近年、法制度の改正や社会的認知の広がりを受け、民間企業における発達障害者の雇用は急速に増加しています。しかし、採用活動や雇用後の安定就業面で課題を抱える企業も増えています。
発達障害者に対する偏ったイメージも依然として存在し、「コミュニケーションがとりづらい」「特定の分野で高い能力を持っている」といった固定観念が、職場での正しい理解や配慮を妨げている側面も否めません。
雇用を進めるためには、発達障害への理解を深め、採用や安定就業・定着化のための取り組みを取り入れることが求められています。
能力の凹凸が大きい発達障害のある方が個性を活かして安定した生活を送るためには、自分にあった仕事や働き方を選ぶことが大切とされています。
本コラムでは、発達障害の特性や民間企業での雇用動向、能力を発揮しやすい業務例を紹介するほか、採用時や就業におけるポイントを、実例をもとに紹介します。
- 自分に向いている仕事はあるのか
- 発達障害のある人の雇用状況はどのようなものか
- 就職を有利に進めるコツはあるのか
発達障害で就職・転職について悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
こちらも参考に:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介
参考:臨床心理士とは
発達障害とは
発達障害とは、脳機能の発達に関する障害です。生まれつき脳の働きに偏りがあり、それが様々な特性となって現れます。
発達障害の兆候は、種類によって1歳頃から現れ始めるケースが多く、成長と共に症状が目立たなくなる人もいれば、思春期頃に不安症状・うつ症状を合併したり、就職してから初めて障害を疑ったりする人もいます。
発達障害は「精神障害」に分類されており、「精神障害者保健福祉手帳」が発行されます。しかし、発達障害と精神障害は、障害が現れる時期に違いがあります。
- 発達障害は、生まれながらの先天的な脳機能の偏りによるもので、生涯続くことが多いです。
- 精神障害は、10代以降に、人生での心理的・外的な要因によって症状が引き起こされる場合が多いです。
発達障害には様々な種類があり、複数の障害が併存する人も珍しくありません。
主な発達障害は以下の3種類です。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD):コミュニケーションや社会的交流、想像力の欠如、こだわりが強いなどの特徴があります。
- 学習障害(LD):読む、書く、計算するなどの能力に困難があります。
- 注意欠陥多動性障害(ADHD):注意の持続が難しい、落ち着きがない、衝動的な行動をするなどの特徴があります。
発達障害は、適切な理解とサポートがあれば、社会生活を送り、個性を活かして活躍することができます。
参考:政府広報オンラインHP「発達障害って、なんだろう? | 暮らしに役立つ情報」
参考:国立障害者リハビリテーションセンターHP「発達障害とは」
ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)は、対人関係・コミュニケーションや、物事へのこだわりに特性がある発達障害です。
主な特徴は以下の通りです。
- 対人関係・コミュニケーション
- 場の空気や相手の気持ちを読み取ることが難しく、他者と関わることが苦手な傾向があります。
- 会話のリズムやタイミングが合わず、空回りしてしまうことがあります。
- 表情や声のトーンなど、非言語的なコミュニケーションを理解するのが苦手です。
- 一方的な話をしてしまったり、自分の興味関心のみに固執してしまったりすることがあります。
- こだわり
- 物事へのこだわりが強く、物の配置・行動の順番・独自のやり方に固執する傾向があります。
- 変化を極端に嫌がり、新しい環境や状況に慣れるのに時間がかかります。
- 興味や関心が限定的で、特定の分野に強いこだわりを持つことがあります。
- 独自のルールやルーティンにこだわり、それらが乱されると不安やストレスを感じます。
ASDは、人によって症状の程度や現れ方が様々です。 軽度な症状の場合、日常生活に支障なく過ごせる人もいれば、重度な症状の場合、介助が必要となる人もいます。
参考情報
書籍
- 発達障害の子どもがわかる本 (著: 吉田 文)
- 自閉症スペクトラム障害がよくわかる本 (著: 中村 格)
ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、集中したりじっとしたりすることが苦手で、考えるよりも先に動いてしまう特性がある発達障害です。
主な特徴は以下の3つです。
- 不注意
- 必要な情報を見落としがち
- 指示を聞き間違えたり、忘れがち
