ADHDの診断を受けた方の中にはアトモキセチンを飲まれている方も多いのではないでしょうか?
筆者もアトモキセチンを7年服用しているので、個人的な所感も語っていきたいと思います。
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作用
アトモキセチン(ストラテラとして知られる先発医薬品)は、ノルアドレナリンの再取り込みを特異的に阻害し、シナプス間のノルアドレナリンとドパミンを増加させ、神経の機能を強化することで、不注意、多動・衝動性を改善すると考えられています。この薬は、主に肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6によって代謝されます。
前頭前野でのアトモキセチンの薬理作用
ADHDでは、前頭前野の機能低下が主に不注意や持続的な注意の難しさを引き起こしていると考えられています。
前頭前野の働きは主にドパミンとノルアドレナリンによって活性化されます。この領域では、ドパミンとノルアドレナリンが相互に補完的に作用し、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害してノルアドレナリンを増加させることで、ドパミンも増加します。その結果、ドパミンとノルアドレナリンの増加により、前頭前野の機能が正常化され、不注意などの症状が改善されると考えられます。
参考:前頭前野とは?
参考:ノルアドレナリンとは?
臨床試験
注意欠陥・多動性障害を抱える子供を対象にした臨床試験が行われています。この試験では、58人がこの薬を低用量(1.2mg/kg)、別の60人が高用量(1.8mg/kg)、そして別の61人がプラセボ(偽薬)を摂取し、それぞれの効果を比較しています。効果の評価は、学校生活における不注意や多動・衝動性に関する行動を18項目ごとに4段階(0点~3点)で評価し、その合計点の変化量で比較されます。
試験後の2ヶ月の結果によれば、低用量の子供たちは平均で11点の改善(33点→22点)、高用量の子供たちは平均で12点の改善(32点→20点)、プラセボを摂取した子供たちは8点の改善(32点→24点)が見られました。期待ほどの差は見られませんでしたが、この薬の方が改善幅が大きく、プラセボよりも症状が軽減される傾向が示唆されました(低用量の場合、統計学的な有意差は見られませんでした)。なお、海外の臨床試験ではより良い結果が得られているようです。
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特徴
メチルフェニデート(コンサータ)に次ぐ、国内で2番目の「注意欠陥・多動性障害治療薬」です。この薬は薬理学的には「選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」に分類されます。メチルフェニデートとは異なる効果を持つため、治療の選択肢が拡がる可能性があります。中枢神経刺激薬であるメチルフェニデートとは異なり、この薬は非中枢神経刺激薬となります。そのため、依存や乱用のリスクがほとんどなく、またメチルフェニデートで禁忌とされる過度の不安や緊張などの併存障害を持つ人にも適しています。副作用も比較的少ないです。
速効性はありませんが、効き方はメチルフェニデートよりも緩やかです。服用開始から約2週間で徐々に効果が現れ、6~8週目で効果が安定してきます。そして、一日を通して途切れずに効果が持続します。
もともとは、6歳以上18歳未満を対象にした小児用製剤として開発されましたが、2012年に適応が拡大され、成人期においても使用できるようになりました。
参考:メチルフェニデート塩酸塩とは?
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注意点
参考:肝薬物代謝酵素とは?
【注意する人】
パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)、ラサギリン(アジレクト)、およびサフィナミド(エクフィナ)との併用は禁止されており、2週間以上の間隔をあける必要があります。これは、両方の作用がダブり、重篤な副作用である「セロトニン症候群」を引き起こすおそれがあるためです。
作用が重複するメチルフェニデート(コンサータ)や抗うつ薬との同時使用は、相互に作用が強まります。また、パロキセチン(パキシル)は、この薬の血中濃度を上昇させる可能性があります。
喘息などに用いる気管支拡張薬(β刺激薬)との併用は、心血管系の副作用が強まるおそれがあります。その他にも、飲み合わせに注意が必要な薬が多数存在します。現在および最近まで服用していた薬については、必ず医師に伝えてください。
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他のADHD治療薬との使いわけ
デュロキセチン(サインバルタ)やイフェクサーSRなどのSNRIも、アトモキセチンと同様にノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有しており、ADHDへの効果が報告されています。
そのため、既にうつ病でSNRIが処方されていて、うつ症状とADHDの症状がある場合などは、アトモキセチンを追加するよりもSNRIを増量する方が望ましいといえます。
また、十分な量のSNRIで治療されているうつ病とADHDの併存の場合は、アトモキセチンを加えるよりも、インチュニブを検討する方が良いと考えられます。
血圧が高い場合や双極性障害とADHDが併存している場合も、アトモキセチンを使用すると症状が悪化する可能性があり、インチュニブが選択肢になります。
チックはADHDとの併存率が高いことが知られていますが、コンサータはチックがある場合は使用禁忌となっています。そのため、チックが併存する場合はアトモキセチンが選択肢となります。
また、アトモキセチンはADHDの不安を軽減する効果が報告されており、不安が強い場合などはアトモキセチンが選択肢となります。
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