ハローワークは、就職について悩んでいる・困ったときに使える公共機関の一つとなっており、障がい者向けの求人も数多く紹介されています。
ハローワークと聞くと「求人探し」のイメージが連想されるかもしれませんが、実はそれだけではなく、就職活動に関する相談や職業訓練、就職面接会など幅広いサポートをしています。
本記事では、ハローワークの障がい者向け求人について解説します。またハローワークで求人を探す方法や仕事を探すときに押さえておきたいポイント、活用できる就労サービスをご紹介します。
ハローワークを利用すると、就労に向けた不安や困りごとが相談できるとともに、ご自身に合った働きやすい職場を探すことができます。
障害者手帳を取得したばかりの方や、障がい者雇用枠で就職を考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
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参考:障がい者雇用とは?
ハローワークの障がい者向け求人とは
ハローワークは、公共職業安定所(職安)のことで、国民に安定した雇用機会を確保することを目的とした厚生労働省の機関です。
「一般向け就労窓口」と、「障がい者専用の就労窓口」の2つの相談窓口があり、障がい者向けの就職について相談できる窓口は「障がい者専用窓口」です。
専門的な知識を持つ相談員が配置されており、障がい求人情報の提供や就労に関する相談などの支援を受けられます。利用できる曜日はハローワークごとに異なるため、希望する方は事前予約をして出向くと良いでしょう。
参考:ハローワークとは?
参考:厚生労働省とは?
ハローワークの障害者相談窓口では、主に障害への専門的な知識がある担当者が、就職を希望する障害のある方のために相談や就職活動・就職した後のサポートなど幅広く実施しています。
手話通訳士や精神障害者雇用トータルサポーター、難病患者就職サポーターなどが配置されているところもありますので、詳しくはハローワークのWEBサイトでご確認ください。
一般窓口にはないサポートが受けられますので、「自分に合う障害者求人を探している」「初めての障害者雇用で働くことに不安がある」「障害特性にあわせたサポート内容が知りたい」などがあれば、まずは「障害者相談窓口」へ相談すると良いでしょう。
障害を開示して働くかどうかのお悩みも、まずは障害者相談窓口で相談してみても良いかもしれません。
参考:特定求職者とは?
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障がい者雇用枠
専用窓口では、「障がい者雇用枠」での求人紹介を受けられます。
障がい者雇用枠とは、障がい者の雇用機会を促進するため設けられた雇用枠のことです。
厚生労働省は、自治体や一定以上の従業員のいる企業に対し、障がいのある方の雇用を求めています。一般枠との違いは、採用試験の時や採用された後に障がいの程度に合わせた合理的配慮を受けられることです。
なお、障がい者雇用枠で就労する場合には、障害者手帳を所有している必要があります。ただし、ハローワークの障がい者専用の就労窓口は手帳がない方でも利用可能です。
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参考:合理的配慮とは?
ハローワーク障害者相談窓口の必要な持ち物は?
障害者手帳をお持ちの方は、必ず障害者手帳をお持ちください。
相談内容によっては、主治医の診断書やハローワークの指定書式による意見書の提出が求められる場合もあります。
参考:医師の意見書とは?
ハローワークで障がい者向け求人を探すメリット
障害者がハローワークを利用して雇用を探す際には、いくつかのメリットがあります。まず第一に、ハローワークは厚生労働省の管轄機関であり、職業探しの安全性が保証されています。
さらに、ハローワークでは企業側が無料で求人広告を掲載できるため、障害者雇用の求人が多く存在します。
以下では障害者求人ならではの「就労に関する不安を相談できる」と「就職後も定期的にフォロー」について説明します。
就労に関する不安を相談できる
障がいのある方が就労に関する悩みや不安を相談できることが、障がい者専用窓口のメリットです。ここでは、手話や筆談ができる専門的な知識を持つスタッフが配置されており、仕事に関する相談や求人の紹介などのサポートを受けられます。
一部のハローワークには、精神障害者雇用トータルサポーターや発達障害者雇用トータルサポーターなど、専門性に特化したスタッフもいます。
自分の適性がわからない場合には、職業適性検査などを受けることができ、また、職業訓練所の紹介も受けられます。
さらに、希望の求人が見つかると、企業側との面接の調整から、面接の練習や採用面接に同行してくれるサービスまで、不安のある方に対するサポートが行われます。
参考:職業適性検査とは?