- 興味のないことはすぐに飽きてしまう
- 整理整頓が苦手
- 時間管理が苦手
- 多動性
- じっと座っていることが難しい
- 落ち着きがなく、そわそわする
- 必要以上に喋ってしまう
- 常に動き回っている
- 衝動的な行動をする
- 衝動性
- 考えずに行動してしまう
- 順番を待てない
- 自分の意見ばかり言ってしまう
- 危険なことを平気でする
これらの特徴は、人によって程度や現れ方が異なります。
- 不注意な特性が強く出る場合
- 授業や仕事に集中できない
- 忘れ物が多い
- よく物をなくす
- 多動性の特徴が強く現れる例
- じっと座っていられない
- 落ち着きがなく、そわそわする
- 必要以上に喋ってしまう
- 常に動き回っている
- 不注意・多動性の両方が強く出るケース
- 授業や仕事に集中できない
- 忘れ物が多い
- よく物をなくす
- じっと座っていられない
- 落ち着きがなく、そわそわする
- 必要以上に喋ってしまう
- 常に動き回っている
参考情報
LD(学習障害)
LD(学習障害)は、一般的に学習障害と呼ばれ、全般的な知的発達に遅れがないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のどれか、もしくは複数の能力において習得や実践に困難を感じる障害です。
LDの特徴は以下の通りです。
- 一般的な知能は平均的であるにもかかわらず、特定の学習能力に困難を抱える
- 困難を抱える能力は、人によって様々
- 複数の能力に困難を抱える人も多い
- 読み書きや計算などの学習に困難を抱えるため、学校生活や日常生活に支障をきたす場合が多い
LDは、生まれつき脳の機能に偏りがあることが原因と考えられています。
LDの症状は、人によって程度や現れ方が異なります。
- 教科書が読めない
- 算数が極端に苦手
- 漢字が覚えられない
- 文章を書くのが苦手
- 指示を理解するのが難しい
- 集中力が続かない
- 時間管理が苦手
参考情報
異なる障害が重なり合っていることも
発達障害は、単独で現れるだけでなく、ADHDとASDのように異なる障害が重なり合うケースも多く見られます。
そのため、「あの人はASDだから〇〇」「ADHDだから〇〇」という単純な見方では、その人の特性や困難さを正しく理解できないことが少なくありません。
さらに、発達障害の特性によってストレスや不安、失敗、ネガティブな影響などの外的な要因を受けやすく、二次障害としてうつ病や不安症などの精神障害を発症するケースも多く見られます。
二次障害の場合、発達障害単独の場合とは異なる治療方法や、特性や必要な配慮が必要になります。
発達障害のある人を理解し、適切なサポートを提供するためには、それぞれの障害の特性だけでなく、個人の置かれている状況や環境も考慮することが重要です。
こちらも参考に:発達障害の方に向いている仕事(一般雇用・障害者雇用)|活用できる支援機関をご紹介
参考:特定求職者とは?
発達障害が発覚して障害者雇用をしています。勤務を開始した頃はこんなキャリアが描けると思っていませんでした。
発達障害者の雇用状況
近年、発達障害の雇用を取り巻く状況は、法制度の整備と社会全体の意識改革により、大きく変化しています。
2016年に施行された障害者差別解消法と改正発達障害者支援法により、発達障害者への差別禁止と関係機関による連携支援が進められました。
そして2018年4月には、障害者雇用促進法の改正により、発達障害を含む精神障害者の雇用が義務化され、障害者雇用率(法定雇用率)の算定基準にも加えられました。
これにより、法定雇用率は民間企業の場合で2.0%から2.2%に引き上げられ、2021年3月の改正では2.2%から2.3%に再引き上げされました。
2024年には2.5%、2026年には2.7%へとさらに引き上げられることが決まっています。
令和4年 障害者雇用状況の集計結果
障害分類 | 雇用数(前年度比) |
---|---|
身体障害者 | 357,767.5人(0.4%減) |
知的障害者 | 146,426.0人(4.1%増) |
精神障害者 | 109,764.5人(11.9%増) |
これらの法制度の整備を受け、厚生労働省が5年に一度実施している「障害者雇用実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は82万1,000人に達し、このうち発達障害者は3万9,000人と、年々増加傾向にあります。
就業中の発達障害者の精神障害者保健福祉手帳の等級は3級が48.7%で最も多く、症状別では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」が76.0%と最も多いことが分かっています。
