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アリピプラゾール(エビリファイ)の効果と副作用

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アリピプラゾール(エビリファイ)とは?

アリピプラゾールは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)になります。 ドパミンの量を適切に調節してくれる作用があるため、DSS(ドパミン・システム・スタビライザー)と呼ばれています。 ドパミンが過剰な場合はその働きを抑え、不足している場合は働きを補ってくれるお薬になります。

このため、 統合失調症 の治療薬として開発されました。 それだけでなく、低用量では気分を持ち上げ、高用量では気分を抑える効果が期待できます。さらには気分の波を小さくして、気分や感情を安定させてくれます。

うつ病・うつ状態 、双極性障害(躁うつ病) 、自閉症スペクトラム障害での易刺激性 の治療薬としても使われています。 現在日本で発売されているDSSは1剤となります。 エビリファイ(一般名:アリピプラゾール):2006年発売 アリピプラゾールのセロトニン作用を強めたSerotonin-Dopamine Activity Modulator(SDAM)と呼ばれるお薬が発売されています。

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール) 当初はエビリファイという先発品のみでしたが、2017年よりジェネリック医薬品として、一般名(成分名)のアリピプラゾール錠として発売されています。

※以下では「エビリファイ」として、アリピプラゾールの効果や副作用をお伝えしていきます。 脳内の神経伝達物質であるドパミンなどの受容体に作用し、幻覚・妄想などの症状を抑え、不安定な精神状態を安定させるとともに、やる気がしない、何も興味が持てないといったような状態を改善させます。また、抑えることのできない感情の高まりや行動などの症状を改善します。 通常、統合失調症の治療、双極性障害における躁症状の改善、うつ病・うつ状態の治療、小児期(原則として6歳以上18歳未満)の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の治療に用いられます。

参考:DSS(ドパミン・システム・スタビライザー)とは?

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参考:SDAMとは?

エビリファイの効果・効能が期待できる病気

エビリファイは、以下のような効果・効能が期待されます。

  1. ドパミン部分作動薬としての効果:
    • ドパミンの調整: 適切なドパミン量を保ちます。
    • 過剰ドパミンの抑制: 幻聴や妄想の改善が期待されます。
    • 不足ドパミンの強化: ドパミンの働きを増強します。
    • 副作用の軽減: 適度なドパミンブロックで副作用が軽減されます。
  2. 気分安定薬としての効果:
    • 抗躁効果(やや強い): 気分の高まりを鎮めます。
    • 抗うつ効果(やや弱い): 落ち込みを改善します。
    • 再発予防効果(中程度): 気分の波を小さくし、再発を予防します。
  3. 適応症状:
    • 統合失調症
    • うつ病・うつ状態
    • 双極性障害(特に躁状態・混合状態)
    • 自閉症スペクトラム障害での易刺激性
    • 衝動のコントロールが難しい状態(認知症や青少年の行動障害など)
    • チック(トゥレット障害)
  4. その他の特徴:
    • 穏やかな鎮静と気分安定が期待され、衝動性のコントロールがしやすくなります。
    • 比較的少ない副作用があり、子供や高齢者にも適しています。
    • 過食の治療にも使用されることがあります。

なお、チックに対してもドパミンを抑える効果があり、エビリファイが有効であることが観察されています。

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エビリファイの統合失調症での効果

エビリファイは比較的副作用が少ないが、鎮静作用が薄い薬剤です。鎮静作用は興奮や衝動を鎮める作用であり、統合失調症の患者ではしばしば幻聴や妄想による混乱から著しい興奮が生じます。通常、このような症状に対処するためには鎮静作用が強い薬剤が使用されますが、エビリファイを使用する場合でも、鎮静作用が強い別の薬剤と併用する必要があります。

エビリファイは陽性症状である幻聴や妄想だけでなく、陰性症状や意欲の低下、感情の鈍麻、認知機能や感情の障害にも有効です。そのため、急性期よりも慢性期に使用されることが一般的であり、他の薬剤で陽性症状が収束した後にエビリファイに切り替えるケースも見られます。

エビリファイのうつ病・双極性障害での効果

双極性障害の躁症状では気分が高揚し、「判断力が損なわれる」、「怒りっぽくなる」など社会生活に困難をきたすことがあります。エビリファイはこれらの副作用を抑えつつ、患者がQOL(生活の質)を損なうことなく治療を継続できる選択肢として期待されています。

双極性障害においてエビリファイは以下のように使用されます。

  • 低用量:うつ病・うつ状態
  • 高用量:躁状態

この薬は低用量ではドパミンの働きを強化し、高用量ではドパミンの働きを抑えます。エビリファイの気分への作用は、主にドパミンとセロトニンの相互作用に関連していますが、その中でもドパミンの影響が大きいと考えられています。

