- QPさん
- ◆自身のステータスについて
- ◆面接・仕事について
- 求人はどこでみつけましたか?
- R社最大手ですもんね。障害者専門のエージェントなどは使われましたか?
- 障害者雇用を行うに当たり、就労移行支援などは利用しましたか?
- オフィスワークだったらPC訓練必須ですよね。入社試験のフローを教えてください。
- 筆記試験があった会社はありますか?
- 処理速度ネックになりますからね。申し出ている配慮事項などはありますか?
- 2社目でブラック企業に入社した理由はあるのですか?
- 障害者雇用でも残業ありなんですね
- 障害者雇用ってやはり給与や待遇は変わりづらいんでしょうか?
- 調整とか管理役ってだいたいの発達苦手とするところですからね
- 今の業務内容について教えてください
- 最先端な感じしますね。勤続年数について教えていただけますか?
- 人間関係良好な社内は平和ですね。得意な事は何ですか?
- わかる気がする…仕事で辛かったことを教えてください
- 外資は人数調整も厳しいんですね。勤務時間や体制はどうでしょう?
- プライベートでの悩みはありますか?
- 編集後記
- QPさんのステータス
QPさん
外資系のIT企業で障害者雇用勤務をされているQPさんにお話しを聞きました。発達障害が発覚してから現在までのお話をまとめています。
◆自身のステータスについて
障害や病気について診断がついたのはいつでしたか?
15年前の2009年になります。当時は小さな企業で働いていた為、いくつもの役割を一人でこなさなくてはならない状況にありました。
異常に不器用だった私は手先を使う作業がとても苦手で、それを見た当時の社長に「君は障害があるようだなぁ。病院に行って調べてみるといい」との助言を貰って病院に行ったことがきっかけになります。
ご自身で困っている症状を教えて貰えますか?
整理整頓がとにかくできないんですよ。職場も家も散らかっていて、デスクトップ上もアイコンで埋め尽くされています。かろうじて金銭管理はできているのでなんとかやれています。
あとは、話が散らかることですかねぇ。過去の職場で「整理して話して」と指摘を受けたことがあります。学生時代は困ることほとんど無かっただけに戸惑いました。
どのような流れで診断に至ったのでしょうか?
病院には学生時代の成績表を持っていき、WAISⅢを受けることになりました。
数値と語彙の凸と積み木、漫画の順番の凹が見られたため、当時はASD(アスペルガー)との診断がおりましたが、誤診だったようで、後々ADHD100%の診断に変わっています。
服薬などはされていますか?
抗ADHD薬などは使っておらず、睡眠薬程度ですね。
眠りがどんどん浅くなってしまう方で生活に支障が出るので使っています。
参考:医師の意見書とは?
◆面接・仕事について
求人はどこでみつけましたか?
僕は今までに3社障害者雇用で勤めているのですが、1社目は派遣会社経由で就職し、2社目はエージェント、3社目は自身で企業分析をして応募しています。
障害者雇用専門のエージェントではないが、R社が一番自分は合っていたと感じています。大手の求人数が多く、とりあえず登録しておく価値はあると思いますね。
R社のリクルーターは当事者から見ると高圧的に見られる態度を取ってしまうようで、あまり評判が良くないのですが、人材会社も人事も経験している自分とは相性が良いと感じていました。
私が働いていた人材会社では登録してきた人材を4つくらいのランクに分けていたのですが、R社に関してはもっと細分化した基準で分けていると感じます。
R社最大手ですもんね。障害者専門のエージェントなどは使われましたか?
障害専門のエージェントS社は利用したことがあります。
ここは社長が一人で回しているタイプの会社で、面倒見がよく、落ち着いていて論理的に説明をしてくれます。R社とS社は入社には至らなかったが内定に結びつく案件をくれたと感じていますね。
あとは「一般社団法人日本雇用環境整備機構の石井京子さん」が行っていた就職相談サービスですかね。発達障害専門のエージェントとして日本では草分け的な存在であり、今でもたまに連絡をとっています。
障害者雇用を行うに当たり、就労移行支援などは利用しましたか?
