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ミルタザピン(リフレックス・レメロン)の効果と副作用

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ミルタザピン(リフレックス・レメロン)について

ミルタザピン(商品名:リフレックス/レメロン)は、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)に分類される比較的新しい種類の抗うつ剤になります。

NaSSAは現在、「リフレックス/レメロン(一般名:ミルタザピン):2009年発売の1種類のみとなっています。

リフレックスはセロトニンとノルアドレナリンの働きを高める作用のあるお薬で、

「セロトニン」:不安や落ち込み

「ノルアドレナリン」:意欲や気力

などの精神疾患の改善に効果があるとされています。うつ状態だけでなく、その他の不安障害にも使われています。

以下の文章では製品名である「リフレックス」「レメロン」も全て「ミルタザピン」の名称で呼んでいきます。

参考:NaSSAとは?

ミルタザピンの歴史

オランダのオルガノン社(現MSD社)がピペラジノアゼピン系誘導体から開発に成功した化合物が大元となっています。1980年代にオランダで開発され、オルガノン社はテトラミド、テシプールで使用されていたピペラジノアゼピン系誘導体から研究を重ね、テトラミドの6-azo-analogeであるミルタザピン(リフレックス・レメロン)を開発しています。

ミルタザピンは、四環系抗うつ薬に分離されるテトラミド(一般名:ミアンセリン)が改良された薬で、テトラミドの副作用である「強い眠気」を改良して、ミルタザピンとして製品化しています。

1994年にオランダで、1996年にアメリカで、うつ病に対する使用認可を受けた歴史があり、日本では、2009年以降、うつ病・うつ状態の治療に用いられています。

この開発経緯から「テトラミド」、「テシプール」、「ミルタザピン」は「オルガノン3兄弟」と呼ばれています。

参考:精神薬一覧

ミルタザピンの特徴

不眠や食欲不振を解消し、リラックス作用の期待できるミルタザピンですが、どのようなメリット・デメリットがあるのか以下にまとめてみました。

「メリット」

・効果がしっかりとしている

・1日1回、夜のみの服用で効果が期待できる

・不眠に有効

・食欲低下に有効

・吐き気や性機能障害が少ない

・独自の作用メカニズムでSNRIと相性がいい

・離脱症状が少ない

・ジェネリックが発売されている

参考:SNRIとは?

「デメリット」

・眠気が強い

・太りやすい

筆者の旦那もミルタザピンを飲んでいるのですが、上記2つのよく言われるデメリットの他に、「強い倦怠感」や「アカシジア」などの副作用を挙げていました。

テトラミドから改良されたとはいえ、眠気はやはり強いようです。

参考:アカシジアとは?

ミルタザピンの用法と効果のみられ方

軽症から中等症のうつ病では、SSRIやSNRIが主流となっていますが、ほとんどの抗うつ薬は効果が現れるまでに、2週から3週以上の期間を要します。これに対して、ミルタザピンは比較的短期(およそ1週間)で効果を発揮する場合があります。

長期服用については、成人は1日1回1錠(15mg)から始め、1週間以上服用継続後に1日1~2錠(15~30mg)まで増量していきます。眠気が強いお薬ですので、就寝前に服用することが一般的です。

飲み始めは眠気や倦怠感が強く出やすいため、用法の半分の7.5mgから始めていくことが多いです。

MANGA studyと呼ばれる抗うつ剤を比較した有名な研究では、リフレックスはもっとも有効性が高いという評価を受けています。

参考:SSRIとは?

