特例子会社は、障害者の雇用促進と雇用安定を目的に設立された企業です。
本記事では、特例子会社における業種・職種、雇用形態、給与、さらに配慮事例について詳しく解説します。近年、障害者雇用の認知度が高まり、働きたいと考える障害者が増えている一方で、障害者雇用を進める企業の数はまだ十分ではありません。
国は法定雇用率を定め、企業に障害者雇用の促進を求めていますが、課題も多く指摘されています。そこで、注目を集めているのが「特例子会社」の活用です。近年、増加している特例子会社は、障害のある方が働く上でどのようなメリットがあるのか、詳細に掘り下げています。
障害者の就職先としては、一般企業の障害者雇用が一般的ですが、特例子会社も重要な選択肢となっています。本記事では、特例子会社の概要や働く上でのメリット・デメリット、特例子会社への就職に向いている方の特徴などを詳しく紹介します。
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特例子会社とは?
特例子会社は、障害のある人の雇用促進と雇用の安定化を目的に設立された企業で、一人ひとりの特性に合わせた業務の提供や設備・環境面での配慮、相談支援スタッフの配置などが行われています。
特例子会社に認定されるためには、親会社が子会社の意思決定機関を支配し、子会社との人的関係が緊密である必要があります。さらに、雇用される障害者の数や割合、障害者の雇用管理能力などに一定の要件が設けられています。
また、2022年時点で特例子会社は579社(前年比17社増)存在しており、障害者の雇用に特化した子会社として注目されています。
厚生労働省の資料では、全国には562社の特例子会社あり、雇用されている障害者は31,163名にのぼります。
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法定雇用率との関係
法定雇用率とは、企業における従業員の中で身体障害者・知的障害者・精神障害者が占める割合を指します。この割合は、障害のある人々の雇用機会を確保するため、各国で定められています。従業員が一定数以上の事業主には、法定雇用率以上の割合で障害のある人を雇用する法的な義務が課せられています。
一般的な民間企業では、全従業員のうち2.3%(令和5年10月現在)に相当する人数の「障害者(※)」を雇用することが求められています。これは、従業員が43.5人以上いる企業に該当します。
特例子会社として認定を受けると、その親会社は、特例子会社で雇用された障害者を法定雇用率に算入できます。特例子会社を設立することで、障害者が働きやすい環境を整えやすくなり、労働条件の調整もしやすくなります。これにより、企業は障害者を雇用しやすくなり、雇用された人々にとっても働きやすい職場環境が整備されます。
※「障害者」の定義は、原則として身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を所持している人を指します。
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一般企業などの「障害者雇用」との違い
障害者雇用とは、障害のある人が一人ひとりの特性に合わせた働き方ができるよう、企業や自治体などが一般雇用と別の採用枠を設けて障害のある人を雇用することです。
障害者雇用の選択肢は、特例子会社以外には「一般企業での障害者雇用での就労」があります。
特例子会社での就労は一般企業での障害者雇用と変わりなく、仕事の進め方や職務内容などにおいて特性への配慮があります。
特例子会社での就労と一般企業での障害者雇用との違いは主に2つあります。
①一般企業での障害者雇用は障害のない人も多く働いていて、勤務管理・体調管理などのサポートや制度面で障害のある人に特化されているわけではないという点です。
②特例子会社は障害のある人のために設立された会社なので、設備のバリアフリー対応が進んでいるなど、一般企業などで障害者雇用で働く場合と比べると、より働きやすい環境が整っている場合が多いようです。
グループ内に障害者が就労しやすい業務を行う子会社があれば、その会社で障害者雇用を進めることで、グループ全体での業務効率と障害者雇用を両立させることができるので、企業側にも大きなメリットがあります。
「特例」として、特例子会社に雇用されている労働者を親会社の労働者とみなし、その人数を加えて法定雇用率を算出することができます。この制度は、親会社が大企業グループを形成している場合にも適用されます。全体の従業員数に対して、特例子会社で雇用されている障害者の人数が法定の要件を満たしていれば問題ありません。
参考:法定雇用率とは?
