スルピリド(ドグマチール)とは?
スルピリドは、統合失調症、うつ病・うつ状態、胃・十二指腸潰瘍などの治療に用いられる薬です。日本では、ドグマチール、アビリット、スルピリドなどの名称で処方されています。
スルピリドは、もともと胃薬として開発された薬ですが、抗精神病薬や抗うつ薬としても効果があることがわかり、現在ではこれらの目的で用いられることが多くなっています。
低用量では抗うつ効果があり、高用量では抗精神病作用が期待されます。
近年では主に抗うつ剤として使用され、胃薬や抗精神病薬としての使用は少ない傾向にあります。
この薬はドパミンを増加させる作用があり、早い効果が期待され、落ち込みの改善に対症的に使用されます。安全性は高く、胃薬としても使われていますが、女性ではプロラクチンが上昇する可能性があり、生理に影響を及ぼすことがあります。
参考:ドーパミンとは?
参考:ドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用とは?参考:プロラクチンとは?
ドグマチールの効果が期待できる病気
ドグマチールは、胃薬として開発された薬ですが、中枢神経にも作用するため、抗うつ薬や統合失調症の治療薬としても用いられています。
参考:中枢神経刺激薬とは?
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胃薬としてのドグマチール
ドグマチールは、胃の粘膜を保護する作用、胃の運動を活発にする作用、吐き気を抑える作用があります。
- 胃の粘膜を保護する作用:粘液血流を増加させ、粘液の分泌を促進する。
- 胃の運動を活発にする作用:アセチルコリンを増加させて胃の運動を活発化させる。
- 吐き気を抑える作用:嘔吐中枢を抑制する。
これらの作用により、胃の炎症や潰瘍を予防・改善し、食欲不振を改善する効果が期待できます。
参考:アセチルコリンとは?
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抗うつ薬としてのドグマチール
ドグマチールは、低用量ではドパミンを増加させる作用があります。
ドパミンは、脳内の神経伝達物質の一種で、気分や意欲、運動などに重要な役割を担っています。ドパミンが不足すると、うつ症状が現れることが知られています。
ドグマチールは、低用量でドパミンを増加させることで、うつ症状の改善に効果が期待できます。
参考:神経伝達物質とは?
統合失調症の治療薬としてのドグマチール
ドグマチールは、高用量ではドパミンをブロックする作用があります。
統合失調症は、脳内のドパミンが過剰に分泌されることが原因と考えられています。ドグマチールは、高用量でドパミンをブロックすることで、統合失調症の症状の改善に効果が期待できます。
参考:統合失調症とは?
ドグマチールの適応が正式に認められている病気
ドグマチールの公式に認められている適応症は以下の通りです。
- 胃・十二指腸潰瘍(1973年)
- 統合失調症(1979年)
- うつ病・うつ状態(1979年)
ドグマチールは胃薬として開発されましたが、患者が使用するうちに気分を明るくする効果が明らかになりました。また、高用量での使用によりドパミンをブロックする作用から、統合失調症の治療にも有効であることが分かりました。現在では主にうつ病・うつ状態の治療に使用されており、新しい薬の登場に伴い、胃薬や統合失調症治療薬としての使用は減少しています。この抗うつ剤は、胃の調子を整えつつ食欲を回復させ、徐々に気分を明るくする効果があり、広く使われています。
保険適応(日本)
「胃・十二指腸潰瘍」「統合失調症」「うつ病・うつ状態」に対して認められています。
禁忌(日本)
・本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある患者
・プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)がある患者
・褐色細胞腫の疑いがある患者
参考:過敏症とは?
参考:下垂体腫瘍とは?
参考:褐色細胞腫とは?
