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発達障害で障害年金はもらえる?条件や申請方法。押さえておくべきポイント

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発達障害のある方が障害年金を受け取るための条件や申請方法

このコラムでは「発達障害があり、障害年金を受け取りたい」と考えている方に向けて、障害年金の概要や対象となる条件、もらえる金額、申請方法など、知っておきたい基本情報を書いています。

発達障害によって、他者とのコミュニケーションや業務の正確さに強い支障が出る場合、就労して安定的に収入を得ることが難しい場合があります。

いくつかの受給要件を満たせば発達障害は、障害年金の支給対象となりますので、障害年金を受給して経済的な不安を解消しましょう。

また、発達障害における障害年金の受給要件や申請の流れなども紹介しているので是非参考にしてください。

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障害年金の種類

障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つの種類が存在します。

また、障害の程度が軽いと判定されて障害年金の対象とならない場合でも、「障害手当金」の申請が可能です。どの年金を受給できるかは、初診日や厚生労働省が障害の程度に基づいて定めた障害等級を元に判断されます。

以下、各種年金について説明します。

参考:初診日とは?

参考:障害手当金とは?

障害基礎年金

障害基礎年金は、障害等級が1級または2級に該当する障害がある場合に受け取れる年金です。

受給の前提条件としては「国民年金に加入していること」であり、この条件を満たす20歳以上60歳未満で、日本に住んでいる全ての人が対象です。

20歳未満(年金制度に加入していない期間)や60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)も同様に対象となります。

また、子供時代のけがや病気、先天性の病気や障害によって日常生活に支障がある場合であっても、障害等級が1級または2級に該当すれ状態であれば対象となります。

こちらも参考に:【ポイントや注意点は?】障害年金の受給要件と請求条件・年金額

障害厚生年金

「障害厚生年金」は、障害基礎年金に追加される障害年金の一種です。

障害が厚生年金の加入期間中に発生した場合、障害等級が1級または2級に該当する場合は、金額が加算されて支給されます。一方で、障害等級が3級に該当する場合は、障害厚生年金のみが受給されることになります。

厚生年金に加入していることが条件であり、国民年金のみに加入している人は対象外となります。

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参考:年金相談センターとは?

障害手当金

「障害手当金」とは、障害年金の対象となる等級に該当しない、軽度の障害がある方に支給される一時金のことです。

障害等級の3級よりも軽度の障害がある方で、障害が生じた原因となる病気やけがが初診日から5年以内に完治した場合に受け取ることができます。

言い換えれば、障害年金の対象とならない軽度な障害がある方でも、障害手当金を受け取ることが可能です。

こちらも参考に:障害手当金とは?申請方法と注意点

発達障害の定義

発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

引用元:「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準第8節精神の障害」

こちらも参考に:大人の「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?特徴やセルフチェックなど

発達障害のある方も、障害年金を受け取れる可能性があります。

発達障害は先天性の脳機能の障害で、発達障害の症状によって仕事が続かず、安定的に収入を得ることが難しい場合があります。このような場合、是非ご検討いただきたいのが、障害年金です。

「大人の発達障害での障害年金受給は難しい」と思われている方もいらっしゃいますが、発達障害による困りごとが要件を満たせば受給は可能です。

発達障害で障害年金を受給するためには、どのような要件を満たす必要があるのかお伝えしていきたいと思います。

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発達障害の障害等級

「障害等級」とは、厚生労働省が設定した障害の程度を評価する基準であり、医師の診断書に記載された症状や、日常生活の能力や労働の能力などが考慮されて総合的な等級が決定します。

障害者手帳にも同様に等級がありますが、障害者手帳と障害年金は全く異なる制度であり、等級の評価方法も異なるため、混同しないように注意が必要です。異なる制度であるため、障害者手帳の等級と障害年金の等級は必ずしも一致しません。また、障害者手帳を持っていなくても、条件を満たせば障害年金を受給することが可能です。

発達障害の方の障害等級の認定基準の一例を以下に示します。

参考:障害等級とは?