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法定雇用率が引き上げられた
厚生労働省の調査によると、障害別の雇用数は、身体障害者は減少傾向にある一方、知的障害者と精神障害者は増加傾向にあります。特に精神障害者の雇用数は大きく伸びており、前年度比11.9%増となっています。
発達障害者のみの雇用数は公表されていませんが、精神障害者雇用の伸びを踏まえると、発達障害者の雇用数も増加していると考えられます。
年齢階級別で見ると、身体障害者は55~59歳層が最も多く、50歳以上が全体の51.8%を占めています。これは、身体障害者に対する雇用が早期から進んだためと考えられます。
一方、発達障害者は30~34歳層が23.8%、20~24歳層が21.6%と、若年層の割合が高くなっています。これは、社会的認知の広がりや支援体制の確立により、医師の診察や手帳取得をする若年層が増えていることが考えられます。
発達障害の特性がある学生も増加
発達障害学生の増加と就職状況について、以下に書いていきます。
発達障害学生数の増加
- 独立行政法人日本学生支援s機構の調査によると、発達障害のある大学生・短大生・高専生の数は年々増加しており、2022年度には1万288人に達しました。
- 2018年度と比較すると約2倍に増加しており、増加傾向が続いています。
発達障害学生の就職状況
- 日本学生支援機構の調査によると、発達障害のある学生の卒業後の就職件数も増加傾向にあります。
- 2021年度の就職件数は554人で、2019年度と比較すると約3割増加しています。
背景要因
発達障害学生数の増加と就職状況の改善の背景には、以下の要因が考えられます。
- 発達障害への認知度向上:近年、発達障害への認知度が向上しており、診断を受ける人が増えていると考えられます。
- 大学側の支援体制強化:発達障害者支援法に基づき、大学などの教育機関においても発達障害者に対する支援が積極的に行われるようになっています。
- 企業の理解促進:企業における発達障害への理解が深まってきており、積極的に発達障害学生を採用する企業が増えています。
発達障害学生の増加と就職状況の改善は、今後も継続していくと考えられます。
大学や企業は、発達障害学生の特性を理解し、適切な支援を行うことで、学生が個々の能力を最大限に発揮できる環境を整備していくことが重要です。
参考情報
「強み重視の一般雇用」 と 「配慮重視の障害者雇用」
発達障害の特徴の一つは、能力の凸凹(デコボコ)です。得意な能力と苦手な能力が人によって大きく異なるという特徴があります。
就職活動においては、この凸凹を踏まえた2つの方法があります。
1. 自分のスキルや強みに焦点を当てて仕事を探す方法(凸を活かす)
一般雇用で、自分の得意な能力を活かせる仕事を探す方法です。高いスキルや専門性が求められる場合が多く、競争も激しい傾向があります。面接や採用試験では、コミュニケーション能力や協調性なども評価されます。
一般雇用で成功するためには、以下の点に注意が必要です。
- 医師の診断や心理検査、専門家による評価などを参考に、自分の強みや弱みをしっかりと理解する。
- 強みを活かせる職種や企業を積極的に 情報収集し、自己PRを準備する。
- 面接や採用試験では、自分の強みや個性を 自信を持って アピールする。
- 周囲のサポートを受けながら、苦手な部分を克服していく努力をする。
2. 障害への配慮を優先させて仕事を選ぶ方法(凹を目立たせない)
障害者雇用で、障害に配慮した 職場環境で働く方法です。一般雇用よりも競争が少なく、採用基準も比較的緩やかです。障害に理解のある 上司や同僚に囲まれた環境で、自分のペースで働くことができます。
障害者雇用で成功するためには、以下の点に注意が必要です。
- 自分の障害が仕事に どのような影響を与えるのかを理解し、必要なサポートを明確にする。
- 障害に配慮した 職場環境やサポート体制が整っている企業を選ぶ。
- 自分の得意な能力を活かせる 仕事を見つける。
- 周囲のサポートを受けながら、自信を持って仕事に取り組む。
どちらの方法を選択するかは、個人の特性や希望、医師の診断や専門家の評価などを総合的に判断する必要があります。
「一般雇用」では指摘されたり叱責されたりが多くなります。いわゆるメンタルが強いことが第一条件となります。プラス何らかの得意が業務で活かせることも条件となるでしょう。
特性ゆえの苦手さをチクチク指摘されることなく、安心した就業環境で働きたい人や失敗を繰り返したくない人は、障害に対する配慮を受けられる「障害者雇用」が良いと感じます。
自分に合った 職場を見つけることで、発達障害のある人もそれぞれの 能力を活かして 社会貢献していくことが可能とされています。
