癇癪って?
癇癪(かんしゃく)とは、自分の要求が満たされないときや、不本意な結果が受け入れられないときに、怒りの感情が爆発してしまう状態を指します。
医学的な診断名ではありませんが、怒りを抑えたりコントロールしたりすることができない状態を意味します。
癇癪を起している時には、「人や物に激しく当たる」、「攻撃的な言動をとる」、「仕事や勉強が手につかない」などの行動が見られることがあります。
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癇癪の原因は単一ではなく、脳の成熟度や社会性の発達、体調の変動、生理的な不快感、環境の変化など、複数の要因が関与しています。
これらの要因が複雑に絡み合うことで感情が爆発し、自らの感情を制御することが困難になる状況が生じます。
本稿では、怒りへの対処方法や、強い怒り(癇癪)に対する対応策(アンガーマネジメント等)、癇癪の原因、関連する疾患や障害、ならびに相談窓口について解説いたします。
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大人の癇癪とは?
癇癪(かんしゃく)は、厳密な医学的診断名というよりは、激しい感情の爆発や、衝動的な行動を総称する表現として用いられることが多いです。具体的には、強い怒りや不満を感じた際に、それをコントロールできずに、大声を出したり、物を投げたり、身体を叩いたりするなどの行動が見られる状態を指します。
癇癪は、発達障害のある子どもに見られることが多いですが、健常な子どもや大人にも起こり得る現象です。その発現には、神経伝達物質のバランスや、脳の機能、心理的な要因など、多岐にわたる要因が関与していると考えられています。
具体的な症状としては、ささいなきっかけで激しく怒る、攻撃的な言葉や突発的な態度をとる、物を壊す、暴力をふるう、仕事や勉強が手につかないなどが見られます。また、怒りが急に湧き上がってもすぐに消えることも特徴です。
怒りの感情は誰にでも起こりますが、感情表現が行き過ぎると周りの人との信頼関係を損ねてしまいます。特に、怒りは家族や職場の同僚といった親しい間柄の人に向けられやすく、「家族にだけキレる」というのもよくあるパターンのひとつです。
これらの症状は、他人との関わりにおいて大きな問題を引き起こすことがあります。
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ネガティブな感情をコントロールできないのはなぜ?
人が生活する中で、ポジティブ・ネガティブ問わずさまざまな感情や情動が湧き起こることは自然な現象です。
私たちは、日常的に、情動調節と行動制御を行っています。情動調節とは、怒りや不安といった強い感情が湧き上がっても、それを抑制したり、その強度を調整したりするプロセスを指します。一方、行動制御は、感情に基づいて生じる衝動的な行動を抑制し、より適切な行動を選択する能力を指します。
例えば、怒りを感じた際に、相手を攻撃する代わりに、冷静に状況を説明したり、一時的にその場を離れたりするといった行動が、行動制御の例として挙げられます。
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情動調節機能が不十分な場合、衝動性が高まり、怒りなどの負の感情に支配されやすくなります。
その結果、冷静な判断が困難となり、衝動的な行動に繋がりかねません。また、長期的に感情を抑制し続けると、ストレス蓄積が原因となり、心身症や抑うつ状態などの二次的な問題が生じる可能性があります。
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怒りが起こるきっかけはさまざまで、人との関わりの中で相手の言葉や態度、物事がうまくいかないことなどがありますが、それらは冷静に考えればささいなものであることが多いです。
癇癪の発症は、トリガーとなる特定の状況や出来事だけでなく、個人の感情調節能力の低さや、潜在的な心理的要因が深く関与していると考えられます。
特に、感情抑制を試みることは、かえって感情爆発を引き起こす可能性があります。これは、抑圧された感情が意識下に留まり続け、認知や行動に影響を及ぼすためです。このような状態は、感情のボトルネック効果と呼ばれ、癇癪をより複雑で予測困難なものにします。
「ストレス発散」は、一時的な感情の緩和には有効な手段ですが、根本的な問題解決には繋がらないことが多くあります。アルコールなどの嗜好品を用いたストレス対処法は、快楽追求行動の一種であり、依存のリスクも伴います。
目標達成のためには、感情認識と感情調節能力の向上が必要です。マイナスの感情を単に抑圧するのではなく、その感情が何を意味しているのかを認知し、建設的な行動へと繋げる必要があvります。
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大人の癇癪の症状とは
大人が癇癪を起こす原因
大人になっても癇癪は起こり得ます。その原因は、ストレスや不安などさまざまです。しかし、自分が癇癪を起こす原因を理解することで、より良い人間関係を築くことが可能です。
