誰にとっても、親は特別な存在です。
子どもに悪影響を与える親
このカテゴリには以下のような行動が当てはまります。
「毒親」という俗語に明確な定義があるわけではありませんが、一般的には「子どもの毒になる親」のことを略して「毒親」と呼んでいます。
多くの場合は、子どもが小さいうちから毒親による悪影響が及び続け、過干渉や過保護、過度な支配・管理、価値観の押し付けなどによって子どもに悪い影響を及ぼしてしまいます。
ほとんどのケースでは子どもが小さい頃から毒親は毒親であり、子どもが成人してから親が毒親になるケースは珍しいでしょう。
子どもが自分の親が毒親だと気づくのはある程度成長してからということが多いもので、成人してからというケースが多くなっています。そのため、子どもは自分自身の性格についても悩み、「自分がこうなったのは毒親のせいだ」と考え、二重の苦しみを抱えてしまうこともあります。
その一方で子どもが成人してからも毒親と気付かないケースもあり、その場合、ある意味親子で「共依存」の関係となっている可能性もあります。どちらにしても、健全な親子関係とはいいがたいので、注意が必要です。
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子どもを支配(コントロール)する親
子どもの意見やプライバシーを尊重せず、命令が多いタイプの親。常套句は、「お前のために言っている」「産んでやったことに感謝しろ」「誰が食わせてやっているんだ!」など。中には「一見したところは良い親」もいますが、実は「愛情で子どもを支配するケース」だったりするので要注意です。
勉強に習い事、学校生活から友人関係、身につけるものや読むもの、聴くもの、食べるものまでをことごとく管理され、就職にも大きく関与してくるでしょう。
異性関係や結婚生活、出産と孫育てまでも口を出し、思い通りにしようとし、どこまでもついてくる。
子どもが従順で、自分の期待に応えれば機嫌がよく、そうでなければ厳しい言葉で責め、何らかの(精神的または物理的な)ペナルティが課されます。
「だって、心配なのよ。あなた◯◯だから」「あなたは◯◯できないから」。これらは言霊となって、子どもをいつまでも「できないまま」「心配なまま」に縛り付ける。言葉の持つ呪いは恐ろしい。「あなたはできない」と言われて心を折られ続ける日々を育った子どもは、親の言葉を疑わず、自分には母親の手助けが必要なのだと信じる。「支配—被支配」構図のできあがりだ。
その特徴は「過干渉」という言葉に集約されるでしょう。
子どもたちは自分が親となったとき、子育てするなかで気づいていくのです。「自分と親の関係は、何かおかしい」。自分の目の前に広がる、いま目にしている世界は、自分がそう教え込まれ信じてきた世界と違う姿をしている。本来だったら思春期に徹底的に反抗して「きちんと崩壊しておくべきだった」関係。その異常性に大人になってから気づいた人たちの驚きは、やがて苦い涙を伴う深い憎しみとなって、「老いゆえにさらにのしかかってくる」毒親たちに向けて鋭く投げつけられるのです。
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子どもに依存する親
子どもの前で泣いたり、むやみに謝ったりする親。 「死にたい」「寂しい」「~がつらい」といった言葉(不安)をよく口にします。 「面倒見の良い子ども」として「親孝行を強制する」パターンも。 子離れ(親離れ)ができない「友達のような親子関係」を形成する例もあります。
「せっかく離れることができたのに、母からの電話が絶えません」 辛い生活から早く抜け出したいと、逃げるように嫁いだのに、実家の母親からは「あれを買ってきてくれ」「ここを直してくれ」と毎日のように電話がかかってきます。精神的に追い詰められています。 このように結婚などで一度、家庭の外に出たのにもかかわらず、依存してくる親に苦しめられているという方は少なくありません。 そして、そのほとんどが母親と娘のあいだでの依存関係となっています。
・どうせ私はひとりだから…
・私がどうなってもいいのね?