ドパミンは報酬系の機能に関与しており、達成感ややりがいを感じたときに分泌されます。この際、体が軽く感じられたり、眠気が取れたり、意欲や興味が増すことがあります。そのため、うつ病やうつ状態の患者で、

  • 気分が反応性がある(良いことがあると体が軽くなる)
  • 過眠症状が見られる
  • 倦怠感が目立つ
  • 興味が湧かない

といった症状がある方に効果が期待できます。

こちらも参考に:反復性うつ病性障害/反復性短期抑うつ障害の診断基準症状・治療について

一方、躁状態では気持ちを穏やかにしていく効果が期待できます。エビリファイは双極性障害の躁状態に対しても確かな効果があります。通常、鎮静作用が強い薬剤はうつ病に転じる可能性があるが、エビリファイはそのリスクが低いとされています。さらに、気分安定作用も期待されています。

「エビリファイ」は世界で初めてのドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用を持つ抗精神病薬であり、国内では統合失調症の治療薬として2006年6月に販売が開始されました。双極性障害の躁症状に対する「エビリファイ」の有効性は、2004年に米国での承認を皮切りに、世界57か国・地域で適応が認められています。

参考:ドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用とは?

こちらも参考に:注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬の種類・効果効能・副作用の解説

エビリファイの適応が正式に認められている病気

エビリファイの正式な適応症は以下の通りです。

・統合失調症(2006年)

・双極性障害の躁状態(2012年)

・抗うつ剤で効果が不十分なうつ・うつ状態(2013年)

・小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性(2016年)

エビリファイは統合失調症の適応が認められて初めて発売されました。海外では双極性障害を含む気分安定薬として広く使用され、日本でも躁状態やうつ状態への適応が認められました。さらに、2016年には自閉症スペクトラム障害の易刺激性にも適応が認められました。

自閉症スペクトラム障害の患者は、コミュニケーションの質的な異常やこだわりの強さを特徴とします。これらの特徴により、環境への適応が難しく、柔軟な対応が難しいことがあります。癇癪を起こしたり、衝動性や攻撃性が見受けられることもあります。エビリファイはこうした患者に対して穏やかに気持ちを落ち着かせ、衝動性を効果的にコントロールする役割を果たします。

参考:易刺激性とは?

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海外での適応からみるエビリファイの効果

多くの薬が日本よりも海外で幅広い適応が認められていますが、エビリファイは日本でも同様の範囲で適応が認められています。アメリカでは、以下のような適応があります:

  • 統合失調症
  • 双極Ⅰ型障害に伴う躁病エピソード及び混合性エピソードの急性治療(アメリカ・イギリス)
  • 大うつ病性障害の補助療法(アメリカ:日本同様抗うつ剤との併用を前提)
  • 小児の自閉症における易刺激性
  • トゥレット障害の治療

これらの適応は、日本と同様に統合失調症の治療や双極性障害、大うつ病性障害、小児の自閉症における易刺激性の治療といった領域でエビリファイが使用されていることを示しています。異なるのは、アメリカでトゥレット障害の治療としても認められている点です。

エビリファイの特徴

メリット

  • 陰性症状や認知機能の改善が期待できる
  • 全体的に副作用が少ない
  • 気分安定作用が期待できる
  • 1日1回の服用で効果が期待できる
  • 複数の剤形が豊富に発売されている
  • ジェネリックが利用可能で、薬価がリーズナブル

デメリット

  • 鎮静作用が弱い(躁状態には弱いことも)
  • 陽性症状を悪化させることがある
  • アカシジアが多い報告

参考:アカシジアとは?

エビリファイの効果

神経伝達物質であるドパミンなどの受容体に作用し、幻覚や妄想などの症状を抑制し、不安定な精神状態を安定させると同時に、やる気が低下したり何も興味を持てない状態を改善します。また、抑制が難しい感情の高まりや行動などの症状も緩和します。通常、統合失調症の治療や双極性障害における躁症状の緩和、うつ病やうつ状態の治療、そして小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の治療に使用されます。

エビリファイには以下の特徴があります。

  • 幻聴や妄想の軽減
  • 躁状態やうつ状態の改善
  • 衝動性の制御

その効果の特徴としては、

  • 穏やかな鎮静作用
  • 全体的に少ない副作用
  • 認知機能や陰性症状の改善
  • 気分安定作用

他の抗精神病薬と比較すると、エビリファイは以下のような特性があります。

  • ドパミンに効果的に作用するが、部分作動薬として働く
  • ドパミンとセロトニン以外の作用は少ない

これにより、副作用が少なく全体的に安全である反面、興奮を完全に抑えきれず、陽性症状を進行させることがあるとされています。気分安定作用も期待でき、抗躁効果がやや強く、抗うつ効果はやや弱く、再発予防効果は中程度です。