発達障害の凸凹と就職に関する情報は以下のサイトで詳しく 紹介されています。
-
政府機関
一般社団法人
独立行政法人
その他
- 全国の相談窓口
- 発達障害情報・支援サイト
- 書籍
- 「発達障害の子どもがわかる本」(著: 吉田 文)
- 「発達障害の大人:生きづらさの原因と対処法」(著: 星野 崇)
- 「発達障害の凸凹を活かす就活」(著: 石井 拓郎)
項目 | 一般雇用 | 障害者雇用 |
---|---|---|
面接–採用のポイント– | 会社 VS 自分 | 配慮 |
業務 | 障害/対策/配慮 | |
会社規模 | △会社規模が多い | 〇大企業が多い |
現実的に期待薄 | ×受けられる配慮 | ◎配慮あることが前提 |
本人次第・個人差大 | 本人次第・個人差大 | |
給与・所得 | 〇給与・所得 | |
昇進 | 社内外の競争や軋轢がある | △昇進による昇給機会は少ない |
安定雇用 | 〇雇用維持が前提 | ×安定雇用 |
キャリアアップ | 〇キャリアアップ | △基本なし(会社による) |
働きがい | 〇刺激・達成感・多彩さ | △まちまち(業務が単調で飽きる場合も) |
職場の居心地 | 競争下の人間関係 | ◎手厚い上司のフォロー |
こちらも参考に:休職期間満了による退職は解雇?それとも自己都合退職?注意点も解説
参考:被害妄想とは?
発達障害者のはたらき方
発達障害のある方のはたらき方としては、「一般採用枠」と「障害者採用枠」の2つの雇用枠が用意されています。
一般雇用の中で障害についてオープンにする場合とクローズにする場合がありますが、どちらの場合も障害者当人にとっては障害への配慮を受けにくいとされています。
一般雇用枠だと求人数が多く給与も高いなどのメリットもあるため、発達障害がある方のうちASDの診断がある方の約6割、ADHDの診断がある方の約8割が一般雇用枠での雇用で就業しているという調査結果もあります。
一般採用枠での就業。得意(凸 デコ)を活かす仕事・業務は?
発達障害の傾向によって得意とする仕事・業務は異なります。ASD傾向の場合は作業内容が固定化された型にハマったような仕事、ADHD傾向の場合はご自身の興味関心にあった上でミスや抜け漏れが目立たない仕事が良いでしょう。
ASD傾向の方に向いている仕事・業務
ASD傾向の発達障害の方の適職には、得意を活かせる仕事が多くあります。以下に、具体的な職種とそれぞれのポイントをまとめました。
1. 経理
-
- ルールやマニュアルに基づいて作業を進めることができる。
- 正確性が求められる仕事であり、得意を活かせる。
- 数字やデータを扱うことが好きな人に向いている。
- 一人で集中して作業することができる。
2. IT関係
-
- 論理的思考力や問題解決能力を活かせる。
- 新しい技術を学ぶことが好きな人に向いている。
- 一人で集中して作業することができる。
- 対人折衝が少ない仕事が多い。
3. 事務
-
- 決まった手順に従って作業を進めることができる。
- 正確性や丁寧さが求められる仕事であり、得意を活かせる。
- 一人で集中して作業することができる。
- 対人折衝が少ない仕事が多い。
ADHD傾向の方に向いている仕事・業務
ADHD傾向の発達障害の方の適職には、ユニークな発想を活かせる クリエイティブな仕事や、その場でやりとりが完結するような業務が得意な傾向があります。
以下に、具体的な職種とそれぞれのポイントをまとめました。
1. クリエイティブ関係
-
- 自由な発想や独創性を活かせる。
- 短時間で集中して作業できる。
- 新しいことに挑戦することが好きな人に向いている。
- 成果が目に見える仕事が多い。
2. 営業・販売
-
- 人とのコミュニケーションが好きな人に向いている。
- 短時間で結果を出すことが得意な人に向いている。
- 目標達成に向けて努力することができる人に向いている。
- 自分のペースで仕事できる環境を選ぶことが重要
3. ライター・編集者
-
- 文章を書くことが好きな人に向いている。
- 一人で集中して作業することができる。
- 自分のペースで仕事できる環境を選ぶことが重要
- 締め切りを守ることができる人に向いている。
4. 起業やフリーランス
起業やフリーランスは、ADHD傾向の発達障害の方にとって魅力的な働き方の一つです。しかし、得意を活かせるものの、営業や経理まで一人でこなさねばならない点では不向きな働き方です。
起業やフリーランスでの働き方を選ぶ場合は、自分の苦手をカバーしてくれる ビジネスパートナーや取引先、支援者との協力関係を築くことが何より重要です。
こちらも参考に:大人のADHDの話し方の特徴5つ | 会話が嚙み合わない・おしゃべりが止まらない。改善方法も紹介
参考:職業適性検査とは?
