WAIS-IV大人の知能検査とは?検査の内容や検査を受けられる場所について

発達障害知的障害

WAIS-IV知能検査とは?

WAIS-IV知能検査は、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)の最新日本版で、世界的に広く使われている成人向けの知能検査です。

16歳0カ月から90歳11カ月までの青年や成人の知能を包括的に評価し、VCI、PRI、WMI、PSIの4つの合成得点とFSIQの合成得点によって特定の認知領域や全体的な知能を測定します。

WAIS-IVは、発達障害の診断補助やサポートに役立てられています。この記事では、WAIS-IVの検査内容や結果の見方について詳しく解説していきます。

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こんな方に役立ちます

WAISはどういった場面で使用するのでしょうか?以下に例を挙げてみます。

・集中力が乏しくケアレスミスが多いと感じるが、それが一般的な範囲内なのか、あるいは個人的な特性なのかを知りたい。

マルチタスクが苦手だが、これが普通の程度なのか、自分が特に苦手なのかを知りたい。

・人とのコミュニケーションが苦手であるが、これが言語的な能力によるものなのか、それとも他の理由によるものなのかを知りたい。

・他の医療機関で発達障害と診断されたが、チェックリストのみで自己診断されたため、客観的な診断の根拠を知りたい。

療育手帳の取得を検討している。

・単に自分の知的能力やIQを知りたい。

・MENSA(高IQ団体)への参加を希望しており、そのための証明書が必要である。

WAISはあくまで知能検査であり、発達障害であるかどうかはWAISのみで診断することはできません。しかし、能力値の凸凹があり(一番高い群と低い群の差がおよそ15以上。ディスクレンパシーという)、日常的な困りごとがある場合、発達障害の診断が降りる可能性が高いためWAISと共に、検査中の様子を観察し、診断を出す事があります。

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WAISでわかること

WAISは、10種類の基本下位検査と5種類の補助下位検査から成り立っています。これにより、言語能力、抽象的思考力、記憶能力、処理速度など、知的能力の多様な側面を評価することが可能です。また、検査によって5つの合成得点(全検査IQと4つの指標得点)を算出し、詳細な知見を得ることができます。

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WAIS-Ⅳ の各項目とその意味

全検査IQ(FSIQ)

全検査IQは、私たちの知的な能力全体を測るための指標です。これは、WAISという検査の中で、最も基本的な10種類のテストの成績を総合的に評価することで算出されます。いわば、知的な能力の総合力スコアと言えるでしょう。

以下では、このWAISを構成するそれぞれのテストについて詳しく説明していきます。

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言語理解(VCI)

理解力、推理力、および思考力を含む重要な項目です。この能力によって、私たちは言語を使ったコミュニケーションを理解し、推論を行うことができます。言語能力は、日常生活でのコミュニケーションや情報の解釈において極めて重要な役割を果たしています。

基本下位検査項目:類似、単語、知識
補助下位検査項目:理解

言語理解(VCI)が強い人

言語能力は、言葉での要約や説明が得意であり、豊富な語彙を持つことを示します。また、学校で習う教科の知識が十分に身に付いている人も多く、高学歴の方も多く見かけます。ただし、この指標が高いということは、あくまでも厳密な言語理解ができるということであり、日常的なコミュニケーション能力とは必ずしも一致しないことに注意が必要です。

『理解』という検査のスコアが高い方は、書かれていない暗黙のルールや、状況に応じた適切な行動などを、周りの人々を観察したり、過去の経験から学んだりすることで、よく理解できる傾向があります。社会生活を送る上で、こうした能力は非常に役立ちます。
一方で、言葉で伝える能力が高いからといって、必ずしも人とのコミュニケーションが円滑にいくとは限りません。特に、曖昧な表現や、相手の気持ちを汲み取るような、微妙なニュアンスのやり取りは、言葉の能力が高い人にとっても難しい場合があります。