参考:職業準備性ピラミッド
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特例子会社の特徴・支援体制
充実した支援体制
特例子会社では、障害の特性ごとに仕事を確保し、職場環境を整備するための支援が充実しています。これにより、バリアフリーな環境づくりや他の設備投資を中央で進めることができます。
また、障害者に対する柔軟な働き方も提供されており、短時間勤務やフレックスタイム、半休制度などが充実しています。通院休暇制度の導入や、服薬や通院においても企業が労を惜しまない配慮が行われています。
さらに、障害者雇用に特化した管理体制が整備されており、能力発揮とキャリアアップのためには、定期的な面談や相談が行われ、実習が充実しています。これにより、障害者が自身の特性に合わせた仕事に従事できるようサポートされています。
特例子会社にはどんな業種・職種がある?
特例子会社では、業務内容を多様化させることが可能です。親会社とは異なる労働条件を設定することで、これまでに想定されていなかった種類の雇用を創出することができます。
例えば、清掃などの軽作業に特化した特例子会社から、経理代行や給与計算、名刺作成、データ入力、パンフレット作成、ダイレクトメール発送代行などの事務系業務を請け負う企業までさまざまです。
こうした特例子会社は、本社やグループ企業から継続的に仕事を受注することができ、これにより長期的な経営戦略を考えることができます。安定した仕事が確保される環境は、障害者の雇用者にとって安心感を生み出し、職場での定着率向上に寄与しています。
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全国に約570社ある
2022年6月時点で、全国に存在する特例子会社は579社です。これらの企業数は着実に増加しており、それに伴い雇用人数も増えています。
特例子会社の一覧は厚生労働省の公式ウェブサイトから確認できます。都道府県ごとに所在地や親会社名が掲載されているため、自身の居住地や通勤可能な範囲内に存在する企業を把握する際に役立ちます。
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特例子会社で働くメリット
柔軟な勤務体制になっている
特例子会社では、体調の変化などに柔軟に対応できるため、短時間勤務制度が導入されています。フレックスタイムや半休制度などもあり、労働時間の調整がしやすくなっています。また、服薬や通院など治療に必要な時間が確保でき、これに関するサポートや制度が整っています。
さらに、特例子会社では柔軟な働き方が可能です。通勤が難しい場合には在宅勤務やテレワークの選択肢が用意されているケースもあります。また、職場勤務が必要な場合でも、時差出勤やフレックスタイム制を利用してラッシュ時間帯を避けるなど、多様な働き方が実現できます。
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支援体制が整っている
特例子会社では、相談員や専門の担当者が社内に配置され、従業員が困った際の相談がしやすい環境が整っています。また、職場は家族などと密に連携をとり、何かトラブルがあったときの対応方法が共有されています。仕事内容や業務の手順も、各障害の特性に合わせて設計されており、従業員が自分にとって働きやすい環境で仕事をしやすいのが特徴です。
一般的な特例子会社では、社内に相談員や専門の担当者が常駐しているか、定期的に派遣されています。また、社外の専門医と密接に連携している企業も多く、障害のある従業員向けの支援制度やサポート体制が整っている点が大きなメリットです。
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職場環境が整っている
特例子会社では、多くの場合、施設がバリアフリーに対応しています。送迎バスの運行や休憩室にパーティションの設置など、従業員からの環境改善の提案が反映されやすい環境が整っています。職場環境や通勤における配慮だけでなく、業務においても障害者の特性に合わせたマニュアルが用意されています。また、各従業員に合わせた業務量の調整も相談できるため、働きやすい環境が整っています。
特例子会社は、障害のある方が働きやすいように配慮がなされているため、職場環境や業務において様々なメリットがあります。
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特例子会社で働くデメリットはある?