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障害の程度:1級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

障害の程度:2級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

障害の程度:3級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

こちらも参考に:就労継続支援A型とは?仕事内容と平均給与|利用の流れB型との違いなど

参考:額改訂請求とは?

障害の特性により日常生活や労働に大きな支障が出ている場合は、その度合いにより等級が決定します。

例えば、「感覚過敏(匂いや音、光などに対する敏感さ)による制限がある」「臨機応変な対応が苦手で、マニュアルの完備や指導が必要」「コミュニケーションが難しく他従業員とのやりとり不可」などの働くうえでの困難さが認められた場合です。

等級の判定は書面のみで医師の診断書に基づいて行われるため、診断書に「障害の特性によって生活や就労に制限がされていること」についてしっかりと記載されていることを確認しましょう。

二次障害として精神疾患(障害等級の認定対象となる精神疾患)が併発している場合には、発達障害と精神疾患の双方の症状を総合的に判断して、障害等級が決定されます。

また、一度等級が認定されても、認定時よりも症状が悪化したり、逆に軽減したりした場合は等級の変動の可能性があります。

悪化した場合には、現在よりも上位の障害等級の認定を請求する「額改定請求」という手続きをすることができます。軽減した場合、更新で、障害年金・障害給付金の対象外となることがあります。

こちらも参考に:就労継続支援A型とは?仕事内容と平均給料 | 利用までの流れ、B型との違いな

参考:額改定請求とは?

障害年金の受給要件

ここでは、障害年金を実際に受給するための条件を書いていきます。

① 障害等級の条件

基本条件としては、障害等級(症状)が1級、2級、または3級のいずれかに該当することが挙げられます。障害等級が1級または2級の場合は、それぞれの等級に応じた障害基礎年金と障害厚生年金が支給されます。障害基礎年金には、3級が無いため、障害等級が3級の場合に受給できるのは障害厚生年金のみになります。

② 初診日の条件

障害の原因となった病気やけがの初診日に関して、特定の条件を満たす必要があります。障害基礎年金を例に挙げて条件を確認してみましょう。

1. 国民年金に加入している間、または60歳以上65歳未満で(年金制度に加入していない期間である場合も含む)日本国内に住んでいる間に、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)がある病気やけががもとで一定以上の障害が残り、かつ、障害の年金を受けられる保険料の納付要件を満たしているとき。

2. 20歳未満(年金制度に加入していない期間)に初診日がある病気やけががもとで一定以上の障害が残ったとき。(2.に該当する方は、保険料の納付要件はありません。)

参考:日本年金機構:障害基礎年金はどのようなときに受けられますか。

③ 保険料の納付の条件

年金を一定期間以上、納付していることも条件となります。初診日の前日までに、次の条件のいずれかを満たしている必要があります。

1. 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。

2. 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。

参考:日本年金機構:障害年金

④ 成人する前に障害が認められている場合の条件

成人する前に発達障害を診断された場合、保険料の納付条件は適用されません。これは、成人する前までの年数が国民年金制度の加入対象外であるためです

1. 症状が初めて出現し、医師または歯科医師の診療を初めて受けた日が20歳未満(年金制度に加入していない期間)にある場合。

※出生直後に、あるいは乳幼児期の健康診断(6ヶ月~3歳時健診)、または養護学校、更生相談所等の各種検査のいずれかにおいて、医師または歯科医師の診断により、20歳までに障害が確認されている場合や、療育手帳等が交付されている場合を含みます。

2. 症状が初めて出現し、医師または歯科医師の診療を初めて受けた日が、国民年金に加入している間または60歳以上65歳未満で(年金制度に加入していない期間である場合も含む)日本国内に住んでいる間にあり、かつ保険料の納付要件を満たしている場合。

(出典:日本年金機構:先天性の病気などにより20歳前から障害がありますが、障害基礎年金を受けることができますか。)

障害等級判定の流れ

障害等級の判定は、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を基に、障害認定審査医員が行います。

この判定は、障害の重さだけでなく、生活の実態に関する総合的な考慮が行われるため、「総合判定」と呼ばれています。

例えば、発達障害が軽度であり、就労していたとしても障害が生活に与える影響の度合いが大きいと判定された場合、障害等級の判定において受給の可能性があります。

参考:障害認定審査医員とは?