歴史
ドグマチールは、フランスの製薬会社であるロシュ社によって開発された薬です。1963年に胃薬として発売され、その後、抗うつ薬や統合失調症の治療薬としても用いられるようになりました。
ドグマチールの開発は、1950年代に始まりました。ロシュ社は、胃炎や胃潰瘍の治療薬を開発する目的で、ドパミン受容体に作用する薬の研究を行っていました。
1963年に、ドグマチールは胃薬として発売されました。ドグマチールは、胃の粘膜を保護する作用、胃の運動を活発にする作用、吐き気を抑える作用があり、胃炎や胃潰瘍の治療に効果的であることが認められました。
1970年代に入ると、ドグマチールの抗うつ作用や統合失調症の治療効果が明らかになってきました。ドグマチールは、低用量ではドパミンを増加させる作用があり、うつ症状の改善に効果的であることが示されました。また、高用量ではドパミンをブロックする作用があり、統合失調症の症状の改善に効果的であることも示されました。
現在、ドグマチールは、うつ病・うつ状態、統合失調症、胃炎・胃潰瘍の治療に用いられています。
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参考:神経伝達物質とは?
作用メカニズム
代表的なベンザミド系抗精神病薬です。
D2受容体、D3受容体を遮断しますが、それ以外の受容体にはほとんど作用しません。鎮静作用が弱い薬剤です。
統合失調症の治療薬として
脳内のドーパミン受容体をブロックします。幻覚や妄想などの精神病症状は、通常、ドーパミンの過剰な活動が関与していますが、中程度から高用量のスルピリドはドーパミンの機能を制御し、これらの症状を軽減することが可能です。
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うつ病の治療薬として
スルピリドは、ドーパミン分泌に作用する薬です。少量で用いた場合、ドーパミン分泌を促すシステム(シナプス前ドーパミン自己受容体)のみを抑制し、逆にドーパミン分泌が増加します。
うつ病では、脳内のドーパミン活性が下がっているため、ドーパミン分泌を増やすことで、うつ症状の改善が期待できます。そのため、スルピリドを抗うつ薬として用いる場合、少量から開始することが重要です。
抗うつ効果が現れないからといって、安易に増量すると、逆にドーパミン分泌が抑制され、うつ症状が悪化する可能性があります。スルピリドを服用する際は、必ず医師の指示に従って、適切な用量を服用するようにしましょう。
スルピリドは、ドーパミン分泌に作用する薬です。少量で用いた場合、ドーパミン分泌を促すシステム(シナプス前ドーパミン自己受容体)のみを抑制し、逆にドーパミン分泌が増加します。
うつ病では、脳内のドーパミン活性が下がっているため、ドーパミン分泌を増やすことで、うつ症状の改善が期待できます。そのため、スルピリドを抗うつ薬として用いる場合、少量から開始することが重要です。
抗うつ効果が現れないからといって、安易に増量すると、逆にドーパミン分泌が抑制され、うつ症状が悪化する可能性があります。スルピリドを服用する際は、必ず医師の指示に従って、適切な用量を服用するようにしましょう。
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参考:ノルアドレナリンとは?
胃・十二指腸潰瘍の治療薬として
胃や腸などの末梢組織では、ドーパミンD2受容体が存在しています。スルピリドは、末梢D2受容体を遮断することで、胃酸の分泌を抑制し、胃の運動を活発化させます。
これらの作用により、胃粘膜の血流が改善され、胃潰瘍の予防・改善に効果が期待できます。また、消化管運動が促進されることで、食欲不振の改善にも効果が期待できます。
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参考:医療保護入院とは?
ドグマチールの特徴
メリット
- 気分の改善効果が期待できる
- 効果が出るまでの時間が短い
- 吐き気が少なく、食欲が増加する
- 胃薬として使われていたことから、心理的な抵抗が少ない
- ジェネリック医薬品が発売されているため、薬価がリーズナブル
参考:ジェネリック医薬品とは?