癇癪を引き起こす原因には、過去のトラウマやストレス、人間関係の問題などが考えられます。これらの原因に対して自己分析を行うことで、自分自身を客観的に見つめることができます。このように自己を客観視することで、感情をコントロールし、より良い人間関係を築くことができるのです。
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大人の癇癪と発達障害・病気の関係
発達障害の方が必ずしも怒りっぽいわけではありませんが、発達障害(ASD・ADHDなど)のある方は以下のような特性を持っているため、感情のコントロールが苦手な場合が多いです。
ASD(自閉症スペクトラム障害/アスペルガー障害などを含む)の特性の一例
- 社会的コミュニケーションや対人コミュニケーションが苦手
- 限定的な興味やこだわりの強さ
- 感覚的な刺激に対して過敏または鈍感
ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性の一例
- 不注意(忘れっぽい、集中力の持続が難しいなど)
- 衝動性(じっとしていられない、感情的になりやすいなど)
- 多動性(しゃべりすぎる、考えよりも先に行動しがちなど)
癇癪を頻繁に起こす場合、神経発達障害や精神疾患の可能性が疑われることがあります。しかし、癇癪=病気というわけではなく、様々な要因が複雑に絡み合って癇癪を引き起こすケースも少なくありません。
本稿では、癇癪と関連性の深い神経発達障害および精神疾患について、その特徴や癇癪との関連性について解説します。
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ADHD(注意欠陥・多動性障害)
ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、成人の約3~4%に見られる発達障害の一つです。
ADHDを持つ人は、落ち着きがない、集中力が続かないといった特性が幼少期から見られることが多いとされています。しかし、子どもの頃はこれらの特性が個性として捉えられ、見過ごされることもあります。そして、大人になり社会生活を送る中で、ADHDの特性が障害として表面化するのです。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方では、感情調節機能の未熟さが特徴的に見られます。具体的には、感情の起伏が激しく、喜びや怒りといった感情が短時間で大きく変動することがあります。
このため、些細な出来事でも強い怒りを覚え、衝動的に感情表現をしてしまうケースが少なくありません。特に、怒りに関しては、抑えきれない衝動に駆られ、周囲を巻き込むような激しい感情爆発(癇癪)を起こすことがあります。
周囲の人がADHDの症状を理解していない場合、誤解や対立が生じやすく、人間関係に悪影響を与えることもあります。
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自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、他の人との気持ちの共有や会話のやりとりが難しい、行動や表情から気持ちが読み取れないなどの「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」が見られます。
常同的な行動や活動が切り替えられなかったり、同じ行動を反復したりするなどの「特定のものや行動における反復性やこだわりがあり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られます。
知的障害(知的発達症)を併発することもあります。
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自閉スペクトラム症(ASD)の特徴として、ルーチンワークや予測可能性に対する強いこだわりが見られます。これは、儀式的な行動やパターン認識への傾倒として現れ、日常の生活や活動において一定の構造を求める傾向を指します。
一方で、柔軟性や適応性が求められる状況、例えば新しい人との出会いや予定の変更など、予期せぬ事態に直面すると、強い不安や混乱を経験し、癇癪などの問題行動に繋がるケースがしばしば見られます。
これは、感覚過敏や情報処理の特性、コミュニケーションの困難さなど、ASDに特有の様々な要因が複合的に作用した結果であると考えられます。
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境界性パーソナリティ障害
双極性障害
双極性障害は、躁状態と抑うつ状態が交互に現れる気分障害のひとつで、感情の波が非常に激しいことが特徴です。この障害を持つ人は慢性的な不快感を抱え、時折癇癪を起こすことがありますが、これらの情動症状は何日も続く躁やうつのエピソードとは異なります。
特に躁状態では、気分が高揚し活力に満ち溢れますが、無謀な行動や攻撃的な行動を引き起こすことがあり、これが癇癪のような症状の原因となります。
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間欠性爆発性障害