こちらも参考に:リワークプログラム・リワーク支援(心療内科・精神科)とは | メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰

半減期と最高血中濃度到達時間

ミルタザピンは効果が長い薬で半減期は32時間、最高血中濃度到達時間は1時間ですので、服用から33時間程度で効果が半分に落ちることになります。そのため、1日1回の服用で効果は持続します。

薬の血中濃度は、飲み続けていくことで安定していきます。半減期からおよそ4~5倍の時間で安定するといわれますので、安定には5日ほどかかります。このようになると定常状態と呼ばれます。

服用後は自動車・自転車の運転や危険を伴う機械の操作には従事しないように注意しましょう。個人差はありますが、飲み始めの数日は特に眠気が強く出ると言われています。

参考:半減期について

参考:最高血中到達時間について

適応となっている病気や症状

ミルタザピンは日本でうつ病・うつ状態(2009年)に海外でも同様で、ミルタザピンはうつ病やうつ状態のみの適応となっています。2018年12月からはジェネリック医薬品も販売されています。

日本での保険承認は2022年8月でこの時までは自費診療薬として普及していました。

不安や落ち込み、食欲不振にも効果が見られるため、不安障害や胃腸障害、嘔吐恐怖が認められる方に使われます。

また、眠気が強く出る薬のため、睡眠に自由が効きやすい休職中の方や専業主婦に向いているともいえます。

ミルタザピンは他の抗うつ剤とは作用のメカニズムが異なるため、SSRIやSNRIで効果が認められなかった場合にも、ミルタザピンへの変更や併用によって改善が期待できます。

こちらも参考に:【ポイントや注意点は?】障害年金の受給要件と請求条件・年金額

日本での禁忌

ミルタザピンの投与が禁止されている患者は以下の患者になっています。

・MAO阻害剤(セレギリン塩酸塩)を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者

・本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者

となっています。

MAO阻害剤(セレギリン塩酸塩)が禁忌の理由は脳内ノルアドレナリン、セロトニンの神経伝達が高まると考えられています。

参考:MAO阻害剤(セレギリン塩酸塩)とは?

注意して使用する患者は以下の通りです。

・肝、腎機能障害の患者

・自殺念慮又は自殺企図の既往がある患者

・躁うつ病の患者

・心疾患の患者

・低血圧の患者

・緑内障のある患者

妊婦・産婦・授乳婦への投与

添付文書では「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」とあり、積極的に勧められる状態にはないといえるでしょう。

ミルタザピンの強さ。他の抗うつ薬との比較

ミルタザピンが抗うつ剤の中でどういった効果の位置づけとなるのか表にまとめてみました。

以下に効果を記述しておくので他の抗うつ剤と比較してみましょう。

NA:「ノルアドレナリン」(意欲や気力)

5-HT:「セロトニン」(精神を安定させて幸福感を得やすくする)

抗Ach:「アセチルコリン」(脳内の神経伝達を改善)

抗a:「アドレナリン」(やる気)

抗H1:「ヒスタミン」(眠気や食欲増加)

タイプ商品名NA5-HT抗Ach抗a抗H1
三環形アナフラニール+++++++++++++++++
三環形トリプタノール++++++++++++++++
三環形トフラニール++++++++++++++++
三環形ノリトレン++++++++++++++
三環形アモキサン++++++++++++
四環形テトラミド++++++++++++
四環形ルジオミール+++++++++++
SSRIパキシル++++++++
SSRIジェイゾロフト+++++++
SSRIデプロメール/
ルボックス
++++
SSRIレクサプロ+++++
SNRIサインバルタ+++++++++±
SNRIイフェクサー++++++++
SNRIトレドミン+++++
NaSSAミルタザピン++++++++++++++++

NaSSAであるミルタザピンは

・セロトニンとノルアドレナリンの効果が期待できるため、気持ちを安定させる

・抗ヒスタミン作用が強いため、食欲や眠気を増幅させる

と考えられるでしょう。

治療では他のお薬と併用することが多く、SNRI(サインバルタやイフェクサー)とは相性が良いと言われていて難治性のうつに用いる「カルフォルニアロケット療法」が有名です。

こちらも参考に:うつ病で現れる初期症状・行動・対策や仕事復帰を目指すときのポイント

ミルタザピンの副作用

重大な副作用として、以下があげられます。

セロトニン症候群、無顆粒球症、好中球減少症、痙攣、肝機能障害、黄疸、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、多形紅斑、QT延長、心室頻拍の報告があります。