デメリット
・効果がマイルド
スルピリドは、他の抗うつ薬と比べて、効果がマイルドであると言われています。そのため、重症のうつ症状には効果が不十分な場合があります。
・高プロラクチン血症
スルピリドは、プロラクチンの分泌を促進する作用があります。プロラクチンは、乳汁分泌や月経周期を調節するホルモンです。高プロラクチン血症になると、乳汁分泌や月経異常などの副作用が起こることがあります。特に女性は、高プロラクチン血症による副作用に注意が必要です。
・錐体外路症状
スルピリドは、錐体外路症状(手足の震え、こわばり、歩行障害など)が起こることがあります。錐体外路症状は、抗うつ薬や抗精神病薬に共通する副作用です。
参考:錐体外路症状とは?
参考:アカシジアとは?
ドグマチールの効果
ドグマチールには、用量によって以下のような効果が期待できます。
- 低用量:抗うつ剤・胃薬
- 高用量:抗精神病薬
ドグマチールの抗うつ剤として、以下のような特徴を持ちます
- ドパミンを増加させる
- 早く効果が認められる
- 効果としてはマイルド
- 胃の働きを整える
ドグマチールはうつ状態の患者さんのうち、以下のような方に効果が期待できます。
- 気分反応性がある(良いことがあると体が軽くなる)
- 過眠症状がある
- 倦怠感が目立つ
- 興味がわかない
- 食欲がわかない
ドパミンは報酬系の機能に関係していて、やりがいや達成感を感じたときにドパミンが分泌されます。
そういったときは体が軽くなったり、眠気が取れたり、意欲や興味が自然とわいてくるかと思います。
多くの抗うつ剤は効果が少しずつ発揮されますが、ドグマチールは効果が早いのが特徴です。
このため、ドグマチールの効果はマイルドではありますが、うつ症状を緩和するために対症的に使われることが多いです。
胃薬としても使われることから、お薬を使っていくにあたっての心理的な抵抗が少ないこともメリットとして大きいです。
胃酸を抑える効果は認められませんので、胃潰瘍や逆流性食道炎など、胃酸が問題となる病気には使われません。
ドグマチールは胃の粘膜を増やし、動きを整える作用が期待できますので、胃もたれがあって、食思不振がある場合などに使われます。
抗精神病薬としては近年は使われることは少ないですが、鎮静作用が少ないことから、興奮が目立たずに落ち着いている方が適応になります。
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ドグマチールの副作用
ドグマチールの副作用としては、高プロラクチン血症や錐体外路症状に注意が必要です。他の抗うつ剤とは作用メカニズムが異なり、副作用の特徴も異なります。他の抗うつ剤で多い副作用は、そこまで目立ちません。
ドグマチールは抗うつ剤として低用量で使われることが多いので、とくに高プロラクチン血症が問題となります。お薬承認時と市販後調査でのドグマチールの副作用頻度は、睡眠障害(2.88%)、振戦(1.28%)、眠気(1.22%)、月経異常(1.17%)、アカシジア(0.99%)、乳汁分泌(0.88%)となっています。
このうち、月経異常と乳汁分泌は高プロラクチン血症になります。振戦とアカシジアは、錐体外路症状になります。
便秘・口渇 | ふらつき | 眠気 | 体重増加 | 嘔吐・下痢 | 性機能障害 | 不眠 | ||
トリプタノール | 三環系 | +++ | +++ | +++ | +++ | ± | ++ | – |
トフラニール | 三環系 | ++ | ++ | + | ++ | ± | ++ | + |
アナフラニール | 三環系 | +++ | ++ | + | ++ | + | ++ | + |
アモキサン | 三環系 | + | + | + | ++ | – | ++ | ++ |
ノリトレン | 三環系 | ++ | + | + | ++ | – | ++ | + |
テトラミド | 四環系 | + | + | ++ | + | – | + | – |
ルジオミール | 四環系 | ++ | ++ | ++ | ++ | – | ++ | – |
ルボックス/デプロメール | SSRI | + | – | + | + | +++ | + | + |
パキシル | SSRI | + | – | + | ++ | ++ | +++ | ++ |
ジェイゾロフト | SSRI | – | – | ± | + | ++ | +++ | ++ |
レクサプロ | SSRI | – | – | + | + | ++ | ++ | ++ |
サインバルタ | SNRI | – | ± | ± | ± | ++ | ++ | ++ |
イフェクサー | SNRI | – | ± | ± | ± | + | ++ | + |
トレドミン | SNRI | – | ± | ± | ± | + | ++ | + |
リフレックス | NaSSA | – | ++ | +++ | +++ | – | + | – |
デジレル / レスリン | その他 | – | + | ++ | + | + | + | – |
ドグマチール | その他 | ± | ± | ± | + | – | + | ± |
トリンテリックス | その他 | – | – | ± | ± | ++ | + | + |
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参考:肝薬物代謝酵素とは?