エビリファイの副作用

エビリファイの副作用は一般的に比較的軽度です。昔の抗精神病薬と比較すると著しく副作用が減少し、使用しやすい薬となっています。他の新しい非定型抗精神病薬と比較しても、エビリファイは全体的に副作用が少ない傾向があります。

エビリファイの主な副作用の中で最も一般的なものはアカシジア(錐体外路症状)です。この副作用は、不快感でじっとしていることが難しくなるものであり、用量に関係なく生じることがあります。用量を増やすと発症しやすいのが眠気の副作用です。

うつの適応承認時におけるエビリファイの主な副作用頻度は以下の通りです。

  • アカシジア(28.1%)
  • 体重増加(10.1%)
  • 振戦(9.4%)
  • 傾眠(9.0%)
  • 不眠(7.3%)
  • 便秘(5.6%)

その他の主な副作用には不眠、神経過敏、不安、傾眠、アカシジア(じっとしていることができない)、振戦(手足の震え)、流涎(よだれが出る)、体重増加などがあります。これらの症状に気づいた場合は、速やかに担当の医師または薬剤師に相談してください。

まれに、以下のような症状が現れた場合は、直ちに医師の診療を受けてください。

  • のどが渇く、よく水を飲む、尿が多く出る[糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡]
  • 急激な発熱、手足のふるえ、筋肉のこわばり[悪性症候群]
  • 舌を動かしたり、出し入れしたり、絶えず噛むような口の動き[遅発性ジスキネジア]
  • 吐き気・嘔吐、便がでない、お腹が張る[麻痺性イレウス]
  • 脱力感、筋肉の痛み、赤褐色尿[横紋筋融解症]

これらの副作用に限らず、気になる症状が現れた場合は、医師または薬剤師に相談してください。

参考:中枢神経刺激薬とは?

参考:非定型抗精神病薬とは?

その他の向精神薬とエビリファイの副作用を比較

錐体外路
症状
高プロラク
チン血症
便秘・口渇ふらつき眠気体重増加
リスパダール(SDA)+++++±+++++
インヴェガ(SDA)++++±+±+
ロナセン(SDA)++++±±±
ルーラン(SDA)++±+++
ジプレキサ(MARTA)±+++++++++
セロクエル(MARTA)±±+++++++
シクレスト(MARTA)++±++++
エビリファイ(DSS)+±±±±±
レキサルティ(SDAM)+±±±+±
セレネース(定型)+++++±+++±
コントミン(定型)++++++++++++++

エビリファイの剤形と薬価

エビリファイにはジェネリック医薬品も存在し、アリピプラゾール錠として販売されています。ただし、統合失調症の病名に限り、ジェネリック医薬品が適応される点にはご注意ください。

エビリファイは多様な剤形が提供されています・

・1mg錠・3mg錠・6mg錠・12mg錠

・3mgOD錠・6mgOD錠・12mgOD錠・24mgOD錠

・3ml内用液・6ml内用液・12ml内用液

・散剤

・持続性注射剤300mg・持続性注射剤400mg

このように多彩な剤形が利用可能です。

アリピプラゾール錠の薬価が存在するため、比較的リーズナブルな価格になっています。以下は各剤形の薬価(2023年4月現在)です:

  • 1mg錠:20.2円
  • 3mg錠:44.7円(ジェネリック:7.1円)
  • 6mg錠:85.4円(ジェネリック:13.1円)
  • 12mg錠:160.2円(ジェネリック:25.3円)
  • 3mgOD錠:44.7円(ジェネリック:7.1円)
  • 6mgOD錠:85.4円(ジェネリック:13.1円)
  • 12mgOD錠:160.2円(ジェネリック:25.3円)
  • 24mgOD錠:332.4円(ジェネリック:53.4円)
  • 内用液3mg分包:131.4円(ジェネリック:35.9円)
  • 内用液6mg分包:262.8円(ジェネリック:70.1円)
  • 内用液12mg分包:525.6円(ジェネリック:148.8円)
  • 1%散・細粒:91.3円(ジェネリック:20.6円/ℊ)

薬価は徐々に変動しますが、患者の自己負担に影響する自己負担割合(1~3割)が薬価に適用されます。薬局では、この金額にお薬の管理料などが追加されて患者に請求されます。

エビリファイの用法と効果のみられ方

エビリファイの用法は、患者の病状によって異なります。

開始用量維持量用法最高用量
統合失調症6~12mg6~24mg1日1~2回30mg
双極性障害の躁状態24mg12~24mg1日1回30mg
うつ病・うつ状態3mg1日1回(朝が多い)15mg
小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性1mg1~15mg1日1回15mg

エビリファイの使用法は、高用量が主に統合失調症や躁状態に対して、低用量がうつ病や易刺激性に対して適しています。

エビリファイは副作用が比較的少なく、使いやすいお薬です。統合失調症や躁状態の場合、しっかりと使用して症状を安定させ、その後は徐々に減量することが一般的です。効果は1日1回の服用で持続しますが、場合によっては2回に分けて使用することもあります。