服薬で異変を感じた場合はすぐにかかりつけ医に相談しましょう。

抗うつ薬によるレストレスレッグス症候群のリスク

承認時の副作用では報告数が少なかったものの、現在、ミルタザピンは抗うつ薬の中で「薬剤性レストレスレッグス症候群」を誘発するリスクが高いことが報告されています。

ミルタザピンを内服した際にそわそわしたり、落ち着かなくなった際には薬剤性レストレスレッグス症候群の可能性もあり、慎重な鑑別を要します。

アカシジアと非常に見分けがつきづらいのですが、レストレスレッグズ症候群が日内変動があり夜間に増悪することが多いのに対して、アカシジアは一日中むずむず症状が認められる状態をいいます。レストレスレッグズ症候群は眠気とともに発現するのも特徴です。

筆者の旦那も「レストレスレッグズ症候群」に悩まされていましたが、一週間ほどで落ち着いたようです。服薬の副作用の場合は一週間程度で落ち着くようですが、長引く場合は医師に相談をしてください。

ミルタザピンでの副作用比較

ミルタザピンは臨床の成績も優秀で、うつによく効く薬ですが前述した通り、「眠気」と「食欲増加」が2大デメリットとなります。男性より女性の方が1.5倍ほど体重増加が見られたとの報告があります。

それでも昔の抗うつ剤と比べるとずいぶんと副作用は少なく、新規抗うつ薬に分類されます。ミルタザピンの副作用について、他の抗うつ剤と比較してみましょう。

薬の副作用

便秘・口渇ふらつき眠気体重増加嘔吐・下痢生機能障害不眠
三環系トリプタノール++++++++++++±++
三環系トフラニール+++++++±+++
三環系アナフラニール++++++++++++
三環系アモキサン+++++++++
三環系ノリトレン+++++++++
四環系テトラミド++++++
四環系ルジオミール++++++++++
SSRIルボックス/ デプロメール++++++++
SSRIパキシル+++++++++++
SSRIジェイゾロフト±++++++++
SSRIレクサプロ++++++++
SNRIサインバルタ±±±++++++
SNRIイフェクサー±±±++++++
SNRIトレドミン±±±++++++
NaSSAミルタザピン+++++++++
その他デジレル / レスリン++++++
その他ドグマチール±±±++±
その他トリンテリックス±±++++

ミルタザピンには嘔吐や下痢といった胃腸障害が見られず、性機能障害や不眠の副作用が少ないとされている一方、眠気と体重増加は他の抗うつ薬と比べても強く出ているようです。

こちらも参考に:オランザピン(ジプレキサ)の効果と副作用

ミルタザピンで太る2つの機序

なぜミルタザピンを服用すると太ってしまうのでしょうか。どのような点に注意して服用をすべきで、体重増加が生じてしまった場合はどのような対処法があるのでしょうか。

ここではミルタザピンで生じる体重増加と眠気について詳しくお話させていただきます。

ミルタザピンの抗ヒスタミン作用(脳内ヒスタミンH1受容体占有)

ヒスタミンは神経伝達物質の1つで身体の各部位で様々な情報伝達に関わっていて、一例をあげると、

  • アレルギー反応が生じる
  • 胃酸が分泌される
  • 脳の覚醒レベルが上がる
  • 食欲が抑えられる

といった作用を身体に及ぼします。

ヒスタミンには食欲を抑制する作用もありますので、抗ヒスタミン作用でヒスタミンの働きをブロックすると、食欲の抑制をはずしてしまい、食欲をあげてしまいます。これにより体重が増加しやすくなり、太りやすくなるというわけです。

また、ミルタザピンは脳内ヒスタミンH1受容体阻害が強く、占有率が高いため抗うつ薬の中でも眠気が強く発現します。

10歳年をとるごとに約13%脳内のヒスタミンH1受容体は減少することが報告されており、若年者より高齢になるほどミルタザピンの眠気の副作用はでにくくなります。

そのため、花粉症で抗アレルギー薬を内服し眠気が生じる人は、ミルタザピンでの治療が向いていないと言えます。

ミルタザピンの鎮静作用

NaSSAは「鎮静系抗うつ剤」とも呼ばれ、心身を鎮静させる作用が特に強く、活動性を低下させます。

不眠を改善したり、焦燥感や興奮を抑えたり安眠助剤のような効果を持つことがあり、不眠症や過度の不安症状を和らげることがあります。一方で身体の代謝を落とし皮下脂肪や内臓脂肪を蓄積しやすくする作用にもなります。ミルタザピンのこの作用も体重増加の一因となります。ヒスタミンの分泌が抑制されることで、グレリンといわれるホルモンが増えます。グレリンは胃から分泌される食欲亢進ホルモンで、脂肪蓄積などの作用があるため、さらに太りやすくなってしまいます。

