発達障害に関してはだんだんと認知が広がってきており、2024年4月からは合理的配慮の提供が義務化されます。
しかし、発達障害のある人は、まだまだ仕事をしていくうえで悩みが多いと感じています。発達障害のある人がスキルや能力を発揮し仕事を続けていくには、自分に合った環境や支援を見つけることがとても重要になってきます。
この記事では自身の得意・不得意に向き合い、就労を応援する支援機関について解説していきます。就職活動や職場での対策を知りたい方はぜひ参考にしてください。
こちらも参考に:うつ病で現れる初期症状・行動・対策や仕事復帰を目指すときのポイント
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発達障害とは何か?
発達障害にはチックや吃音、DCD(発達性協調運動症)なども含まれますが、今回は代表的な3つの発達障害を取り上げようと思います。
これらの障害は単独で出ることは少なく、重なり合って出る事が9割と言われており、知的障害と併発するパターンもあります。次の章で1つずつ解説していきます
発達障害の方々が仕事で抱える悩みとは?
ADHD(注意欠如・多動症)が仕事で困るポイント
ADHD(注意欠如・多動症)の特性は、注意が続かない・ミスが多いといった「不注意」や脳内多動による集中力の欠陥などの「多動性」、思いつくと行動してしまう「衝動性」です。多動性・衝動性については年々落ち着いてきますが、不注意は生涯残ることが多いとされています。
・注意力の欠如で事務処理のミスが多い
・見積もりが甘く、遅刻や期限遅れが頻発する
・集中力が続きづらく、単調な作業だとすぐに飽きてしまう
・APD(聴覚情報処理障害)の併発で人の声が聞き取りづらい
・思ったことをそのまま口に出してしまい、上司や目上の人に失礼になってしまう
ASD(自閉スペクトラム症)が仕事で困るポイント
ASD(自閉スペクトラム症)の特性としては、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりと相互にやり取りすることが苦手な人が多い傾向にあります。またこだわりが強かったり、特定のことに強い興味を持つ傾向のある方や、視覚過敏・聴覚過敏などの感覚過敏がある方もいます。
そのためASDのある人には、以下のような困りごとがよく挙がります。
・マイルールを他人にも強いてしまい人間関係にヒビが入る
・語釈が多く、曖昧な指示を理解することが苦手
・話している相手の表情や言葉のニュアンスから気持ちを汲み取りづらく、対応が不適切になる
・感覚過敏で外界の音や光などが不快に感じ疲れてしまう
・スケジュールや手順の変更に弱く、パニックになる
こちらも参考に:大人の発達障害【ASD女性の特徴】女性特有の事例と対策6選
参考:WAISの処理速度
SLD(限局性学習障害)が仕事で困るポイント
・算数障害(ディスカリキュア)がある場合、数字の概念が無いため計算ができない
・書字障害(ディスグラフィア)の場合、読み書きの苦手さでマニュアルや資料を読むのに時間がかかってしまう
・読字障害(ディスレクシア)の場合、文字の形を覚えるのが苦手なため、電話中や会議などでメモが取れない
・算数障害(ディスカリキュア)で時計が読めず、時間管理が苦手
LDは人によって現れ方が様々で「日本語は大丈夫だけれど、英語は文字が動いてしまって読めない」などの報告もあります。
発達障害のある方に向いている仕事
仕事を構成する要素は「人間関係・職場環境・就業形態など」様々で職種と一口に言えないところがありますが、以下に挙げる仕事は特性上、向いている仕事になる可能性があるでしょう。
ADHD(注意欠如・多動症)に向いている仕事
ADHDの方は注意力が散漫になったり忘れ物が多かったりする傾向があり、以下のようなポイントを踏まえて仕事を探すとよいでしょう。
- 不注意の特性が強い場合:発想力や独創性を活かせる、慎重さを求められない
- 多動性・衝動性の特性が強い場合:瞬発力・行動力を活かせる、就労時間や業務内容の自由度が高い
ADHD(注意欠如・多動症)の仕事例
・調理師
・SNS企画・動画クリエイター
・スポーツ選手(特にサッカー選手)
・消防士
・ジャーナリスト
ADHD(注意欠如多動症)傾向の場合、適職にはさまざまな可能性があります。ある程度の自由と裁量のある仕事がオススメですが、ミスや時間の管理については周囲の理解と対策が必要です。
こちらも参考に:【発達障害 一人でできる仕事】職種、業務、職場環境など
ASD(自閉スペクトラム症)に向いている仕事
