ロールシャッハテストとは
ロールシャッハ・テストは、インクのシミを利用したパーソナリティ検査で、深層心理を探る手法として広く知られています。このシンプルなテストでは、図版を見て何に見えるかを回答する形式で行われ、小説や映画などでもしばしば取り上げられています。
しかし、実際には臨床心理学の分野でさまざまな議論がなされています。このコラムでは、ロールシャッハ・テストの目的や手順などについて紹介します。
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ロールシャッハ・テストは、インクのシミを活用した心理検査で、その特殊な手法から有名なテストの1つです。フィクションの世界でもしばしば登場し、名前だけは一般的に知られていますが、専門的な理解が難しい面もあります。そこで今日は、このテストの内容や歴史などを分かりやすく解説します。
この心理テストは、インクを落としてできた模様から被験者のパーソナリティや無意識、性格特性、認知特性、対人関係、防衛機制、感情コントロールなどが浮き彫りにされる特長があります。自分の知らない自分について知るために最適な心理検査とされています。
ロールシャッハテストの現状
ロールシャッハテストは広く知られていますが、現代では学校臨床や特定の採用試験などで使用されているものの、批判も多く、必ずしも重要視される性格検査とは言えません。
今の時代は、物事をはっきりとした根拠に基づいて判断することが求められていますよね。そんな中で、ロールシャッハ・テストのような、インクのシミを見て何を連想するかで性格を判断する検査は、その結果が本当かどうか、はっきりしないという声が多く上がっています。例えば、この検査では、素直に答えた人が逆に問題ありと判断されてしまうこともあるんです。
ロールシャッハ・テストは、以前から色々な意見がありましたが、それを良くしようと、たくさんの人が努力してきました。でも、このテストを一番よく研究していた人が亡くなってしまい、その研究を引き継ぐ人が見つからなかったんです。そのため、ロールシャッハ・テストの評価方法をまとめたものが、なかなか新しくなりませんでした。
でも、最近になって、このテストの悪いところを直して、もっと良い評価方法を作ろうという研究が進んでいます。新しい方法の名前はR-PASというのですが、これを使うと、もっと正確に人のことを知ることができるようになるかもしれません。
発達障害で仕事を転々としていましたが、脱サラして地元でスナックを開業しました。
ロールシャッハテストの歴史
ロールシャッハテストの歴史は1920年代に遡ります。1921年にスイスのフロイト派精神分析家であるヘルマン・ロールシャッハが発表した『精神診断学』において、インクを使用したテストのアイディアが初めて言及されました。
ヘルマン・ロールシャッハは1922年に37歳で亡くなりましたが、アメリカで心理学を学んでいたサミュエル・J.ベックが彼の研究に注目し、ロールシャッハ検査の研究を引き継ぐことになりました。ベックはアメリカに研究成果をもたらし、ロールシャッハテストのアメリカでの研究が進展しました。後に包括システムを完成させたエクスナーは、ベックの助手を務めていたこともあり、重要な役割を果たしました。
一方で、ロールシャッハテストの創始者であるヘルマン・ロールシャッハはスイスの精神医学者で、1911年頃に子どもの遊びから着想を得てロールシャッハテストの研究を開始しました。彼は左右対称のインクの染みが精神疾患の診断に利用できる可能性を模索し、1921年に「精神診断学」でロールシャッハテストを発表しました。
彼は37歳で若くして亡くなりましたが、その後も研究は続き、アメリカやドイツからの研究者たちが加わりました。エクスナーが包括システムを作成するまでに、アメリカではロールシャッハテストの研究が広く展開されました。批判が多かったが、エクスナーの包括システムによってロールシャッハテストは21世紀までに精神医療や教育、福祉、司法などで広く使用されるアセスメントツールとして活躍しています。
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性格検査の分類
ここでは、ロールシャッハテストの意義や役割を理解するための手がかりとして、性格検査としてのロールシャッハテストの位置づけと、性格検査の分類について詳しく紹介していきます。
性格検査は心理検査の1つで、知能検査や発達検査と並んで分類されます。知能検査はIQ検査を代表し、発達検査では認知機能や社会性、運動能力などが調査されます。そして性格検査はその名の通り、個々の性格やパーソナリティを評価する検査です。
性格検査は主に質問紙法、投影法、作業検査法の3つの手法に分けられます。質問紙法では被験者が自己申告する形で性格を評価します。投影法では無意識の心の中にあるものを引き出すため、具体的な刺激物(例:インクの染みや図版)を用いて被験者に反応を引き出します。一方で作業検査法は、被験者が特定の課題や仕事を通して行動する様子から性格を把握します。
