傷病手当金とは?
病気や怪我で会社を休み、事業主から報酬が受けられない場合に支給されます。療養中の生活保障は(協会けんぽ)などの保険者が給付してくれます。雇用保険の傷病手当とは名称がよく似ているが、全く異なる制度であり、健康保険の給付制度です。
参考:傷病手当金について
雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当、休業手当の違いの違いとは?
先ほどの「雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当」を詳しく説明していきます。
簡単に言うと、
雇用保険の傷病手当 = 失業保険(仕事を辞めた後)
健康保険の傷病手当 = 療養中の生活保障(在職中〜)
休業手当 = 事業主側の責任で休業
です。
「雇用保険の傷病手当」は、失業後ハローワークにて手続きをすることで失業前の給与の2/3の金額が90日(障害者手帳を持っている場合は300日)もらえる手当であり、「健康保険の傷病手当」は病気や怪我が原因で会社を休業して療養している最中に、給与の一部(2/3)にあたる金額を支給される制度のことですね。休業手当は事業主側の責任(経営悪化やストライキなど)で休業せざるを得ない時に、事業主から(給与の6割以上)支給される給付になります。
こちらも参考に:【ポイントや注意点は?】障害年金の受給要件と請求条件・年金額
法律の規定により、健康保険の傷病手当金と雇用保険の傷病手当、休業手当は同時に受給することはできません。
傷病手当金の受給要件
傷病手当金の受給要件は以下になります。ご自身が該当するのか確認してみましょう。
・3日間連続して仕事を休み(待期期間)、4日目以降にも休んだ日があること
・業務外の事由による病気やケガのため療養中であること
・休業した期間について給与の支払いがないこと
・1年以上継続して健康保険の被保険者であること
参考: 詳しい申請方法は「傷病手当金支給申請書の書き方|書類用意と申請の流れ」に記載あり
参考:被保険者期間とは?
支給される傷病手当金の計算方法
以前は「支給開始される前、6ヶ月の月額標準報酬(月給)」で傷病手当金を計算していましたが、平成28年4月からは「支給開始される前、1年の月額標準報酬(月給)」になりました。
計算の例
(26万✖️2ヶ月+30万✖️10ヶ月)÷12ヶ月÷30日✖️2/3 = 6520円(支給日額)
※1ヶ月は30日として計算します
傷病手当金の調整
障害年金
△ 併給できるが調整あり
障害年金を貰っている方もおられると思いますが、同一の病気・ケガにより障害厚生年金・障害手当金を受け取った際には「厚生障害年金を受給している場合、傷病手当金は調整されます」
傷病手当金の日額が6,000円の方が、障害厚生年金を162万円受給するようになると、日額は 4,500円減額され、1,500円になります。
こちらも参考に:【ポイントや注意点は?】障害年金の受給要件と請求条件・年金額
会社に病名を知られずに申請する方法
手続の順番が決まっているわけではありませんので、会社に病名を知られずに「傷病手当」を受給することも可能です。主治医に記入をお願いする前に会社に必要事項を記入してもらい、資料を送付してもらいましょう。
順番としては以下になります。
① 健保組合に電話をして郵送、またはインターネットから「申請書類」を取得しましょう。
② 本人記入欄に必要事項を記入して勤務先に提出しましょう。勤務先に「勤務日数や給与の支払状況」などを記入してもらい、添付が必要な書類と一緒に自宅に郵送してもらいましょう。
③ 病院で担当の医師に「傷病名」などを記入してもらいましょう。
④ 請求者自身で「申請書」を健保組合等に提出しましょう。(郵送可)
こちらも参考に:リワークプログラム・リワーク支援(心療内科・精神科)とは | メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰
出産手当金
△ 併給OKだが、出産手当金が優先
出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの間に、会社を休み、給与の支払いがなかった期間に対して支払われます。傷病手当金と出産手当金の両方を申請する場合は出産手当金が優先されます。
出産手当金の日額が傷病手当金の日額より低い場合、差額の支給が行われます。
参考:出産手当金について
