うつ病は精神疾患の中で最も割合が高く、特に再発率が60%と非常に高いです。
その中でも、繰り返しやすい特性があり、反復性うつ病性障害の診断基準は重要です。この記事では、ICD-10とDSM-5を基にして反復性うつ病性障害の診断基準を詳しく解説します。
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反復性うつ病性障害の診断基準の概要
診断の基準は以下の3点で判断します。
① 反復性うつ病性障害である(つまり、うつ病エピソードを2回以上繰り返している)
過去に一度だけでなく、二度以上のうつ病の症状を経験している状態です。
② 今のエピソードの重症度
現在、うつ病の症状がどの程度深刻かということです。具体的には、気分の落ち込みの程度や、日常生活に支障が出ている範囲などが評価されます。
③ 持続期間が2週間を超えるエピソードが2回以上あり、エピソード同士の間には気分障害のない状態が続いていたこと
過去に、2週間以上続くようなはっきりとしたうつ病の症状が2回以上経験されていて、その間には気分が安定していた期間があったことを意味します。
これらの条件をすべて満たす場合に、反復性うつ病性障害と診断されます。
DSM-5の診断基準には以下の記載があります。
「抑うつ気分および4つ以上の他のうつ病の症状が同時に、少なくとも月に1回(月経周期と関連せず)、2~13日の間、連続する12ヵ月以上にわたって存在するが、他のどの抑うつ障害または双極性障害の基準も満たさず、また現時点でどの精神病性障害の活動性または残遺性の基準も満たさない。」
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身体症候群の有無について
身体症候群の内容については「ICD-10」の「F32うつ病エピソードの診断基準」を参考にします。
特に子どもにおいては、年齢や発育段階を考慮し、体重増加が期待されるにも関わらず、体重が増えていない場合も注意が必要です。
また、不眠や過眠といった睡眠に関する問題も、このような状態に関連していることがあります。
食欲と体重の増減が激しいことが挙げられるでしょう。
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疾患の具体例
41歳の女性。子育ても一段落し、パート勤務を始めましたが、思わぬ忙しさにストレスを感じ、ミスが相次いでしまいます。「何をやってもだめだ」「他の人に迷惑をかけている」という自己評価が悩みの種となります。
子どもの世話も不要になり、「生きる意味がない」と感じ、食欲減退、不眠、朝の起床が難しくなるなどの症状が現れました。
精神科クリニックでの受診で「うつ病」と診断され、治療を受けて一時的に回復するものの、約半年後に再びうつ病の症状が現れます。この症状の繰り返しにより、主治医は「反復性うつ病性障害」と診断名を変更しました。
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症状
反復性うつ病性障害は、文字通りうつ病を繰り返す障害です。基本的な症状はうつ病と同様で、抑うつ気分や興味と喜びの喪失があり、活力が減退して疲れやすくなったり、活動性が低下したりします。
うつ病は通常、一度発症すると3ヶ月から12ヶ月程度の期間続きます。しかし、より短い期間で何度も繰り返す場合は、「反復性短期抑うつ障害」という診断がつくことがあります。この障害は、気分が安定せず、頻繁に上下するため、日常生活が大きく乱れてしまうことが多いのが特徴です。
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反復性うつ病性障害は、双極性障害と一部類似していますが、反復の頻度が比較的少ないとされています。また、この障害では躁病の診断基準を満たすほどの明らかな気分高揚や過活動性が見られません。これらの症状が認められる場合は、双極性感情障害と診断されます。軽躁病のような短期間の気分高揚や過活動性であれば、反復性うつ病性障害に該当します。
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特徴
うつ病の発症年齢や重症度、持続期間、頻度は個人差があります。一般的に、うつ病が初めて発症するタイミングは双極性障害よりも遅く、平均して40歳代であるとされています。
反復性短期抑うつ障害は、女性の方が男性に比べて2倍以上発症しやすいことが多くの文化圏で報告されています。しかし、アメリカにおいては、この疾患に関する包括的な疫学調査がまだ実施されていないため、詳細な発症年齢など、さらなる解明が求められています。
現時点で得られている限りの情報からは、若年成人層でこの障害の有病率が高いことが示唆されています。
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具体的には、20代の10年間で約10%の人がこの障害を経験すると推定されており、一般人口における1年間の有病率は、およそ5%と見られています。しかし、これらの数値はあくまで推定であり、より正確なデータを得るためには、さらなる研究が必要不可欠です。
原因
反復性うつ病性障害は、症状の重さにかかわらず、ストレスフルな生活の出来事によって誘発されることがあります。
一方で、反復性短期抑うつ障害に関する研究では、健常者と比較していくつかの生物学的異常が報告されています。例えば、コルチゾールと呼ばれるホルモンの検査で抑制が認められないこと、
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンに対する反応が鈍いこと、また眠りに入るまでの時間が短縮していることなどが挙げられます。
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予後
反復性うつ病性障害は、多くの場合、うつ病の症状が完全に消え、回復期を迎えます。しかし、高齢者を中心に、うつ状態が長期化するケースもみられます。
一方、反復性短期抑うつ障害については、まだ十分な研究が進んでいないため、その予後を断定的に語ることは困難です。
ただし、一般的なうつ病との間に多くの共通点が見られることから、大うつ病性障害と似たような経過をたどる可能性が考えられています。
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治療
反復性短期抑うつ障害の治療は、うつ病の治療と同様です。主に標準的な抗うつ薬による薬物療法や精神療法が中心となります。さらに、リチウム(リーマス)や抗けいれん薬など、双極I型障害の治療薬の一部も治療に有益であると考えられています。
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