これらの手法を通じて、性格検査は被験者の内面を理解し、心理的な特徴や傾向を明らかにする役割を果たしています。
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ロールシャッハテストの作業法
作業法は、被験者に決まった一定の行動を続けさせることでそのパーソナリティを調査する手法です。この手法は、「内田クレペリン精神検査」などが日本の職業検査で広く使用されています。
クレペリン検査は、単純な算術作業を反復させることで、被験者の作業遂行能力や精神状態を評価する作業検査の一種です。具体的には、一桁の数字を連続して足し算する作業を一定時間行い、その間の作業量や作業曲線の変化を分析することで、注意集中力、持続性、疲労感といった心理的特性を測定します。得られたデータは、健常者の基準値と比較され、被験者の個性や能力が評価されます。
日本では、教員採用試験や交通業の職業試験などで作業法が採用されているケースが多いですが、その具体的な活用方法は不透明なままです。
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ロールシャッハテストの投影法
投影法は、はっきりとした答えがないような絵や写真を見せたり、絵を描いてもらったりして、その人の心の奥底を探る方法です。例えば、ロールシャッハ・テストでは、インクのシミが何に見えるかによって、その人の性格や気持ちを読み解きます。他にも、木を描いてもらって心理状態を分析するバウムテストや、好きな顔と嫌いな顔を選んでもらうソンディ・テストなどがあります。これらの検査は、本人が自覚していない心の奥底にあるものを知ることができるという点が特徴です。
ただし、投影法は結果の整理が複雑であり、検査の難解性から被験者には負担がかかるというデメリットも存在します。ロールシャッハテストが批判されたように、投影法も信頼性や妥当性に欠けるとの指摘があり、これらはあてにならない検査法と見なすこともできるでしょう。
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ロールシャッハテストで分かること
ロールシャッハテストでは、主に無意識的な側面に焦点が当てられ、被験者が自覚していない自分の一面が浮き彫りにされます。具体的には、以下の要素についてロールシャッハテストを通じて洞察が得られます。
- 興味・関心の内容
- 欲求や情緒の内容
- 抱えている葛藤や問題の内容
- 新しい出来事や出会いに対する反応や対応の特徴: 得意な対処方法や苦手な点、新しい状況への適応力が明らかになります。
- 緊張や不安: それらの内容や程度が表れます。
- 動揺からの立ち直り方と適応力: どれだけ迅速に立ち直り、新たな状況に対応できるかが示されます。
- 情緒や感情: 自らの情緒や感情をどのように受け入れているかが明らかになります。これが拒絶されると無理が生じたり、居心地の悪さを感じることがあります。
- 現実検討力: 自己や周囲、取り巻く環境をどのように捉えているか、その捉え方と現実のズレがどの程度あるかが示されます。これが問題にどれだけ影響しているかも評価されます。
- 特徴的な対人関係パターン: 過去の対人関係のパターンや特性が浮かび上がります。
これらの要素を通じて、被験者の内面や性格に関する詳細な洞察を得ることができます。
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ロールシャッハテストの役立て方
自己の特性を理解し、抱える問題に特性がどのように影響するかを検討することは、自己理解と問題解決の重要な一環です。新しい状況に直面し、対処が難しくなったり、受け入れがたい感情が生じた場合、強い不安や緊張、動揺からどのように立ち直ってきたかを理解することは重要です。
これを通じて、今後もその立ち直り方が有効であるか、それとも新たな方法を模索する必要があるかを検討できます。
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心理検査の結果は、カウンセリングにおいて有益な情報となり、問題解決の手がかりとなります。心理検査は独立しているのではなく、他の心理検査と組み合わせて、異なる側面から対処力や適応力を理解し比較することがあります。
心理検査は無意識レベルで働きかけるため、検査者は検査結果を総合的に理解し、他の心理検査との関連性も考慮します。ただし、すべての側面が網羅されるわけではなく、基本的な特性は安定していますが、検査時の状態によって左右されることもあります。検査結果を自己理解や問題解決の手段として活用する際には、その時点での状態や特性の理解に焦点を当てることが重要です。
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職業適正試験
ロールシャッハテストは、クレペリン検査と同様に職業適性試験で使用されることがあります。主な焦点は知能の測定ではなく、むしろ人格に歪みがないかどうかを評価することが多いです。