一般採用枠での就業。苦手(凹 ボコ)が目立つ仕事・業務は?
発達障害の方が苦手とする仕事・業務は、特性や程度によって様々ですが、いくつか 例を挙げることができます。
苦手とされる仕事・業務
- 電話応対:相手の声や表情などの非言語情報を理解するのが苦手な場合、電話応対は難しいと感じることがあります。
- 接客:お客様の気持ちを察知したり、臨機応変に対応したりすることが苦手な場合、接客は難しいと感じることがあります。
- 営業:顧客との交渉やプレゼンテーションが必要となる場合、苦手と感じることがあります。
- 書類作成:細かい 誤字脱字やミスが許されない仕事は、苦手と感じることがあります。
- SE(システムエンジニア):複数の 案件を同時並行で進める必要があり、調整やコミュニケーションが求められる仕事は、苦手と感じることがあります。
- プロジェクトマネージャー:プロジェクト全体の予算や進行工程、人の管理を行う必要があり、責任が重く、ストレスが多い仕事は、苦手と感じることがあります。
こちらも参考に:過集中とは?メリット・デメリット、特徴や対策・発達障害(ADHD)との関係性
参考情報
特例措置により雇用が増える可能性も
2018年4月の障害者雇用促進法改正により、発達障害を含む精神障害者の雇用促進に向けて、特例措置が設けられました。
特例措置の内容は以下の通りです。
- 週20時間以上30時間未満で雇用開始から3年以内の精神障害者は、短時間労働者であっても1人として障害者雇用率の算定対象となります。
- 精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内の精神障害者も1人として算定対象となります。
この特例措置は2022年度末までの期間限定とされていましたが、2023年4月以降も継続されることが決定しました。
さらに2024年4月からは、
障害者雇用の算定対象となっていなかった「週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度の身体障害者・知的障害者及び精神障害者」も実雇用率の算定対象に加えられることになりました。
週20時間以上30時間未満の労働で
雇用開始から3年以内 | 0.5人としてカウントされていた、短時間労働の精神障害者も”1人”としてカウント |
精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内 |
これらの特例措置の延長と算定対象の追加により、発達障害を含む精神障害者の雇用機会が拡大することが期待されます。
特例措置のメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 精神障害者を初めて雇用する企業でも、まずは短い労働時間で雇用することが可能となります。
- 精神障害者の特性を理解し、必要な配慮や管理手法を整えるための時間を確保することができます。
- 精神障害者が職場に定着しやすい環境を整備することができます。
参考情報
大きく異なる「一般雇用」と「障害者雇用」の就活
障害者雇用で働くためには、障害者手帳の取得が必要です。手帳の申請には医師の診断書が必要で、初診から6ヶ月以上経過してから申請可能となります。
採用プロセスも一般雇用と異なります。一般雇用では書類選考と面接が主流ですが、障害者雇用では実習が重視されます。
実習期間は1週間以上の場合が多く、実際の業務遂行能力だけでなく、コミュニケーション能力や障害に対する企業の対応も評価されます。
以下に、障害者雇用の応募から入社までの流れをまとめました。
1. 障害者手帳の取得
- 初診から6ヶ月以上経過する必要があります。
- 医師の診断書が必要です。
2. 求人情報の収集
- ハローワークや障害者職業センター、企業のホームページなどで求人情報を収集します。
- 求人情報には、必要な資格や経験、勤務地などが記載されています。
3. 履歴書の作成
- 一般の履歴書に加えて、障害に関する自己PRや配慮事項などを記載した履歴書を作成します。
4. 応募
- 履歴書と職務経歴書などを企業に送付します。
- オンラインで応募できる場合もあります。
5. 選考
- 書類選考に通過すると、面接に呼ばれます。
- 面接では、職務経歴や障害に関する質問を受けることがあります。
6. 実習
- 面接に通過すると、実習を受けることになります。
- 実習では、実際の業務を体験します。
7. 内定
- 実習に合格すると、内定が出されます。
8. 入社
- 必要書類を提出し、入社します。
- 最初はほとんどの場合アルバイト、契約社員などの有期雇用となります。
障害者雇用の応募には時間と準備が必要ですが、積極的にチャレンジすることで、自分に合った仕事を見つけることが可能です。
参考:認知矯正療法とは?