間欠性爆発性障害は、感情の制御が困難で、突然激しい怒りや攻撃的な行動が表れる精神障害です。
普段は落ち着いているものの、些細なきっかけで状況に見合わないほど強い怒りを示し、衝動的な行動を起こします。発生頻度は3カ月平均で週2回ほどで、30分以内に収まることが多いですが、重度の場合は人にけがをさせたり物を壊したりすることもあります。
参考:ストレス。よくある原因と身体への影響について。
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この障害は、脳の機能や遺伝的要因、幼少期のストレスなどが関係しており、計画的ではなく何か利益を得るための行動でもありません。爆発的な行動は、友人の何気ない一言や自分の思い通りにならないことなどがきっかけとなります。本人は落ち着きを取り戻したあとに後悔や自己嫌悪に陥ることが多いです。
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間欠性爆発性障害は、人間関係や社会生活に大きな影響を与え、経済的困窮や警察への通報を招くこともあります。患者はこの障害による苦痛を感じ、仕事や対人関係に問題を抱えることが多いです。ただし、6歳未満の子どもや他の精神疾患、医学的疾患による攻撃的爆発の場合は診断されません。また、6~18歳の子どもで適応障害の一部として攻撃的行動がある場合も同様です。
参考:TEACCH
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幼少時の養育環境によるもの
保護者が役割を放棄していたり、虐待を受けているなどの過酷な家庭環境にある場合、情動制御が弱くなるケースが多く報告されています。これは、気持ちのコントロールが他者との多様なやり取りを通じて学ばれるためです。
人は愛着関係の中で、「気持ちをなだめてもらう」や「気持ちをコントロールしてうまくいく」という経験を重ねることで、感情の制御方法を学習します。しかし、虐待や育児放棄などで適切なやり取りが行われない場合、子どもは感情を過剰に表出したり抑制したりすることがあります。そして、この傾向は大人になっても続くことがあります。
もし、人に危害を加えたり対人関係がうまくいかないなどの具体的な悩みがあり、それを自覚している場合は、カウンセラーなどの専門家に相談することをおすすめします。
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発達障害は怒りやすい?具体的な事例
ASD(自閉症スペクトラム障害/アスペルガー障害)の癇癪の内省
先日、チームでプロジェクトを進めていた際、あるメンバーが提案したアイデアについて、私が納得できない点がありました。そこで、そのメンバーに対して、眉間に皺を寄せ、厳しい表情で相手を見つめながら、高圧的な声のトーンで矢継ぎ早に質問を投げかけました。
質問内容は、「そのアイデアは、なぜそのように考えたのですか?」「そのアイデアを採用した場合、どのようなリスクが考えられますか?」「代替案は検討されましたか?」などでした。
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参考:滞納処分
その様子は、まるで相手を責めているかのようでした。自分の言い分を曲げず、相手が回答に困ろうものなら、攻撃の糸口を見つけたと言わんばかりに責め立てているように見えます。
このような言動は、私の強いこだわりと、「こうあるべき」という固定観念が影響していると感じました。自分が納得できないことには固執し、自分の意見を押し通そうとする傾向があります。また、相手のことを十分に理解せず、自分の考えを押し付けてしまうこともあります。
今後は、自分の言動を客観的に振り返り、相手のことを理解しようと努めることで、より建設的な議論ができるようにしていきたいと考えています。また、自分の意見に固執しすぎず、相手の意見にも耳を傾けるように意識していきたいと思います。
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ADHD(注意欠如・多動性障害)の癇癪の内省
先日、友人と議論していた際、自分の意見が通らないことに腹を立て、大きな声で「それは違う!」と叫び、机を叩きつけました。興奮すると、声が大きくなり、早口でまくし立ててしまいます。相手が話をしようとしても、遮って自分の意見を主張しようとします。また、話が自分の思い通りに進まないと、イライラして会話自体を終わらせてしまうこともあります。
冷静なときは、相手や周囲の人の気持ちを考えることができます。しかし、感情的になると、つい大きな声を出したり、机を叩いたりしてしまいます。これは、衝動性をコントロールすることが難しいことが原因だと考えています。
上記のような言動は、ADHDの症状である「衝動性」の影響を受けている可能性があると考えています。
私のようなADHDは感情的になると、周囲の状況を考えずに大きな声を出したり、行動に出たりしてしまう傾向があるようです。
怒ることは悪なのか?得られるものはあるのか?