ドグマチールの剤形と薬価
ドグマチールは、1963年に胃薬として発売された薬です。その後、抗うつ薬や抗精神病薬としての作用も明らかになり、現在ではさまざまな用途に用いられています。
ドグマチールの剤形は、以下のとおりです。
- 錠剤:50mg、100mg、200mg:ドグマチール錠
- カプセル:50mg(ジェネリックのみ):ドグマチールカプセル
- 細粒:10%、50%:ドグマチール細粒
- 筋注:50mg、100mg:ドグマチール筋注
注射薬は、統合失調症の治療薬として使われていましたが、現在はほとんど使われていません。
薬価は、ジェネリック医薬品であるスルピリド錠の発売により、リーズナブルになってきています。
剤形 | 先発品 | ジェネリック |
---|---|---|
錠剤(50mg) | 10.1円 | 6.4円 |
錠剤(100mg) | 11.0円 | 6.4円 |
錠剤(200mg) | 14.3円 | 8.0円 |
カプセル(50mg) | – | 6.4円 |
細粒(10%) | 11.1円/g | 6.3円/g |
細粒(50%) | 25.9円/g | 14.0円/g |
筋注(50mg) | 89.0円 | – |
筋注(100mg) | 130.0円 | – |
自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
ドグマチール・アビリット・ミラドールのジェネリック(スルピリド錠)
ドグマチールは、1973年に発売されたお薬です。3社で開発されたため、それぞれの会社で先発品として別々の名前で発売されました。
- ドグマチール錠(日医工)
- アビリット錠(興和)
- ミラドール錠(大塚製薬)
これらの先発品は、製造元が異なるだけで、有効成分や効果は同じです。
ドグマチールの先発品は、発売から10年ほどは成分特許により、独占的に販売することができました。しかし、特許が切れたため、現在はジェネリック医薬品が発売されています。
ジェネリック医薬品は、先発品と同じ有効成分で、効果や安全性が同等であることを証明したお薬です。そのため、先発品に比べて薬価が安くなっています。
ドグマチールのジェネリックは、かつてはさまざまな名称で発売されていました。しかし、現在では一般名(成分名)の「スルピリド錠」として統一されています。
スルピリド錠は、複数の製薬会社から発売されています。これらのお薬は有効成分は同じですが、製造方法や製剤工夫が異なるため、それぞれに微妙な違いがあります。
しかし、ジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
そのため、先発品とジェネリックで、大きな薬効の差を感じることは少ないと考えられます。ただし、中には実感の違いがある方もいます。そのような場合は、もちろん先発品のまま使うことも可能です。
こちらも参考に:社会不適合者とは?特徴・生き方・向いている仕事について
参考:意欲障害とは?
ドグマチールの作用機序
ドグマチールは、脳内の神経伝達物質であるドパミンに作用する薬です。ドパミンは、脳の中でさまざまな働きをしていますが、ドグマチールの作用に関係する働きは、大きく4つあります。
- 中脳辺縁系:陽性症状の改善(幻聴や妄想)
- 中脳皮質系:陰性症状の出現(感情鈍麻や意欲減退)
- 黒質線条体:錐体外路症状の出現(パーキンソン症状やジストニア)
- 視床下部下垂体系:高プロラクチン血症(生理不順や性機能低下)
嘔吐中枢は、脳の奥にある領域で、嘔吐を起こす働きをしています。ドグマチールは、この嘔吐中枢にあるドパミン受容体を遮断することで、嘔吐を抑制します。
また、ドグマチールは、胃の運動を促進するアセチルコリンの分泌を促進する作用もあります。アセチルコリンは、胃の運動を促進する神経伝達物質です。ドグマチールは、このアセチルコリンの分泌を促進することで、胃の働きを改善します。
参考:ジストニアとは?