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言語理解(VCI)が弱い人

理解力や語彙力が足りないために言葉の意味を正確に捉えずに使用することがあり、そのために相手が伝えたいことと実際に伝わっていることに齟齬が生じることがあります。このような場合、より一般的な言葉で具体的に説明を求めることや、情報の送受信において双方の認識にずれがないかを確認することが重要です。さらに、絵や図が入ったマニュアルを用意してもらうことで、作業に取り組みやすくなるでしょう。

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知覚推理(PRI)

視覚的な情報を理解し推論する力や、視覚情報に基づいて適切な行動を取る力に関する指標です。この能力は新しい情報への対応や問題解決能力にも影響を及ぼすと考えられています。

基本下位検査項目:積木模様、行列推理、パズル

補助下位検査項目:バランス(16歳~69歳のみ)、絵の完成

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知覚推理(PRI)が強い人

視覚情報を整理し、推論することが得意な傾向があります。数学においては図形の問題に長けていることが多いです。論理的に物事を考える能力や、特に視覚情報からパターンを見つけ出す能力が高いです。

知覚推理(PRI)が弱い人

視覚的な情報を把握することが苦手な場合がありますので、図や表が含まれた説明に加えて言葉での補足説明を求めることが有益です。

また、この指標の得点が低い場合は必ずしも「論理的な思考が苦手」とは結びつかないこともあります。考えるのに時間をかけるタイプの人もこの指標の得点が低くなることがあるためです。

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WAISがきっかけで発達障害が発覚した佐藤さんのお話

佐藤翔は、大学を卒業後、事務職として働き始めたが、仕事にどうしても適応できず、転職を繰り返していた。職場でのミスが多く、上司や同僚から「確認が足りない」「手際が悪い」と指摘されることが多かった。しかし、一方で趣味のプログラミングでは素晴らしい成果を挙げ、独学で作ったアプリがSNSで話題になることもあった。

「どうして僕は得意なことと苦手なことの差がこんなに激しいんだろう?」
翔は自己肯定感を失い、悩みを抱えるようになった。


検査を受けるまでの経緯

友人からの助言を受け、翔はメンタルクリニックを訪れた。初めてのカウンセリングで、臨床心理士が「WAISという知能検査を受けてみると、自分の強みと弱みが見えるかもしれません」と提案した。翔は興味半分、不安半分の気持ちで検査を受けることにした。


WAISの結果

検査後、結果のフィードバックが行われた。心理士はこう説明した。

「翔さんの検査結果を見ると、非常に興味深い特徴が見られます。翔さんは言語理解(VCI)知覚推理(PRI)では平均を大きく上回る得点を取っていますが、作動記憶(WMI)処理速度(PSI)が低いですね。例えば、難しい概念を理解する力や視覚的に情報を組み立てる力は非常に高いのに、作業を効率的に進めたり、短時間で複数の情報を処理するのは苦手なようです。」

翔は自分の得意不得意を「数値」として見せられ、驚きとともに納得した。


発達障害の診断と新たな道

さらにカウンセリングを重ね、翔は発達障害ADHD:注意欠如・多動症の不注意優勢型)と診断された。「作業記憶や処理速度の低さは、発達障害の特性によるもの」と説明を受けたとき、翔は涙を流した。

「ずっと自分が怠けているだけだと思っていました。でも、この特性があるから苦手なことが多かったんですね。」

診断を受けたことで、翔は自分を責めることをやめ、得意分野に集中する道を模索し始めた。現在では趣味だったプログラミングを活かし、フリーランスとして独立。作業効率を上げるためにタスク管理ツールを導入し、時間を区切って作業するなど工夫を重ねることで、以前よりもスムーズに仕事を進められるようになった。

「苦手な部分を補うのではなく、得意な部分を伸ばしていこうと思います。」
そう話す翔は、以前よりも自信に満ちた笑顔を見せている。

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WAIS-ⅢとWAIS-Ⅳは何が変わったの?

WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale 第3版)からWAIS-Ⅳ(第4版)への改訂では、以下のような重要な変更が行われました

1. 指標構造の変更

  • WAIS-Ⅲでは、4つの指標(知覚統合言語理解、作動記憶、処理速度)が導入されましたが、知覚統合指標はやや曖昧な概念として扱われていました。
  • WAIS-Ⅳでは、知覚統合がより明確な概念に分解され、知覚推理(PRI)に変更されました。これにより、個人の視覚情報の統合能力と論理的な推理能力がより的確に評価されるようになりました。

2. 下位検査の変更

  • 新たな下位検査が追加され、評価の幅が広がりました。たとえば、行列推理や視覚パズルが新たに導入されています。
  • 一方で、旧版で使用されていた一部の下位検査(例: 写真配列)は廃止されました。これは現代社会の評価ニーズに合わなくなったためです。

3. 全検査IQ(FIQ)の計算方法

  • WAIS-Ⅳでは、全検査IQ(FIQ)の計算方法が調整されました。これにより、より正確でバランスの取れた評価が可能となりました。特に、偏りがある場合でも影響を受けにくい構造になっています。

4. 理論的背景の進化

  • WAIS-Ⅲでは従来のウェクスラー理論を基盤としていましたが、WAIS-ⅣではCHC理論(キャッテル-ホーン-キャロル理論)の影響が取り入れられました。これにより、知能の多次元性をより深く評価できるようになりました。

5. 基準データの更新

  • 標準化の対象となるデータが更新され、より現代の人口統計に即した結果が反映されています。これにより、診断の信頼性と妥当性が向上しました。

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ワーキングメモリー(WMI)

ワーキングメモリは、一時的に情報を覚えておきながら、それを活用して思考したり、問題を解いたりする能力を指します。例えば、先生の話したことを記憶してノートにまとめたり、計算問題を解く際に数字を頭の中で保持したりする際に、ワーキングメモリが働いています。

この能力は、学習全般、特に、口頭での指示を理解したり、読み書きや計算などの基本的な学力を身につける上で非常に重要です。また、集中力を持続させる上でも、ワーキングメモリは重要な役割を果たしています。

基本下位検査項目:数唱、算数
補助下位検査項目:語音整列(16歳~69歳のみ)

 

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ワーキングメモリー(WMI)が強い人

頭の中で情報を整理して考える能力が優れており、暗算などが得意な傾向があります。また、職場で口頭での指示を受け取りやすく、指示内容を覚えていられる場合が多いです。加えて、短期的な集中力も高く、物事に集中しやすい特性を持っています。

ワーキングメモリー(WMI)が弱い人

多くの場合、耳からの情報を記憶することが苦手です。たとえば、口頭での指示を覚え切れないことや、電話の応対が苦手なことが挙げられます。

指示を受けたらメモを取るか、最初からメールやメモなどで情報を確認できるようにすると良いでしょう。また、一度にたくさんの情報を処理することが苦手なため、指示は一つずつ細かく与えると良い場合があります。また、周囲の音や光などの環境要因によって集中が途切れやすい人は、スコアが低くなる傾向があります。

 

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処理速度(PSI)

情報処理のスピードに関する指標です。この能力が低い場合、マイペースでの作業や切り替えが苦手な場合が考えられます。

処理速度(PSI)が強い人

情報を迅速かつ正確に処理することが得意な場合があります。たとえば、黒板やホワイトボードに書かれた内容をすばやく書き写すなどが挙げられます。また、事務処理や繰り返しの作業に適しており、マルチタスクをスムーズに処理する能力を持っていることもあります。

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処理速度(PSI)が弱い人

簡単な作業(たとえば学校の勉強でのノートの書き写し)が、平均よりも時間がかかったり、作業速度は平均的でもミスが多いことがあります。作業を行う際は、余裕を持って時間を設定することが重要です。ミスが多い場合は、ミスの起こりやすい部分を中心に二重チェックを行うように心がけましょう。