・なにかあったら、あなたのせいよ 弱い人間、非力な人間と自らをさげすんで、自分は弱々しい存在であるとアピールしてくる
のが、この親の特徴です。
子どもを虐待する親
肉体的な暴力や育児の放棄、放任(無関心)に加えて、「お前はブスだ」「頭が悪い」「生まなければよかった」といった言葉による虐待も含まれ、これは精神的な暴力を構成します。さらに、性的な虐待やセクハラ、モラハラ、脅し、無視、経済的な虐待(十分な食事を与えない、親だけが贅沢をする)なども含まれます。
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毒親の特徴
毒親は親子関係の悪化だけでなく、子どもの人生全体にも悪影響を及ぼします。あなたが抱える不安や苦悩について、以下のチェックリストで自己診断してみましょう。次に、毒親に育てられた人の特徴について見ていきます。
■自分が一番注目されていないと気が済まない。
■感情が急激に変化する。
■大げさに芝居がかった言動をする。
■身体的な見た目を過剰に気にする。
■常に励まされ、承認されたがる。
■批判や否定に過敏。
■すぐにイライラする。
■向こう見ずな判断をする。
■人間関係を維持できないか、人間関係が浅いか、まがい物。
■注目を得るために自殺をほのめかす、またはくわだてる。
■実績や才能を誇張する。
■自分のほうが優れていると思い込んでいる。
■会話を独占する。
■えこひいきや絶対的な追従を期待する。
■他人を利用する。
■嫉妬深く、他人を貶める。
■傲慢または横柄な態度。
■特別扱いを要求する。
■感情と態度を制御できない。
■ストレスにうまく対処できないか、変化に順応できない、またはその両方。
■皮肉屋で辛辣。
■消極的で無力な人間を装い、大人としての責任を逃れる。
■捨てられることを極度に恐れる。
■悲観的またはネガティブな人生観。
■1人でいることを嫌う。
■善悪を軽視する。
■何度も嘘をついたり騙したりして他人を利用する。
■他人に対して冷淡かつ冷笑的で、他人をないがしろにする。
■自分の利や快楽のために、人をたぶらかしたり策を弄したりして他人を操る。
■極端に独善的。
■犯罪行為など、警察沙汰を繰り返し起こす。
■脅迫や詐欺などで他人の権利を繰り返し侵す。
■他人への共感性に欠け、他人を傷つけることに罪悪感を覚えない。
■自分の言動が悪い結果に繋がることを予測したり、その経験から学ぶことができない。
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毒親への対処法
まずは「毒親に育てられた」という自覚を持つ
復讐はしない
親を変えようとしない
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「絶縁」するのではなく「疎遠」になる
毒親に対処する方法として、「絶縁」を推奨する専門家も多くいますが、手始めに「疎遠になる」ことからスタートしてみましょう。
心理的・物理的な距離を保つことで、毒親から「解放」されるのです。
程よい距離を保つだけで、「親を見限った悪い子」といった罪悪感に悩まされず、依存や支配からも解放されます。
距離の取り方(疎遠になる方法)は人それぞれ
老後の面倒は見ない
日本は幸いにも高齢者を優遇する高福祉国家であり、あなたが面倒を見なくても、国や自治体が親御さんの老後をケアしてくれるでしょう。そのため、「親の老後は子どもが面倒を見なくてはならない」という日本特有の価値観を重視する必要はないでしょう。
毒親に関しては、そもそも「親孝行を請求する権利がない」のではないでしょうか。
「普通の家庭」で育った子供にのみ適用される一種の「建前」に過ぎません。あなたが「普通の家庭」で育っていないのであれば、普通のことをする必要はありません。
そのため、毒親にとっては特に、「親孝行」にこだわる必要はなく、あなた自身の人生を健全に歩んでいくことが優先されるべきです。
参考:高福祉国家とは?
毒親を「許す」必要はない
あなたが親から距離を置く過程で「過ち」に気づき、謝罪や反省を試みる親御さんもいるかもしれません。
「確かに私の育て方が悪かった」「今後は言動を改めるから、戻ってきてほしい…」
これらは一見心のこもった反応ですが、謝罪や反省を経ても、親子関係が改善する例は(残念ながら)それほど多くないのが実情です。
時に毒親は、子を離さないように同情を誘ったり、罪悪感に訴えたりします。
こうした行動は親子関係に新たな葛藤や煩悶を招き、心からの謝罪や反省でさえも子どもを苦しめる凶器となり得るのです。(ただし、毒親にはその自覚がないこともあります)
毒親を許し、相手の要望に沿う必要はありません。現在に至るまで、あなたは親の過干渉や支配に苦しんできました。
これからは自分を最優先にし、人生における「優先順位の見直し」を行うことが、毒親からの卒業となります。親の都合に合わせて生きることはもうやめましょう。
多少なりとも「余力」が生まれたら、その後に改めて親子関係を考えてみましょう。親を「許す」ことはそれからでも十分に可能です。
参考:過干渉とは?
毒家族と健全な家族の違い
毒親卒業対処法まとめ:「ほどよい母親」とは?
