休職期間満了による退職や解雇とは?
休職期間が満了した際に従業員との雇用関係を終了させることは、休職期間満了による退職または解雇とされます。
多くの企業では、病気やけがなどで労働能力を一時的に失った従業員に対応するため、一定期間の休職制度を設けています。しかし、従業員が休職期間内に職務復帰できない場合、就業規則に基づき雇用関係を終了させる措置が取られることがあります。
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具体的な規則には、次の2つのパターンが見られます。
この就業規則により休職中の従業員との雇用関係を終了させるのが「休職期間満了による退職あるいは解雇」です。
そして、「休職期間満了による退職あるいは解雇」において、最も深刻な問題は、従業員が当該処分が不当であると主張し、訴訟に発展する可能性があるということです。
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休職とは
休職は、病気や怪我、その他の理由により労働者が一時的に労務を提供することができないか、不適当である場合に、使用者がその労働者に対して、労働契約を維持しつつ労務の提供を一時的に免除または禁止することを指します。
休職の理由は多岐にわたりますが、業務外の疾病に罹患し、労務に従事できない労働者に対する一定期間の「労務提供免除」を指す場合、それは「私傷病休職」と呼ばれます。
私傷病休職の制度は企業の自由であり、企業の文化や規模などによって異なります。休職期間は、勤続年数に応じて変動する企業も多く、数ヶ月から数年にわたる場合もあります。
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休職期間満了後の扱い
休職期間満了時に、休職事由が消滅していれば、労働者は通常復職することになります。しかし、休職事由が解消されていない場合、多くの場合、就業規則には自動退職又は解雇となる旨の規定が明記されています。
就業規則上、自動退職とされている場合、特段の使用者の意思表示が必要なく、労働者は休職期間満了をもって退職と見なされます。
一方で、就業規則上、解雇とされている場合、使用者は解雇の意思表示をしなければなりません。この際、解雇制限、解雇予告、解雇権濫用法理の規定が適用されることがあります。
休職期間中に休職事由が解消された場合、通常は復職が可能ですが、復職の可否に関する判断が争点となるトラブルが増加しています。トラブルを未然に防ぐためにも、就業規則には復職の手続きを明確に規定し、その手続きに基づいて復職の可否を判断することが必要です。
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休職期間満了における解雇や退職の5つの注意点
ここでは、具体的に休職期間満了における解雇や退職に関して、抑えるべき注意点を詳しくご紹介します。
① 不当解雇トラブルにならないようにする
不当解雇トラブルを防ぐためにまずおさえておくべきポイントをご説明します。
◆休職期間が満了までに復職できない場合の解雇や退職について就業規則へ記載されている場合
多くの裁判例では「退職扱いあるいは解雇は適法」と判決が出ている
ただし、退職処分の適法性は、休職期間の所定がどの程度であるかによってのみ決定されるものではありません。休職制度は法的に規定されたものではなく、企業が自主的に導入する任意の制度ですので、休職期間を3か月程度に設定している企業も多く存在します。
適法性は、休職期間の長さではなく、復職が可能かどうかの判断が適切に行われたかに依存します。
しかし、退職強要やセクハラ、パワハラ、長時間労働、などの影響で精神疾患で休職となった場合は、例外になります。
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【例外】精神疾患で休職になった場合
このようなケースでは、休職期間が終了した際の退職処分や解雇が「不当解雇」とされる可能性があります。
休職制度は、業務に起因しないケガや病気を理由とする私傷病休職を認める制度であり、業務に起因する休業はこれとは異なり、法律による規制が適用されます。
具体的には、業務に起因する傷病による休業の場合、休業中および復帰後30日間の解雇が原則として制限されます(労働基準法19条1項)。また、労働災害に関連する場合は労働基準法や労働災害補償保険法に基づき、療養補償や休業補償の対象となります。
セクハラ、パワハラ、または長時間労働による精神疾患の場合、業務起因性が疑われることが多く、業務に起因する疾患と認定されれば、休職制度に基づく解雇が不当解雇と判断されることがあります。
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休職期間満了時の解雇が不当解雇とされた判例
うつ病にて休職中の従業員に対して、1年6ヶ月の休職期間を満了しても復職しなかったことで、実際に解雇をしたケースでの判例があります。
