インチュニブ(グアンファシン)の効果や副作用。ADHD(注意欠如・多動性障害)治療薬を解説

インチュニブ 精神薬

インチュニブ

インチュニブは、コンサータストラテラに続く国内3番目のADHD治療薬として2017年3月に承認されたお薬です。2024年9月現在は6歳以上の患者様に処方が認められています。

本剤は、α2Aアドレナリン受容体アゴニストという作用機序を有し、従来の薬物療法で効果が得られないADHDの患者様に対して新たな治療選択肢を提供する機会を与えています。

ADHDに悩む患者様に向けて、この記事を書いていこうと思います。

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インチュニブ(グアンファシン)とは?

インチュニブ(グアンファシン塩酸塩)は、ADHD(注意欠陥多動性障害)の治療薬であり、脳内の情報伝達機能を補助することで、不注意・多動性・衝動性などの症状を改善する効果があります。この薬は、ドパミンノルアドレナリンを受け取りやすくし、脳の働きを円滑にすることが特徴です。

インチュニブは、体重や症状に応じて投与量を調整し、他のADHD治療薬との併用による効果増強も期待されています。依存性や乱用のリスクが少ない点も注目されています。日本では2017年5月から販売が開始されており、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは、コンサータストラテラと共にADHD治療に使用されています。なお、医師の処方が必要ですが、コンサータとは異なり、流通が特別に管理されていないため、多くの医療機関で処方が可能です。

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インチュニブ(グアンファシン)とコンサータ、ストラテラとの違い

コンサータは、メチルフェニデート塩酸塩を主成分とするADHD治療薬で、中枢刺激薬に分類されます。この薬は、脳内のドパミンノルアドレナリンの働きを強め、ADHDの主な症状である不注意、多動、衝動性を改善する効果が期待されています。特に、ドパミンの働きを強化し、服用後すぐに効果が現れ、長時間持続する特徴があります。

ただし、コンサータには精神的依存のリスクや耐性の問題があり、副作用として睡眠障害や食欲不振が報告されています。また、精神刺激薬であるため流通が厳しく管理されており、処方できる医師は登録された限られた医師のみです。どこの病院でも処方できるわけではないため、注意が必要です。

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一方、ストラテラ(アトモキセチン)は、ADHD治療薬の中で、中枢刺激薬ではなく、選択的ノルアドレナリン再取込阻害薬に分類されます。この薬は、脳内のノルアドレナリン濃度を高めることで、不注意・多動・衝動性といったADHDの症状を改善します。ドパミンだけでなく、ノルアドレナリンの働きもADHDの症状に関係しているため、アトモキセチンは脳の機能を円滑にする効果が期待されています。

コンサータと異なり、アトモキセチンは依存性や耐性がないとされている一方、効果が現れるまでに時間がかかり、通常は有効用量に達してから2~3週間ほどで心身の変化が見られます。しかし、コンサータほどの即効性やはっきりとした効果を感じにくい場合もあるため、個人差があります。

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インチュニブは衝動性・多動性に効果あり

インチュニブ(グアンファシン)は、ADHDの治療薬で、特に多動性、衝動性、感情の不安定さに対して効果が期待される非中枢刺激薬です。グアンファシンは、もともと高血圧の治療薬として開発され、交感神経の働きを抑えて神経の緊張を和らげる作用があります。このため、ADHDに加えてチックや反抗挑戦障害を併発している場合や、衝動性が強い人に特に効果が期待されています。

インチュニブは、後シナプス(情報を受け取る側)のα2Aアドレナリン受容体に結合し、情報伝達効率を高めて脳の機能を改善します。これにより、シグナル伝達を増強し、ADHDの症状を一時的に改善すると考えられています。

一方、コンサータストラテラは、前シナプス(情報を送る側)のトランスポーターを阻害することで、ドーパミンノルアドレナリンの濃度を高め、脳内の情報伝達を促進します。これに対し、インチュニブは異なるメカニズムで作用するため、鎮静効果はあるものの、不注意にはあまり効果がないという報告もあります。インチュニブは、効果が現れるまでに時間がかかり、他のADHD治療薬とは異なる選択肢として使用されています。

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コンサータ・ストラテラ・インチュニブの比較

 