怒ることが悪いことだと感じる方も多いと思います。確かに、怒りをコントロールするのは難しく、できないと仕事や日常生活に悪影響を与えることがあります。
しかし、怒りをうまくコントロールできれば、それをプラスに変えることも可能です。
怒りをコントロールすれば、新しい気付きを得たり、情熱の原動力にすることもできます。そのためには、怒りをコントロールする技術が必要です。
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大人の発達障害セルフチェック
大人になってから発達障害の診断を受ける人もいます。「自分は発達障害かもしれない」と気になる方のために、簡単なチェックリストを用意しました。
ADHDチェックリスト
このリストに多く当てはまる場合、ADHDの傾向があるかもしれません。治療の参考にしてください。
※過去6カ月間の感情や行動についてチェックしてみてください。
- 難所は乗り越えたのに、最後の仕上げがうまくいかなかったことが多い
- 計画を立てて作業するのが難しいことが多い
- 約束や用事をよく忘れる
- じっくり考える課題を避けたり、先延ばしにすることが多い
- 長時間座っているときに手足をそわそわ動かす
- 過度に活動的になったり、何かせずにはいられなくなることが多い
ADHDの症状は、人間関係やキャリアに影響を与えることがあります。また、周囲から誤解されやすく、自分の能力を生かせないと感じることもあるでしょう。早めに症状に気付き、治療を受けることで、症状を軽減できる可能性があります。
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ASDチェックリスト
このリストに多く当てはまる場合、ASDの傾向があるかもしれません。治療の参考にしてください。
※過去6カ月間の感情や行動についてチェックしてみてください。
- 他の人と話している時に、相手がどう感じているか理解することが難しい
- 社交的な場面で、どのように振る舞えばよいか分からないことがよくある
- 耳障りな騒音(掃除機、大声や過度のおしゃべり等)をさえぎるため、耳をふさぐことが時々ある
- 物事を言葉通りに受け取って、他人が言わんすることに気がつかないことが多い
- 自分の好きなやり方が突然変えられてしまうと、とても動揺する
ASD(自閉スペクトラム症)と診断されて、不安や落ち込みを感じる方もいるかもしれません。しかし、自分の特性を理解することで、得意なことや苦手なことを把握し、対処法やスキルを身につけたり、環境を整えたりすることで、強みを発揮し、困りごとや生きづらさを軽減することができます。
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癇癪を自分でコントロールしたい
感情が生じること自体は生物学的に自然なものであり、その感情の生起をコントロールすることは難しいです。重要なのは、感情が起こった後にどのように対処するかです。対処法は、怒りに認知が介在しているかどうか、また目の前に対象がいるかによっても変わります。
大人の癇癪は、発達障害やこころの病気が原因で起こることがありますが、適切な治療を受けることで改善し、癇癪の症状も軽減する可能性が高いとされています。
ここでは、怒りや癇癪が起こったときの有効な対処法と大人の癇癪の治療について紹介します。
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生理的なアプローチ(生活リズムを整える)
瞬間的に反応して起きる怒りには、生理的なアプローチが有効です。
疲れや睡眠不足はイライラやすく、カッとなりやすい状態を引き起こします。まずはよく寝る、体を緩めるなどして体調を整えることが重要です。
また、特に発達障害のある方は過集中やスマホの使いすぎ、ネガティブな出来事を思い出すなどで生活リズムが崩れがちです。夜更かしが続くと体調が不安定になり、仕事に行けなくなることもあります。