ASD(自閉スペクトラム症)の場合、周囲から見て特性が比較的わかりやすく対策や適正に合った仕事を見つけることも難しくは無いでしょう。以下のようなポイントを押さえて仕事を探すと良いです。
・他者(特に社外)とのコミュニケーションが少なく、自身の仕事に没頭できる
・細かいマニュアルがあり、規則に沿って進めることが苦にならない
・急なルールやスケジュールの変更が無く、自分のペースを保ちやすい
ASD(自閉スペクトラム症)の仕事例
・エンジニア
・校正・編集
・農業
・研究職
・工場のライン作業
ASDの方は論理的と言われることもありますが、マイルールを人に押し付ける傾向があり、多くの人と協力する仕事より一人で完結する仕事の方が向いていると言えます。職業と共に自分に合う環境や働き方を考えていきましょう。
SLD(局所性学習障害)に向いている仕事
SLD(局所性学習障害)が単独で出ている人は非常に少なく、大抵がADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)との併発になります。SLD(局所性学習障害)の症状に関してはツールや概念の置き換え(1万円→福沢諭吉など)を使うことによって対処することができるでしょう
ADHDやASDより障害の配慮内容が伝わりやすいため、本人が苦手とする部分をツールで補えれば、SLDの苦手部分に関してはほとんど支障なく業務を行えるケースがほとんどです。
混合型(ADHD+ASD)について
診断としてはADHD(注意欠如・多動症)もしくはASD(自閉スペクトラム症) のどちらか片方の診断でも、両方の特性を持ち合わせている当事者が9割程度と言われています。併発型はADHDとASDが共存することで、本来は1+1=2といった症状の出方であるはずが、3以上になってしまうと言われています。両方の特性の欠点を併せ持つため、社会生活に大きな支障を起こしやすく、なかなか自分に合った仕事を見つけづらいと言えます。
発達障害の方が転職を繰り返さないために
自分が発達障害だと知らず、就職した先で困難を感じて転職の回数が多くなっているといる方が多くおられると思います。ここでは発達障害の方が一つの職場で長く働くために、知っておきたいポイントを3つお伝えします。
① 自分のストレスになることは何か?職場で配慮してもらうことは可能か?
② 障害年金を受給して金銭の余裕を持たせて、ハードな働き方を避ける
③ 行政機関のサポートを利用して発達障害支援サービスを利用すること
参考:障害年金について
自分の得意・不得意を明確にすることの重要性
自分自身を理解し得意・不得意を明確にすることは、二次障害を防ぎ、職場でのスキルアップや昇給にも繋がってきます。自分に合った仕事を長く続けていくために、まずは上司に自分の特性を伝えておくようにしましょう。上司があなたを理解してくれれば、職場の同僚も「発達障害の特性である」ことを受け入れやすくなります。
得意不得意のまとめかた
得意と不得意をまとめる方法として、今までの就業を振り返ってどんなことに苦手を感じたか?どんな状況にやりがいを感じたかなどをまとめていきましょう
【書き出す項目の例】
- 業務内容
- 業務指示
- 職場環境
- 対人関係
- 体調管理
一例を示すと、筆者の場合は「自分のスキルを活かせる分野で、大まかな目的に合っていれば細部はこだわらず、自分で内容を考えられ(業務指示無し)対人関係は間接的に発生する程度(やる範囲を分けていて、自分の担当箇所についてのやり方は各自自由)。職場環境はどこでも良いが自宅がベスト」という感じになります。
こういった項目を条件に自分に合った仕事が見つけられるとよいと思います。
発達障害者の働き方について
発達障害がある方の働き方は自営業を入れた3種類がありますが、ここでは雇用という条件に絞って2種類をお伝えします。
- 一般就労
- 障がい者雇用枠での就労
それぞれの雇用形態にどのようなメリット・デメリットがあるのかご説明していきます。
一般雇用(障害クローズ) と障害者雇用(障害オープン)の違い
一般雇用(障害クローズ)とは、「企業と労働契約を結んで働く就労形態」のことです。障害については自分でオープンにしない限り障害が公になることはありません
一般雇用(障害クローズ)のメリット・デメリット
・応募できる仕事が多い
・障害者雇用と比べ給与が高く、昇給や役職が与えられることもある
・正社員での雇用が多い
・障害に対する配慮がない
・自分に合った仕事に就ける可能性がある
・ジョブコーチなどがいないため自分の障害がうまく説明できない可能性がある
一般就労は、スキルアップや賃金の面でメリットがあります。しかし他の従業員と同じ条件で仕事をこなす必要があり、残業などが発生する可能性もあるでしょう。体力が無い発達障害者にとって二次障害が出てしまう恐れもあります。
