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障害者雇用の助成金。種類と内容について解説

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障害者雇用に関する助成金制度とは

「障害者を雇用すると企業にどんなメリットがあるのか。」「障害者の法定雇用率の基準をどうやって満たせばよいのか?」雇用主の方は気になっていらっしゃるのではないでしょうか?

また、当事者の中には障害者雇用で働いておられる方もいるでしょう。障害者の雇用に関しては事業主が助成金を受ける制度が存在します。企業が障害者を雇用する際には、施設や設備の整備など、対応が難しい問題もあるかもしれません。

こうした課題を克服し、障害者の雇用を奨励するために、様々な助成金制度が提供されています。今回は、障害者雇用に関連する助成金制度の種類や詳細について紹介し、障害者雇用の推進に貢献できればと考えています。

参考:法定雇用率とは?

参考:助成金とは?

障害者雇用の助成金の概要と目的

障害者の雇用を推進するための助成金は、企業が直面する施設や設備の維持費や雇用管理に関わるコストなど、障害者を雇用する際にかかる負担を軽減するための支援制度です。これにより、障害者の新規雇用や雇用継続が困難な状況を改善し、企業や事業主が取り組みやすい環境を提供することを目指しています。

障害者雇用の助成金制度は、企業の負担を軽減し、障害者の雇用に対するハードルを下げることで、障害者の雇用促進を支援するものです。令和5年度から従業員を43.5人以上雇用している企業の障害者雇用率は、2.7%に引き上げになり、ますます法律をきちんと把握しておく必要があるでしょう。

障害者雇用の助成金制度にはたくさんの種類があります。ケースごとに見てみましょう。

・障害者を雇い入れた場合

・施設や設備のメンテナンス、雇用管理の適切な措置を行なった場合

・職業能力開発を行なった場合

・職場定着のための措置を実施した場合

障害者雇用の助成金は、企業が通常の労働者と同じような業務を障害者に割り当てるための措置を支援します。同時に、障害者の賃金の一部を助成する制度も存在します。これにより、障害者も社会で通常の労働者として働ける環境を整え、多様な人材を受け入れる企業文化の形成に寄与することが期待されています。

こちらも参考に:リワークプログラム・リワーク支援(心療内科・精神科)とは | メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰

障がい者雇用の助成金の対象

障がい者雇用に関する助成金の受給対象となる事業主は厚生労働省によって以下のとおりに定められています。厚生労働省は、各助成金に共通する要件として以下の3点を挙げています。

・雇用保険適用事業所であること。

・支給のための審査に協力すること。

・申請期間内に申請すること。

助成金制度を利用するには、基本的な規定を遵守する必要があります。

障害者に該当する人

障害者雇用促進法に基づき、法定雇用率を満たすためには、「身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳」を所持する障害者を雇用することが条件となります。

また、雇用主は適切な雇用管理を行い、雇用の安定を図る責務を負います。これにより、障害者の継続雇用を優先して行うことができます。

参考:療育手帳(愛の手帳)とは?交付対象や申請方法、割引などのメリットを解説します

参考:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介

障がい者雇用の各種助成金の種類と条件

障がい者の雇用に関する助成制度は多岐にわたり、その受給要件も詳細に設定されています。以下では、各種助成金の種類とその概要を記載します。受給金額の目安についても参考にしてください。

障害者雇用助成金

障がい者雇用助成金は、障がい者の雇用や雇用継続において、事業主が施設整備などの特別な措置を取る必要がある場合に支給されます。

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障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

「障がい者作業施設設置等助成金」および「障がい者福祉施設設置等助成金」は、障がい者の雇用に際して作業施設や福祉施設を設置する事業主に支給されます。作業施設の設置にかかった費用の3分の2、福祉施設の設置にかかった費用の3分の1が助成金として支給されます。

障害者介助等助成金

「障がい者介助等助成金」は、障がい者の雇用において必要な介助者を職場に配置または委嘱する事業主に支給されます。例えば、聴覚障がい者を雇用する際に手話通訳者を配置する場合などがこれに該当します。助成金の支給額は介助者の種類や、職場配置か委嘱によって異なります。