通常、事前に選択肢が提供され、ポジティブな回答とネガティブなイメージの回答に分類されることがあります。たとえば、飛んでいる蝶や鳥といったポジティブな回答から、飛び散った血しぶきや不気味な悪魔といったネガティブな回答までが含まれます。これらの回答例は、質問の意図が理解できるため、被験者が自ら回答する場合、悪い評価を避けるために良いイメージのものを選ぶ傾向が一般的です。
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資格試験
臨床心理士の資格試験などでは、ロールシャッハテストが関連することがあります。ただし、これは性格検査として実施されるわけではなく、むしろ資格の認定に必要な知識を含む筆記試験の一部として出題されます。特定の資格では、最低限のロールシャッハテストの知識が求められる場合があります。
心理カウンセリング
心理カウンセリングの分野でも、心理的な悩みの解決に向けてロールシャッハテストが実施されることがあります。
心理的な問題には、患者本人が気づいていない無意識の悩みや問題が存在することがよくあります。そのため、患者の内面や思考を探るためにロールシャッハテストが導入されることがあります。時には、時間をかけて複数回のテストが行われ、治療の進行とともに内面がどのように変化していったかを調査するケースも見られます。
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ロールシャッハテストの応用先
無意識の領域を探る主な応用先として、ロールシャッハテストは診断ツールとしての側面も持っています。最初は単に無意識の領域を調査するためのツールでしたが、実施の過程で被験者の状態と反応に一定の傾向が見られるようになりました。
たとえば、躁鬱や統合失調症の患者は、10種類の図柄に対して通常よりも多くの反応を示すことや、回答拒否の回数が増えることなどが一般的です。ロールシャッハテストは、これらのデータを活用することで、単に被験者の無意識を探る手法としてだけでなく、性格特性を診断・評価するためのツールとしても幅広く応用されています。
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アメリカ・日本におけるロールシャッハテスト
スイスで生まれたロールシャッハテストは、アメリカで広く研究が展開されました。興味深いことに、日本でも1930年頃からロールシャッハテストの研究が行われ、その歴史が存在します。
国民性においてアメリカと日本は大きな違いがあり、アメリカ人のデータを直接日本人に適用することが難しいため、日本では独自のテスト方式が研究されてきました。
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ロールシャッハ・テストの解釈体系は、国や研究者によって多様であるが、アメリカではエクスナーの包括システムが、日本においては片口法がそれぞれ主流として定着しました。現在、日本の臨床現場では、この包括システムと片口法の両方が併用され、被験者の心理状態を多角的に評価する試みがなされています。
- アメリカ: ロールシャッハテストは、心理検査の一つとして広く使用されています。
- 日本: ロールシャッハテストは、1950年代に紹介され、現在でも心理検査の一つとして使用されています。
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ロールシャッハテストのやり方
ロールシャッハテストをより詳しく知りたい方に向けて、テストの細かい実施方法を紹介していきます。
①テスト法
ロールシャッハテストの内容は、先述の通り、インクのシミが何に見えるかを計測していくものですが、テストを受ける環境も重要な要素です。被験者がテストに十分に集中できるように、理想的な状況では第三者は立ち会わず、被験者と検査者の二人だけで行います。
被験者にかかるストレスを最小限に抑えるために、向かい合わずに隣り合わせで試験が行われます。被験者にとってストレスの要因となりうる対面の圧力を和らげ、インクの模様に集中するため、ロールシャッハテストは慎重にセッティングされ、被験者がリラックスして臨むことができるよう留意されます。
ロールシャッハカード
ロールシャッハカードは、テストの中核を成すインクの模様が描かれた10枚1セットのカードです。テストの本質がこれらの模様に対する反応の観察にあるため、ロールシャッハテストにおいては必須のアイテムと言えます。
スイスで制作されたオリジナルのロールシャッハカードは、定価で2万円近い価格となっており、無料で公開されているものはほとんどないため、ネット上でこれらの模様を完全に入手しようとしてもかなりの難しさが伴います。
記録用紙
ロールシャッハテスト用の記録用紙も用意されています。たとえば、日本文化科学社から発行されている記録用紙は、10枚のテストの記録や採点、全体の整理などの項目が設けられており、20名分の用紙が約9,000円近い価格で販売されています。