僕が診断を受けたり最初に休職していたころはまだ、Kaien(カイエン)が出来たばかりくらいで就労移行支援って概念がほとんど無かったんですよ。
僕は障害者職業センターに半年程度通って、自己分析やピッキングの練習をしましたね。障害者職業センターの欠点は、実技が少なく実際に仕事のイメージが沸きづらいことです。PCは一応ありましたが、履歴書や職務経歴書を書くためのもので訓練などは無かったです。
オフィスワークだったらPC訓練必須ですよね。入社試験のフローを教えてください。
だいたい面接が1〜2回程度になります。今の会社くらいかな。3回あったのは。2回目の面接のあとに「明日も来て」って言われて最終確認として上司と面接しました。
こちらも参考に:発達障害グレーゾーンとは?特徴や仕事探し、正確な診断、治療の可否
参考:社労士とは?
筆記試験があった会社はありますか?
外資保険のA社や国内大手のB社はありましたね。WEBテストで受験する処理速度を測るタイプの試験でランクとしてはそれほど高くないものです。玉手箱よりは低いランクと考えて良いと思います。
参考:処理速度とは?
処理速度ネックになりますからね。申し出ている配慮事項などはありますか?
基本的に配慮ってどんどん無くなっていくものなんですよね。上司が変わると配慮がまったく無くなるということもあります。
今は障害者雇用も3社目でだいぶ慣れてきているので「最初は業務の相談が多いと思います」程度ですかね。1社目の人材企業(日系)の時は出来ないことを外してもらうことや通院などに関して相談していましたし、2社目は通院休暇を最初貰っていました(いつの間にかない事にされていた)。
1社目は障害者雇用の僕にはめちゃめちゃ過保護で、紙を折れただけで褒めてくれるし、郵便局に行くだけでも付き添ってもらっていました。
2社目の外資はマネージャーがどんどん変わって配慮事項は気づいたら無くなっていました。私の経験内で恐縮ですが、外資人事と経理はとにかく人が辞めるんですよ。転職しやすいこともありますし、激務なのでみんな残らないんです。
本国のスケジュールに合わせて年末年始やGWも勤務が発生したり、調整事項も多いので、とても大変でしたね。
当時は「自分は頑張った!」とか思ってましたが、それは驕りで、障害者雇用という安全地帯で周りの人に見えない所でサポートしてもらっていた部分やお手本として(時には反面教師として)他の人のキャリアを見ることが出来たので続けられたというのが事実だと思います。
現在の3社目は配慮というより、「この人はこういう人」という認識でそれぞれの個性を尊重しあっている形です。外資はそもそも変わった人が多いので発達障害が障害になりづらい感覚はあります。
僕が入社した当初はまだ人数も多くなかったので、それぞれに気を配ることが可能でしたが、人数が増えていて今後はどうなっていくのかわかりません。
こちらも参考に:障害年金の更新に落ちる確率(支給停止)。必要な更新の知識と理由
参考:心理学的検査とは?
2社目でブラック企業に入社した理由はあるのですか?
超圧迫面接で迷ったのですが、当時本当にお金に困っていて、今より年収が凄く上がるので、外資だし入社するしかないと思って入った形ですね。面接で年収300万以上を希望した時に担当者の顔がひきつっていたのを覚えています(入社後そういう事はエージェントを通して言いなさい、と怒られました)。入社半年で人が足りな過ぎて残業が月100時間を超えた時もあったのですが、経済的にはとても楽になりました。
最初は労働法の事を知らず、残業が多い時に「残業代一杯もらえた?」って聞かれて「はい!」って無邪気に答えたら「日本では残業する時間の上限が決まってるんだよ、君は本当にここに来る前は他社で働いていたの?」と呆れられたこともあります。
外資でも内情はいろいろで日本企業を買い取った形だけという外資もあります。基本的に利益率の良い会社は障害者雇用でも給与が高い傾向にあり、僕が知っている中ではコンサルのM社が障害者雇用の給与が一番高かったと記憶しています。
障害者雇用でも残業ありなんですね
会社としては基本的に無いのですが、当たる業務によってはありますね。急に同僚が辞める事がよくあって、しわ寄せが来ます。火事場の馬鹿力でなんとかしていました。「障害があるのでできない」といえば考慮されたかもしれませんが、言い出し辛かったので必要に応じて残業していました。
今の会社は業務的にはヘビーですが、残業も無いし、給与も環境も一番良くやりがいを感じています。
外資のITって外から見れば、多様性があるように見えるようですが、今の会社は出来る業務があるから多少変でも許されるといった具合で、技術と配慮のトレードオフだったりすることも多いです。
エンジニアじゃなくてもプログラム書ける人も多いし、皆さん標準スペックが高いと感じます。
あと、部署ごとの関係性が希薄なのか、あまり社内連携を重視せずドライな印象もありますね。他部署が何をやっているのかあまり知らないと思います。前職で色々な部署とやり取りした経験は生きているかもしれません。
こちらも参考に:精神障害者雇用にまつわる誤解 | 就業上の配慮と雇用時のポイント
参考:セカンドオピニオンとは?