重度障害者等通勤対策助成金

「重度障害者等通勤対策助成金」は、通勤が特に困難であると認められる重度の障がい者に対して、雇用主が通勤対策を行う際に支給されます。例えば、通勤援助者の委嘱助成金や通勤用バスの購入費などに対する助成が考えられます。本助成金の支給額は実施する通勤対策によって異なります。

重度障害者等通勤対策助成金の名称助成金の対象となる措支給限度額
重度障害者等用住宅の新築等助成金重度障害者等用を入居させるために特別な構造又は設備を備えた住宅を新築・増築・改築または購入(新築等)助成率3/4、世帯用1戸1200万円
重度障害者等等住宅の賃借助成金重度障害者等を入居させるための住宅を賃借助成率3/4、世帯用月10万円、単身者用月6万円、10年間
指導員の配置助成金重度障害者等が5人以上入居する住宅に指導員を配置助成率3/4、配属1人につき月15万円、期間10年間
住宅手当の支払助成金重度障害者等自らが住宅を借り受け、賃料を支払っている場合に、その者に対して。重度障害者等以外の労働者が住宅を借り受けた場合に通常支払われる住宅手当の限度額を超えて住宅手当を支給助成率3/4、1人月6万円、期間10年間
通勤用バスの購入助成金通勤する5人以上の重度障害者等のために通勤用バスを購入助成率3/4、1台700万円
通勤用バス運転従事者の委嘱助成金通勤する5人以上の重度障害者等のために通勤用バスの運転に従事する者を委嘱助成率3/4、委嘱1回6千円、10年間
通勤援助者の委嘱助成金重度障害者等の通勤に指導、援助等を行うものを委嘱助成率3/4、委嘱1回2000円、1カ月
駐車場の賃借助成金重度障害者等に使用させるために駐車場を賃借助成率3/4、1人につき5万円、10年間
通勤用自動車の購入助成金重度障害者等のために通勤用自動車を購入助成率3/4、1台150万円~250万円

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」は、多数の重度障害者を継続的に雇用している事業主が、これらの障がい者のために事業施設の設置や整備を行う際に利用できる助成金です。本助成金の支給額は実施する対策によって異なります。

障害者職場実習支援事業

障害者職場実習支援事業は、障がい者を雇用したことのない事業主が、ハローワークなどと協力して職場実習を実施した際に支給されます。支給額は、実習対象者1人あたり「日額5千円×実習日数」によって算出されます。また、実習指導員の日当も、1日につき指導時間が4時間以上なら1万6千円、4時間以下なら8千円が支給されます。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、障がい者を原則3ヶ月間試行雇用する「トライアル雇用」を実施する企業に支給されます。この試行雇用の制度は、障がい者の雇用機会を増やす取り組みとして導入されました。助成金の支給対象としては、「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2つが用意されています。

障害者トライアルコース

障害者トライアルコースは、一週間の所定労働時間が通常の従業員と同程度の30時間以上と設定されています。このコースでは、精神障がい者の場合は最初の3ヶ月間は月額最大8万円、次の3ヶ月間は月額最大4万円の助成金が支給されます。その他の障がい者の場合は、3ヶ月間で月額最大4万円の助成金が支給されます。

障害者短時間トライアルコース

障害者短時間トライアルコースは、最初は週10時間以上20時間未満の勤務から開始し、徐々に週20時間以上の勤務に増やすことを目標にしています。このコースでは、1人につき最大12ヶ月間で月額4万円の助成金が支給されます。

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特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、一定条件を満たした求職者を新たに雇用した企業に支給される助成金です。障がい者の雇用に関するコースは以下の3つがあります。

1.特定就職困難者コース

特定就職困難者コースは、障がい者や高齢者などの就職困難者を、ハローワークなどを通じて雇用する事業主に支給される助成です。本コースの助成金を受給するには、対象の労働者を継続的に雇用することが求められます。

対象者:年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用してなおかつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることが確実だと認められる必要があります。

助成金の支給額は、障がいの程度に加えて、申請した企業の規模に応じて次のように分類されます。

重度障がい者等を除く身体・知的障がい者の場合:年額120万円(50万円)を2年間(1年間)

重度の身体・知的障がい者、45歳以上の身体・知的障がい者及び精神障がい者:年額240万円(100万円)を3年間(1年6ヶ月)