ロールシャッハカードを提供している業者は、通常記録用紙も同時に取り扱っており、ウェブサイト上ではカードと同じ場所で別途販売されたり、同時に入手できる場合があります。
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整理用紙(K-Ⅷ)・構造一覧表
ロールシャッハ・テストの記録用紙について
ロールシャッハ・テストの結果を記録し、分析するために、さまざまな種類の用紙が使用されます。その中でも代表的なものが、整理用紙(K-Ⅷ)と構造一覧表です。
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整理用紙(K-Ⅷ)
- 片口式と呼ばれる日本の伝統的なロールシャッハ・テストの解釈体系で主に使用されます。
- 分類表、基礎整理表、まとめ表、サイコグラム、図版の縮小版といった、検査結果を記録・分析するための様々な項目が記載されています。
- 検査結果を視覚的に捉え、多角的に分析することで、被験者の心理状態をより深く理解するためのツールとして活用されます。
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-
構造一覧表
- 包括システムと呼ばれる、アメリカで開発されたロールシャッハ・テストの解釈体系で主に使用されます。
- 包括システム構造一覧表とも呼ばれ、最新の包括システムの基準に則って作成されています。
- 金剛出版などから発行されており、体系的な記録と分析を可能にするためのツールとして利用されます。
- 検査結果を数値化し、統計的な分析を行うことで、より客観的な評価を可能にします。
整理用紙(K-Ⅷ)と構造一覧表は、どちらもロールシャッハ・テストの分析に欠かせないツールです。どちらの用紙を使用するかは、採用している解釈体系(片口式か包括システムか)によって異なります。これらの用紙を用いることで、検査結果はより体系的に整理され、分析が効率的に行えるようになります。
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②:テスト評価方法
ロールシャッハテストはテストですので、被験者が残した反応を採点する必要があります。評価方法について確認していきましょう。
ロールシャッハテストのガイドライン
ロールシャッハテストの検査には基本的なガイドラインが用意されており、被験者の反応を評価する際に以下の4つのチェックポイントが重要です。
- 反応回数や拒否回数、反応に掛かった時間など
- 被験者の図形以外に対する反応(色彩や動き)があったか
- 反応が図形全体に対するものか、またはどの部分に反応しているか
- 被験者にとって図形は何に見えたのか
これらの基本的なガイドラインに従って行われる評価から、ロールシャッハは被験者の性格を分類していきます。
スコアリング
ロールシャッハテストでは、被験者が引き起こした反応を区別し、採点・診断する手法を「スコアリングシステム」と呼んでいます。このシステムでは、反応が形態(F)、運動(M)などに分類され、具体的なスコアは、例えば「F+%が25%」といった形で算出される仕組みが採用されています。
スコアリングシステムの現状
初期のアプローチ方法として挙げられる、ベックとクロプファーのアプローチは、前者がロールシャッハの原則を守りつつ、後者がユングの思想を取り入れたものであり、これらのアプローチには大きな違いがありました。そのため、一貫性のある絶対的なシステムが存在しませんでした。
最終的に、エクスナーによって様々なスコアリングシステムが「包括システム」として統合され、これが現在の主流なスコアリングシステムとして広く用いられています。
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ロールシャッハテストの信頼性・妥当性
ロールシャッハテストに関する研究はこれまでさまざまな方向から行われ、その信頼性と妥当性については何度も論争の的となってきました。信頼性は、結果が一貫して安定しているかどうかを示す指標であり、一方で妥当性は測定しようとしている心理的な特性や状態を正確に反映しているかを示します。
信頼性に関して、ロールシャッハテストの集計や解釈が機械的に難しいため、検査者の職人技が求められる側面があります。このため、異なる検査者が同じデータを集計・解釈した場合に食い違うことがあり、ロールシャッハテストの信頼性が高くないとの意見もあります。ただし、一部の研究では、一定程度以上の経験年数を持つ検査者の場合、集計と結果が高い一致率を示すことが報告されています。
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妥当性については、ヘルマン・ロールシャッハ以来、さまざまな精神疾患や精神障害に対する判別研究が行われています。これにはヒステリー、強迫神経症、統合失調症、躁うつ病、てんかん、器質性精神障害などが含まれます。また、近年では自閉性障害やADHDなどの発達障害においてもロールシャッハテストが有用であるかどうかを検証する研究が進んでいます。これらの研究はまだ途上であり、具体的な結論は出ていませんが、重要な指標がいくつか検出されていると考えられています。