◆東京地方裁判所 平成20年4月
裁判所の判断により、解雇が無効であり、雇用関係が現在も継続しているとされ、解雇された従業員に対して未払いの賃金および慰謝料として「約2,900万円」を支払うよう命じられました。
裁判所がこの判断を下した主な理由としては以下のものがあげられます。
このような判断が行われる事案を未然に防ぐためにも、精神疾患を抱えた労働者が発生した場合の対応フローを企業が定めておくことが望ましいです。
具体的な例としては
- 受診命令権の整備
- リハビリ出社の手続きに関する内部規定の整備
- 精神疾患に気付いた上司や同僚が相談または報告できる窓口の設置
- 相談できる産業医や専門医の指定
などが挙げられます。問題が生じた場合に迅速、適切な対応ができるでしょう。
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② 退職金の支払い期限や退職理由を把握する
◆休職期間満了による従業員の退職に際し、会社が就業規則において退職金に関する退職金規定を設ける場合
・退職金の支払い時期について定めることが労働基準法によって義務づけられています(労働基準法89条3号の2)。
・支払時期の定めがない場合には、請求された日から7日以内に支払わなければなりません(労働基準法23条)
・適用される労働者の範囲、退職金の決定・計算及び支払方法、支払時期について、「労働契約締結時」に労働者に明示する義務があります(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項4号の2)
休職期間満了に伴う従業員の退職に限らず、従業員が退職する際には、退職金の支払時期がどのように設定されているかを事前にしっかり確認しましょう。
退職金の支払いが遅れると、従業員との間でトラブルが生じる可能性があります。そのため、就業規則や退職金の規定で支払時期を確認した後、速やかに従業員に連絡することをお勧めします。
③ 休職期間が勤続年数に含まれるかどうか確認しておく
多くの企業の退職金規定には、「勤続年数」に基づく項目が含まれています。勤続年数が増えれば、当然ながら支払われる退職金も増加します。
したがって、退職金の支払い時には、正確に勤続年数を把握する必要があります。しかし、休職期間満了による従業員の退職の場合、この休職期間が勤続年数に含まれるかどうかは事前に確認が必要です。
ただし、休職期間を勤続年数に含めるかどうかについては、法的な規定が存在しないため、企業独自の退職金規定や就業規則から判断されます。
就業規則や退職金規定に特別な記載がない場合、休職期間も勤続年数に含めて退職金を計算する方が良いでしょう。これらの対応を誤ると、退職者との間でトラブルが発生する可能性があります。
④ 退職理由が自己都合によるものか会社都合かを明確にする
休職期間満了における退職または解雇の際、その理由を自己都合とするのか、会社都合とするのかについては、退職金規定や就業規則に明記があるか確認する必要があります。
多くの企業の退職金規定では、退職理由が自己都合か、会社都合かによって支払われる退職金の額が異なることが一般的です。
特に就業規則や退職金規定に詳細な規定がなく、ハラスメントや過重労働が休職の原因でない場合は、通常は「自己都合」による退職として取り扱うことが適切でしょう。
⑤ 退職通知や解雇通知を適切に行う
休職期間が満了し、雇用関係が終了する場合、従業員に対しては退職や解雇の通知書を提出する必要があります。この通知書の内容は、就業規則の規定によって異なります。一般的には、以下の2つの主なパターンが存在します。
それぞれの通知書の書き方について見ていきましょう。
1 休職期間を満了でも復職できない場合に退職扱いとなるパターン
この場合の通知の参考例を以下に挙げます。
貴殿の休職期間は平成○年○月○日に満了し、就業規則○条○項の規定に基づき、○月○日付で退職扱いとなりました。これを通知いたします。
2 休職期間を満了しても復職できない場合には解雇扱いとなるパターン
この場合の通知の仕方は以下の参考例のようになります。
貴殿の休職期間は平成○年○月○日に満了し、就業規則の○条○項の規定に基づき、○月○日付で退職処分となりました。これを通知いたします。
また、従業員の解雇に際しては、解雇の30日前に「復職できなければ解雇される可能性があること」を予告して通知する義務があります。
本通知を怠った場合、労働基準法に基づき、解雇予告手当の支払義務が発生します。具体的な事情については、労働問題に精通した弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
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退職者の雇用保険手続きの手順
休職期間満了に伴う従業員の退職時に雇用保険の手続きが遅れると、退職者は雇用保険の失業給付を受けることができなくなります。
