障害年金を受給するための3つの要件とは?
障害年金を受給するためには、「①初診日要件」「②保険料納付要件」「③障害状態に該当の要件」の3つの要件を満たす必要があります。次章から1つずつ確認していきましょう。
参考:障害年金まとめ
①. 初診日要件
『初診日』とは?
初診日」とは、障害の原因となった傷病(疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病)について、初めて医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)の診療を受けた日の事を言います。
この初診日がいつなのかによって自分の受給する障害年金が「障害基礎年金」か「障害厚生年金」か決まってきますので非常に重要な概念になります。
初診日の具体的な例
初診日の概念は多岐に渡り、障害名などによっても違いが出てきます。以下、いくつか例をあげていきます。
障害年金を請求する疾患に関して、初めて診察を受けた場合
医療機関であればその疾患の専門医でなくても初診日として認められます。医療機関を変えた場合でも1番初めの医療機関で診療を受けた日が初診日となります。
先天性の知的障害の場合
出生日が初診日となります。発達障害や先天性心疾患などは症状に幅があるため、症状が出現して病院に掛かった最初の日を初診日とします。
健康診断で異常が発見された場合
健康診断は原則初診日として認められませんが、初診時の医師の証明が出来ない場合は、検診日を証明する資料と本人からの申し出によって認められます。
病気の再発の場合
過去の病気とは別の病気として扱います。初診日は再発した際の1番初めに診療を受けた日になります。
こちらも参考に:障害年金申請は「診断書」が9割!押さえるべき3つの注意点と流れ
現在の疾患に関連していると思われる疾患がある場合(相当因果関係)
過去の傷病で1番初めの診療を受けた日が初診日となります。過去の傷病名が確定せず、診察のみを受けていた場合も過去の傷病で掛かった日が初診日になります。
参考:相当因果関係について
参考:初診日について
初診日証明 | 初診の病院から受診状況等証明書がもらえなかった場合
初診日は自己申告ではなく、レシートや保険の記録などの書類から証明する必要があります。基本的には「受診状況等証明書」という書類を病院に出してもらって証明しますが、「病院が廃院」や「受診状況等証明書を出してもらえない」といった事もありえるでしょう。
この場合は、初診の病院でなくても初診日が認められるケースがあります。障害者手帳、交通事故証明書、診察券など病院を受診した記録を探して初診日として請求しましょう。
② 保険料納付要件
保険料納付要件は『初診日』の前日が基準
初診日がある月の2カ月前までの中で、「保険料が納付済み」あるいは「免除されている」期間が全体の2/3以上であることが保険料納付要件の原則です。
ご自身で納めた国民年金保険以外の厚生年金保険の被保険者期間や、共済組合の組合員期間も含みます。
年金納付の確認は「ねんきんネット」もしくは年金事務所などで年金保険料の納付状況を確認しましょう。
保険料を納めていた期間としてカウントされる場合
全額免除の場合は、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1が支給されますので、金銭的に苦しく、保険料が払えない場合は放置せずに免除しましょう。
『初診日』を過ぎてから保険料を納めたり、免除などの手続きをしたりした場合はカウントされません。
参考:若年者納付猶予制度とは?
「初診日起点の要件」が満たせない場合は、「直近1年間に未納期間がない」ことでも要件はクリアできる
初診日が2026年(令和8年)3月31日までにあるときは、次の2つの条件両方に該当すれば、保険料納付要件を満たすものとされています。
条件1:初診日の時点で65歳未満であること
条件2:初診日のある月の前々月までの直近1年間保険料の未納がない(免除などでもOK)
保険料の納付が困難なときは「免除」や「猶予」の手続きを
金銭的に苦しく保険料を払わずに未納にしてしまう方もおられると思います。実は非常に勿体無い事であり、知らず知らずのうちに障害年金の受給権を失ってしまっているのです。
「未納」は、手続きをすることなく保険料を納めていない状態で、年金の受給資格期間に含まれませんので、障害年金だけでなく老齢年金や遺族年金を受給できなくなることがあります。
経済的理由で保険料を納めることが難しい場合は必ず「免除」や「猶予」の措置を取るようにしましょう。手続きは年金事務所や市町村役場で行うことができます。
詳しくは日本年金機構のホームページを参考にしてください。
こちらも参考に:生活保護の条件 | 受給金額と申請方法を初心者向けに解説
③障害状態該当要件
最後の要件「障害状態該当要件」とは「障害の程度が年金法で定められた基準に該当していること」を意味しています
障害状態のおおまかな基準は法令で定められているが、具体的には「障害認定基準」で審査している
どの程度の障害がどの級に該当するかは 障害等級の認定基準で定められています。
記載は非常に解り辛いので、医師が記載する診断書の「日常生活能力の判定」欄が自身で判断するには良いと思います。以下に項目を記載しておきますので参考になさってください。
適切な食事
・配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど(4段階)
身辺の清潔保持
洗面、洗髪、入浴などの身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど(4段階)
金銭管理と買い物
金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど(4段階)
通院と服薬(要 or 不要)
規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど(4段階)
他人との意思伝達及び対人関係
他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える。集団的行動が行えるなど(4段階)
身辺の安全保持及び危機対応