一方で、信頼性に関しては未だに疑問視されることがあり、批判的な意見も存在します。妥当性においては、指標の妥当性やデータの規準値における集団の偏り、検査への協力度や反応数の影響などが問題視されています。それでもなお、ロールシャッハテストは有力な性格検査方法の一つとして位置づけられており、包括システムに代わる新しい信頼性の高いシステムとして、R-PASの研究が進行中です。
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ロールシャッハテストを受けたい人へ
ロールシャッハ・テストは実施に時間がかかり、解釈にも専門的な知識と技術が必要なため、受検できる機関は限られています。テストが実施されている機関では、ロールシャッハテストだけでなく、バウムテストなど他の性格検査も一般的に実施されています。したがって、受ける際は医療機関に相談し、適切な検査方法を選ぶよう心掛けましょう。発達障害者支援センターや児童相談所から専門機関の紹介を受けることもおすすめです。
専門機関の例として、子どもの場合には保健センターや子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センター、法務省少年支援センター、児童相談所などがあります。大人の場合には発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所などが挙げられます。国立障害者リハビリテーションセンターのホームページから全国の発達障害者支援センターを検索できます。
参考:発達障害者支援センター |出典:国立障害者リハビリテーションセンターホームページ
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特別な理由なくテストを希望する場合には、まず最寄りの検査機関を調べ、精神科や心療内科を開設している病院、臨床心理士のいるカウンセリングルームなどを候補に挙げてください。
施設でロールシャッハ・テストの受検を希望する場合、まずテストの解釈に精通した医師や臨床心理士が在籍しているかを確認し、相談してみましょう。ただし、多くの施設では通常、カウンセリングの一環としてテストが実施されるため、テストのみの実施が可能かについて事前に確認することが重要です。
日本では保険医療の診療報酬体系にロールシャッハ・テストが組み込まれていますが、テストだけを受けたい場合は保険が効かないことが一般的です。費用については保険の適用有無によって異なり、施設ごとに金額が設定されていることもありますので、事前に確認しておくことがおすすめです。
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ロールシャッハテストでわかること
ストレスを感じたときの動き方
簡潔に言うと、性格検査はストレスへの対処と耐性を理解する手段です。一定の状況に関連したストレスの状態などが測定され、治療にも利用されます。これにより、本人がどんな状況でストレスを感じやすい傾向にあるのかなどが判断されます。
情緒面の測定
情緒、すなわち感情の抱き方が性格検査において測定されます。測定の範囲は広く、緊張しがちな性格や抑うつな性格、そして対人関係の内閉具合などが観察されます。さらに、愛情への欲求具合も分析の対象となります。情緒とは感情的な反応やその統制の仕方など、非常に細かい内容が性格検査の分析対象として取り上げられます。
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あくまで内面的な事を知るための一手段
ロールシャッハテストは非常に細かい内容まで分析されますが、仮に受けたとしても、全てを真実として受け入れる必要はありません。人間の複雑な内面は元々色々な側面を持っており、完璧に読み取るのは難しいものです。性格検査はあくまでも参考程度の判断材料に過ぎません。テスト結果の扱いは、医者など性格検査を利用する側に委ね、被験者自身はあまり重く捉えないようにしましょう。ロールシャッハテストはどこまでいっても、自身の内面を知るための一手段に過ぎません。
ロールシャッハテストの実施
ロールシャッハ・テストは、だいたい1時間半から2時間ぐらいの時間をかけて行う検査です。長い時間座って同じことをするのは疲れるので、途中で休憩しても大丈夫ですが、もし集中力が切れないようなら、一気に最後までやってしまう方が良いでしょう。
検査を受ける部屋は、静かで、暑すぎたり寒すぎたりしない、ちょうどいい温度の部屋がおすすめです。周りの音がうるさかったり、暑かったり寒かったりすると、検査に集中できなくなってしまいます。
実施の際は、まず検査者がテストの手順について説明を行います。これを専門的には「教示」と呼びます。分からないことがあれば、検査者に質問するようにしましょう。
