世の中には病気、障がい、介護、犯罪被害などまざまな理由で苦しみや生きづらさを抱える人が多く存在します。障害のある人の社会参加を支援するため、「障害のある人自身が、自らの体験に基づいて、同じ障害のある方を支え合う」自治体ではピアサポート体制の構築を積極的に推進しています。このページでは、ピアサポートに関心がある方(ピア)およびピアサポーターの活動を求める機関や事業所(事業所)への情報提供を目的として、実施している養成研修に焦点を当て、その内容や研修修了者の登録プロセスなどについて詳しくご紹介します。
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ピアサポートとは?
「ピア(peer)」とは英語で“仲間”を意味します。病気や障がいなど同じ苦しみを抱える“仲間”が自身の体験や有益な情報を共有することで、医師や看護師、ソーシャルワーカー、カウンセラーなどの専門家からの援助では足りない部分を補う役割を担っています。家族や専門の支援者には言いづらいことも、同じ立場の仲間なら共感と理解が得られ、不安や悩みを共有できるかもしれません。
伝統的な「支援する・される」の関係ではないピアサポートは、様々な分野で広がっており、最近ではヤングケアラー、きょうだい児、相談が難しい状況にある子どもたちにも取り入れられています。
障害を持ちながらも地域で積極的に活動するピアサポーターの姿は、同じような悩みを抱える人々に未来への希望を与え、不安を軽減する効果が期待できます。また、支援機関においては、ピアサポーターの経験に基づいた当事者視点の支援が実現し、より効果的な支援へとつながる可能性があります。
さらに、学校現場における生徒同士の相談活動も、ピアサポートの一つの形として注目されており、人間関係や進路など、学生が抱える様々な悩みに対して、より身近な存在として相談相手になってくれることが期待できます。
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ピアサポートとセルフヘルプの違い
ピアサポートは、主に当事者同士がお互いに支え合う仕組みであり、その主要な実践の場としてセルフヘルプがあります。ピアサポートは患者会や家族会などのセルフヘルプグループを通じて行われることが一般的ですが、必ずしもこれらの組織的で継続的な形式が前提とされているわけではありません。逆に、セルフヘルプグループは単なる当事者の交流だけでなく、専門家を招いた研修会や講演会など、多岐にわたる支援活動を提供しています。
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ピアサポートの意義、始まりと広がり
専門家にできない支援、当事者・経験者だからこそできる支援とは何なのか考えてみましょう。ピアサポートには主に次の3つの意義があると考えます。
不安や孤独感を軽減できる
仲間がいることは、精神的な安定につながることがあります。
以下は、当事者に共通する苦しみや生きづらさを抱える人々が抱える感情です。
- 「できないことが増えていく」
- 「生きる目的や希望が見いだせない」
- 「この先どうすればいいのかわからない」
- 「外出もままならず、社会から孤立している」
- 「頭ではわかっていてもつい感情的になってしまう」
これらの感情や状況に直面していると、自分に理解を示してくれる相手がいないために孤独を感じることがあります。しかし、同じような経験をする仲間と出会い、その困難な状況を共有することで、不安や孤独感を和らげることができるかもしれません。
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有益な情報を得られる
当事者や経験者との交流を通じて、有益な情報を得ることが可能です。現代では、インターネットを通じてさまざまな情報にアクセスできますが、日常生活における工夫や福祉サービスの利用法、医療・介護サービスの評判など、実体験に基づく知識やノウハウ、アドバイスは非常に貴重です。
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ロールモデルとなる
当事者や経験者は、ロールモデル(生き方の手本や指針)となり得ます。未来が見えないときに、同じ苦しみを抱えながらもどうにかして生きようとする仲間の姿に直接触れることで、希望や目標を持つようになった例は多くあります。彼らの存在が、時には重要な意思決定の判断材料となったり、後押しとなったりすることもあります。
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ピアサポーターの研修・養成
セルフヘルプグループや研修について調べてみよう
ピアサポートとは、同じ経験を持つ当事者同士が支え合う活動です。当事者だからこそ理解できる苦しみや悩みを分かち合い、共感し合うことで、孤独感や不安を軽減し、生きづらさを抱える人の自立と社会参加を支援します。
ピアサポートを行う人をピアサポーターと呼びます。ピアサポーターには、以下の心構えが求められます。
・プライバシーを守る
・医療行為などの専門領域に踏み込まない
・批評や比較をせず、相手の話を受け入れる
・病気や障がいなどについて正しい知識を持つ
・どのような社会資源(支援制度)があるか知る
ピアサポーターには資格はないので誰でもピアサポーターとして活動することが可能です。米国では、ピアサポートを行うピアサポーターの認定制度が多くの州にあります。資格はありませんが、日本でもピアサポーターとしての研修制度を作って活動している自治体やNPOがあります。
「当事者としての経験を活かしたい」という強い思いを持っている方は、セルフヘルプグループへの参加や、ピアカウンセリングに関する研修を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
ピアカウンセリングでは、当事者同士が互いの経験を共有し、共感し合うことで、心の安定や問題解決に繋がる可能性があります。ただし、ピアカウンセリングを行う際には、相手に寄り添い、一方的に意見を押し付けたり、指導的な立場になったりしないよう、常に相手を尊重することが大切です。
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障害福祉サービスにおけるピアサポート体制加算・実施加算とは
一部の障害福祉サービスを提供する事業所において、当事者や経験者を職員として雇用すると評価が高まる仕組みが2021年度の障害福祉サービス等報酬改定で新設されたピアサポート体制加算とピアサポート実施加算において導入されました。
障害者や経験者であるピアサポーターを配置することで、利用者のモチベーション向上や不安解消に効果が期待できるという考えから、ピアサポーターを配置している事業所を評価する制度が設けられています。この制度では、ピアサポーターが障害者ピアサポート研修を修了していることや、事業所内で独自の研修を実施していることなどが評価の対象となります。
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ピアサポート体制加算
単位 | 100単位 / 月 |
対象 | 計画相談支援、障害児相談支援、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援 |
要件 | ①障害者ピアサポート研修(基礎研修と専門研修)を修了した次の者をそれぞれ常勤換算で0.5人以上配置すること (a)障害者または障害者であったと都道府県または市区町村が認める者 (b)管理者または(a)の者と協働して支援をおこなう者 ②上記の者が障害者に対する配慮などに関する研修を従業員に対して年に1回以上実施する ③上記の者を配置していることを公表する |
経過措置 | 2024年3月末までは、障害者ピアサポート研修と同等の研修を修了した(a)者を常勤換算で0.5人以上配置している事業所が、評価の対象となります。 |
また、就労継続支援B型の事業所においても、上記と同様の体制のもとで支援をおこなった場合はピアサポート実施加算が行われます。「参考:厚生労働省」
障害福祉サービスを提供するうえでピアサポーターに期待されること
前述の通り、当事者が自身の経験を基にしたサポートを提供することで、利用者のモチベーション向上や不安軽減が期待されます。同時に、事業所内の他のスタッフ(ピアでない支援員)には、障がいの特性に関する説明や、それに基づいた効果的なコミュニケーション方法の提案なども重要な役割となります。
また、利用者とスタッフとの間に心理的な距離が感じられる場合には、信頼関係を築く手助けとなる瞬間も生じるでしょう。
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参考:こども家庭支援センター