低用量の場合は通常朝食後、高用量の場合は夕食後などに処方されます。エビリファイは食事の影響が少ないため、就寝前に服用することも考えられます。

エビリファイの半減期

薬の効果を理解するためには、次の2つの要素が重要です。

  1. 半減期(T1/2): 血中濃度が半分になるまでの時間
  2. 最高血中濃度到達時間(Tmax): 血中濃度がピークになるまでの時間

エビリファイの場合、これらの値はそれぞれ以下の通りです。

  • 半減期(T1/2): 61時間
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax): 3.6時間

エビリファイは約3.6時間で血中濃度がピークに達し、その後約61時間で半分の量に減少します。この特性から、1日1回の服用が可能です。

また、薬の血中濃度は飲み続けることで徐々に安定していきます。通常、半減期の4~5倍の時間が経過すると、血中濃度が安定し、これを定常状態と呼びます。エビリファイの場合、この安定状態に達するまでには約1~2週間かかるとされています。

参考:半減期とは?

参考:最高血中濃度到達時間とは?

エビリファイの剤形と効能の違い

エビリファイは剤形の豊富さが特徴としてあげられます。通常の錠剤の他、様々なタイプが発売されていますので、用途に合わせて使っていくことが可能です。

  • OD錠
  • 内用液
  • 持続性注射剤

以下、メリットとデメリットをご紹介していきます。

エビリファイOD錠

エビリファイOD錠は、Orally Disintegrating Tablet(口腔内崩壊錠)の略で、口に入れると直ちに唾液で溶ける設計のお薬です。

このOD錠は、ザイディズ技術に基づいたフリーズドライの応用を採用しており、通常の口腔内崩壊錠よりも迅速に口内で溶解します。

エビリファイOD錠は、3mg、6mg、12mg、24mgの4つの規格が販売されています。

メリット

この製剤は、患者さんが摂取しやすいように工夫されています。甘みがあり、口に入れると数秒で溶けます。これにより、高齢者や女性など嚥下が難しい患者さんにも飲みやすくなり、外出先などで水なしでの摂取が可能です。以下はその特徴です。

  • 水を使用せずに摂取可能(推奨はされていない)
  • 内服が難しい方でも摂取可能
  • 嚥下が困難な方でも摂取が容易
  • 薬を嫌がる患者にも適用可能な場合がある
  • 服用しやすい味に調整されている

これらの特長により、確実な服薬が期待されます。

デメリット

  • 一包化ができない
  • パッケージから出すと崩れやすい
  • 濡れた手で触ってはいけない
  • 他の薬を服用しているとメリットが少ない

エビリファイOD錠の一番のメリットは、その服用しやすさであり、デメリットは、管理のしにくさと言えるでしょう。

エビリファイOD錠は湿度が高いと崩れやすく、一包化(同じ飲み方の薬をまとめる)ができません。濡れた手で触ってしまうと溶け出してしまう点に気を付ける必要があります。

エビリファイ内用液

エビリファイ内用液は、液体の薬剤です。各用量ごとにパッケージになっており、開封すると直ちに服用できる形態です。

エビリファイの錠剤と内用液を比較すると、最高血中濃度はわずかに内用液の方が早い傾向があります。そのため、エビリファイ内用液は効果がやや早く現れることがありますが、大きな違いはありません。

エビリファイ内用液には、3mg、6mg、12mgの3つの規格が販売されています。

メリット

  • 水なしでも服用できる
  • 薬価が高額

デメリット

・不味い

エビリファイ内用液の最も注目すべき特徴は、水を使わずに即座に服用できることです。

調子が思わしくなくてベッドから起き上がれない場合、エビリファイ内用液は枕元に置いて使用することが考えられます。

エビリファイ内用液は、錠剤に比べて薬価がやや高い傾向があります。そのため、通常は急な症状の際に頓服として使用されることが一般的です。例えば、イライラが強い場合や、身体の不調が著しく動けない状態の際に利用されることがあります。

エビリファイ持続性注射剤(LAI)

統合失調症に対する筋肉注射薬です。エビリファイにはデポ剤やLAI(Long Acting Injection)としても知られる持続性注射剤が提供されており、効果が持続する事が特徴です。筋肉注射を通じて肩やお尻(腰の下部分)に投与され、お薬の有効成分が徐々に血中に放出され、その効果が約1か月続きます。お尻の方が注射時の痛みが少ないため、通常は1か月ごとに左右を交互に注射することが一般的です。

一度の注射で薬が体内に留まることで有効血中濃度が維持されます。内服薬と同等の効果が1週間から1カ月程度(薬の種類による)持続するため、近年注目を集めています。

メリット

LAI(Long Acting Injection)の最大の利点は、薬物投与が確実であり、それにより薬の飲み忘れの心配がないため、毎日の服薬から患者を解放し、服薬管理の必要がないことです。これは経口剤では解決が難しい利点です。

