ADHDの診断を受けた方の中にはアトモキセチンを飲まれている方も多いのではないでしょうか?
筆者もアトモキセチンを8年服用しているので、個人的な所感も語っていきたいと思います。
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作用
アトモキセチン(ストラテラとして知られる先発医薬品)は、ノルアドレナリンの再取り込みを特異的に阻害し、シナプス間のノルアドレナリンとドパミンを増加させ、神経の機能を強化することで、不注意、多動・衝動性を改善すると考えられています。この薬は、主に肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6によって代謝されます。
前頭前野でのアトモキセチンの薬理作用
ADHDでは、前頭前野の機能低下が主に注意散漫や持続的な注意の困難を引き起こしているとされています。
前頭前野の機能は、主にドパミンとノルアドレナリンによって活性化されます。この領域では、ドパミンとノルアドレナリンが補完的に作用し、ノルアドレナリンの再取り込みが抑制されることでその濃度が上昇し、それに伴いドパミンも増加します。この結果、ドパミンとノルアドレナリンの増加により前頭前野の機能が正常化され、不注意などの症状が改善されると考えられています。
参考:前頭前野とは?
参考:ノルアドレナリンとは?
臨床試験
注意欠陥・多動性障害を持つ子供を対象にした臨床試験が実施されています。この試験では、58人が低用量(1.2mg/kg)、60人が高用量(1.8mg/kg)、61人がプラセボ(偽薬)を服用し、それぞれの効果を比較しています。効果の評価は、学校生活における不注意や多動・衝動性に関する18項目を4段階(0点~3点)で評価し、その合計点の変化を比較する方法で行われました。
試験の結果、2ヶ月後には低用量のグループで平均11点の改善(33点→22点)、高用量のグループで平均12点の改善(32点→20点)、プラセボグループで平均8点の改善(32点→24点)が見られました。期待されたほどの差は見られませんでしたが、薬を服用したグループの方がプラセボよりも症状の改善が大きい傾向が示唆されました(低用量では統計的な有意差は確認されませんでした)。なお、海外の臨床試験では、より良い結果が報告されています。
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特徴
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注意点
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【注意する人】
- パーキンソン病治療薬であるセレギリン(エフピー)、ラサギリン(アジレクト)、およびサフィナミド(エクフィナ)との併用は禁じられており、これらを使用する場合は2週間以上の間隔をあける必要があります。これは、両者の作用が重なり、「セロトニン症候群」という重篤な副作用を引き起こすリスクがあるためです。
- また、作用が重複するメチルフェニデート(コンサータ)や抗うつ薬との併用では、相互に作用が強まる可能性があります。特に、パロキセチン(パキシル)は、この薬の血中濃度を高める可能性があるため注意が必要です。
- さらに、喘息などで使用される気管支拡張薬(β刺激薬)との併用は、心血管系の副作用が強まる恐れがあります。その他にも、併用に注意が必要な薬が多数存在しますので、現在服用中または最近まで服用していた薬については、必ず医師に報告してください。
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他のADHD治療薬との使いわけ
デュロキセチン(サインバルタ)やイフェクサーSRなどのSNRIは、アトモキセチンと同様にノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用を持ち、ADHDに対しても効果があることが報告されています。
そのため、既にうつ病の治療でSNRIを使用しており、うつ症状とADHDの症状が併存する場合は、アトモキセチンを追加するよりもSNRIの増量を検討する方が適切でしょう。
また、うつ病とADHDが併存している場合で、既に十分な量のSNRIを服用している場合には、アトモキセチンを加えるよりもインチュニブの使用を検討する方が良い場合があります。
さらに、血圧が高い場合や双極性障害とADHDが併存している場合には、アトモキセチンの使用が症状を悪化させる可能性があるため、インチュニブが適した選択肢となることがあります。
また、ADHDと併存することが多いとされるチックに対しては、コンサータは使用が禁じられています。そのため、チックが併存する場合にはアトモキセチンが有力な選択肢となります。
さらに、アトモキセチンはADHDに伴う不安を軽減する効果も報告されており、不安が強い場合にはアトモキセチンが適した選択肢となることがあります。
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