短時間労働者(重度かどうかは関係ない):年額80万円(30万円)を2年間(1年間)支給

※カッコ内が中小企業以外の事業主に対する助成金額、カッコ外が中小企業に対する助成金額です。

2.発達障害・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害や難治性疾患を抱える患者を継続雇用する事業主に対する助成として、発達障害・難治性疾患患者雇用開発コースがあります。

対象者:ハローワークなどを通じて対象の労働者を雇用し、かつ対象労働者が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が2年以上継続されることが確実と認められる場合、助成金の支給が可能です。

事業主には、雇用した労働者に対する配慮事項を報告する義務が課され、雇用から約半年後にハローワーク職員による職場訪問を受けることになります。

助成金金額

申請者が中小企業の場合

短時間労働者1人あたり:年額80万円が2年間

フルタイム労働者の場合:年額120万円が2年間

申請者が大企業の場合

短時間労働者1人あたり:年額30万円を1年間

フルタイム労働者1人あたり:年額50万円を1年間

3.障害者初回雇用コース

障がい者雇用の経験がない中小企業(43.5~300人の労働者を抱える企業)が初めて障がい者を雇用した場合に申請できる助成金が、障害者初回雇用コースです。

支給要件:中小企業が初めて1人目の対象労働者を雇用した日から3か月後までに障害者雇用促進法で定められた法定雇用率を達成した場合に120万円。

障害者雇用安定助成金

障害者雇用安定助成金は、以前は「障害者職場適応援助コース」「中小企業障害者多数雇用施設設置等コース」「障害者職場定着支援コース」という3つのコースが存在しましたが、令和3年度から助成金が整理・統廃合され、大幅に変更されています。

1.障害者職場適応援助コース

障害者職場定着支援コースは7つの分野において、障がい者の職場定着を推進する企業に対し助成金を支給していましたが、令和3年4月に助成金の整理・統廃合が行われ、それぞれ以下のように変更されました。

・柔軟な時間管理・休暇取得
→廃止

・短時間労働者の勤務時間延長
→廃止

・正規・無期転換
→キャリアアップ助成金の障害者正社員コースとして移行

・職場支援員の配置
→障害者介助等助成金の中の職場支援員の配置助成金に統合

・職場復帰支援
→障害者介助等助成金の中の職場復帰支援助成金に統合

・中高年障害者の雇用継続支援
→廃止

・社内理解の促進
→廃止

移行・統合後の助成金の概要は以下になります。

キャリアアップ助成金

障害の有無に関係なく非正規雇用者のキャリアアップのため、正社員化などを実施した事業主に対して助成金を支給するものになります。

「障害者正社員化コース」は、令和2年度まで存在した障害者雇用安定助成金の「正規・無期転換」の分野を引き継いだコースです。障がいのある有期雇用労働者などを正規雇用労働者に転換した事業主に対して助成され、支給額は対象労働者の障がいの程度や措置内容によって異なります。

障害者介助等助成金(職場支援員の配置又は委託助成金)

障がい者の雇用定着を促進するため、業務を円滑に進めるために必要な援助や支援を行う職場支援員を雇用または委託した事業主に対して支給される助成金になります。

支給額:短時間労働の支援員の場合は障がい者1人につき月額2万円(中小企業以外は1.5万円)

    フルタイム支援員の場合は月額4万円(中小企業以外は3万円)を最大半年間

    支援者に実際に支払った賃金額が支給されることになります。

2人の障がい者を支援している短時間労働者の支援員を雇用している場合、2万円×24ヶ月×2人=96万円が最大支給額となります。ただし、実際に支援者に支払った賃金額が96万円以下の場合は、実際に支払った額が支給されます。

2.中小企業障害者多数雇用施設設置等コース

障がい者の雇用計画を立て、対象労働者(重度身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者)を5人以上雇用し、それに必要な施設や設備などを設置する中小企業に対して助成が行われるコースです。

支給額:設備に要した費用や新たに雇用した対象労働者の人数によって変動しますが、総額1,000万円から3,000万円が支給されます。なお、支給申請をし受給資格を得た翌日から1年以内に新たに対象労働者を5人以上雇用することで対象労働者が10人以上となった場合は、併せて雇用のための設備を設置する必要があります。

3.障害者職場定着支援コース

障がい者の職場定着を支援するために、職場適応援助者(ジョブコーチ)の配置を行った企業に対して支給される助成金でしたが、令和3年4月に助成金の整理・統廃合が行われ、「職場適応援助者助成金」として独立しました。