障害者雇用(障害オープン) のメリット・デメリット
・給与が安い
・昇給が無い
・障害に対する配慮がある
・最初から正社員での雇用は珍しい
・応募できる職種が限られる
・障害者手帳の交付が必要。医師によって交付してもらえないこともある
障害者雇用の担当者がいて「入社前の手続きサポートがある」「入社後にも体調や業務について面談がある」「就労支援機関との連携がとりやすくなっている」といった、働く上での環境が整っていることもありますが、ごく稀な例と考えた方が良いでしょう。
「配慮はあって無きもの」であり、「配慮項目が多いと採用されずらい」というのが現実問題のようです。「雇用当初は守られていた配慮も上司が変わった途端に配慮されなくなる」といった声も多く聞かれ、裁判に発展した事例もあります。
また、障害者雇用はASD(アスペルガー症候群)の方を想定した業務が多く、ADHD当事者には合わない事が多いと言われています。自分の特性と向き合いながら、より良い選択をするようにしてください。
発達障害のある方が活用できる支援機関
この章では先ほどお伝えした発達障害の方が活用できる就労サービスについて、紹介します。
【発達障害の方が活用できる就労サービス】
こちらも参考に:ハローワークの障害者求人探す方法。相談窓口の活用
こちらも参考に:就労移行支援はひどい?運営のからくり。不信感がぬぐえない方へ
就労移行支援事業所とは?
就労に向けて、学校のように通いながら就職に向けたサポートを受けることができる場所です。 個別の支援計画に沿って、他の利用者と一緒に就職に役立つ知識や必要なスキルを学ぶこと、就職の準備をすること、就労支援員に就職や体調に関する相談することなど、必要なサポートを受けることができます。利用期間は原則2年間であり、やむを得ない事情等により市区町村に延長の申請をすると、最長12ヶ月間の延長が認められることがあります。
参考:職業準備性ピラミッド
就労移行支援事業所で受けられる支援内容
カリキュラムは大きく分けて就業に向けたビジネスマナーと専門的なスキルを身につけるための講座の2種類に分かれています。都市部では当事者集客のために特色のある事業所が増えてきているので、見学に足を運んでみてください
カリキュラム例
・認知行動療法プログラム
・ビジネスマナー講座
・グループワーク
ハローワークとは?
ハローワーク(公共職業安定所)は、仕事をお探しの方や求人事業主の方に対して、さまざまなサービスを無償で提供する、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関です。障害者雇用の求人も取り扱っており、専門の就職アドバイザーも在中しています
ハローワークで受けられる支援内容
ハローワークでは障害者雇用専用のアドバイザーが希望の条件でお仕事を紹介してくれます。就職を目指すにあたり適切な支援が必要な方には関係機関との連携も行ってくれます。書類の添削や面接対策、面接への同行が可能なケースもあります。
また、精神障害者の方は精神トータルサポーターの方に相談出来るようになっており、精神障害者に対する総合的かつ継続的な支援を行ってくれます。
障害者手帳と診断書を持っている場合は持参すると話がスムーズでしょう。以下はトライアル雇用と訓練の概要になります。
- 公共職業訓練:ハロートレーニングは「公共職業訓練」とも呼ばれる、職業スキルや知識の取得を目的とした公的な訓練のことです。ハロートレーニングの中に障がいのある方向けのコースがあります。
- 国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)への紹介:障害のある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。入所相談の受付はハローワークが窓口となっています。
- 障害者トライアル雇用制度:継続雇用する労働者として雇用することを目的に、障害者を一定の期間を定めて試行的に雇用するものを指します。原則3か月間試行雇用で労働者の適性を確認した上で継続雇用へ移行することが可能で、雇用主、当事者双方の不安を解消することができます。また、この制度の利用に当たっては助成金を受けることができます。
こちらも参考に:令和5年度「障害者雇用納付金制度」とは?雇用調整金や助成金の種類
こちらも参考に:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の詳細と申請方法
発達障害者支援センター とは?