求人数が少なく選択肢が限られる
特例子会社の数は増加傾向にあり、雇用者数も増えているため、今後は求人数が増える可能性があります。しかし、まだまだ特例子会社は全体としての数がまだ少なく、大半は関東地方に集まっており、地域によっては通勤が難しい場合もあります。(全国に存在する517の特例子会社のうち、関東地域には256社)
特例子会社の絶対数が少なく求人数も限られているため、転職や就職の際に特例子会社を選択肢に含めると、求人の幅が制限されることがあるでしょう。
一般企業よりも給与が低いケースが多い
特例子会社では、さまざまな配慮やサポートが充実している一方で、給与水準が一般企業に比べて低い傾向があります。野村総合研究所の「障害者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査」によると、特例子会社で働く障害者の約8割が年収250万円以下であることが報告されています。
回答した198社の平均年収の内訳は
- 151~200万円:33.8%
- 201~250万円:26.3%
- 101~150万円:19.7%
- 251~300万円:10.6%
- 301~350万円:6.1%
であり、101万円~250万円の年収帯が多くのウェイトを占めています。
これは、月収に換算すると8.4万円~20.8万円の計算になります。
障害者雇用において「配慮と処遇のバランス」は重要なテーマであり、職場が障害に対して十分な配慮を行う場合、給与においては一般的に低水準になりやすい傾向があります。これは、配慮にコストがかかり、それが給与に回りにくいという課題があるからです。そのため、特例子会社では配慮を優先するケースが多く、結果として給与が低めに設定されることがあります。
このバランスを取るためには、事前に会社側とのコミュニケーションや話し合いが不可欠です。求人票をよく確認し、自身の特性や体調と照らし合わせながら、納得できる働き方を見つけていくことが重要です。
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仕事内容が限定的な場合がある
特例子会社では障害や特性に合わせた業務が主体となるため、仕事の内容が限定的であることがあります。自分自身がもっと幅広い業務に携わりたい、新しい経験を積んでみたいと感じることもあるでしょう。
異なる特性や能力を持つ従業員が集まる特例子会社では、入社後に面談や相談が行われることが一般的です。こうした機会を利用して、業務内容や業務量について相談してみましょう。無理のない範囲から始めながら、徐々に仕事の幅を広げていく可能性があります。
ただし、障害特性に合わせた業務を重視する一方で、新しい挑戦の機会が制約されることもあるかもしれません。幅広い知識や高度なスキルを身につけ、キャリアのステップアップを目指す方にとっては、物足りなさを感じることがあるでしょう。
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特例子会社の雇用形態
特例子会社での雇用形態にはさまざまな選択肢があります。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査データによれば、特例子会社の回答の中で、正社員の中でもフルタイム雇用を採用している企業が84%を占めています。これに加えて、パートタイムの正社員を雇用している企業や、正社員以外の雇用形態を導入している企業も存在しています。
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合理的配慮について
障害者の日常生活や社会参加において、個々の困難さに応じて周囲がサポートや環境の調整を行うことを「合理的配慮」といいます。これは、一人ひとりのニーズに適切に応え、障害の影響を軽減するための取り組みです。同様に、障害者の就労においても、一般企業や特例子会社においても、合理的配慮に関する相談が可能です。
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特例子会社への就職を目指すときのサポート機関
特例子会社への就職を目指す時に、特例子会社での働き方や求人の探し方についてサポートをしてくれる施設がありますので、ご紹介します。
就労移行支援事業所
「就労移行支援事業所」とは、障害者が働くために必要なスキルや知識を習得する支援を提供する施設です。このサービスは、一般企業や特例子会社での雇用を希望し、働くことが見込まれる65歳未満の方を対象としています。支援内容には、就職活動のサポートや、職場への定着を促すための支援が含まれています。
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参考:障害福祉課とは?
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設であり、全国の各都道府県に1か所以上設置されています。障害のある人を専門とする職業カウンセラーが、職業能力について評価する職業評価や、適切な職業を選ぶためのアドバイスなどを行ってくれます。
ハローワーク(公共職業安定所)では求人紹介もしてもらえる
ハローワーク(公共職業安定所)は、雇用支援および職業紹介を行う機関であり、全国に500カ所以上の拠点が存在しています。年齢に関する制限はなく、どなたでも無料でサービスを利用できます。
多くの場所では「障害者相談窓口」が設けられており、障害者雇用に関する専門家と相談できます。障害者雇用や特例子会社への就職についてだけでなく、具体的な求人情報も提供してもらえます。
前述の通り、ハローワークインターネットサービスを利用すれば簡単に求人検索が可能です。まずは興味を持った職種や条件に合った求人を検索してみることをお勧めします。