この指標のスコアが低い方は、文章を書く作業が苦手である可能性があります。学生時代、ノートを取るのが遅かったり、文字が汚かったりした経験がある方もいるかもしれません。

これは、ワーキングメモリが低いことで、一度にたくさんの情報を処理したり、情報を正確に書き起こしたりすることが難しいためと考えられます。しかし、パソコンを使って文書を作成するようになると、文字の大きさや配置を調整できるため、書字の苦手さが軽減されることがあります。

筆者は処理速度が低いタイプで学生時代はノートを取り終わる前に板書が消え、社会人になってからは事務処理のミスが目立ち苦労しています。

処理速度は労働する上で非常に重要な能力と言えるため、低い方は仕事を慎重に選ぶことをオススメします。

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WAIS-IV知能検査を受けられる場所

WAIS-IVは、精神科や心療内科、大学の相談室、または民間のカウンセリングルームなどで実施されます。公的な病院での検査は保険内診療となりますが、個人運営のクリニックでは自費診療となる場合があります。

検査結果を踏まえた所見が必要な場合(通常は必要となります)、保険内診療でも別途費用がかかることがあります。所見は、単に数値だけでなく、それがどのような意味を持つのかを分かりやすくまとめたものです。

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検査を受けられる施設については、直接確認することもできます。また、発達障害者支援センターに問い合わせることもできます。発達障害者支援センターは、発達障害者の支援を専門的に行う機関であり、各都道府県に設置されています。お住まいの地域の発達障害者支援センターにお問い合わせいただくと、WAIS-IVを実施している機関についての情報を得ることができます。

▶相談窓口の情報|発達障害情報・支援センター

 

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検査の費用

WAIS-IV精神科や心療内科、大学の相談室、民間のカウンセリングルームなどで実施されます。公的な病院での検査は保険内診療となりますが、個人運営のクリニックでは自費診療となることがあります。

検査結果をもとにした所見が必要な場合(ほとんどの場合必要です)、保険内診療でも別途費用がかかることがあります。所見は、単に数値だけでなく、その数値が何を意味するのかをわかりやすくまとめたものです。

検査を受けられる施設については直接確認することができます。また、発達障害者支援センターに問い合わせることもできます。発達障害者支援センターは、発達障害者の支援を専門的に行う機関であり、各都道府県に設置されています。お住まいの地域の発達障害者支援センターに問い合わせると、WAIS-IVを実施している機関についての情報を入手できます。

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検査を受けるときの注意点

ここまでご紹介したように、検査では現在のご本人の正確な状態を評価することが重要です。体調によっては20前後のIQの変動が見られることもありますので、「検査を受ける前に練習をすればよい成績が取れるかも…」という考えは避けるべきです。

また、一度検査を受けた後は一定期間(最低でも1年程度)の間隔を空けて受験する必要があります。これは「学習効果」を防ぐためのものです。

同様の理由で、検査の内容や個人のWAIS結果を外部に漏らすことは避けなければなりません。検査を実施する側にとってはこれが最大のタブーです。事前に検査の内容が分かっている人に対して検査を実施しても、正確な情報は得られません。ご本人の本来の状態を把握することで、検査の結果を有効に利用できるようになります。

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検査の結果からは、知能だけでなく性格や傾向など、さまざまな情報が得られます。検査を受けて得た知識だけがすべてを解決するわけではなく、発達障害と断定されるわけでもありません。

初めて訪れる場所や、初対面の人とのやり取りに緊張しやすい方は、検査の際にも緊張してしまい、自分の力を十分に発揮できないことがあります。検査結果は、その時の状態や、検査を受ける環境の影響を受けるため、あくまで一時点でのあなたの様子を示すものです。すべての側面を完璧に反映しているわけではありません。そのため、検査結果に一喜一憂するのではなく、自分のことをより深く理解するための参考資料として活用し、今後の生活に役立てていくことが大切です。

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