エビリファイは、内服薬とLAIの2つの異なる剤形がありますが、どちらも同じ有効成分(アリピプラゾール)を含んでいます。ただし、エビリファイLAIは注射によってアリピプラゾールがゆっくりと体内に吸収され、血液中の薬の濃度が一定に保たれるという特長があります。そのため、症状の安定が期待できます。

デメリット

LAIのデメリットとしては、痛みを伴うこと、副作用発現時の調整が難しいことなどが挙げられます。また、薬価が高く自立支援を申し込んでいない方などには負担が大きい点です。今は注射を含めた剤型を患者自身が選択できる時代ですので、希望があれば申し出ましょう。

エビリファイ持続性注射剤の利点は、お薬の服用が手軽で飲み忘れがなくなることです。統合失調症の場合、薬の中断が再発の最大のリスクとなりますが、持続性注射剤を利用することでこのリスクを軽減できます。

また、血中濃度の変動が小さくなるため、副作用も軽減されます。通常の飲み薬は腸で吸収されて肝臓で代謝された後に脳に作用しますが、持続性注射剤は直接脳に作用します。

ただし、注射の痛みと薬価の高さが課題となることもあります。エビリファイ持続性注射剤を利用する場合、自立支援医療の申請を行うことで負担を軽減することができます。

これまでは統合失調症にのみ適応されていましたが、2019年9月からは双極性障害の再発・再燃予防にも適応が広がりました。ただし、主に躁状態の再発抑制にエビデンスがあり、うつ状態の再発抑制には期待が難しいとされています。

エビリファイ持続性注射剤の用法・用量

エビリファイ持続性注射剤の使用方法と用量について詳しく見ていきましょう。

エビリファイ持続性注射剤は、まず内服薬のエビリファイを使用して効果や安全性を確認した後、持続性注射剤に切り替えます。直ちに持続性注射剤を使用すると、お薬の成分が体内から抜けるまでに時間がかかるためです。まずは錠剤でどれくらいの量が必要かを確認し、その後持続性注射剤に移行します。

エビリファイ持続性注射剤の用法は以下の通りです。

  • 適応: 統合失調症・双極性障害の躁状態の再発再燃予防
  • 開始用量: 400mg
  • 初めの2週間(安全に切り替えるならば4週間)は飲み薬と併用
  • 4週間に1回の注射
  • 300mgまで減量可能 ※併用薬によっては、160mg~200mgまで減量可能

注射を打っても血中濃度はすぐには安定しません。2~4週間ほどは飲み薬と併用し、その後に注射のみに切り替えます。併用量は以下の通りです。

  • 6~15mg服用していた方: 6mg
  • 18~24mg服用していた方: 12mg
  • 30mg服用していた方: 15mg

エビリファイは用量が増えても副作用が目立たず、しっかりと使用してから減量することが一般的です。お薬を使用し、必要に応じて減量していく使い方が推奨されます。

エビリファイ持続性注射剤400mgを注射した場合、有効成分の血中濃度はエビリファイ6mg~24mg相当であり、約15mgを内服したのと同様の状態になります。

また、エビリファイの血中濃度はCYP2D6・CYP3A4阻害薬との併用で影響を受け、分解が遅れて効果が強くなる可能性があります。特に抗うつ剤のパロキセチンなどが挙げられます。エビリファイ持続性注射剤は4週間に1回の注射が通常ですが、通院が空いた場合は7週目までであれば同じように注射し、8週間以上経過した場合は最初からやり直すことが必要です。

用量の増減は年齢や症状により適宜調整されますが、増量は1日1錠(3mg)の範囲であり、1日の総服用量は5錠(15mg)を超えません。小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対する用法も説明されています。服薬においては飲み忘れに気づいた場合は迅速に1回分を服用し、次回の服用までの間隔が短い場合はその時に服用せず、次の服用時間に1回分を服用するように指示されています。2回分を一度に摂取しないように注意が喚起されています。自己判断での服用停止は避け、医師の指示に従ってください。

服用時期でみたエビリファイの副作用

エビリファイを服用する際に留意すべき点は、まずアカシジア(錐体外路症状)です。アカシジアは「ソワソワしてじっとしていられない」「体を動かさずにはいられない」といった症状が現れる副作用で、用量にかかわらず発生することがあります。アカシジアが認められた場合、抗不安薬、抗コリン薬、βブロッカーなどが症状を緩和することがあります。可能であれば他のお薬に変更することも検討されます。

エビリファイ全般的には副作用が少ないですが、増量すると眠気が増すことがあります。高用量では眠気が強まる一方で、低用量では不眠の副作用が見られることもあります。服用を継続する中で注意が必要なのは以下の点です。