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就職後も定期的にフォローしてもらえる
新しい職場で働き始めると、仕事や職場の人間関係、日常生活に関する新たな悩みや不安が生じるかもしれません。しかし、ハローワークでは、就職後も定期的に悩みや不安を相談できる体制が整っています。支援が終了するのではなく、長期間働き続けるためのサポートやアフターフォローが提供されるため、これも大きなメリットと言えます。
ハローワークからの紹介での障害者の就職件数は、平成28年度時点のデータですが、8年連続で増加しており(対前年度比3.4%増)、就職率も上昇(対前年度比0.4ポイント増)というデータがあります。
こちらも参考に:休職期間満了による退職は解雇?それとも自己都合退職?注意点も解説
ハローワークで障がい者向け求人を探す方法
ハローワークで障がい者向けの求人を探す手順は、大まかに以下の5つのステップに分かれます。
【ハローワークの利用手順】
- ハローワークで求職者登録を行う。
- 障がい者専用窓口で不安や悩みを相談する。
- 求人を検索し、紹介を受ける。
- 面接に関する相談をする。
- 面接を受け、採用される。
これらのステップについて詳細を見ていきましょう。
① ハローワークで求職者登録を行う
ハローワークで求人を探すためには、まず最初に求職者登録を行う必要があります。
自身の居住地域にあるハローワークに直接足を運び、総合窓口で自身の障がいやその他の状況について伝えます。そこで求職申込書に必要事項を記入し、ハローワークカードを受け取ることで、求職申込の登録が完了します。
なお、ハローワークは管轄があり、地域ごとに利用できるハローワークが指定されています。 お住まいの地域にあるハローワークを見つけるには、以下のリンクから検索できます。
参考 : 厚生労働省 全国ハローワークの所在案内
② 障がい者専用窓口で不安や悩みを相談する
参考:公共職業能力開発施設とは?
③ 求人を検索し、紹介を受ける
ハローワークでは、ご自身に合った方法で求人検索が可能です。
求職者登録を済ませた後は、自宅からインターネットを使って検索することができます。また、ハローワークに直接出向いて支援員に求人を紹介してもらう方法や、ハローワークのパソコンを利用して自分で検索することもできます。
窓口で検索する場合、インターネットでは非公開の求人情報を入手できることもあり、気になる求人についてより詳細な情報を得ることができます。
ハローワークでの障害者求人の探し方や応募するときに必要な手続きとは?
障害者求人の探し方
参考:労働基準監督署とは?
障害者求人へ応募する場合
ハローワークの障害者求人に応募する場合は、まずハローワークでの紹介が必要です。ハローワークを通じて応募する求人には、事前に求職申込みの手続きが必要です。以下では、その手続きの流れについて説明します
求職申込み手続きについて
STEP1. 自宅のパソコン(インターネット環境がある場合)またはハローワークのパソコンを利用し、ハローワークインターネットサービス内の「求職申込み(仮登録)」に本人情報や求人条件を入力します。
STEP2. ハローワークの相談窓口で手続きを行います。
STEP3. ハローワーク受付票を受け取ると、手続きは完了です。
※感染症拡大防止の観点から、来所せずに手続きを行う方法もありますので、詳細はご利用のハローワークにお問い合わせください。
ハローワーク受付票には、求職番号が記載されており、求人情報を検索する際に必要です。また、この受付票を窓口で提示することで、他のハローワークでもサービスを受けることができますので、常に携帯しておくと便利です。
こちらも参考に:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の詳細と申請方法
参考:職業能力開発総合大学校
ハローワークで障害のある方が受けられる就職活動のサポートについて
ハローワークでは、障害のある方が就職できるようさまざまなサポートを実施しており、以下ではその一例をご紹介します。
就職における支援
障害者求人の紹介や斡旋に留まらず、就職活動の進め方や応募書類の添削、面接同行、就職後の継続的なサポートなど、幅広い支援を提供しています。応募書類や面接に関する不安があれば、いつでもハローワークに相談してください。
ハロートレーニング(職業訓練)
希望する職業に必要なスキルや知識を身につけるための公的制度です。ほとんどの場合、無料で受講でき、事務系からプログラミングやWEBデザインなど、さまざまな職業訓練が提供されています。
こちらも参考に:求職者支援資金融資はどんな制度?誰が対象でいくら借りられるの?
参考:職業訓練受講給付金
就職面接会
ハローワークでは、障害のある方と企業が出会う場として、定期的に就職面接会を開催しています。これにより、複数の企業が参加するため、多くの企業の情報が得られたり、1日で複数の面接を受けることも可能です。
なお、感染症対策のため、一部で実施されていない場合もありますので、詳細についてはお近くのハローワークでご確認ください。
障害者トライアル雇用
一定期間企業で働いてみて、自分が働きやすい環境であるか、企業との相互理解を深めながら、双方の不安を解消していけるかなどを見極めます。このプロセスを経て、双方が働けそうと判断すれば、同じ会社での継続雇用が可能になります。
障害者トライアル雇用を経て継続雇用された方は、安定して長期間働く傾向があります。障害者トライアル雇用を受ける条件がありますので、詳細についてはハローワークでご確認ください。
参考:障害者トライアル雇用とは?