事故などの危険から身を守る能力がある。通常と異なる事態となった時に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど(4段階)
社会性
銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど(4段階)
診断書(精神の障害用)から抜粋
身体障害と精神障害でも認定基準は異なりますので、迷った場合は社労士に依頼するのも一つの手でしょう。
基準に該当しているかどうかは、主に診断書で判断される
再審査請求にでもならない限りは、基本的に提出書類で障害年金に該当しているか判断されます。最重視されるのは医師が作成する診断書です。その次に本人や社労士が記載する「病歴・就労状況等申立書」も審査に影響します。
障害年金の等級目安
厚生労働省が冊子として出している各等級の障害状態の目安も併せてあげておきます。
上記の診断書内容も考慮して見てみてください。
障害の程度1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身の周りのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッド周辺に限られるような方が1級に相当します。
障害の程度2級
必ずしも他人の助けを借りなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。
障害の程度3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。
障害年金ガイド 令和4年版冊子より抜粋
被保険者期間中とは?「国民年金」または「厚生年金」に加入
被保険者期間は20歳から60歳の間の年金制度に加入している期間のことで、その間に初診日があると証明できる人は全員要件を満たします。
日本在住で初診日が20歳より前、あるいは60~65歳に初診日がある場合も同様の扱いになります。初診日が65歳以上の場合は障害年金の対象になりませんのでお気をつけください。
「障害基礎年金」は1~2級、「障害厚生年金」は1~3級+障害手当金
ご自身が「障害基礎年金」または「障害厚生年金」のどちらに該当するかは「初診日にどの年金保険に加入していたか」によります。「初診日」に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金保険に加入していた場合は「障害厚生年金」です。
障害の程度に関しては上記の表の通りで、「障害基礎年金」「障害厚生年金」で差はありません。
障害基礎年金は1級、2級のみ存在していて、3級はありません。
障害厚生年金は1級、2級、3級が存在し、いずれかに該当すると受給できます。また、3級に該当しないときでも条件を満たせば「障害手当手金」という一時金が支給されます。
参考:障害手当金とは?
障害年金と就労の関係
「就労してると障害年金は通らない」「働き始めたら障害年金の更新が出来なかった」などは当事者の間でも頻繁に行われる会話です。
条件によりけりですが、「働いていても障害年金を受給していらっしゃる方は沢山います」。
厚生労働省の「令和元年 障害年金受給者実態調査」によると、障害年金を受給している人の34%が働いていることがわかっています。
また、障害基礎年金、厚生年金によっても違いますし、更新の際に「会社から配慮をもらっている証拠」を診断書に添付して提出するだけでも結果は変わってきます。「病歴・就労状況等申立書」と相違がないよう念入りに確認しましょう。
一度年金に通ってしまえば、次回更新までは障害年金が停止になることはありません。次回更新時までは、そのまま支給が継続されます。
こちらも参考に:障害者雇用の助成金。種類と内容について解説
精神障害や発達障害などは、提出書類の書き方に注意
障害の程度が見た目から分からず、精神科に診察に訪れた際も元気に振る舞ってしまう当事者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
症状が数値化しづらい精神障害や発達障害は認定審査の際に「就労することができている=障害の程度が軽度なのではないか」と判断されることが少なくありません。
障害年金を請求したり、更新の手続きをしたりする際は、就労にどの程度制限があるか、仕事の内容やどのようなサポートを受けているかを、提出書類にしっかりと反映させましょう。
診断書の書き方も重要なので、病院での診察だけではわからない普段の様子もメモに書いて、担当医に渡し、診断書に反映してもらうようにしましょう。
障害年金の請求の仕方
障害年金は自動的に徴収される税金などと違い、自身で請求しなければ受給することができません。障害基礎年金はお住いの市区町村の役所、障害厚生年金は近くの年金事務所や年金相談センター(国民年金の第3号を含む)が窓口です。自身で請求する事もできますが、一度審査に落ちると受給率はグッと下がるため、社労士を使うことをおすすめします。
障害厚生年金を受給しながら、厚生年金に加入して働くと、65歳時点で「老齢厚生年金」か「障害厚生年金」のどちらか多い方を受給するなどのメリットもあり、将来的な資金に余裕が生まれます。
20歳前障害について
20歳より前に初診日がある人の場合、「年収の上限あり(400万程度)の障害基礎年金」に該当します。ただし、初診日が20歳前でも、厚生年金加入中で保険料納付要件を満たせば、通常の障害厚生年金対象です。知的障害の方の場合も出生日が初診日にあたりますので、同じ「年収の上限あり(400万程度)の障害基礎年金」に該当します。
老齢基礎年金を繰上げて65歳より早く受給した場合
繰上げ時点で65歳に達したとみなされます。繰り上げ以降に初診日があっても障害年金要件には該当しません。
障害年金が受給できる人のまとめ
このページでは障害年金が受給できる要件について説明してきました。
これら3つの要件の中で、重要な点を以下にまとめます。
「初診日要件」と「保険料納付要件」:初診日を客観的に証明すること
「障害認定基準」:自分の症状を担当医に的確に伝え、診察以外の様子もメモを渡して補足してもらう。「病歴・就労状況等申立書」と相違がないようにする
年々、障害年金の受給要件は厳しくなる傾向にあります。3つの要件をクリアして障害年金の迅速な取得を目指しましょう。