  • 糖代謝異常
  • 肝・腎機能障害

これらの副作用をチェックするためには、定期的な採血が必要です。また、まれに高プロラクチン血症が生じ、生理不順や性機能障害の原因となることがあります。

エビリファイの減薬時には離脱症状や悪性症候群に留意する必要があります。離脱症状は比較的少ないですが、長期使用時に心身の不調が現れることがあります。また、お薬の増減によって悪性症候群が発生する可能性もあるため、異常な症状が現れた場合は迅速に医師に相談するべきです。

主な副作用としては、不眠、神経過敏、不安、傾眠、アカシジア(じっとしていることができない)、振戦(手足の震え)、流涎(よだれが出る)、体重増加などが報告されています。これらの症状が現れた場合は、すぐに担当の医師または薬剤師に相談してください。

まれに下記のような症状が現れ、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性があります。このような場合は、使用を中止し、直ちに医師の診療を受けるべきです。

  • のどが渇く、よく水を飲む、尿が多く出る [糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡]
  • 急激な発熱、手足のふるえ、筋肉のこわばり [悪性症候群]
  • 舌を動かしたり、出し入れしたり、絶えず噛むような口の動き [遅発性ジスキネジア]
  • 吐き気・嘔吐、便がでない、お腹が張る [麻痺性イレウス]
  • 脱力感、筋肉の痛み、赤褐色尿 [横紋筋融解症]

これらの副作用はすべてを網羅したものではありません。上記以外の症状にも留意し、気になる場合は医師または薬剤師に相談してください。

エビリファイの副作用の対処法

エビリファイの副作用が現れた場合、どのように対処すればよいでしょうか。

エビリファイの副作用が認められた場合、まず基本的な対処法は「何とかなるなら様子を見る(経過観察)」です。お薬を継続して服用するうちに、身体が徐々に慣れて症状が軽減することが多いためです。しかし、症状が改善しない場合は、無理せずに中止し、主治医に報告することが重要です。

エビリファイの使用を継続する価値がある場合は、症状を和らげるために他のお薬を併用し、しばらくの間様子を見ることも検討されます。また、生活習慣の改善ができる部分があれば、同時に取り組むことも重要です。

エビリファイの副作用で一般的に気にされる症状には、眠気や体重の増加があります。特に頻度が高い副作用はアカシジア(錐体外路症状)であり、これに対する対処法も考えていきましょう。

エビリファイと眠気・不眠

エビリファイは、眠気も不眠もどちらもとりうるお薬であり、適応ごとの副作用は以下のようになります。

  • 統合失調症(6~30mg)
    不眠:27.1%
    眠気(傾眠):3.1%
  • 双極性障害の躁状態(12~30mg)
    不眠:9.9%
    眠気(傾眠):12.5%
  • うつ病・うつ状態(3mg~15mg)
    不眠:7.3%
    眠気(傾眠):9.0%
  • 自閉症スペクトラム障害(1mg~15mg)
    不眠:報告なし
    眠気(傾眠):48.9%

用量を増やすにつれて、眠気が強まる傾向があります。

エビリファイによる眠気の原因は、いくつかの要因に起因しています。

まず、エビリファイにはわずかながら抗ヒスタミン作用や抗α1作用があり、これが直接的な眠気を引き起こす可能性があります。さらに、セロトニン2A受容体の遮断作用が深部睡眠を増加させ、眠気の発生に寄与する可能性があります。エビリファイはドパミンやセロトニンだけでなく、他の受容体にも作用するため、多様な影響が考えられます。

エビリファイにおける不眠の原因としては、興奮を高める可能性やアカシジアやレストレスレッグ症候群を引き起こすことが挙げられます。エビリファイは副作用が少ない一方で、鎮静作用が薄い傾向があり、ドパミンの刺激によって興奮や衝動を増加させることがあります。また、アカシジアやレストレスレッグ症候群などの副作用が不安や興奮を引き起こし、これが不眠を誘発する可能性があります。

エビリファイによる眠気が生じた場合の対処法としては、慣れるまで待つこと、服用のタイミングを変更すること(夕食後や就寝前)、服用を2回に分けること、お薬の量を減らすこと、または他の抗精神病薬に変更することが考えられます。逆に不眠が認められた場合の対処法は、慣れるまで待つこと、睡眠の質を改善すること(生活習慣やお薬の見直し)、服用のタイミングを変更すること(朝食後)、お薬の量を減らすこと、または他の抗精神病薬に変更することが考えられます。

エビリファイと体重の増減について

エビリファイに関連する体重増加について懸念を抱く方も多いです。食欲や代謝には様々な影響があり、これはお薬だけでなく病状にも影響されるため、一概にお薬の影響だけを評価するのは難しいです。