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ミルタザピンの抗5HT2c作用

通称「幸せホルモン」といわれるセロトニンを増やすために、ミルタザピンには受容体をブロックする抗5HT2C受容体が含まれています。5HT2C受容体は、満腹中枢を刺激して満腹感を得られるものにあたります。この受容体をブロックする作用のある薬剤がミルタザピンの中にはあり、満腹感を感じにくくなってしまうのです。

ミルタザピンと体重増加。対策法について

ミルタザピンを服用する際、なるべく体重増加をきたさないようにするにはどのような工夫があるのでしょうか。また体重増加が生じてしまった場合はどのような対策をとればいいのでしょうか。

まずは食生活・運動習慣の見直しを

抗うつ剤を服用していたとしても、規則正しい生活、適度な運動など生活を改善する行動を続けていれば、体重は落ちやすくなります。

運動・睡眠・食事を記録し自身の生活を見直しましょう。

抗うつ剤を服用していても、しかるべき行動をとっていれば、体重は落ちやすくなるため、体重が適正に維持される生活習慣を改めて見直してみましょう。

ダイエット方法としてこちらも参考にしてください。

<a href="https://syogai-nenkin.com/psychotropic/olanzapine#toc25">ダイエット法</a>

どうしても困るようなら減薬・変薬を

どうしてもミルタザピンによる体重増加が困るようであれば、ミルタザピンの量を減らしたり、他の抗うつ剤に変更したりといった方法を担当医と共に検討しましょう。

すでにある程度の量のミルタザピンを服用していて、その効果もある程度感じている場合

減薬を検討しましょう。

減薬すれば作用も弱まりますが副作用(体重増加など)の程度も軽減します。

作用と副作用のバランスが取れている用量を主治医と一緒に探していきましょう。

初期用量や低用量で体重増加が生じてしまう場合や一定期間服用を続けているのに抗うつ作用は分からず体重増加だけ生じている場合

ミルタザピンの作用もほとんど得られていないのに、副作用だけが出ている状態になります。この状態ではミルタザピンを継続するメリットは乏しいため、別の抗うつ剤に変更することも検討しましょう。

よく用いられる代表的な抗うつ剤で体重増加が少ないのは以下になります。

【SNRI】
・サインバルタ(一般名:デュロキセチン)
・イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)

【SSRI】
・ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)
・レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)

などに変更を検討しましょう。

ミルタザピンの離脱症状と減薬方法

お薬を減量していく際には離脱症状が認められることがあります。ミルタザピンは離脱症状が少ない薬ですが、身体に薬が慣れた状態で急激に減量すると心身の不調が生じてしまうことがあるのです。

ミルタザピンの離脱症状は「耳鳴り・痺れ感・吐き気・頭痛・イライラ・不安感」などの症状が出たりします。半錠ずつゆっくり減らす、お薬の服用間隔を少しずつ長くするなど、焦らず徐々に減量調節することで、リスクを最小限に抑えられます。

参考:離脱症状について

ミルタザピンのミルタザピンの剤形と薬価

ミルタザピンはリフレックスという販売名で流通しており、

・15mg錠

・30mg錠

の2剤形で販売されています。

日本では2018年12月より、ジェネリック医薬品が発売となり、薬価が大幅に下がりました。

自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。

・15mg錠:92.3/84.3円(ジェネリック:16.6~30.1円)
※リフレックス/レメロン

・30mg錠:149.9/142.4円(ジェネリック:29.9~48.0円)

参考:自立支援医療制度について


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