その後、ロールシャッハ図版を見ていき、各図版に何が見えるかをいくつか答えていきます。学力試験などとは異なり、正解や不正解はありませんので、自由に見えたように答えてください。
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ロールシャッハテストの内容
前章で概説したように、性格検査は、その手法によって大きく3つに分類されます。具体的には、質問紙法、投影法、そして作業検査法です。以下では、それぞれの方法の特徴について詳細に見ていきましょう。
ロールシャッハテストの質問紙法
質問紙法は、用意された質問に対する回答結果から被験者のパーソナリティを分析する手法です。この方法は、アンケート調査のような形式で行われ、投影法や作業法と比較して実施や結果の整理が簡単であるという利点があります。また、性格検査だけでなく、社会調査などで世の中の意見や認識を集計するためにも広く活用されています。
ただし、質問が簡潔である傾向があり、被験者が意識的に回答内容を偏らせることが比較的容易な点が難点です。質問の意図が読み取りやすいため、被験者が素直に答えずに分析結果が誤ってしまう可能性があります。このため、あてにならないテストとも言えるでしょう。
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ロールシャッハテストの作業法
作業法は、被験者に決まった一定の行動を続けさせることでそのパーソナリティを調査する手法です。この手法は、「内田クレペリン精神検査」などが日本の職業検査で広く使用されています。
クレペリン検査は、単純な算術作業を反復させることで、被験者の作業遂行能力や精神状態を評価する作業検査の一種です。具体的には、一桁の数字を連続して足し算する作業を一定時間行い、その間の作業量や作業曲線の変化を分析することで、注意集中力、持続性、疲労感といった心理的特性を測定します。得られたデータは、健常者の基準値と比較され、被験者の個性や能力が評価されます。
日本では、教員採用試験や交通業の職業試験などで作業法が採用されているケースが多いですが、その具体的な活用方法は不透明なままです。
こちらも参考に:場面緘黙とは?症状や治療方法・仕事選び
こちらも参考に:心理検査の種類と目的。活用方法。発達障害の診断には使えるの?
ロールシャッハテストの投影法
投影法は、はっきりとした答えがないような絵や写真を見せたり、絵を描いてもらったりして、その人の心の奥底を探る方法です。例えば、ロールシャッハ・テストでは、インクのシミが何に見えるかによって、その人の性格や気持ちを読み解きます。他にも、木を描いてもらって心理状態を分析するバウムテストや、好きな顔と嫌いな顔を選んでもらうソンディ・テストなどがあります。これらの検査は、本人が自覚していない心の奥底にあるものを知ることができるという点が特徴です。
ただし、投影法は結果の整理が複雑であり、検査の難解性から被験者には負担がかかるというデメリットも存在します。ロールシャッハテストが批判されたように、投影法も信頼性や妥当性に欠けるとの指摘があり、これらはあてにならない検査法と見なすこともできるでしょう。
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ロールシャッハテストで分かること
ロールシャッハテストでは、主に無意識的な側面に焦点が当てられ、被験者が自覚していない自分の一面が浮き彫りにされます。具体的には、以下の要素についてロールシャッハテストを通じて洞察が得られます。
- 興味・関心の内容
- 欲求や情緒の内容
- 抱えている葛藤や問題の内容
- 新しい出来事や出会いに対する反応や対応の特徴: 得意な対処方法や苦手な点、新しい状況への適応力が明らかになります。
- 緊張や不安: それらの内容や程度が表れます。
- 動揺からの立ち直り方と適応力: どれだけ迅速に立ち直り、新たな状況に対応できるかが示されます。
- 情緒や感情: 自らの情緒や感情をどのように受け入れているかが明らかになります。これが拒絶されると無理が生じたり、居心地の悪さを感じることがあります。
- 現実検討力: 自己や周囲、取り巻く環境をどのように捉えているか、その捉え方と現実のズレがどの程度あるかが示されます。これが問題にどれだけ影響しているかも評価されます。
- 特徴的な対人関係パターン: 過去の対人関係のパターンや特性が浮かび上がります。
これらの要素を通じて、被験者の内面や性格に関する詳細な洞察を得ることができます。
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ロールシャッハテストの役立て方
自己の特性を理解し、抱える問題に特性がどのように影響するかを検討することは、自己理解と問題解決の重要な一環です。新しい状況に直面し、対処が難しくなったり、受け入れがたい感情が生じた場合、強い不安や緊張、動揺からどのように立ち直ってきたかを理解することは重要です。
これを通じて、今後もその立ち直り方が有効であるか、それとも新たな方法を模索する必要があるかを検討できます。