エビリファイは基本的には体重増加の傾向がありますが、他の抗精神病薬と比較すると太りにくいという意見もあります。エビリファイの承認時の副作用頻度を見ると、統合失調症や双極性障害、うつ病、自閉症スペクトラム障害において、体重増加の割合が示されています。

具体的な数値を挙げますと、統合失調症では体重増加が2.96%、双極性障害の躁状態では9.38%、うつ病・うつ状態では10.06%、自閉症スペクトラム障害では18.18%となっています。これらの割合からは、エビリファイが体重増加のリスクを伴うお薬であることが分かりますが、他の抗精神病薬に比べて増加幅が小さいとされています。

エビリファイによる太る原因として、抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用による直接的な食欲増加が挙げられます。しかし、これらの作用はエビリファイでは比較的弱いです。また、非定型抗精神病薬が代謝を低下させる傾向があることも太りやすさの要因とされています。

エビリファイで体重増加が認められた場合の対処法として、生活習慣の見直し、運動習慣の取り入れ、よく噛んで食事を摂ること、お薬の量を減らすこと、他の抗精神病薬に変更することが挙げられます。

エビリファイとアカシジア(錐体外路症状)

エビリファイによる特徴的な副作用として、頻度が高いのがアカシジアです。アカシジアは、「静坐不能」とも呼ばれ、以下のような症状が現れます。

  • じっとしていられない
  • ソワソワして落ち着かない
  • 足がむずむずする
  • 貧乏ゆすりが止まらない

これは、心の落ちつかなさと、身体を動かしたいという衝動が組み合わさり、体を動かすことでその苦痛が軽減される特徴があります。アカシジアの原因としては、感情に関係する部分でのドパミンのブロックが関与しているとされています。アカシジアは錐体外路症状の一つであり、パーキンソン症状を生じる部分(黒質線条体のドパミンブロック)とは異なります(アカシジアは中脳辺縁系や中脳皮質系のドパミンブロック)。

エビリファイはアカシジアが他の抗精神病薬と比較しても多いとされています。特にエビリファイによるアカシジアの特徴として、うつ病>双極性障害>統合失調症の順で多いこと、低用量でも高用量でも大きな差がないこと、飲み始めが多いが2~3か月たってから生じることもあることが挙げられます。

エビリファイでアカシジアが認められた場合の対処法としては、慣れるまで待つこと、お薬を併用すること(抗不安薬・βブロッカー・抗コリン薬)、お薬の量を減らすこと、他の抗精神病薬に変更することがあります。急性アカシジアが発症した場合には、救急対応として中枢性抗コリン薬(ビペリデン、トリヘキシフェニジル)またはベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、クロナゼパム)の投与が有効であることがあります。特にビペリデンには注射製剤があるので、診断的治療目的でも使用されることがあります。

エビリファイの離脱症状と減薬方法

エビリファイは離脱症状が少ないお薬の一つですが、離脱症状が認められる場合もあります。そのため、長期での服用の際には斬減法や隔日法を用いて、少しずつ減量していく必要があります。

エビリファイの離脱症状としては、ドパミン作動性とコリン作動性の二つのカテゴリーが挙げられます。ドパミン作動性の離脱症状には、幻覚や妄想(過感受性精神病)、アカシジア、ジスキネジアが含まれます。一方、コリン作動性の離脱症状には、精神症状(不安・イライラ)、身体症状(不眠・頭痛)、自律神経症状(吐き気・下痢・発汗)があります。

エビリファイはドパミンの部分作動薬であり、作用時間も長いため、ドパミン作動性の離脱症状は比較的起こりにくい傾向があります。抗コリン作用もほとんど見られませんが、副作用として抗コリン薬を服用している場合は注意が必要です。

これらの離脱症状は、薬の減量から1~3日ほどして認められ、通常は2週間ほどで収まっていくことが多いですが、まれに月単位で続くこともあります。離脱症状を防ぐためには、エビリファイの減量を少しずつ行い、離脱症状がひどい場合は元のお薬の量に戻し、減量のペースを緩めていくことが重要です。

エビリファイの運転への影響

製薬会社は心の病気の治療薬の多くに安全性を確保するために「運転禁止」という措置をとることが便宜上、一般的です。

副作用として眠気やふらつきなどがリスクが存在するため、そのため運転や危険な作業が禁止されています。エビリファイも同様で、添付文書で以下のように注意が呼びかけられています。

「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」

統合失調症や双極性障害であっても、症状がコントロールできている場合は運転免許を取得することができますが、ほとんどの治療薬では運転が制限されています。自己責任の範疇ではありますが、運転が難しくなることが、社会復帰の障害になることも考えられますので、薬を服用しながら運転する方も存在します。

ただし、初めて薬を使用する際、他の薬から切り替えをする際、薬の量を増減させる際、または体調不良を自覚した場合は、無理をせず、運転を控えるべきです。安全を最優先にし、医師の指示に従うことが重要です。