障害者雇用ってやはり給与や待遇は変わりづらいんでしょうか?
僕は1社目はアルバイト。2社目は契約社員→正社員、3社目の現在は契約社員で働いています。
評価が良くても会社都合で昇給が無いことはよくありますね。僕は転職をして確実に給与は上がっています。
働く事に関しては「メンバーシップ型」「ジョブ型」という働き方の区分を提唱した濱口慶一郎氏の考え方を特に参考にしています。ジョブ型雇用が障害者雇用にマッチしているとは全く思いませんが、日本は職位が上がるほど、調整・管理役が増えることが一般的で、日本の企業で働く事は発達にとって辛いことも多いと思いますね。
参考:ジョブ型雇用とは?
調整とか管理役ってだいたいの発達苦手とするところですからね
ASDタイプの人は特に苦手とするところだと思います。
僕は社内では3つのキャリアがあると思っているんですよ。1つは専門職、2つ目はマネージメント、3つ目はサポートですね。
僕はサポートと専門職の中間にいると思っています。
発達の場合は専門職に徹した方が良い成果が上がる人も多いのではないでしょうか。
こちらも参考に:メンタルケアの新手法、オープンダイアローグとは?役割や7つの原則
参考:職業適性検査とは?
今の業務内容について教えてください
基本的に人事・経理・労務管理などのバックオフィス系です。業務の自動化業務が多く、システムの要件定義や実際に成果物作成を行っています。みんな口頭で話すので要件を汲み取るのが大変です。ゼロから話をまとめて形になっていくのは楽しいと感じています。
RPAで業務の自動化を推進したり、チャットGPTで簡単なアプリを組んで業務効率化を進めることもあります。本格的にプログラミングを覚えてみたいですね。
最先端な感じしますね。勤続年数について教えていただけますか?
1社目で3年。2社目で4年、現在の3社目で5年になります。
僕は「人間関係の躓きが少ないタイプ」かつ「他人から見てわかりやすいタイプ」なので長続きしているのだと思います。1社目の会社では仲の良い友人も出来て楽しい日々を送っていました。
こちらも参考に:令和5年度「障害者雇用納付金制度」とは?雇用調整金や助成金の種類
参考:病歴・就労状況等申立書
人間関係良好な社内は平和ですね。得意な事は何ですか?
「喧嘩をしている人の仲裁」と「耳から聞いた情報の処理」です。特に外資は我が強い人が多いのでよく喧嘩になるんですよ。女性同士は留学先カーストが存在するようで揉めているのを見たことがあります。
日本企業と外資どちらも良さがあるので一概に言えませんが、外資は上司のガチャが良くも悪くも激しく、入れ替わる回数も多いと感じますし、女性は感情的な方も多い印象です。
2社目で圧迫面接をされた話をしましたが、圧迫面接された方はとても優秀な方で後で「雇いたい気持ちの方が強かったが、リスクを見極めたかったからやむを得ず圧迫面接をした」と言われましたし、人事業務の知識や先に述べたキャリアについての考え方はその人にほぼすべて教わりました。
仕事においては定型の人も仮面を被っている時もあるし、長いスパンで考えるとその瞬間はマイナスに見える出来事でも、今考えると重要なポイントだったということはあるのではないかと思っています。
わかる気がする…仕事で辛かったことを教えてください
2社目の外資で契約社員の方を解雇する話に巻き込まれてしまったことです。
外資には一般的にヘッドカウント(HC)という概念があり、部署ごとに雇用する人数が決められているんですね。なので一人当たりの負担が大きい事も多いし、業績が悪化したり人が余ってしまうと解雇せざるをえなくなるのです。
対象になっていた方はとても優秀な方で仕事はすぐ見つかると思うのですが、当時の人事トップのアシスタントをしていた僕に頭を下げてどうにかならないか。と掛け合ってきました。
上司に相談すると「お前は何もできないのに口を挟むな」と叱咤されてしまったことが辛い思い出です。ただ、それも他人の運命や自分自身の無力さに触れてしまった事で本当の意味でキャリアを考え始める一番大きなきっかけになったとも思います。
あと、これを読んだ方の中には「あなたは恵まれているだけだ」と思う方もいると思いますし、自分自身その通りだと思います。
確かに最初の会社は最低賃金でしたが、他の方の職務経歴書を読んで参考にしたり、ある程度仕事の給与相場を知ることが出来たりで、どういうスキルを覚えれば転職に繋がるかなどを知ることが出来たことも事実です。この記事を通して嫌な思いをさせてしまっていたら大変申し訳ありません。
こちらも参考に:ハローワークの障害者求人探す方法。相談窓口の活用
参考:認知機能とは
外資は人数調整も厳しいんですね。勤務時間や体制はどうでしょう?
