精神保健福祉士(MHSW)とは?
精神保健福祉士は、「精神保健福祉士法」に基づく国家資格で、同法第2条によれば、精神保健福祉士は、精神科病院や医療施設で精神障害を持つ人や社会復帰を目指す人に対し、専門的な知識と技術を用いて相談に応じ、助言や指導、日常生活への適応を支援するための訓練などを提供します。彼らは、精神障害者の生活支援に関する専門的な知識と技術を持ち、精神保健福祉分野における専門家としての重要な役割が期待されています。
また、精神保健福祉士は精神科ソーシャルワーカー(PSW)とも呼ばれ、心の病や悩みを抱えたクライエント(相談者)の日常生活や社会復帰を支援する専門職です。
精神保健福祉士法の施行により、1997年に国家資格として新設されました。彼らの主な役割は、クライエントの障害特性や人となり、周囲の環境を考慮して課題を明らかにし(アセスメント)、情報提供や助言、社会資源との連携、適切な訓練などを通じて課題解決を図ることです。
過去5年間で精神保健福祉士の登録者数は約4,000人ずつ増え、2021年時点で10万人程度に達しています。
2012年からは「障害者総合支援法」が制定され、精神保健福祉士資格への注目が高まっています。MHSWと省略して呼ばれたりします。
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精神保健福祉士の仕事
精神保健福祉士は、主に精神科医療機関や精神障害者社会復帰施設、保健所、精神保健福祉センター、精神科デイケア施設などで相談援助業務に従事しています。
具体的な業務内容は、病院や施設に入院・入所中の精神障害者の在宅生活への移行支援や、その後の生活支援を含みます。住まいや仕事・学校に関する手続き、各種の支援制度・サービスの紹介や利用調整、さらには日常生活に関わる様々な支援を提供しています。
特に、生活訓練施設や社会就労センター、地域生活支援センターなどの精神障害者社会復帰施設では、精神保健福祉士の配置が義務付けられており、精神障害者が社会復帰し、日常生活をより充実させるための支援を行っています。
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精神保健福祉士になるには?
精神保健福祉士資格が必要
精神保健福祉士国家試験に合格して精神保健福祉士として登録するには、以下の4つのいずれかの受験資格を有する必要があります。
① 4年制大学で指定科目を修めて卒業した者
② 2年制(または3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(または1年以上)相談援助の業務に従事した者
③ 精神保健福祉士短期養成施設(6か月以上)を卒業(または修了)した者
④ 精神保健福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(または修了)した者
精神保健福祉士国家試験は年に1回実施され、試験の実施と登録の事務については厚生労働大臣の指定を受けた(公財)社会福祉振興・試験センターが行う流れです。
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職場により仕事内容も異なる
職場によって精神保健福祉士の仕事内容は大きく変わります。活躍の場が、病院から支援機関、学校など多岐に渡るため、職場によって求められるアプローチも変わってきます。
例えば学校でスクールソーシャルワーカーとして働き、家庭内や教師からの暴力で心のバランスを崩したり、いじめで不登校になった子どもの支援を行なったりすることもあります。児童本人だけでなく、教職員や保護者、近隣住民との調整も行います。
精神科の医療現場では、受診前の相談から初回の面接、入院中の相談業務や社会復帰のための助言・関係各所との調整などをおこないます。
精神保健福祉士として8年以上の実務経験がある場合は、「社会復帰調整官」として保護観察所に配置され、重大な他害行為を行った精神障害のある人の処遇、関連機関のコーディネータ役などを行うケースもあります。
このように、ケースバイケースで柔軟な対応を求められる仕事の側面を持っています。
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社会福祉士・介護福祉士、カウンセラーとの違い
上記の仕事例を見て、「カウンセラーや介護士と同じではないか?」と思った方もおられるのではないでしょうか?これらの仕事には「患者に寄り添い、社会をより良くする」といった共通点がありますが、精神保健福祉士が業務の対象とするのは、うつ病や統合失調症や認知症など精神疾患がある方です。