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心理検査の結果は、カウンセリングにおいて有益な情報となり、問題解決の手がかりとなります。心理検査は独立しているのではなく、他の心理検査と組み合わせて、異なる側面から対処力や適応力を理解し比較することがあります。
心理検査は無意識レベルで働きかけるため、検査者は検査結果を総合的に理解し、他の心理検査との関連性も考慮します。ただし、すべての側面が網羅されるわけではなく、基本的な特性は安定していますが、検査時の状態によって左右されることもあります。検査結果を自己理解や問題解決の手段として活用する際には、その時点での状態や特性の理解に焦点を当てることが重要です。
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職業適正試験
ロールシャッハテストは、クレペリン検査と同様に職業適性試験で使用されることがあります。主な焦点は知能の測定ではなく、むしろ人格に歪みがないかどうかを評価することが多いです。
通常、事前に選択肢が提供され、ポジティブな回答とネガティブなイメージの回答に分類されることがあります。たとえば、飛んでいる蝶や鳥といったポジティブな回答から、飛び散った血しぶきや不気味な悪魔といったネガティブな回答までが含まれます。これらの回答例は、質問の意図が理解できるため、被験者が自ら回答する場合、悪い評価を避けるために良いイメージのものを選ぶ傾向が一般的です。
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資格試験
臨床心理士の資格試験などでは、ロールシャッハテストが関連することがあります。ただし、これは性格検査として実施されるわけではなく、むしろ資格の認定に必要な知識を含む筆記試験の一部として出題されます。特定の資格では、最低限のロールシャッハテストの知識が求められる場合があります。
心理カウンセリング
心理カウンセリングの分野でも、心理的な悩みの解決に向けてロールシャッハテストが実施されることがあります。
心理的な問題には、患者本人が気づいていない無意識の悩みや問題が存在することがよくあります。そのため、患者の内面や思考を探るためにロールシャッハテストが導入されることがあります。時には、時間をかけて複数回のテストが行われ、治療の進行とともに内面がどのように変化していったかを調査するケースも見られます。
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ロールシャッハテストの応用先
無意識の領域を探る主な応用先として、ロールシャッハテストは診断ツールとしての側面も持っています。最初は単に無意識の領域を調査するためのツールでしたが、実施の過程で被験者の状態と反応に一定の傾向が見られるようになりました。
たとえば、躁鬱や統合失調症の患者は、10種類の図柄に対して通常よりも多くの反応を示すことや、回答拒否の回数が増えることなどが一般的です。ロールシャッハテストは、これらのデータを活用することで、単に被験者の無意識を探る手法としてだけでなく、性格特性を診断・評価するためのツールとしても幅広く応用されています。
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アメリカ・日本におけるロールシャッハテスト
スイスで生まれたロールシャッハテストは、アメリカで広く研究が展開されました。興味深いことに、日本でも1930年頃からロールシャッハテストの研究が行われ、その歴史が存在します。
国民性においてアメリカと日本は大きな違いがあり、アメリカ人のデータを直接日本人に適用することが難しいため、日本では独自のテスト方式が研究されてきました。
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ロールシャッハ・テストの解釈体系は、国や研究者によって多様であるが、アメリカではエクスナーの包括システムが、日本においては片口法がそれぞれ主流として定着しました。現在、日本の臨床現場では、この包括システムと片口法の両方が併用され、被験者の心理状態を多角的に評価する試みがなされています。
- アメリカ: ロールシャッハテストは、心理検査の一つとして広く使用されています。
- 日本: ロールシャッハテストは、1950年代に紹介され、現在でも心理検査の一つとして使用されています。
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ロールシャッハテストのやり方
ロールシャッハテストをより詳しく知りたい方に向けて、テストの細かい実施方法を紹介していきます。
①テスト法
ロールシャッハテストの内容は、先述の通り、インクのシミが何に見えるかを計測していくものですが、テストを受ける環境も重要な要素です。被験者がテストに十分に集中できるように、理想的な状況では第三者は立ち会わず、被験者と検査者の二人だけで行います。