発達障害者の就労支援
ここではハローワーク・地域障害者職業センターなどで行っている障害者の就業サポートについてご紹介します。
ハローワークのチーム支援
「チーム支援」[PDF形式:123KB]による就職の準備段階から職場定着までの一貫した支援を実施しています。(すぐに就職したい人向け)
障害者を一定期間(原則として3か月)試験的に雇用することによって適正や能力を見極め、求職者と事業主の相互理解を深めて継続雇用への移行のきっかけとしていただくことを目的としています。(雇用主・すぐに就職したい人向け)
発達障害者雇用トータルサポーター
発達障害者雇用トータルサポーターは、ハローワークに配置されている専門相談員です。発達障害のある求職者に対しては就職活動に向けた支援を行い、事業主に対しては発達障害者の就労における課題解決のための相談・援助を行います。
雇用トータルサポーター(大学等支援分)による支援[PDF形式:184KB]
雇用トータルサポーター(学生向け)
ハローワークでは、障害特性に応じた就職支援を必要とする学生や企業に対して、専門的な支援を提供しています。就職準備段階から職場定着まで相談対応に係る助言を行うほか、企業等に対して、雇用管理に関する助言や定着支援等を実施します。
雇用トータルサポーター(大学等支援分)による支援[PDF形式:184KB]
地域障害者職業センターにおける職業リハビリテーション
ハローワークとの連携して地域障害者職業センターでは、職業評価、職業準備支援、職場適応支援等の専門的な各種職業リハビリテーションを実施しています。発達障害者に対する専門的支援を実施しています。
参考:地域障害者職業センター
職業能力開発関係
訓練内容は、一般の職業能力開発校、障害者職業能力開発校、委託訓練の3種類に大きく分けられます。
1. 一般の職業能力開発校における発達障害者対象訓練
一般の職業能力開発校では、発達障害の特性に配慮した職業訓練を実施しています。訓練内容は、事務、情報処理、ものづくりなど、幅広い分野にわたります。
2. 障害者職業能力開発校における発達障害者対象訓練
障害者職業能力開発校では、発達障害の方々のための専門的な職業訓練を実施しています。訓練内容は、発達障害の特性を活かせる仕事に特化しており、コミュニケーション能力や社会性の向上などにも重点を置いています。
3. 障害の態様に応じた多様な委託訓練
居住地域の企業や社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等と連携し、障害の態様に応じた多様な委託訓練を実施しています。訓練内容は、地域のニーズや求人状況を踏まえて設定されており、自分に合ったスキルを習得することができます。
ジョブコーチ支援
障害者の職場適応を円滑に行うため、職場にジョブコーチを派遣して、きめ細かな人的支援を行っています。
ジョブコーチ支援には、以下の3種類が存在します。
①地域障害者職業センターに配置するジョブコーチによる支援
②就労支援ノウハウを有する社会福祉法人など
③事業主が自らジョブコーチを配置し、ジョブコーチ助成金を活用して支援
障害者就業・生活支援センター
雇用、保健、福祉、教育等の地域の関係機関ネットワークを形成して、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な相談・支援を行う。
こちらも参考に:ハローワークの障害者求人探す方法。相談窓口の活用
発達障害者を採用するときの選考のポイントは
発達障害者の雇用は、近年ますます注目されています。しかし、発達障害者を初めて雇用する企業では、採用や定着について不安を感じることもあるでしょう。
平成30年度障害者雇用実態調査によると、発達障害者の平均勤続年数は3年4カ月で、身体障害者や知的障害者と比べて短くなっています。発達障害者の安定就業・定着化を図るためには、採用の段階から適切な対応をすることが重要です。
発達障害者の採用・定着を成功させるためには、面接や実習を通じて、以下の3点を確認することが大切です。
1. 自分の障害を理解し、適切に対処できるか