生活リズムの乱れによる影響を見てみましょう。睡眠不足はストレスを増大させ、心身に負担をかけます。ストレスが増えると「コルチゾール」というホルモンが分泌され、免疫系、中枢神経系、代謝系に影響を与えます。
そして、食生活の乱れは必要な栄養素の不足を招き、心や体の働きを低下させます。また、運動不足は免疫機能の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こし、精神面にも悪影響を与えます。
上記であげた「生活の乱れ」は、感情のコントロールを困難にします。
まずは生活を整え、次に怒りをコントロールするスキルを身につけることが有効です。
アンガーマネジメント
認知の介在する怒りに関しては、アンガーマネジメントや認知の修正を行うことが推奨されています。アンガーマネジメントとは、アメリカで1970年代に開発された、怒りの感情を予防し制御するための心理プログラムです。プログラムの開発当初は軽犯罪者に対する矯正プログラムとして確立されていましたが、現在では企業や教育現場などでも広く取り入れられています。
アンガーマネジメントは怒らないことを目指すものではなく、違いを受け入れ、人間関係を良くすることを目的としています。怒る必要のあることには上手に怒り、怒る必要のないことには怒らなくて済むようになることが目標です。怒りの感情と上手に向き合うことで、「あのとき、あんなふうに怒らなければよかった」と後悔することが少なくなります。
アンガーマネジメントはトレーニングですので、すぐには効果が現れないかもしれませんが、意識して何度も行動に移すことで効果が出てきます。諸説ありますが、怒りが頭にのぼるピークは約6秒ほどと言われています。この短い時間をやり過ごす方法を知り、実践することも有効な手段です。
怒りを感じた時は、次に紹介する短期的な対処方法も実践してみてください。
怒りを数値化する
怒りは目に見えないものであり、振り回されやすい感情です。しかし、怒りを数値化することで、感情を客観的に評価し、怒り任せの行動を防ぐことができます。ここでは、10点満点中0~10までの数字を用いて怒りの度合いを評価します。
0 :まったく怒りを感じていない状態
1~3 :イラッとするが、すぐに忘れてしまえる程度の軽い怒り
4~6 :時間がたっても心がざわつくような怒り
7~9: 頭に血が上るような怒り
10 :絶対に許せないと思うくらいの激しい怒り
アンガーログを記録する際や怒りを感じた際に、その怒りを数値化することも、自分を客観的に見つめる手助けとなります。数値化することで、自分の怒りの傾向をより理解でき、自己管理がしやすくなります。
深呼吸をする
怒りを感じたときには、深呼吸をすることが効果的です。生理学的にもその効果は証明されており、深呼吸をすることで副交感神経が優位になり、心をリラックスさせる効果があります。怒りが湧いてきたら、鼻から大きく息を吸い、一旦呼吸を止めてから、口からゆっくりと息を吐きます。これを2~3回繰り返します。
「4秒吸って、8秒吐く」や「4~5秒かけて息を吸い、10秒程度かけて吐く」など、吐くことに時間をかけるとより効果的です。深呼吸によって落ち着きや冷静さを取り戻し、怒りをコントロールする助けになります。
その場から離れる
目の前に怒りの対象がいる場合、自分の感情をコントロールできなくなったときには、その場から離れることが有効です。怒りが湧いた環境を変えることで、攻撃的な気持ちをリセットすることができます。
怒りを感じたときに相手がいる場合には、「少しお手洗いに行ってきます」などと一言断ってから場を離れるようにしましょう。
意味づけを行う
問題のある状況に意味を見出し、ポジティブな解釈をすることが重要です。例えば、就職活動の面接で非常に難しい質問をされた場合を考えてみましょう。この状況を「意地悪な面接だ」と感じるかもしれませんが、「面接官も業務の一環として行っている」と捉えることもできます。
面接官の質問をどのように受け取るかによって、私たちの反応は変わります。前者では恐怖を感じ、自信を失ってその後の質問にも答えにくくなるかもしれません。しかし、後者では冷静さを保ち、質問に対処しようとする姿勢が持てるでしょう。このように、状況や相手の言葉や態度を見る視点を変えることを心理学では「認知的再評価」といいます。
