依存症になりやすい人の特徴と原因について

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依存症になりやすい人はどんな人ですか?

精神的な課題に直面している人、自己意識が低く意志が弱い人、またコミュニケーション能力が制限されている人が依存症に陥りやすいとの見解は一般的です。また、「自分が甘いから何かに依存している」といった自己評価が依存症患者に共通して見られるため、多くの人が依存症に対して厳しい見方をすることがあります。

しかしながら、実際に依存症になる患者の多くは責任感が強く、真面目で自己認識力の高い方が多いことがあります。依存症に陥る結果として、自暴自棄になったり、周囲に理解されにくい行動をとったり、状況に混乱したり、他人を非難することで自分を守ろうとする方もいます。依存症に陥る背景やその対応は人それぞれ異なるため、理解とサポートが重要です。

責任感の強い元々の性格を持つ依存症の方々は、周囲からの高い評価や信頼を受ける一方で、その期待に応えようとするプレッシャーを感じることがあり、その結果として身動きが取りにくくなる傾向があります。このプレッシャーによって引き起こされる情緒不安定な状態に対処するため、アルコールや煙草の摂取が増えたり、苛立ちや暴力的な衝動に駆られたり、特定の行動や人間関係に偏ってのめり込んでしまうことがあります。

少しでもお酒や煙草の摂取が増え、苛立ちや暴力的な思考が生じているなどの些細な変化は、心からのSOSサインと考えることができます。また、依存症になりやすい完璧主義者などの厳しい性格の方はストレスを抱えやすく、他の精神疾患との併発も起こしやすい傾向にあります。

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依存症の原因

依存症とは、自分の意思で行動や欲望を制御できなくなった状態を指します。薬物依存以外の行動依存形成は、主にドーパミンと密接な関係があります。ドーパミンは脳の「快楽物質」であり、快感、達成感、驚き、新しいことを行ったときに報酬のシグナルを与える役割を果たします。従って、ある行動によって興奮や楽しさを感じたときには、ドーパミンが分泌されます。このドーパミンの反応は普通の反応であり、一般の人も楽しい経験に対してドーパミンが分泌されるのは自然なことです。(厳密には、ドーパミンだけでなくエンドルフィンなども関与していますが、ここでは割愛します。)

依存症の原因については、今なお多くの専門機関で研究が進んでおり、依存症の原因や治療方法は日々の研究進捗によって更新され、医療現場にも反映されています。以下では、代表的なものをいくつか紹介いたします。

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遺伝的脆弱性

近年の研究によると、物質依存症の発症が遺伝と関連しているとの報告があります。特にアルコール依存においては、家族内での遺伝が数値的に確認されています。アルコール依存者の約3人に1人は、アルコールを乱用する親を持っており、アルコール依存の父を持つ子どもの4人に1人は、自身がアルコール依存になりやすいとされています。双子研究では、アルコール依存の一致率が二卵性よりも一卵性の方が高いという結果が得られており、遺伝の影響が強い可能性が示唆されています。アルコール依存の発症において、遺伝要因が占める割合はおおよそ2分の1から3分の2と推定されています。たとえば、アルコールを体内で分解する酵素を生まれつき多く持っているかどうかは、アルコールに対する体質の違いに影響を与えます。この体質がアルコール依存症の遺伝に大きく関与していると考えられています。

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神経生物学的要素

アルコールや薬物を長期にわたって乱用すると、脳内の神経細胞の機能が変化し、報酬効果(快感や喜び)を徐々に得にくくなります。報酬を得るためにはより頻繁に、そしてより多くの薬物を使用するようになります。たとえば、アルコール使用者の場合、心地よい酔いを感じるために摂取するアルコール量が徐々に増えていくことがあります。近年の研究結果によれば、脳内の神経細胞の変化が不安や抑うつ症状の原因となり、これらの精神症状を緩和するためにますます物質を使用する傾向があると報告されています。

参考:ドーパミンとは?
参考:行動援護とは?

 

条件づけと使用欲求

ストレスや不安を解消し、気分を改善するためにアルコールや薬物を使用することで、徐々に使用量が増加し、結果として依存症になることがあります。このメカニズムは「条件づけ」と呼ばれる理論に基づいています。条件づけ理論によれば、報酬によって強化・学習された習慣が嗜癖行動として形成されます。一度楽しい・心地よい経験を得た行動が、次の行動の原因となり、その行動が繰り返されるというプロセスです。

ギャンブル依存などがいい例です。パチンコなどは、玉が出れば快楽物質が出ますが、必ず玉が出るとは限りません。フィーバーまでは、我慢のしっぱなし、つまり、強いストレスにさらされます。その状態から、フィーバーを迎えると、一気にドーパミンが放出されます。過剰なドーパミンの放出により耐性が生じ、同等の快楽を求めるようになり、依存が形成されます。

条件づけされた習慣化された物質使用と密接な関係にある刺激(注射針、薬物の売人、飲み屋、酒の臭い、テレビCMなど)が手がかりとなり、物質の使用欲求が誘発されることが研究結果として知られています。たとえば、暑い日に焼き鳥を見たり匂いをかいだりするとビールが飲みたくなるといった反応がこれに当たります。欲求は依存症の発症と持続だけでなく、再発にも関与することが報告されています。

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心の脆弱性

過去の研究では、依存症になりやすい性格や人格についての言及があったものの、近年では、特定の人格傾向が物質依存の原因となるかどうかは確定的でない(エビデンスが不足しているため)とされています。むしろ、物質に依存する結果として特定の人格傾向が生じる可能性が高いとされています。簡潔に言えば、例えばニコチン依存症の場合、その人の人格に問題があるという一般的な認識はあまりないと言えます。

参考:物質依存とは?