チャレンジ雇用
こちらも参考に:障害者雇用の助成金。種類と内容について解説
こちらも参考に:【発達障害 一人でできる仕事】職種、業務、職場環境など
障がい者が仕事を探す時に抑えたいポイント
働きやすい環境が整っているかどうか
仕事を探す際の重要なポイントの1つは、希望する企業が働きやすい環境を提供しているかを確認することです。障がいの特性に応じた職場環境が整っていない場合、その企業で働くことは難しいかもしれません。例えば、車椅子を利用する方は会社の通路の幅やトイレの設備を確認する必要があります。また、障がいをサポートするための支援機器が職場に導入されていることも重要です。企業への応募時には、できる限り見学に行き、職場の環境を実際に確認することがおすすめです。
参考:環境調整とは?
柔軟な働き方ができるか
困った時に相談できる窓口が設置されているか
職場内に相談窓口が設置されているかどうかは重要なポイントです。
実際に働き始めると、予期せぬ悩みや相談事が生じるかもしれません。そのような場合、会社内に相談窓口があれば、気軽に相談に行けるため、安心感があります。
相談窓口の有無は企業によって異なりますが、従業員が50人以上の職場(事業場)には、労働者の健康で快適な作業環境について指導したり相談したりする産業医が選任されています。
また、障がい者向けの転職エージェントをはじめとした支援サービスや、その他の機関では、就職後も相談や面談などのアフターフォローを受けられるので、必要に応じて活用すると良いでしょう。
障がい者の方が活用できるそのほかの就労サービス
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般就労を望む障がいのある方に、職場体験や求職活動の支援、職場の探索や定着の相談など、幅広いサポートを提供しています。
利用期間は通常2年で、自治体の審査により必要性が認められれば1年間延長できます。2021年1月時点で全国に3,006箇所の事業所が設置されています。対象は、一般就労を希望する65歳未満の障がいのある方です。
主な支援内容は次の通りです:
- 就労に必要な知識や能力向上のための訓練や活動の提供
- 求職活動の支援
- 利用者の適性に合った職場の探索
- 就職後の定着のための相談や支援
利用者は、職業訓練や職場探しの相談から、実際の仕事や人間関係の悩み、金銭管理など、実生活に関する相談まで、幅広い支援を受けることができます。
ただし、就労移行支援事業所は求人の紹介を行う場所ではなく、利用者自身が求人を探す必要があります。スタッフは、利用者が就職に向けて準備するためのサポートを行います。
就労移行支援事業所を利用したい場合は、まずは市区町村の障害福祉課などの関連窓口に相談してみましょう。
参考:障害福祉課とは?
こちらも参考に:就労移行支援とは
地域障害者職業センター
障害者就業・生活支援センター
転職エージェント
転職エージェントは、転職を希望する個人と採用を希望する企業をマッチングさせるサービスです。登録すると、専属のキャリアアドバイザーが求人検索から入社後のフォローアップまで包括的にサポートしてくれます。
一部の転職エージェントは、障がい者向けの支援サービスも提供しています。転職エージェントで利用できるサポート内容は以下の通りです。
【転職エージェントで利用できるサポート内容】
- カウンセリング
- 求人紹介
- 履歴書や面接対策のサポート
- 入社後のフォローアップ
転職エージェントを利用すると、求職者と企業双方のニーズに合わせた提案を受けることができ、採用のミスマッチを防ぐことができます。また、ハローワークでは公開されていない非公開求人を取り扱っている場合もあります。
入社に向けた準備から入社後の環境への適応まで、一貫したサポートを受けることができます。Web上で手軽に登録できるため、検討してみる価値があります。
障害者雇用で働くメリットやデメリットはあるのか
障害者雇用には、様々なメリットやデメリットがあります。個々の感じ方は異なりますが、一般的に障害者雇用でよく感じられるメリットとデメリットを紹介します。これらを理解した上で、自身に適した選択を考えることが重要です。
障害者雇用で働くメリットとは?
多くの場合、障害者雇用の職場では、障害に理解があります。職場と個々の状況に応じて、お互いの理解のもとで配慮が行われます。例えば、通勤ラッシュを避けた勤務時間や定期的な面談で体調を確認するなどの配慮があります。後ほど、障害者雇用で働く事例も紹介します。
参考:二次障害とは?
障害者雇用で働くことにデメリットもある?
障害者雇用の求人に応募するには、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳、療育手帳)が必要です。障害者雇用の求人は一般雇用に比べて数が少ない傾向があります。これらの求人はハローワークやインターネットで検索できますが、地域によっては見つけにくい場合もあります。障害者雇用での就職を希望する場合は、まず障害者手帳を取得する必要があります。