参考:アセチルコリンとは?
ドグマチールの用法と効果のみられ方
ドグマチールは、病気によって用法・用量が異なります。
【うつ病・うつ状態】
- 維持量:150~300mg ※適宜増減可能
- 用法:1日2~3回
- 最高用量:600mg
【胃腸十二指腸潰瘍】
- 維持量:150mg ※適宜増減可能
- 用法:1日2~3回
【統合失調症】
- 維持量:300~600mg ※適宜増減可能
- 用法:1日2~3回
- 最高用量:1200mg
上記のようにドグマチールは、病気によって使い方が異なります。
- 低用量:うつ状態・胃薬
- 高用量:統合失調症
が適応となっています。
ドグマチールは、1日2~3回で使っていきます。開始用量は50~150mgです。
飲み始めの副作用はそこまで目立たないために、効果と副作用のバランスを見ながら開始用量を決めていきます。
こちらも参考に:ADHD(注意欠如・多動症)の薬 | アトモキセチン(ストラテラ)について
こちらも参考に:就労移行支援とは
ドグマチールの半減期
ドグマチールの半減期は8時間、最高血中濃度到達時間は2~3時間です。
半減期とは、血中濃度が半分になるまでの時間のことです。半減期が短い薬は、血中濃度の変化が早く、効果の持続時間が短くなります。半減期が長い薬は、血中濃度の変化が遅く、効果の持続時間が長くなります。
最高血中濃度到達時間とは、血中濃度がピークになるまでの時間のことです。最高血中濃度到達時間が短い薬は、すばやく効果を発揮します。最高血中濃度到達時間が長い薬は、徐々に効果を発揮します。
ドグマチールの服用方法
ドグマチールは、半減期が8時間と短いため、1日2回以上の服用が必要です。1回あたりの服用量は、医師の指示に従ってください。
ドグマチールは、効果が認められるのが早く、効果をみながら増減していきます。
参考:半減期とは?
参考:最高血中到達時間とは?
ドグマチールの副作用の対処法
ドグマチールと眠気・不眠
承認時と市販後調査での眠気と不眠の副作用頻度は、以下のとおりです。
副作用 | 承認時 | 市販後調査 |
---|---|---|
不眠(睡眠障害) | 1.9% | 2.83% |
眠気(傾眠) | 0.8% | 1.22% |
このように、ドグマチールは眠気も不眠もどちらも認められます。
眠気の原因
ドグマチールで眠気がみられる原因は、以下の2つが考えられます。
- わずかな抗α1作用や抗ヒスタミン作用による直接的な眠気
- ドパミンの作用を抑えることで、興奮を高めてしまい、その反動で眠気が強くなってしまう
不眠の原因
ドグマチールで不眠がみられる原因は、以下の2つが考えられます。
- ドパミンの作用を抑えることで、興奮を高めてしまい、その反動で不眠になってしまう
- アカシジアを引き起こすことで、落ち着きがなくなり、不眠になってしまう
対処法
眠気や不眠などの副作用が認められた場合は、以下の対処法が考えられます。
眠気
- 慣れるまで待つ
- 服用のタイミングを変える(夕食後や就寝前)
- お薬の量を減らす
- 他のお薬に変更する
不眠
- 慣れるまで待つ
- 睡眠の質の改善を図る(生活習慣やお薬)
- 服用のタイミングを変える(朝食後)
- お薬の量を減らす
- 他のお薬に変更する
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参考:前頭前野とは?
ドグマチールと体重(太る?痩せる?)
