障害年金は通常、書類審査のみで支給・不支給が決まる仕組みになっています。審査に使用される書類は主に診断書と請求書になりますが、その中でも大きなウェイトを占めると言われている、障害年金における診断書の注意点について今回は説明して行こうと思います。
診断書について押さえておくべき3つの注意点
障害年金の申請に使う診断書について、押さえておくべき注意点は以下の3つです。
以下で説明していきます。
社労士事務所に相談してから、医者に診断書作成を依頼する
医師に診断書を作成してもらう前に社労士事務所に相談に行きましょう。障害年金の受給要件を満たしているか確認しつつ、医師に通りやすい診断書を書いてもらえるようにお願いしてもらえる場合もあるからです。
「なぜ、相談にいくのは年金事務所でないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
年金事務所での相談内容は、具体的な内容がデータベースですべて記録・保存されることになっていますので、初診日の修正などが困難になってしまうからです。年金事務所での相談は、うかつな発言が命取りになるケースがあります。
正直なところ、未成年の時に精神科Aに通っていたとしても、就職している期間で精神科Bに通い出していた場合は精神科Bを初診の病院として認定することが可能です。(精神科Aで自立支援や手帳など取ってしまった場合は記録が残ってしまっている可能性がありますので難しいでしょうが、社労士さんに相談してみてください。)
ところが、年金事務所に相談に行ってしまったばかりに障害厚生年金ではなく、収入上限付きの障害基礎年金になってしまうことは十分にありえます。
こちらも参考に:リワークプログラム・リワーク支援(心療内科・精神科)とは | メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰
診断書の種類、提出枚数と有効期限を押さえる
障害年金の請求には診断書の添付が必要です。診断書には以下8種類の様式があります。
- 眼の障害用
- 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用
- 肢体の障害用
- 精神の障害用
- 呼吸器疾患の障害用
- 循環器疾患の障害用
- 腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用
- 血液・造血器・その他の障害用
この記事を読んでいらっしゃる方は4番に該当する方が多いと思いますが、障害年金の請求には、この8種類の診断書の中から障害の状態を最もよく表すことのできる様式を使用します。
複数の部位に障害があって、それぞれについての診断書を用意することによって、併合認定(加重認定)されて等級が上がる場合もあります。詳しくは「併合等認定基準」をよく読んで併合認定が認められそうな場合は複数枚の診断書の提出を検討します。
8種類の診断書の中で選ぶ診断書によっては、障害等級や年金額にも影響を及ぼす場合もありえます。医師、社労士と話して慎重に検討してください。
診断書の提出枚数や提出期限は障害年金の請求方法によって異なります。以下の3種類の中から検討してください。
認定日請求
認定日請求とは「障害認定日に障害等級に該当する障害の状態である場合に請求すること」であり、最もポピュラーな請求方法です。
認定日請求を行う場合の診断書は1枚で、障害認定日から3ヶ月以内の診断書が必要です。診断書の有効期限は1年未満となっています。診断書の作成日ではなく、障害認定日から1年未満であることに注意しましょう。
障害認定日とは次のどちらかを指します。
① 請求する傷病の初診日から起算して1年6ケ月経過した日
② その日までにその傷病が治癒した場合は、その治った日(症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)
参考:障害認定日について詳しく
遡及請求の場合
訴求請求とは「過去に遡って(さかのぼって)障害年金の請求をすること」です。
遡及請求を行う場合の診断書は2枚必要です。1枚は障害認定日請求と同じ「現症の診断書」、もう1枚は直近に作成してもらった診断書が必要になります。
遡及請求は「障害認定日より1年以上経過した状態を過去の分まで遡って障害年金を請求する」事になるので障害認定日時点の診断書と直近の診断書の2枚が必要になります。
有効期限について
障害認定日の時点で作成してもらった診断書:なし
直近に作成してもらう診断書:現症日から3ヶ月以内
診断書の作成日と現症日は非常に混同しやすいため、気をつけましょう。
参考:障害年金の遡及請求とは?
事後重症による請求の場合
事後重症請求とは「請求の時点から、障害年金の受給を求める方法」であり、遡及請求と異なり過去にさかのぼる請求方法ではないため、直近の診断書のみで請求が行えます。
事後重症請求は何らかの事情(『障害認定日』の診断書が入手困難など)があり、認定日請求が難しい場合などに使用されます。事後重症による請求の場合は、請求日以前3か月以内の現症の診断書1枚が必要です。
こちらも参考に:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介
初めて1級・2級による請求の場合
「障害等級2級に該当しない程度の障害(前発障害)があった方が、新たに別の障害(後発障害=基準障害)が生じて、それぞれの障害を併合した状態だと、2級以上の等級に該当する場合」のことを「初めて1級・2級による請求」と言います。
この場合は65歳の誕生日の前々日までの請求が可能です。
この場合の診断書は「請求日以前3か月以内のもの」と「現症」のものの2枚が必要です。
20歳前傷病による障害基礎年金の場合
初診日が20歳になる前にある障害年金のことを「20歳前傷病による障害基礎年金」と呼びます。この場合の障害認定日は「20歳の誕生日の前日 or 初診日から1年6か月後」のいずれか遅い方になります。知的障害の場合も同様です。
障害認定日から1年以内に請求する場合
障害認定日の前後3か月以内(6か月間)の現症の診断書1枚が必要です。
障害認定日から1年以上たっている場合
障害認定日の前後3か月以内(6か月間)の現症のものと請求日以前3か月以内の現症のものの2枚が必要です。
こちらも参考に:生活福祉資金貸付制度の審査基準と返済免除について徹底解説
診断書の有効期限まとめ
請求方法 | 障害認定日時点での有効期限 | 直近の有効期限 |
認定日請求 | 障害認定日から1年未満 | – |
遡及請求 | 有効期限なし | 現症日から3ヶ月間 |
事後重症請求 | – | 現症日から3ヶ月間 |
初めて1級・2級による請求 | 有効期限なし | 現症日から3ヶ月間 |
20歳前傷病による障害基礎年金 | 有効期限なし | (現症日から3ヶ月間) |
診断書を受け取ったら必ず確認する
医師から診断書を受け取ったら、社労士が助言したポイントが反映されているのか確認しましょう。病院によっては「封を開けずに請求してください」と言われることがあるようですが、封を開けて確認する権利がありますので心配いりません。
内容にご自身の障害の状態と食い違う点がないか、記入の抜け・漏れ・明らかな誤りなどがないかを社労士と共に確認しましょう。場合によっては医師に書き直してもらう必要もあります。
こういった場合にも社労士が活躍してくれるため、当サイトでは社労士を入れての請求をおすすめしています。
まとめ
筆者も未成年の時に精神科に行ったことがありましたが、「そちらではなく成人した以降の精神科を初診にしましょう」と言って受給させてくれた、当時の社労士さんには感謝しています。
フルタイムで働いていることもあり、障害年金は卒業しましたが、当時の自分とって貴重な生活資源でした。社労士さんを選ぶポイントとしては「病院に付き添って医師と交渉してくれること」が一つのポイントになるかと思います。