社会福祉士は高齢者・子ども・障がい者・低所得者など、精神疾患患者に関わらず、保護対象に当たる幅広い方々を対象にお仕事をしています。介護福祉士は、高齢者の介護分野にて活躍する職業です。
国家資格には「業務独占資格」と「名称独占資格」があり、業務独占資格は免許を所有していない人が治療を行なった場合、違法行為にあたる資格のことを言います。
精神保健福祉士の資格は、特別な資格で、この資格を持っていないと「精神保健福祉士」と名乗ることはできません。でも、心の病気の方をサポートする仕事は、この資格がなくてもできる仕事もあります。ただ、この資格を持っていると、いろいろな場所で働けるチャンスが広がります。
精神保健福祉士と社会福祉士のダブルライセンス
精神保健福祉士と社会福祉士のダブルライセンスで活躍の場を広げる働き方も可能になります。
「精神障害の有無に関わらず、幅広く困っている人を支えたい」と考える方にはとても良い選択肢でしょう。福祉のエキスパートとして幅広い専門知識を備えた人材の証明になりますし、精神保健福祉士単独よりも社会福祉士とペアで持っていた方が就職においても有利です。また、将来的には管理職などへのキャリアアップにつながったり、もっと待遇の良い職場を求めて転職する際にも役立ちます。
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精神保健福祉士のやりがい
精神保健福祉士が仕事で接する方々は精神疾患を患っていて、環境的にも金銭的にも厳しい方がほとんどです。そういった方々に共感できたり、環境が少しでも改善されることに喜びを感じる方にとってはやりがいを感じられるでしょう。社会にも大きく貢献できます。
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精神保健福祉士(MHSW)に向いている人とは
精神保健への興味
前提条件として精神保健への興味・関心があることが大事になってきます。ひとくちに精神障害と言っても依存症から発達障害、統合失調症までさまざまな疾患があり、それらの症状や特性は環境や性格、考え方の癖などの背景から「困りごと」という形で現れてきます。
それらのケースに対して常に患者さんの背景を想像し、勉強する姿勢を持ち続ける方も精神保健福祉士に向いているといえるでしょう。
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コミュニケーション能力
精神保健福祉士は、精神科医療チームの一員として、医療者、患者、家族との連携を密に行い、包括的な支援を提供します。また、地域包括支援センター、福祉事務所など、関係機関との連携を強化し、地域における精神保健福祉サービスの向上に貢献します。
問題解決するためのコーディネート力
精神保健福祉士は、ただ話を聞くだけでなく、実際に動いて、困っている人が適切な場所や人に繋がれるように手配する役割も担っています。例えば、仕事を探したい人がいたら、ハローワークを紹介したり、お金のことで困っていたら、生活保護の申請の手続きをサポートしたりします。
社会の役に立ちたいという熱い思い
精神保健福祉士は、辛い状況の人と向き合う仕事です。その人の気持ちを考え、一緒に解決策を探していく中で、つらい気持ちになることもあります。でも、仕事が終わってからもその気持ちを引きずっていると、他の人の役に立つことができなくなってしまいます。
困っている人を助けたいという気持ちを持ちながら、冷静に状況を判断し、客観的に考えることができる人が、この仕事に向いていると言えるでしょう。
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精神保健福祉士国家試験の概要
精神保健福祉士国家試験は、精神保健福祉の分野でプロフェッショナルとして活躍したい人々にとって重要なステップです。この試験は年々人気が高まっており、過去5年間で精神保健福祉士の登録者数は毎年約4,000人増加し、2021年には登録者数が約10万人に達しています。(社会福祉振興・試験センター)
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精神保健福祉士試験の合格率の推移
精神保健福祉士試験の合格率の5年間(2018年〜2023年)の平均は65%です。
2023年度(令和5年度)の精神保健福祉士試験では、合格率71.1%と過去最高の合格率になっています。
年1回、2日間の日程で行われます。出題形式はマークシートによる選択式回答となります。試験日の午前と午後に行われ、各100問の計200問です。
国家試験の勉強方法
試験の合格率は比較的高いといえますが、試験対策は必須です。