ドグマチールは、胃の働きを整えて食欲を増加させる作用があります。そのため、体重増加のリスクがあるお薬です。
ドグマチールの承認時と市販後調査での体重増加の副作用頻度は、0.69%と0.34%となっており、大きな差は認められません。しかし、食欲にまかせて食事をしていると、体重増加してしまう可能性があります。
ドグマチールで体重増加してしまった場合の対処法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 生活習慣を見直す
- 運動習慣を取り入れる
- 食事の際によく噛むようにする
- お薬の量を減らす
- 他のお薬に変更する
具体的には、以下のようなことを心がけてみましょう。
- 食事の量を減らす
- 間食を控える
- 野菜や食物繊維を多く摂る
- たんぱく質をしっかり摂る
- 適度な運動をする
こちらも参考に:年金証書の再発行・再交付。必要な書類と手続き
こちらも参考に:炭酸リチウム(リーマス)の特徴・作用・副作用
ドグマチールと高プロラクチン血症
ドグマチールは、下垂体で必要なドパミンのブロックにより、プロラクチンと呼ばれるホルモンの分泌を増加させてしまいます。
プロラクチンは母乳の分泌を促進するホルモンであり、主に授乳中の女性に分泌されます。そのため、ドグマチールの使用によって授乳中のような状態が生じることがあります。
高プロラクチン血症になると、以下のような副作用が現れます。
- 急激な母乳の分泌(乳汁分泌)
- 生理が遅れる(生理不順)
- 不妊になる(無排卵・無月経)
男性では、次のような副作用がみられる可能性があります。
- 胸が膨らんでくる(女性化乳房)
- 性欲が低下する(性機能低下)
プロラクチンの値を調べるための採血検査により、高プロラクチン血症かどうかが判明します。ドグマチールは脳に移行しにくいため、脳の外にある下垂体に作用しやすく、高プロラクチン血症が比較的頻繁に発生します。
高プロラクチン血症が確認された場合は、お薬の減量や他のお薬への変更が検討されることがあります。結果的には、お薬の変更がよく選択されます。
参考:プロラクチンとは?
参考:高プロラクチン血症とは?
ドグマチールと錐体外路症状
ドグマチールは、量が増えていくにつれて錐体外路症状の副作用が認められやすくなります。しかし、低用量で使われることが多く、このため問題となることは少ないです。
錐体外路症状とは、運動調節に関係する神経系の異常による症状のことです。私たちは、特に意識せずにスムーズに体を動かすことができます。その背後には、錐体外路を通っている神経が、筋肉の働きなどを勝手に微調整してくれています。
錐体外路の働きにはドパミンが重要な役割をしていて、ドパミンが過剰にブロックされてしまうことで、以下の症状が認められます。
- アカシジア:ソワソワして落ちつかない
- ジストニア:筋肉の異常な緊張(眼球上転・首がつっぱる)
- パーキンソニズム:筋肉のこわばりや振戦(ふるえ)
これらの症状は、お薬を増量した直後に認められることが多いですが、服用を続けて行く中で少しずつ症状が目立ってくることもあります。
ドグマチールで錐体外路症状が認められた場合の対処法は、以下のとおりです。
- 慣れるまで待つ
- お薬を併用する(抗不安薬・βブロッカー・抗コリン薬)
- お薬の量を減らす
- 他の抗精神病薬に変更する
具体的には、
- アカシジア:抗不安薬やβブロッカーを併用する
- ジストニア:抗コリン薬を併用する
- パーキンソニズム:お薬の量を減らす、他の抗精神病薬に変更する
といった方法があります。
なお、錐体外路症状は、重症化すると日常生活に支障をきたす可能性があるため、早めに医師に相談することが大切です。
こちらも参考に:発達障害と障害者手帳 取得できる条件や手帳の種類や申請手順について解説
こちらも参考に:炭酸リチウム(リーマス)の特徴・作用・副作用
ドグマチールの離脱症状と減薬方法
ドグマチールは離脱症状が比較的少ない薬ですが、長期間の使用においては離脱症状が認められることがあります。そのため、長期服用の場合は徐々に量を減らしていく必要があります。
ドグマチールの離脱症状には以下があります。
- ドパミン作動性の離脱症状: 幻覚や妄想(過感受性精神病)、アカシジア、ジスキネジア
- コリン作動性の離脱症状: 精神症状(不安・イライラ)、身体症状(不眠・頭痛)、自律神経症状(吐き気・下痢・発汗)
ドグマチールは低用量で使用されることが一般的であり、そのためドパミン作動性の離脱症状が起こりにくい傾向があります。抗コリン作用もほとんどないため、コリン作動性の離脱症状も目立ちません。
ただし、ドグマチールを長期間にわたって服用している場合は、慎重に減量を進める必要があります。離脱症状が著しくなる場合は、元の薬の量に戻し、減量のペースをゆるやかに調整していくことが一般的です。漸減法を用いて徐々に減量していくのが一般的な方法です。
参考:漸減法とは?