小児精神科医であるウィニコット博士は、「発達段階理論」の中で、「Good enough mother」=”ほどよい母親”という概念を提唱しています。
これは、適度な心身の世話を通じて、快適な環境と、存在としての恒常性を提供する母親を指します。簡単に言えば、普通のよい母親のことです。博士は「完璧とはいえないお母さんの子が、まずまずスクスクと育っていくことができるのは、そこには十分な『ほどほどによい子育て』があるからだ」と述べ、子育ての絶妙なバランスが重要であると指摘しています。
子どもに過度に没頭せず、頑張りつつも過度に頑張り過ぎない子育て。これが、子どもにとっても居心地の良い環境です。
これまで、日本では母親が自分を犠牲にし、子どもや家族のために全力を尽くす姿が「よい母像」とされてきました。しかし、「いい子」を育てる「お母さん」が社会的に賞賛され、度を越した母親の葛藤も「頑張ってるわね」と評価され、精神のバランスが崩れれば「頑張りすぎて可哀相に」と慰められることが、子育てに没頭し、生きがいとする母親を生み出す背景であったかもしれません。
子育ての目標は、子どもが自分に必要な人間関係を築き、親がいなくても自立して生きていけるようになることです。子どもには独自の人生があり、その事実を尊重していかなければなりません。
参考:発達段階理論とは?
参考:ウィニコット博士とは?
毒親問題が深刻な悩みなら専門的治療も検討を
毒親の子どもは、親から受けた虐待やネグレクトによって、さまざまな精神的な問題を抱えることがあります。複雑性PTSDや解離性障害などの精神疾患を発症してしまうケースも少なくありません。
「治療の第一歩は、自分の置かれている状況を理解することです。」
毒親の子どもは、親の虐待やネグレクトが原因で、自分の感情や行動をコントロールすることが難しいことがあります。そのため、まずは自分の感情や行動を客観的に見つめ、どのような問題があるのかを理解することが大切です。
治療の第二歩は、専門的なサポートを受けることです。精神疾患を発症している場合は、医療機関やカウンセリング・ルームなどで専門的な治療を受けることが必要となります。治療としては、トラウマになってしまった記憶を過去の出来事にしていくEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、自分の感情をコントロールし、人間関係のスキル等を学んでいく弁証法的行動療法などがよいでしょう。
参考:弁証法的行動療法とは?
参考:認知的技能訓練とは?
治療の第三歩は、親との関係を整理することです。毒親の子どもは、親との関係を断ち切ることが難しいことがあります。しかし、親との関係をそのままにしておくと、自分の人生を生きていくことが難しくなります。そのため、親との関係を整理し、適切な距離を保つことが大切です。
「毒親の子どもが抱える問題は、決して一人で抱え込まないでください。」適切な治療やサポートを受けることで、問題を解決し、自分らしい人生を歩むことが可能です。
具体的な相談先
「毒親問題、親子関係に深刻な悩みがあるけれど、まずどのような行動を起こしたらよいかわからない」という方は、以下のような相談先を活用してみてもよいでしょう。
- 厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」
- 厚生労働省の「SNS相談」
これらの相談先では、専門の相談員が、あなたの話をじっくりと聞いて、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。
まとめ
毒親の子どもの治療は、長期間にわたって継続することが大切です。しかし、適切な治療やサポートを受けることで、問題を解決し、自分らしい人生を歩むことが可能です。
まずは、自分の置かれている状況を理解し、専門的なサポートを受けてみましょう。
に快適な環境と安定感を提供する母親を指します。
これは、普通の良い母親のあり方を象徴しています。博士は「完璧でない母親でも、ほどほどによい子育てがあれば子供は十分に成長できる」と述べ、子育ての絶妙なバランスの大切さを強調しています。
子どもに過度に没頭することなく、頑張り過ぎない子育てが、子供にとって居心地の良い環境を生み出します。これまで、日本では母親が自分を犠牲にし、家族のために全力を尽くす姿が「よい母像」とされてきました。
しかし、「いい子」を育てる「お母さん」が社会的に賞賛され、度を越した母親の葛藤も「頑張ってるわね」と評価され、精神のバランスが崩れれば「頑張りすぎて可哀相に」と慰められることが、子育てに没頭し、生きがいとする母親を生み出す背景かもしれません。
子育ての目標は、子どもが自分に必要な人間関係を築き、親がいなくても自立して生きていけるようになることです。子どもには独自の人生があり、その事実を尊重していくべきです。
こちらも参考に:精神科訪問看護(MHSW : 旧PWS)でできることは?サポート内容や具体的な事例をご紹介!
参考:二次障害とは?
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