エビリファイの妊娠・授乳への影響

エビリファイの妊娠への影響について検討してみましょう。エビリファイの添付文書には以下のように記載されています。

「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。」

当然ながら、妊娠中は薬物の摂取を避けることが望ましいです。ただし、エビリファイを中止すると病状が不安定になる場合、医師の判断のもとで最小限の投与で継続することがあります。統合失調症や双極性障害は薬物の減量により症状が不安定化するリスクが高まるため、エビリファイの服用が継続されることが一般的です。

エビリファイ自体は奇形のリスクに関しては報告がないとされています。しかしながら、産まれた後の赤ちゃんに対して離脱症状や錐体外路症状が報告されています。これらの症状は通常後遺症を残すものではなく、産科医に適切に報告すれば安心できるでしょう。

次に、エビリファイの授乳への影響を考えてみましょう。エビリファイの添付文書には以下のように掲載されています。

「授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。」

授乳に対するネガティブな報告は特にない一方で、母乳は赤ちゃんに良い影響を与えると言われています。判断は個人の裁量に委ねられますが、エビリファイを服用中でも授乳を続けることには多くのメリットがあると考えられます。

エビリファイの成分が母乳を通して乳児に移行することは確認されており、約20%の血中濃度が母乳中に移行すると報告されています。乳児の成長に問題が生じる場合は、医師と相談することが重要です。

海外の妊娠と授乳に関する基準

国際的な妊娠および授乳に関する指標をご紹介します。

妊娠への影響については、FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準があります。

  • A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
  • B:ヒトでの危険性の証拠はない
  • C:危険性を否定することができない
  • D:危険性を示す確かな証拠がある
  • ×:妊娠中は禁忌

授乳への影響に関しては、Hale授乳危険度分類が用いられます。

  • L1:最も安全
  • L2:比較的安全
  • L3:おそらく安全・新薬・情報不足
  • L4:おそらく危険
  • L5:危険

エビリファイは、FDA基準では「C」、Hale分類では「L2」とされています。これは授乳においても比較的安全であると考えられます。

エビリファイ錠のジェネリック(アリピプラゾール錠)

エビリファイ錠は、2006年に初めて発売された薬です。薬の開発には膨大な資金が必要とされ、通常、発売から約10年間は成分特許が製薬会社によって独占的に保有され、その期間中は他社が同じ成分を使用したジェネリック医薬品を製造・販売することが許可されません。

エビリファイ錠の成分特許は2017年に切れ、それに伴いジェネリック版が市場に登場しました。ジェネリック医薬品は通常、薬価が先発品の半分以下になるため、医薬品の費用負担を軽減できるメリットがあります。

ただし、ジェネリック医薬品の適応が認められているのは「統合失調症」のみであり、後に承認が追加された病気については、依然として特許が有効となっています。

先発品は開発した製薬会社からのみ販売されますが、ジェネリック医薬品は複数の会社から提供されています。これらの医薬品は同じ有効成分を含んでいますが、製造方法や製剤技術が異なるため、微妙な違いがあります。

ただし、ジェネリック医薬品は先発品と同等の効果を示すための試験をクリアしており、血中濃度の変化もほぼ同等に調整されています。エビリファイは即効性を求められる薬ではないため、ジェネリックに変更しても効果に大きな差はないと考えられます。しかし、不安を感じる場合はもちろん、先発品のまま使用することも可能です。

エビリファイの作用機序

最後に、エビリファイの作用メカニズムについて詳しくご説明します。エビリファイの効果は、主に2つの神経伝達物質に関連しています。

ドパミン作用

  • 中脳辺縁系: 幻聴や妄想などの陽性症状の改善
  • 中脳皮質系: 感情の鈍麻や意欲の減退などの陰性症状の出現
  • 黒質線条体: 錐体外路症状の発現(パーキンソン症状やジストニア)
  • 視床下部下垂体系: 高プロラクチン血症に関連する副作用(生理不順や性機能低下)

統合失調症では、中脳辺縁系でのドパミンの異常な分泌・活動が陽性症状を引き起こすと考えられています。エビリファイは中脳辺縁系のドパミンを抑制することで、陽性症状の改善が期待されます(ドパミンD2受容体遮断作用)。

参考:非定型抗精神病薬とは?

参考:ドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用

セロトニン作用

  • セロトニンはドパミンを抑制する働きがあり、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待されます。

エビリファイは、ドパミン(ドパミンD2受容体)とセロトニン(セロトニン2A受容体)を同時にブロックすることで、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待でき、かつ副作用が軽減されると考えられます。このような作用メカニズムを有するお薬は非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)と分類されます。エビリファイがこのカテゴリに分類され、そのドパミンとセロトニンへの作用について、以下で詳細に説明します。


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