項目 コンサータ ストラテラ インチュニブ
成分 メチルフェニデート塩酸塩 アトモキセチン グアンファシン塩酸塩
薬剤カテゴリ 中枢刺激薬 非中枢刺激薬(選択的ノルアドレナリン再取込阻害薬) 非中枢刺激薬(α2Aアドレナリン受容体作動薬)
対ADHD効果 不注意、多動、衝動性に効果 不注意、多動、衝動性に効果 多動、衝動性、感情不安定に効果
作用 ドーパミンノルアドレナリンの再取り込み阻害 ノルアドレナリンの再取り込み阻害 α2Aアドレナリン受容体に結合し、シグナル伝達を増強
服薬回数 1日1回 1日1〜2回 1日1回
効いてくるまでの期間 即効性(1時間程度で効果発現) 効果発現まで2〜3週間 効果発現まで2〜3週間
効果持続 約12時間 約24時間 約24時間
適用年齢 6歳以上 6歳以上 6歳以上
依存耐性 あり(依存性・耐性がある可能性) なし なし
副作用 睡眠障害、食欲不振、頭痛、精神的依存 食欲不振、眠気、頭痛、吐き気 眠気、血圧低下、頭痛、倦怠感
留意点 精神的依存のリスク、流通管理が厳しい 効果発現まで時間がかかる 衝動性には効果が高いが、不注意には効果が低い場合もある
処方条件 限定された登録医師のみ処方可能 一般の医師が処方可能 一般の医師が処方可能

この比較表を参考に、それぞれの薬の特徴やメリット・デメリットを把握し、自分に合った治療法を選ぶ際の参考にしてください。

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インチュニブの副作用

インチュニブ(グアンファシン)を使用する際の注意点について説明します。まず、成分に対して過敏症がある人、妊娠中または妊娠の可能性がある人、房室ブロック(第2・第3度)がある人は服用できません。

併用禁忌の薬はありませんが、CYP3A4/5阻害剤と併用するとインチュニブの血中濃度が上がり副作用が増強され、逆にCYP3A4/5誘導剤と併用すると血中濃度が下がり効果が弱まります。例えば、グレープフルーツジュースはCYP3A4/5を阻害して副作用を増強し、セントジョーンズワートはCYP3A4/5誘導効果で作用を弱めます。

また、アルコールやバルプロ酸、中枢神経抑制剤(催眠薬・抗精神薬など)とも相互作用があり、特に降圧薬や心拍を抑える薬とは、相互の作用増強や失神のリスクがあるため、これらの薬を使用している場合は医師とよく相談してください。

その他の副作用としては、傾眠(57.5%)、血圧低下(15.4%)、頭痛(12.2%)などが報告されており、特に眠気や血圧の低下がよく見られます。

重大な副作用としては、低血圧や徐脈(5%以上)、房室ブロック(0.5%以上)、失神のリスクがあります。服用中は血圧や脈拍の変化に注意が必要で、めまいやふらつきなどの症状が現れた場合はすぐに医師に相談しましょう。

服薬の際には、毎日欠かさず服薬することが重要です。適切な服用量と間隔を守らないと副作用のリスクが高まります。また、服薬を突然中止すると、血圧の急上昇や脈拍数の増加などが起こり、海外では高血圧性脳症に至った例も報告されています。自己判断での中止は避け、医師の指示に従ってください。

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併用注意

薬剤の種類 具体例 影響 説明
CYP3A4/5阻害剤 イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシンなど 本剤の血中濃度が上昇し、効果が強まる可能性があるため、減量などが必要 これらの薬はインチュニブの代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性があります。例えば、ケトコナゾールと併用すると、AUCが3倍に増加した報告があります。
CYP3A4/5誘導剤 リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトインなど 本剤の血中濃度が減少し、効果が弱まる可能性がある これらの薬はインチュニブの代謝を促進し、血中濃度を低下させます。リファンピシンとの併用で、AUCが約70%減少した報告があります。
中枢神経抑制剤 鎮静剤、催眠剤、抗精神病薬、フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体、ベンゾジアゼピン誘導体、アルコールなど 相互に作用を増強する可能性がある これらの薬はインチュニブの鎮静作用を強める可能性があります。
バルプロ酸 バルプロ酸の血中濃度が増加する可能性あり 詳細な機序は不明ですが、併用によりバルプロ酸の血中濃度が上昇することが報告されています。
降圧作用を持つ薬剤 β遮断剤、Ca拮抗剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、降圧利尿剤など 相互に作用を増強し、失神を引き起こすことがある これらの薬はインチュニブの降圧作用や徐脈作用を強める可能性があります。
心拍数減少作用を持つ薬剤 ジギタリス製剤など 相互に作用を増強し、失神を引き起こすことがある 心拍数減少作用が強まる可能性があります。

このように、インチュニブを他の薬剤と併用する際には、その相互作用に注意が必要です。特に効果が増強または減弱する可能性があるため、医師と相談の上で慎重に使用しましょう。

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インチュニブと傾眠

ADHD患者におけるインチュニブコンサータストラテラ服用時の傾眠の副作用について、承認時までのデータでは以下のような報告があります。小児ADHDでは、インチュニブが57.5%、ストラテラが14.0%、コンサータでは傾眠の報告はありません。成人ADHDでは、インチュニブが41.3%、ストラテラが13.3%、コンサータでは1.1%です。

