間などを検討します。
3-3 通所によるプログラムの利用
通所での各種講座、作業、集団課題、自宅でのリモート課題などの利用を通じて職場復帰の準備を行います。
リワークは障害者職業センター以外に就労移行支援で実施しているところもあるようです。
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職場リワークについて
「復職した後に安定して就業できるのか」を正確に見極める目的として実施され、試し出勤制度など段階的な訓練を通して慣らしていき、正式な復職を目指します。
導入している企業は少ないですが、「社内での調整や連絡が取りやすい点」はメリットとして挙げられるでしょう。デメリットは「ほかの社員の目が気になって焦りや不安を感じやすい」点なので、注意しましょう。
こちらを実施する場合には、主治医から復職可能の許可を得る必要があります。
4週間から8週間程度が目安とされていて、臨床心理士との面談も平行して行いながら試し出勤の時間を少しずつ長くしていき、安定して就業できるか判断します。
リワークを行うメリットと効果
リワークには本人や企業の負担もありますが、それ以上に多くのメリットが存在します。以下では「休職者本人にとってのリワークのメリット」を挙げてみました。
生活リズムが整う
休職中は心身を休養させることが最優先であり、無理のない生活スタイルで心身の回復を目指しますが、復職に向けては睡眠をはじめとした生活リズムの調整を行う必要があります。
決まった日にちと時間にリワーク支援に通うことで、生活リズムを整え、復職に向けて心身の調子を整えることが可能になります。
セルフケアを習得できる
復職後は、基本的に休職する前と同じ環境で働くことが多いため、以前と同様の事象にストレスを感じ、症状が再発するリスクがあります。
そのため、体調を崩してしまった原因を把握し、対処方法を身に付けることが大切です。リワークでは自己分析や自己理解、ストレス対処のスキルを学ぶ様々なプログラムが用意されています。それらを通してセルフケアができるようになれば、復職後もさまざまな課題に立ち向かう力になるでしょう。
復職の負担を軽減できる
リワーク支援によって、職場に近い環境で個人作業とグループ活動の両方が可能となります。一人で作業に取り組み、集中力を高めることや、チームでの共同作業を通じてコミュニケーション能力を向上させることができます。このプログラムを通じて、休職中と復職後の違いを最小限にし、復職時の心身の負担を軽減する効果が期待できます。
職場復帰に向けて
復帰後の目標は、「職場に復帰して、健康に仕事を続けていくこと」になるかと思います。仕事というのは、毎日単調なことの繰り返しだと思われがちですが、早起きや通勤などの習慣を身につけることは意外と困難です。まずは生活習慣の確立から、確実に行っていきましょう。
復職の際に職場から求められる条件の確認
職場によって目安は異なりますが、復職に向けての目標を設定しておきましょう。
・業務内容、業務量
・1日の勤務時間、週あたりの勤務日数
・職場での支援体制、復職後のステップアップなど・・・
復職支援 段階評価の一例
以下のような項目をチェックしながら、復職可能かどうか判断していきます。主に回復期は4つに分類されますので参考にしてください。
治療開始時期〜回復期初期①
主治医の指示に従って自宅療養と薬物療養を行うことが可能と考えられる時期
・一人での定期的に通院している
・休養、夜間の睡眠がとれている
・昼夜逆転の生活は卒業している
・一般的な健康管理ができている
・調子の悪いときに休養を取る、あるいは周りの人に相談ができている
回復期初期②
仕事をするための基本的なことを整える時期。(デイケア参加&安定した通所,生活スタイルの確立)
・決まった時間に就寝・起床・食事ができている
・身なりを整える事ができる
・興味・関心の幅が広がってきている(プログラム活動を楽しむことができる)
・復職支援デイケアに週3回、16時間程度参加できる
・継続して参加するために必要な休養がとれる
・昼間眠らないで活動に参加できる
・デイケア通所に関する報告・連絡・相談ができる
・自主課題に関する報告・連絡・相談ができる
・他者とのコミュニケーションを楽しむことができる
・精神症状が軽減している
生活安定期〜寛解期③
復帰に必要なことを考える時期(セルフケア能力の向上,再発予防)
・勤務時間の1時間前には毎日起床できる
・勤務時間に合わせた服薬ができる
・復職支援デイケアに週5日、27時間以上参加できる(段階的に負担をかけても継続参加できる)
・不調時に工夫や対処をとり継続参加できる
・1日を通してプログラムなどの活動に集中して参加することができる
・自主課題について作業進行能力の確認ができる
・自主課題の提出期限を守ることができる
・自主課題の優先順位をつけることができる
・自主課題において2〜4週間程度集中して取り組むことができる
・自分の疲労度・調子を崩すサインがわかる
・自分の心身のリズムを持っている
・休職に至った経緯や原因を客観的に振り返ることができる
・自分の病気と思考、行動パターンの関連に気づける、対処の試行ができる
・集団の中での自分を客観的に捉えることができる
・個人、集団との意見相違が生じた際に自責・他責の念にとらわれない
・集団活動において過度な緊張、不安を示さない
・SSTなどのグループワークを通じて自分の課題となるコミュニケーションスキルの向上に努めることができる
・取り組んだ課題について日常生活に応用できている
・他者とコミュニケーションを図り活動できる
・デイケア終了後も家事・手伝い等家庭での役割がこなせている
寛解期〜復職準備期
仕事を持続させるために必要なことを考える(復職準備性の確認,通勤練習,リハビリ出勤)
・主治医から復職の許可がでている
・勤務時間に合わせた起床時間に起きることができる
・通勤練習後もデイケアの活動に参加できる
・週3日以上の通勤練習ができる
・主治医からリハビリ出勤の許可が出ている
・リハビリ出勤の目的が確認できている
・リハビリ出勤の内容、期間などの確認を会社担当者としている
・デイケア内で身につけた対処技能の応用ができている
・疲労、ストレスに対する対処方法を実行できる(スケジュール管理・認知的ストレス対処法・セルフリラクゼーションなど)
・状況、環境に適した対処法となっている
・継続可能な対処法になっている
・周囲の人との協力体制が作れている
リワークについてよくある質問
ここまでリワークについて紹介してきましたが、まだまだ疑問に感じることもあるのではないでしょうか?Q&A方式でよくある疑問をまとめましたので参考にしてください。
Q. 他のクリニックや病院に通院していても利用は可能ですか?
A. 他院通院中の方も多く利用していますので、問題なく利用できます。
Q. 障害者手帳や自立支援を使った割引はあるのでしょうか?
A. 医療リワークにおいては自立支援制度を使うことが出来ますので、休職者様は1割負担で利用できます。障害者手帳の割引はございません。
Q. ○○会社の人事部ですが、当社の休職者が医療リワークを利用することはできますか?
A. 利用することができます。利用には休職者本人の同意が必要になりますので、各医療リワークにお気軽にご相談ください。
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