そして、管轄もハローワークから独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に移管されました。

職場適応援助者助成金は、職場適応が難しい障がい者に対し、規定の研修を受けた職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を実施する場合に、事業主に対して支給される助成金です。

ジョブコーチの2タイプ

① 必要に応じて手配される訪問型適応援助者

② 企業に所属し障がい者対応にあたる企業在籍型適応援助者

訪問型適応援助者による支援の場合

支給額は日額計算で行われます。1日の支援時間が4時間以上(精神障がい者への支援については3時間以上)の日は1日あたり1.6万円とし、それ未満の日には1日あたり8千円が支給され、6ヶ月ごとに支給されます。

企業在籍型適応援助者による支援の場合

支給額は月額計算ですが、支援する障がい者が精神障がい者かそれ以外か、適応援助者の雇用形態が短時間労働かそれ以外か、企業が中小企業かどうかによって、支給額は月額3万円から12万円と幅広く変動します。


障害者雇用納付金制度

障がい者雇用納付金制度は、法定雇用率を達成している企業に対して調整金や報奨金を支給する制度です。

◆条件

・常時雇用労働者が100人を超える企業で法定雇用率を超過した場合、1人あたり月額2.7万円の調整金が支給されます。さらに、障がい者を多数雇用する中小企業には別途報奨金が支給されます。

・常時雇用労働者が100人以下の中小企業で、一定数を超えて障がい者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障がい者1人あたり月額2.1万円が報奨金として支給されます。

人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

従業員のスキルアップを支援するための助成金の一つです。

対象となる企業:障がい者が職場で必要なスキルを身につけるための教育訓練施設を設置・運用する企業

助成額:訓練施設の設置や整備・更新に要した費用の4分の3が支給される + 各種運営費が支給されます。

障害者雇用に関する助成金制度の注意点

障害者雇用で助成金制度を利用するときに注意することを以下にまとめてみました。

障害者が個人の能力を生かし、働きやすい職場に配属する

障害者の方も通常の労働者と同じような業務に就くことができるケースもありますが、すべての障害者が同様に働けるとは限りません。そのような場合、障害者が適した業務に配置、配慮を加えることで実力を発揮できますので、効率的な労働環境を整備することが重要です。

障害者が利用しやすい設備環境を整える

障害者の中には、障害の種類や状況、体格などによって配慮が必要なケースもあります。たとえば車椅子を使用している障害者であっても、個々の状況によって必要な配慮が異なるため、「車椅子だから」というだけで受け入れが困難だと判断するのは適切ではありません。

大規模な設備変更を行わずにも、些細な改善や周囲のサポートによって、その職場に適応できる場合もあります。

障害者を雇用する際には、個々の技能や社会経験、人間関係構築能力などを考慮し、採用の可否をしましょう。

障害者の種類に応じて、実雇用率のカウントが変わる

労働者が実際に実雇用率の対象となるかどうかは、その障害の種類や程度、勤務時間によって異なります。企業には短時間勤務やパートタイムなど様々な雇用形態が存在しますので、障害者の場合も同様であり、必ずしも正社員である必要はありません。

通常、実際の雇用率の対象となるのは、週に30時間以上の勤務が1年以上見込まれる労働者が対象とされますが、以下の条件を満たす場合も実際の雇用率に含まれることがあります。

・重度の障害者の場合、週30時間以上の勤務を行う労働者1人で、2人分としてカウントされます。短時間労働者(週20時間〜週30時間未満)では、1人としてカウントされます。

・精神障害者の場合、短時間労働者(週20時間〜週30時間未満)1人の雇用で、0.5人としてカウントされます。

参考:実雇用率とは?

通常の労働者と差別をしない

障害者であるからといって通常の労働者と差別してはなりません。障害者ができる限り通常の労働者と同じように業務に取り組めるよう、障害者と労働者双方が協力し、必要に応じてサポートするなどの配慮が必要です。

障害者雇用に関連する助成金を活用する際には、各々の特性や配慮など注意すべきポイントもあります。障害者の雇用を難しいと考えている事業主の方々も、助成金制度を活用して障害者の雇用を推進し、人材確保に努めてみることを検討してみては有意義ではないのでしょうか?

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