また、国内の臨床試験(18歳以上)において、インチュニブの副作用としては、傾眠が41.3%、血圧低下が23.9%、体位性めまいが19.6%報告されており、徐脈(16.5%)や頭痛(3.9%)も確認されています。

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インチュニブの運転への影響

ADHD治療薬は、すべての薬において運転や危険作業が禁止されています。これは、眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためで、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ません。例えば、コンサータの添付文書には「眠気や鎮静が起こることがあるため、自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けるように注意すること」と明記されています。

ADHDの症状がコントロールされていれば、運転免許の取得は可能ですが、ほとんどの治療薬で運転が禁止されているのが現状です。運転ができないことで社会復帰の妨げになるケースもあります。実際には、自己責任で薬を服用しながら運転する人もいますが、特に以下の状況では運転を控えるべきです。

  • 初めて薬を使用したとき
  • 他の薬から切り替えたとき
  • 服用量を増減させているとき
  • 体調不良を感じたとき

これらの状況では、無理をせず運転を避けることが推奨されます。

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インチュニブの妊娠・授乳への影響

インチュニブの妊娠および授乳への影響について見ていきましょう。まず、妊娠に関しては、添付文書には「妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないこと」と記載されています。動物実験では、大量投与により催奇形作用(外脳症、脊椎破裂症)が報告されています。

特に、妊娠初期は胎児が催奇形性の影響を受けやすい時期であるため、服薬時期が重要となります。服薬を継続するかどうかについては、必ず産科や心療内科の医師と相談しましょう。

次に、授乳に関しては、添付文書には「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること」と記載されています。

動物実験(ラット)では、乳汁中への移行が確認されていますが、母乳は赤ちゃんにとって非常に良い影響があるともされています。授乳を継続するか中止するかについても、産科や心療内科の医師とよく相談することが大切です。

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インチュニブ(グアンファシン)の作用機序

ADHD(注意欠陥多動性障害)の原因はまだ完全に解明されていませんが、前頭前皮質部分での情報伝達に問題があると考えられています。特に、シナプスという情報を送受信する部位がうまく機能しないことが一因とされています。このため、ADHDの症状として落ち着きがない、注意が続かない、衝動的な行動が見られる不注意・多動・衝動性が現れます。

インチュニブ(グアンファシン)は、脳内の後シナプスにあるα2Aアドレナリン受容体に結合し、シグナル伝達を強化することで、ADHDの症状を一時的に改善します。具体的には、インチュニブシナプス内のHCNチャネルを塞ぎ、ドパミンノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きを円滑にすることで、脳の機能を正常化させる作用があるとされています。インチュニブは非中枢刺激薬であり、コンサータやストラテラのようにドーパミンノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用は持っていませんが、神経伝達を補助する別のメカニズムで効果を発揮します。

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インチュニブの剤型と薬価

インチュニブ(グアンファシン)は、1日1回の服薬が基本です。医師が患者の体質、症状、薬の効果などを考慮して適切な投与量を決定します。服薬の時間帯は、なるべく毎日一定にすることが推奨されています。

18歳未満の患者の場合

  • 体重50kg未満では、通常1日1mgから投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ増量します。維持用量や最高用量は以下の通りです。
    • 体重17kg以上25kg未満:開始1mg、維持1mg、最高2mg
    • 体重25kg以上34kg未満:開始1mg、維持2mg、最高3mg
    • 体重34kg以上38kg未満:開始1mg、維持2mg、最高4mg
    • 体重38kg以上42kg未満:開始1mg、維持3mg、最高4mg
    • 体重42kg以上50kg未満:開始1mg、維持3mg、最高5mg
  • 体重50kg以上では、通常1日2mgから開始し、同様に1mgずつ増量し、体重に応じて最大6mgまで増量可能です。

18歳以上の患者の場合

通常、グアンファシンとして1日2mgから開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ増量し、1日4〜6mgの維持用量まで増量します。最大投与量は1日6mgを超えないようにします。

症状に応じて、投与量の調整が行われますが、いずれの場合も1日1回の経口投与が基本となります。

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インチュニブ錠のジェネリック医薬品

インチュニブは2017年の発売以降、特許期間中のためジェネリック医薬品は存在しません。

特許満了後は、グアンファシン塩酸塩を有効成分とするジェネリック医薬品が複数社から発売されることが予想されています。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同等の品質・有効性・安全性が求められるが、賦形剤や製法の違いにより生物学的同等性評価試験において生物学的同等性が示されない場合もあるので注意が必要です。

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