参考:精神の障害に係る等級判定ガイドライン 

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」とは?

精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、地域差や公平性の確保を目的に策定されました。

現在は障害認定基準の第8節「精神の障害」と等級判定ガイドラインが併用されて判定されます。

発達障害における障害年金の申請に際しては等級判定ガイドライン精神の障害の内容を十分理解しておく必要があります。

参考:障害認定基準の第8節「精神の障害

ど解説

こちらも参考に:労働審判の手続きの流れや費用・注意点。申し立てるべきケースと解決金の相場

障害等級の目安

ガイドラインでは、「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」という2つの要素が考慮され、これらを基にして障害等級の目安が大まかに設定されます。

「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」は、障害年金の申請において非常に重要な要素であり、これらの評価は診断書の裏面に詳細に掲載されています。

総合評価の際に考慮すべき要素

「総合評価の際に考慮すべき要素」とは、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」「日常生活能力の判定」を除く5つの分野に分類し、各分野ごとに総合評価において考慮されるべき要素と、それらの具体的な内容例を示したものです。

これらの5つの分野は以下の通りです。

  1. 現在の病状または状態像
  2. 療養状況
  3. 生活環境
  4. 就労状況
  5. その他

総合評価において、障害等級の目安は判定の決め手となる要素の一部ですが、目安だけで障害等級が確定するわけではありません。他の内容も含め、診断書等に記載された情報を総合的に評価し、認定医によって障害等級が判断されるのが総合評価の趣旨です。

参考:障害年金の認定医とは?

こちらも参考に:国民健康保険料の免除について

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発達障害で障害年金を申請する際のポイント

発達障害のある方が障害年金を申請しようとする場合に、気を付けるべきポイントを紹介します。

発達障害のある方の場合の、障害等級の判定基準

発達障害の定義としては「障害認定基準・認定要領」において、『発達障害とは、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(限局性学習障害/SLD)、注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害/ADHD)、その他これに類する脳機能の障害であり、その症状が通常低年齢において発現するもの』とされています。

社会生活やコミュニケーションにおいて困難さが現れ、日常生活や仕事において制限が生じている場合には、その度合いに基づいて障害等級が判定されます。

精神疾患が併存しているケースでは、発達障害と精神疾患の総合的な判断が行われます。

障害等級の判断は書面のみで、医師の「診断書」によって行われます。

そのため、担当医に対して障害特性による生活や働きづらさについて適切に伝えることが重要となります。日常生活や仕事での困難さについて、具体的な場面やその状況を詳細に説明できるように工夫しましょう。

初診日の定義 

発達障害を抱える方で、知的障害を伴う場合や精神疾患での通院歴がある場合は、初診日には特に注意してください。

大人の発達障害の場合、メンタルクリニックなどでうつ病などの精神疾患の通院を受けた際に、発達障害の可能性が指摘され、検査を受けるケースがあります。

一言で「初診日」と言っても、様々なケースがあるため注意が必要です。

以下でいくつかのケースを取り上げてます。

1. 知的障害や精神障害を伴わない発達障害の場合の初診日
「発達障害を診断された初めての日」になります

2. 知的障害を伴う発達障害の場合

 知的障害の診断がある方は、初診日が「生まれた日」になります。

3. 精神疾患での診断が発達障害の診断の前に出ている場合

精神疾患の初診日が、発達障害の診断前であった場合には「精神疾患の診断がされた初めての日」が初診日となります。ただし、発達障害の診断が出た医療機関と初めて精神疾患を受診した医療機関が異なる場合は、初めて精神疾患を受診した医療機関に問い合わせが必要です。

参考:不支給期間とは?