このような状況では、企業と従業員の間でだけでなく、それが原因でトラブルが生じ、訴訟問題に発展する可能性もあります。
雇用保険の手続きについては迅速に行い、従業員が失業給付をスムーズに受給出来るように配慮することが必要です。
退職者の雇用保険手続きの手順
順番 | 手順 | 担当 |
① | 各書類をハローワークに提出 | 会社 |
② | ハローワークから離職票が返送 | 会社 |
③ | 退職者へ離職票の交付 | 会社 |
④ | 退職者が離職票をハローワークに提出 | 本人 |
⑤ | ハローワークは失業給付金の給付日数を決定 | 本人 |
①から順に説明していきます。
①各書類をハローワークに提出
まず、会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を、会社の事業所所在を管轄するハローワークに、退職日の翌日から10日以内に提出する必要があります。
なお、退職した労働者が離職票の交付を希望しない場合には、離職証明書の提出は不要であり、資格喪失届だけを提出すればよいことになります(雇用保険に関する業務取扱要領21452)。
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② ハローワークから離職票が返送
次に、ハローワーク側は「離職証明書」の中から、「離職票」の部分に必要な記載と捺印を行い、それを会社に返送します。
③ 退職者へ離職票の交付
ハローワークから返送された「離職票」を会社側が退職者に郵送します。
④退職者が離職票をハローワークに提出
退職者はお住まいのエリアの管轄するハローワークに離職票を提出します。
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⑤ハローワークは失業給付金の給付日数を決定
退職者の住所地を管轄するハローワークは、離職票を確認し、そこに記載されている情報をもとに、失業給付の給付日数を最終的に決定します。
このような手続きは、休職期間を満了し退職扱いとなる従業員だけでなく、通常の退職や解雇の場合でも同様です。
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休職期間満了に該当する従業員への社会保険給付について
以下、休職期間満了により退職となる従業員に適用できる社会保険給付についてご紹介いたします。
休職期間満了により退職になる従業員がいる際には、事前に確認が必要です。
健康保険の傷病手当金制度
健康保険の傷病手当金制度は、業務外の原因により病気や怪我になり、仕事が困難となった従業員に対して、最長で1年6ヶ月、健康保険から傷病手当金の支給を受けることが可能です。
傷病手当金の支給が開始されてから1年6ヶ月が経過していない時点で、退職した従業員がいる場合には、その後も支給を受けることができます。
なお、傷病手当金制度を利用した場合の支給額は、在職中の給与の約3分の2程度が目安ですので、参考にしてください。
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障害年金制度
病気により仕事ができないとなった場合は、医師の診断書と申請書の審査を経て、受給が妥当と認められた場合、「障害年金」という国の定める年金を受給可能です。
障害年金を受給するためには以下の条件を満たす必要があります。
①最初にその病気によって病院を受診した日の前日において、年金加入期間の3分の2以上の期間
保険料を支払っていた。または免除していた
② 病気の程度が国規定の条件よりも重いことなどが挙げられます。
③初診日を証明できる
といった条件があります。
障害厚生年金と障害基礎年金があり、初診日にどちらの年金に加入していたかによって受給できる年金が決まってきます。
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雇用保険制度の失業給付
解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇ではない、会社都合)の場合、「特定受給資格者」として扱われ、離職者は3ヶ月間の給付制限なしで給付日数について優遇を受けて失業給付を受けることができます。
一方、退職事由として休職期間満了を定めている場合、「正当な理由のある自己都合により離職した者」として、「特定理由離職者」とされ、離職者は3ヶ月間の給付制限なしで失業給付を受けることができますが、給付日数についての優遇は無く、最大150日となります。
失業給付の支給額は、退職前の給与の5割~8割程度と考えられます。
ただし、失業給付は「就業可能であるけれども、仕事が見つからない人のための給付」であり、退職後に傷病手当と雇用保険を同時に受給することはできません。
休職期間が満了し、退職する従業員がいる場合には、会社側はこれらの社会保険給付について明確に案内することが重要です。
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