育児休業給付金
○ 別の制度なので併給が可能
別名「育休手当」と呼ばれます。雇用保険の被保険者の方が、子の出生後8週間の期間内に合計4週間分(28日)を限度として受給できる手当です。傷病手当とは別の制度になりますので、両方受給が可能になります。
いつからいつまでもらえる?支給日と支給期間
傷病手当金が受け取れるのは、最大で1年6ヶ月です。これまでは休業と休業の間に出勤があった場合、その「出勤日」も1年6ヶ月に含むものとして取り扱われていたのですが、2022年1月からは「支給期間中に出勤した分は1年6ヶ月に含めない」と改正されました。
この改正により「支給開始日から起算して1年6ヶ月を超えていても、支給期間中に出勤している期間があれば、その分を繰り越して支給可能」になりましたので、実質休んだ期間が1年6ヶ月に達するまでは支給が続きます。
なお、2020年7月2日以降に支給された傷病手当金が対象となります。
傷病手当金を受給している間の注意点
受給期間が終わった後、同じ病気で受給できない場合がある
1年6ヶ月の受給期間が終了している場合は同じ病気で、病気が再燃して再度休職しなければならなくなった、といった場合は傷病手当金を受給できません。
重要
復職した時は病気が治っていて治療の必要がなかったと医師が判断すれば、傷病手当金は受給できます。とりあえず申請してみてください。申請後に健保組合が医師に問い合わせをおこなって確認します。
生命保険に加入できない場合がある
生命保険に加入する際は「過去5年以内に継続的に病院を受診していた期間があるか」「病歴や給付金を貰っていた期間があるか?」などの質問がある場合があり、こちらの質問が審査対象になっています。
多くの保険の場合は傷病手当金を受給後、給付金を貰わず約5年以上経過すると、時効と見なされ多くの生命保険では加入できるようになります。
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傷病手当金を受給しても転職先にバレるような事はありません
「傷病手当金を受給することで転職が不利になるのでは」はいった懸念もあるのかもしれませんが、組合員の個人情報を健保組合が漏らすことは基本的に考えられません。
たとえ面接をおこなった企業側から照会があったとしても守秘義務があります。
傷病手当金を受給することで、収入に関する心配を軽くし、病気やケガが治る万全の状況をつくりましょう。
こちらも参考に:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介
公務員は傷病手当金の受給額が違う?
国家公務員や地方公務員、幼稚園や学校の教員は、健康保険ではなく、それぞれ国家教員共済(国共済)、地方職員共済(地共済)、私学共済の被保険者になっています。
国共済・地共済、私学共済は健康保険と異なる方程式で支給金額が多い傾向になります。
国共済・地共済、私学共済の計算式は以下になります。
国共済・地共済
[支給開始日以前の継続した12カ月の各月の標準報酬月額の平均した額] ÷ 22 × 2/3
私学共済
[支給開始日以前の継続した12カ月の各月の標準報酬月額の平均した額] ÷ 22 × 80 ÷ 100
傷病手当金のよくある質問
- Q傷病手当金の受給中は所得税や住民税、社会保険料は納めなくてもいい?
- A
住民税:前年の所得に対して掛かるので、前年収入があれば必要だが、傷病手当は非課税なので受給中は納める必要が無い。
国民健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料:会社に所属している間は免除できません
- Q傷病手当金の受給中に転職活動をしてもいいですか?
- A
就労不能な状態で傷病手当を貰っているはずなので、「労務可能」とみなされる転職活動は行わない方がよいでしょう。
こちらも参考に:障害者雇用の助成金。種類と内容について解説
- Q傷病手当金の受給期間、確定申告は必要ですか?
- A
傷病手当は非課税所得になりますので、確定申告の必要はありません。
こちらも参考に:障害年金申請は「診断書」が9割!押さえるべき3つの注意点と流れ
まとめ
受給金額を把握するには、社会保険料の支払いや税金についても理解して準備しましょう。傷病手当の制度も年々は変わって行きます。給付の予定ができた場合には改めて制度の確認をしましょう。
給付の予定ができた場合には