現在は在宅のフルタイムです。数か月に1回程度は出勤します。残業は無いのですが、深夜に上司からメールが来たりするので、一応目は通しています。
プライベートでの悩みはありますか?
いっぱいありますね。特に人間関係で自分から話題を提供することが苦手で話が続かなかったりします。仕事に不満が無いだけに、今年はプライベートの悩みも解決していきたいですね。
編集後記
とても真面目で仕事に対して熱心な印象のあるQPさん。障害者雇用といえば限られた範囲の単純作業を黙々とこなしている印象があったのですが、すいぶん違ったようで目から鱗でした。
インタビューに真摯にお付き合いいただきありがとうございます!これからもお仕事頑張ってください。
QPさんのステータス
1社目 | 2社目 | 3社目 | |
求人はどこで見つけたか | 派遣会社 | エージェント | 自分で企業分析をした内容をもとに応募 |
企業の区分 | 国内企業人材系 | 外資商社 | 外資IT |
面接で聞かれた内容 | 出来る事、苦手な事、配慮事項 | 超圧迫面接 | 1次面接で苦手な事の整理、2次面接で業務の切り出し |
筆記テストの有無 | なし | なし | なし |
雇用形態 | アルバイト | 契約社員→正社員 | 契約社員 |
勤務時間や勤務体制 | フルタイム 休日出勤有 |
フルタイム+残業 | フルタイム残業なし |
給与 | 年200万円くらい | 年収300万円、年に1,2回凄い残業が | 2社目より増えた |
申し出ている配慮内容 | 通院に関してや「苦手なこと」を申し出て業務から外してもらうなど。 とても過保護にしてもらった |
みんなすぐやめる。配慮なし | 「この人はこういう人」という感じで配慮というより個人理解に近い形。 ある意味多様性を理解していると思うが自分自身も他人に配慮する必要を感じる。 |
業務内容 | 郵便対応、清掃、簡単な計算業務 | システムの入れ替え、人事業務 | 経理業務、DX推進 |
人間関係 | 対人関係で躓くことが基本的に無いため、とても仲の良い友人に恵まれた。 | ブラック企業。あまりよくない。人が頻繁に辞める。 | 女性同士の留学マウントなどはあるものの、外野だし、とても環境は良い。 部署ごとに独立していてあまり干渉しあわない形である意味ドライ |
入社した理由 | 失業中で金欠だったから | 今より年収100万上がると思って入社を急いだ | スキルが付きそうだと思ったため |
転職理由 | お給料が安かったため | 次の会社の方が良いと思ったため | – |
残業について | なし | 月間100時間ほど。基本的には無い部署が多いが、業務によっては発生する | なし |
勤続年数 | 3年 | 4年 | 5年 |
昇給について | 全くありませんでした | 5段階の4.1とかとってたけど、会社都合で年収は上がらなかった | 入社半年で月2万円上がりました |
やりがい | 全くありませんでした | やりがいはありました | とても感じている |
仕事での不満 | 多過ぎて書けません・・・ | みんな口頭で話す要件を形にしてまとめなくてはいけないこと。 要件を汲み取れないと大変 |
特にない |
仕事でつらかったこと | 圧迫面接した人と働くことになったこと | 残業が多い。急に人が辞めて業務の皺寄せがくること。 心が乱れる情報が多く、メンタルが乱れてしまう |
業務難易度に幅があるとは感じる |