参考:労務不能期間とは?

大人の発達障害で障害年金を受給するための注意点

大人の発達障害で障害年金を受給するためには、いくつか注意点があります。

働きながら申請する場合

障害者として働きながら障害年金を申請する場合、申請書類には実際の就労状況が正確に反映されるよう心がけることが重要です。

診断書を作成する際には、雇用形態、仕事の内容、会社から受けている配慮、帰宅後や休日の体調など、自身の状態を細かく医師に伝えてください。

実際の就労状況が無理をしている場合や、帰宅後には疲労がたまり何もできない状態などがある場合でも、これらの実態を医師に適切に伝えることが求められます。

医師とのコミュニケーションを大切にし、定期的に状況を共有することで、診断書には実際の状態が正確に反映されるよう心掛けましょう。診察の際に話すことを忘れてしまう場合はメモを渡すなども効果的です。

これにより、申請書類が実態に即したものとなり、適切な受給ができる可能性が高まります。

障害年金を受給していることを会社に知られる?

障害年金をもらっていることって会社に知られる?」という疑問が沸く方もおられるでしょう。

障害年金を受給しているかどうかについては、本人が会社に申告しない限り、会社に知られることはありませんので、ご安心ください。

障害年金は非課税であり、社会保険料にも影響を与えないため、年末調整の際に申告する必要がなく、また年金事務所から会社へ通知されることもありません。また、マイナンバーを使用して会社が情報を取得することもできません。

ただし、健康保険の傷病手当金を請求する際には、申請書に障害年金の受給有無を記入する欄があるため、この手続きを会社経由で行う場合は、その時点で知られる可能性はあります。

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一人暮らしをしている場合

発達障害やその他の精神疾患を抱える障害者にとって、障害年金の審査では就労状況と同様に、生活状況も非常に重要な判断材料となります。

特に一人暮らしをしている場合は、審査において大きな影響を与える可能性があります。

障害年金の審査は書類審査が主体であり、「一人暮らし=自立ができている」と評価されることがありますが、一人暮らしをしている方でも、さまざまな理由で自立が難しい状況にある場合もあります。

例えば、部屋が整理できずにゴミ屋敷になっている、家事ができずに栄養失調になっているなど、実際の状態は自立しているとは言えないことも多々あるのではないでしょうか?

また、一人暮らしをしていても、日常的に家族の援助や福祉サービスを受けて生活が成り立っている場合もあります。

障害年金を申請する際は、「一人暮らしである理由」を必ず申請書類に明記しましょう(例:母親と二人暮らしだったが母親が死亡したなど)。また、援助を受けている場合は、その内容も具体的に記載することが重要です。

援助がない場合でも、援助がないことで生活が成り立っていない状況を記載し、実態を正確に伝えることが必要です。

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障害年金の申請手続きの流れ

以下にご自身で申請を行う場合のおおまかな申請方法を記載していますので参考になさってください。

STEP 1. 年金事務所で初回年金相談を受ける

障害年金の申請を考えている場合は、最寄りの年金事務所で初回の年金相談を受けます。相談では、申請に必要な情報や書類、手続きについての基本的な説明を受けることができます。

STEP 2. 医師に診断書の作成を依頼する

障害年金の申請には医師の診断書が必要です。診断書は、主治医や専門医に相談し、障害の程度や影響について正確に詳細に記載してもらいます。この診断書は後の手続きで重要な役割を果たします。

STEP 3. 病歴・就労状況等証明書を作成する

病歴や過去の就労状況に関する証明書を作成します。これには、過去の医療記録や雇用歴、勤務内容、特に障害がどのように影響してきたかなどを具体的に示す必要があります。この証明書も障害年金の申請において重要な要素となります。

以下の記事にも障害年金の申請手順については触れています。

こちらも参考に:障害年金申請は「診断書」が9割!押さえるべき3つの注意点と流れ

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