発達障害者支援センターとは発達障害の早期発見・早期支援を目的とし、家庭での療育方法についてアドバイスやサポートをします。 また、知的発達や生活スキルに関する発達検査などを実施したり、発達障害児(者)の特性に応じた療育や教育、支援の具体的な方法について支援計画の作成や助言を行うこともあります。
発達障害者支援センターで受けられる支援内容
発達障害のある人やその家族の日常生活をサポートするための施設ですので、発達障害者支援センターでは、発達障害の「診断」はしていません。困りごとやそれぞれのライフステージに合わせて、相談支援・発達支援・就職支援などを受けることができます。医師による診断が必要だと判断されれば専門医を紹介してもらえることもあります。
参考:就労移行支援の報酬制度
参考:遂行機能障害
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ)は、就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う機関です。障害者の職業生活における自立を図るための施設。雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的として、全国に設置されています。また、障害者雇用の経験が少なかったり、定着に課題があったりする企業側も利用することができます。
障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容
- 就職活動の支援:就業支援担当員(ジョブコーチ)が主に就業に関する相談支援と障害者それぞれの障害特性を踏まえた雇用管理について事業主にアドバイスしてくれます。相談者の得意不得意の整理のサポートや実習先の斡旋なども行います
- 職場定着支援:就職した後も、企業(事業所)に就業支援担当員(ジョブコーチ)が定期的に就業先を訪問して面談を行なってくれます。仕事で困っていることや悩みごとなどがあれば、相談も受けてくれます。
- 生活面の支援:生活面では、当事者が仕事をしながら日常生活ができるように、規則正しい生活を身につけたり、毎日働ける体力をつけるなど、日常生活の自己管理や健康維持に関するアドバイスを行っています。服薬管理や、住居や障害年金などの手続きといった支援も行っています。
転職エージェント
転職エージェントは今までの経歴や経験を伺った上での就業先を紹介する社会人経験がある障害者向けのサービスになります。身体障害に比べて発達障害の求人は少なく、「障害者枠では身体障害が優先的に採用される事」が多いとされています。発達障害者の雇用実績がある企業を紹介してくれるエージェントを選んでスピーディーな転職活動を目指しましょう。
転職エージェントで受けられる支援内容
- スタッフとのカウンセリング:障害に対しての知識がある専門スタッフと面談を通し、得意不得意や働きやすい職場の整理をしていきます。
- 求人の紹介:カウンセリングの結果をもとに、前職の経験やスキル、働きやすさなどの希望の条件を考慮して、相談者にマッチする求人を紹介します。
- 書類添削や面接練習:履歴書・職務経歴書といった応募書類の添削指導や、面接の受け答えなどのアドバイスを行います。短期での離職が多い当事者は書類添削を上手に利用して内定をGETしましょう
- 手続きの代行:面接の日程調整や、内定後の入社日調整などの手続きを代行します。
- 入社後の職場定着フォロー:入社した後も定期的に連絡を取りながら状況確認を行い、何か困りごとが生じたときは企業との調整を行います。
発達障害を取り扱う転職エージェントは少ないので複数登録して長期での転職活動に臨むことをおすすめします。取扱求人が多いLITALICO仕事ナビ、dodaチャレンジ、atGPエージェントは登録しておくとよいでしょう。
障害者専門ではありませんがリクルートエージェントは求人数が多いのでオススメです。
まとめ
発達障害者のある方が企業で長く勤めることは本当に難しい事です。今回は転職する際のポイントや活用できる支援機関を紹介しました。
転職を繰り返して悩んでいる場合は、雇用形態に捕らわれず色々な方向でチャレンジする事が必要です。自身で対策を取るとともに、支援機関や転職エージェントを活用して不安の少ない労働環境と安定した生活を確保しましょう。
コメント
こんにちは、これはコメントです。
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