社会学習理論

成長環境や社会環境が、嗜癖行動の増進に影響を与えることがあります。例えば、子どもの頃から周囲の大人がアルコールを美味しそうに飲んで楽しんでいる姿を見て育つと、子どもはアルコールが美味しく、飲むことが楽しいものであると学びます。また、テレビのCMも同様に影響を与える可能性があります。このように、環境からの学習効果が嗜癖行動の原因として考えられます。

参考:嗜癖行動とは?

 

自己評価が低いと依存症になりやすい

そして、次に挙げられる理由は現代人の自己評価の低さです。依存自体は、精神的に安定しているときや、満たされているときには発生しません。

依存には様々な種類がありますが、その根底に共通しているものが、精神的な不安定さ、脆弱性、そして自己評価の低さです。現代人は、発達障害の影響を受けている方もおり、自己評価や自己効力が低い傾向があると言われています。

その理由としては、現代社会では努力しても必ずしも報われないことが多いからです。例えば、有名大学に入学したとしても、その後の保証がなく、東大出のフリーターも存在します。

また、職場でも、上司が多忙で余裕がないため、部下が頑張って成果を上げても、そのことを褒めたり認めたりすることが難しい状況があります。

そのような環境では、部下は「頑張った結果成功できた」という「成功体験」を得ることが難しいです。成功体験が積み重ならないと、自己評価が向上する機会がなくなります。自己効力も同様です。

自己評価や自己効力が向上しないと、自己への自信を持てず、依存傾向が高まりやすくなります。

参考:自己肯定感とは?

買い物依存は、自分を高く評価してもらえることに依存している

買い物依存もその一例です。会社や家庭で自分が頑張ったとしても、なかなか評価してもらえない現代社会では、依存に悩む人が増えています。買い物依存はかつては女性に多い傾向がありましたが、最近では男性の買い物依存症も目立ちます。

かつての職場では女性は虐げられ、仕事は男の世界とされていましたが、最近では女性も男性も同じように達成感や成功体験が得られにくい状況が続いています。しかし、買い物は達成感が得られやすい手段となります。ブランド品依存などがその一例で、ショップでの接客や商品の購入過程では、無条件に自分が認められていると感じる時間を得られます。

シンプルでわかりやすいシステムにより、買う行動だけで他者からの評価を受けられることが魅力です。このように、買い物を通じて自己評価の低さを他者の評価で埋めようとする傾向があります。そして、一度その単純明快な快楽を得ると、精神的な不安定さや脆弱性が根本にあるため、そこに依存してしまうのです。

 

完璧主義の人は依存症に陥りやすい

また、現代のように余裕が無い社会では、ASD特性が無かったとしても「0-100思想」(白黒思考)に陥りやすい傾向が見られます。悪い意味での完ぺき主義や幅の無い考え方をする人が増え、成功体験がなかなか得られません。このような傾向が根底にある理由は、物事を完璧に達成することがまず不可能であるためです。

例えば、完ぺき主義でなく、物事に幅をもたせることができる人であれば、「今日の仕事は、これくらいできた。80%も出来た。」と考えることができます。しかし、完ぺき主義の人は同じ状況でも、「あーあ、今日の仕事は20%も出来なかった。」と考えてしまいます。80%であったとしても、それは十分な成功体験なのですが、完ぺき主義な人は20%達成できなかったという視点で”失敗体験”として受け止めてしまいます。つまり、加点思考と減点思考の違いが現れています。

参考:自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性とは?
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強度行動障害とは?原因や症状、対応や支援について

 完ぺき主義な人は、「ねばならない」思考から依存症に

このような人は、サプリメント依存症や健康食材依存症に陥りやすい傾向があります。

通常、ほとんどの人は普段食べているもので、よほどの偏食、もしくは暴飲暴食などなければ、健康をキープできます。

誰でも一度くらいは雑誌などで「このサプリメントを使うと、健康になる。」、「この健康食品を食べると病気にならない。」などの広告を見て、健康食品やサプリメントを試したことがあるはずです。完ぺき主義でない人は、「あ~、自分は健康に気を使っているなぁ。さすが、私」とプラスで考えることができます。

しかし、完ぺき主義な人は、「この健康食品がなくては病気になってしまう。」、「サプリメントを取らなければ健康を維持できない」と「ねばならない」と考えてしまいます。

ここで勘違いしないで欲しいのは、完ぺき主義が一方的に悪いというわけではなく、自己評価が低い完ぺき主義が問題なのです。

拘ることは悪くないが、好ましい拘りと、好ましくない拘りを分別しないと、苦しみのスパイラルにはまってしまいます。

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依存症になりやすい人のよくある質問

Q
本人が来たがらない場合はどうすればよいでしょう?
A

ますは、ご家族が受診して、対応について相談することをお勧めします。依存症の問題行動は家族とのコミュニケーションによって悪化することも改善することもあります。本人との関係性が改善されれば、治療に繋げる機会も増えますので、今すぐご相談いただくことをお勧めします。

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Q
依存症の原因はドーパミン?
A

ストレスが強くかかる状況下では、脳のドーパミンシステムが異常に活性化され、ドーパミンに対して耐性が生まれ、より強い刺激を欲する傾向が生じます。この結果、脳は常にこの快楽を求め、同じ行動を延々と繰り返すようになります。

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