過去問や国家試験対策アプリを使い、移動時間やすきま時間を使って繰り返し学習しましょう。
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精神保健福祉士の勤務先
精神保健福祉士の勤務先の約8割は福祉関係や医療関係です。(精神保健福祉士就労状況調査)
近年では行政や教育機関など様々な場所に活躍の場が広がっています。
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障害者福祉関係
以下のような勤務先があります。
相談支援事業所:障害者への相談支援をおこなう
基幹相談支援センター:地域の相談支援の中核
障害者支援施設:通所訓練が難しく夜間の生活介護が必要な人向け
障害者グループホーム:医療費や生活費に関するアドバイスを行うほか、適切な福祉サービスを利用できる出来るようにサポートする。
依存症回復支援施設:依存対象物なしで日常生活を送れるようになるようサポートする。
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高齢者福祉関係
介護保険関連施設:認知症の高齢者のケアや相談業務が主な仕事になる。介護施設や、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設が含まれます。
医療関係
精神保健福祉士が居る医療関係施設は主に入院が出来る精神科が設置されている病院やクリニックになります。患者の入退院をサポートし、必要に応じて精神療法を実施します。退院後の支援機関との橋渡しも大事な業務の一環です。
行政機関
精神保健福祉士が精神保健福祉相談員として勤務するケースです。この場合は精神保健福祉士以外に地方公務員試験に合格する必要があります。
精神保健福祉士は、精神障害者の社会復帰支援を目的とし、住環境調整、就労支援、生活支援などの多様なサービスを提供します。関係機関との連携を密に行い、ケースマネジメントを通して、個々の患者に最適な支援計画を作成し、実行します。
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学校教育関係
精神保健福祉士がスクールソーシャルワーカーとして勤務するケースです。社会福祉の専門性を持ち、問題を抱えている児童・生徒が置かれている環境に働きかけることで、問題の解決に向けてサポートする仕事になります。
司法関係
保護観察所や矯正施設が該当します。精神疾患によって犯罪を犯した患者を対象に社会復帰に向けた訓練や矯正を行います。保護観察所では社会復帰調整官と呼ばれ、社会復帰調整官採用試験を受けることによって採用されます。
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精神保健福祉士(MHSW)の年収・給料は?
精神保健福祉士の年収分布・年収相場は平均額は404万円。300〜400万円未満がボリュームゾーンでアルバイトやパートなどの非正規雇用と正社員雇用、職場などによっても年収に大きな開きがあります。
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年収約300万~400万円、月給は大卒で約20万円
精神保健福祉士の給料は、大卒の方の初任給が20万円程度で決して高い給与とは言えません。キャリアを積んでいくことで徐々に給料は上がっていき、総合的な平均年収としては約300万円~400万円になるようです。研修や自己研鑽が推奨される職場が多く(81.5%)、仕事以外でもキャリアアップに熱心な方が多いです。
年収・給与アップさせる方法は?
実務経験を積んでキャリアアップを目指す!
精神保健福祉士として年収アップを目指すのであれば、実務経験を積んでキャリアアップを目指しましょう。多くの職場は資格手当があり、精神保健福祉士以外の資格を取得すれば資格手当により給与を上げることが可能です。役職がつけば役職手当が貰え、より給料を上げることが可能です。
まとめ
精神保健福祉士の仕事は、様々な障害者をサポートするやりがいと使命感に満ちたものです。患者との信頼関係を築き、カウンセリングや支援サービスを提供することで、精神的な問題や心の不調に対処します。
職務には感情的な負担やストレスが伴うこともありますが、困難な状況や苦悩に向き合い、粘り強くサポートを続ける中で障害者の生活に希望と前進をもたらすことが出来るでしょう。
※2021年から略称はPWS→MHSWに変更されたとご指摘いただき修正しています。
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