いまに意識を集中させる
過去の出来事や将来の不安に認知的な意味づけをしてしまうことで、怒りの感情が増幅したり、持続してしまうことがあります。この方法は、目の前に怒りの対象が存在しないときにも有効です。例えば、以下のような場合に効果があります。
- 怒りが長く続いているとき
- 過去の怒りにとらわれているとき
- 不安な未来を想像してしまうとき
具体的には、目の前にあるものを観察したり、目を閉じて周囲の音を心の中で描写します。例えば、「紙がこすれる音」「足音」「電気がチリチリと鳴る音」などです。これはマインドフルネスという瞑想プログラムでも用いられている方法で、「今ここ」に意識を集中させることで、とらわれている感情から解放されることを目的としています。
思考を止める
怒りを感じた時には、一度思考を止めるのも有効です。例えば、怒りを感じる文書やメールを見た場合、一時的にファイルや画面全体を閉じることで思考をリセットしやすくなります。意識的に思考を止めることで、怒りに任せた言動を抑制する効果が期待できます。
アンガーログで怒りのパターンを見つける
アンガーログとは、怒りについて記録したものです。怒りを感じた日時や場所、程度を記録することで、自分が怒りやすい状況などのパターンを把握できます。パターンを認識することで、自分の怒りの感情に対処しやすくなります。
怒りを相手へのリクエストに置き換える
怒りを感じた時、不満ではなく具体的なリクエストとして相手に伝えるのも有効です。例えば、以下のように伝えます:
- 「今でも満足していますが、期日を少し早めてもらえると助かります」
- 「帳票の形式にサマリーを追加してもらえるとありがたいです」
- 「最低限〇〇は意識して欲しいです」
このようにリクエスト形式で伝えることで、怒りの感情を抑えながら要望を伝えることができます。
まずは生活を整える
生活リズムの乱れはストレスや怒りを感じやすくする要因となります。発達障害のある方は、その特性や強いこだわりから生活リズムが乱れがちなことが多いです。
過集中で作業をやめられなかったり、スマホを使い続けたり、ネガティブな出来事を思い出してしまう経験がある方も少なくありません。夜更かしが続き、体調が安定せず、仕事に行けなくなる方もいます。
一時的に生活リズムが安定していても、何かのきっかけで乱れると、元のリズムに戻すことが難しくなることがあります。
次に、睡眠不足、食生活の乱れ、運動不足がどのような影響を与えるのか見てみましょう。
1. 睡眠不足
- 睡眠不足は、ストレスを増大させ、心身に大きな負担をかけます。
- 十分な睡眠は、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌を抑制し、免疫力や中枢神経系、代謝機能の改善に役立ちます。
- 質の高い睡眠をとるためのポイント:
- 毎日同じ時間に寝て起きる
- 寝る前のカフェインやアルコールを控える
- 寝室を暗く、静かに、涼しくする
- 寝る前にリラックスできる時間を作る
参考:睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説
2. 食生活の乱れ
- 栄養素の偏った食生活は、心身の健康を損ない、心の危機を招きやすくなります。
- 糖質中心の食事は、肉や魚、野菜などの不足に繋がり、必要な栄養素が摂取できなくなります。
- バランスのとれた食事を心がけ、必要な栄養素をしっかり摂取することが重要です。
3. 運動不足
- 運動不足は、免疫機能の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こし、精神的な不調を招きます。
- 適度な運動は、ストレス解消や自律神経の安定に効果があります。
- 週に3~5回、30分程度の運動を心がけましょう。
生活の乱れは、体にも心にも負担が大きく、感情のコントロールが難しくなります。まずは生活を整えましょう。
参考:自己肯定感とは?
こちらも参考に:障害年金の更新に落ちる確率(支給停止)。必要な更新の知識と理由