参考:隔日法とは?
ドグマチールの運転への影響
製薬会社は、心の病気の治療薬について、「眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性がある」ため、ほとんどのお薬で運転や危険作業を禁止しています。
ドグマチールの添付文書にも、「ときに眠気、めまい等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。」と記載されています。
しかし、運転ができないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあるため、自己責任にはなりますが、服用しながら運転されている方もおられます。
初めて服用したときや他のお薬からの切り替えをしたとき、量を増減させているとき、体調不良を自覚したときは、無理をせず、運転は控えた方が良いでしょう。
こちらも参考に:強度行動障害とは?原因や症状、対応や支援について
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ドグマチールの妊娠・授乳への影響
妊娠に対するドグマチールの影響について考察してみましょう。ドグマチールの添付文書には、
「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。」
と記載されています。もちろん、妊娠中は薬物摂取を避けるのが理想的ですが、病状が不安定になる可能性がある場合は、医師の指導のもとで最小限の投与を続けることがあります。
ドグマチールは奇形のリスクに関する報告はなく、主な影響は以下の点です。
- 妊娠しにくくなる可能性(高プロラクチン血症)
- 赤ちゃんの一時的な離脱症状や錐体外路症状
高プロラクチン血症になると、乳汁分泌、生理不順、不妊などの副作用が現れる可能性があります。
授乳中の女性にとっては使いにくいお薬とされています。また、赤ちゃんには離脱症状や錐体外路症状が報告されていますが、これらは通常後遺症が残るものではなく、産科医に報告すれば安心できるでしょう。
次に、授乳への影響を見てみましょう。ドグマチールの添付文書には、
「授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。」
と記載されていますが、具体的なネガティブな報告はないようです。
母乳は赤ちゃんにとって良い影響があるとされており、ドグマチールの成分が母乳を通して伝わることは確認されています。ただし、乳児の検診で問題があれば医師と相談することが重要です。
参考:肝薬物代謝酵素とは?
参考:物質依存とは?
海外の妊娠と授乳に関する基準
妊娠中の薬剤服用は、胎児や母体に影響を及ぼす可能性があるため、慎重な判断が必要です。海外では、妊娠と授乳に関する薬剤の安全性を評価する基準がいくつか定められています。
妊娠への影響
- FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準
- A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
- B:ヒトでの危険性の証拠はない
- C:危険性を否定することができない
- D:危険性を示す確かな証拠がある
- ×:妊娠中は禁忌
授乳への影響
- Hale授乳危険度分類
- L1:最も安全
- L2:比較的安全
- L3:おそらく安全・新薬・情報不足
- L4:おそらく危険
- L5:危険
授乳についても、明らかなネガティブな報告は無いため、ご自身での判断にはなりますが、ドグマチールを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。
こちらも参考に:うつ病で現れる初期症状・行動・対策や仕事復帰を目指すときのポイント
こちらも参考に:リワークプログラム・リワーク支援(心療内科・精神科)とは | メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰
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