発達障害者が安定就業するためには、自分の障害を正しく理解し、適切に対処することが重要です。面接では、障害の特性や強み・弱み、必要な配慮について説明できるかどうかを確認しましょう。
2. 求める職務能力を備えているか
発達障害者であっても、一般の求職者と同様に、求められる職務能力を備えている必要があります。面接や実習では、職務遂行能力を評価しましょう。
3. 障害に対する理解や自己管理能力があるか
発達障害者が長く働き続けるためには、障害に対する理解や自己管理能力が重要です。面接では、障害と仕事の両立に向けた意欲や自己管理能力を確認しましょう。
発達障害者の雇用は、企業にとっても社会にとってもメリットが大きいものです。上記のポイントを参考に、発達障害者の能力を活かせる環境を整え、共に成長できる職場を作っていきましょう。
発達障害者の雇用課題と職場で配慮すべき点
発達障害のある社員の能力を最大限に引き出し、職場定着を促進するためには、個々の特性に合わせたマネジメントと配慮が重要です。
2015年に高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施した調査によると、発達障害のある社員が望む職場への要望は以下の通りです。
- 「分かりやすい指示をしてほしい」
- 「仕事が変更になる時は、前もって伝えてほしい」
- 「仕事の優先順位を示してほしい」
特に、指示や対応の方法に関する要望が多く寄せられています。
具体的な要望としては、以下のようなものがあります。
- 「あれ」「これ」等のあいまいな言葉ではなく「どこのそれ」など詳しく指示してほしい
- マニュアルを一度ももらったことがないので変えてほしい
- 聞く人によって違うことがあるからわかりにくい。指示の担当を決めてほしい
発達障害の特性は人によって異なりますが、一般的に以下の点に注意してマネジメントを行うと効果的です。
1. 具体的な指示と明確な情報提供
- 「やるべき仕事、理由、手順、役割分担」を明確にする
- マニュアルや図などを活用し、視覚的にも分かりやすく伝える
- 変更がある場合は前もって伝えておく
- 業務の範囲、優先順位、一日の作業量などを予め決めておく
2. コミュニケーションの促進
- 思わぬところで悩んでいることがあるので、積極的にコミュニケーションをとる
- 質問や意見を言いやすい環境を作る
- 話を聞くときは集中して聞き、共感を示す
- 話が長くなったり脱線したりしていることを指摘し、本人に伝える
3. ルールと評価の明確化
- ルールや決まりごとは大切にする
- 良い評価をすれば、良い仕事に繋がる
- 注意や指示は遠慮なく、落ち着いて、具体的に伝える
4. 個々の特性に合わせた配慮
- 音や光に敏感な場合は、配慮する
- 集中しやすい環境を整える
- 得意なことを活かせる仕事を与える
- 苦手なことは無理強いせず、サポートする
5. その他
- 発達障害に関する理解を深めるための研修などを実施する
- 発達障害のある社員の家族や支援者と連携する
- 社内で情報共有の体制を整備する
発達障害のある社員は、適切なサポートを受けることで、高い能力を発揮し、職場に貢献することができます。企業は、個々の特性を理解し、強みを活かせる環境を整えることで、ダイバーシティの推進とイノベーションの創出に繋げることができるでしょう。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の方のための就職支援ナビ」
こちらも参考に:非自殺的な自傷行為について
まとめ
近年、発達障害のある方の雇用状況は、法改正や社会情勢の変化に伴い、大きく変化しています。企業にとっても、発達障害のある方の特性を理解し、強みを活かせる環境を整えることは、ダイバーシティの推進とイノベーションの創出に繋がり、大きなメリットがあります。
求職者にとっても、障害を理由に選択肢を狭める必要はありません。最近では、障害者雇用でも選べる仕事が大幅に増え、個々の特性に合わせた仕事に長期的に従事できる環境が整いつつあります。給与面でも評価が高く、望みがあればキャリアアップも可能です。