被験者にかかるストレスを最小限に抑えるために、向かい合わずに隣り合わせで試験が行われます。被験者にとってストレスの要因となりうる対面の圧力を和らげ、インクの模様に集中するため、ロールシャッハテストは慎重にセッティングされ、被験者がリラックスして臨むことができるよう留意されます。
ロールシャッハカード
ロールシャッハカードは、テストの中核を成すインクの模様が描かれた10枚1セットのカードです。テストの本質がこれらの模様に対する反応の観察にあるため、ロールシャッハテストにおいては必須のアイテムと言えます。
スイスで制作されたオリジナルのロールシャッハカードは、定価で2万円近い価格となっており、無料で公開されているものはほとんどないため、ネット上でこれらの模様を完全に入手しようとしてもかなりの難しさが伴います。
記録用紙
ロールシャッハテスト用の記録用紙も用意されています。たとえば、日本文化科学社から発行されている記録用紙は、10枚のテストの記録や採点、全体の整理などの項目が設けられており、20名分の用紙が約9,000円近い価格で販売されています。
ロールシャッハカードを提供している業者は、通常記録用紙も同時に取り扱っており、ウェブサイト上ではカードと同じ場所で別途販売されたり、同時に入手できる場合があります。
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整理用紙(K-Ⅷ)・構造一覧表
ロールシャッハ・テストの記録用紙について
ロールシャッハ・テストの結果を記録し、分析するために、さまざまな種類の用紙が使用されます。その中でも代表的なものが、整理用紙(K-Ⅷ)と構造一覧表です。
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整理用紙(K-Ⅷ)
- 片口式と呼ばれる日本の伝統的なロールシャッハ・テストの解釈体系で主に使用されます。
- 分類表、基礎整理表、まとめ表、サイコグラム、図版の縮小版といった、検査結果を記録・分析するための様々な項目が記載されています。
- 検査結果を視覚的に捉え、多角的に分析することで、被験者の心理状態をより深く理解するためのツールとして活用されます。
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構造一覧表
- 包括システムと呼ばれる、アメリカで開発されたロールシャッハ・テストの解釈体系で主に使用されます。
- 包括システム構造一覧表とも呼ばれ、最新の包括システムの基準に則って作成されています。
- 金剛出版などから発行されており、体系的な記録と分析を可能にするためのツールとして利用されます。
- 検査結果を数値化し、統計的な分析を行うことで、より客観的な評価を可能にします。
整理用紙(K-Ⅷ)と構造一覧表は、どちらもロールシャッハ・テストの分析に欠かせないツールです。どちらの用紙を使用するかは、採用している解釈体系(片口式か包括システムか)によって異なります。これらの用紙を用いることで、検査結果はより体系的に整理され、分析が効率的に行えるようになります。
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②:テスト評価方法
ロールシャッハテストはテストですので、被験者が残した反応を採点する必要があります。評価方法について確認していきましょう。
ロールシャッハテストのガイドライン
ロールシャッハテストの検査には基本的なガイドラインが用意されており、被験者の反応を評価する際に以下の4つのチェックポイントが重要です。
- 反応回数や拒否回数、反応に掛かった時間など
- 被験者の図形以外に対する反応(色彩や動き)があったか
- 反応が図形全体に対するものか、またはどの部分に反応しているか
- 被験者にとって図形は何に見えたのか
これらの基本的なガイドラインに従って行われる評価から、ロールシャッハは被験者の性格を分類していきます。
スコアリング
ロールシャッハテストでは、被験者が引き起こした反応を区別し、採点・診断する手法を「スコアリングシステム」と呼んでいます。このシステムでは、反応が形態(F)、運動(M)などに分類され、具体的なスコアは、例えば「F+%が25%」といった形で算出される仕組みが採用されています。
スコアリングシステムの現状
初期のアプローチ方法として挙げられる、ベックとクロプファーのアプローチは、前者がロールシャッハの原則を守りつつ、後者がユングの思想を取り入れたものであり、これらのアプローチには大きな違いがありました。そのため、一貫性のある絶対的なシステムが存在しませんでした。
最終的に、エクスナーによって様々なスコアリングシステムが「包括システム」として統合され、これが現在の主流なスコアリングシステムとして広く用いられています。
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ロールシャッハテストの信頼性・妥当性
ロールシャッハテストに関する研究はこれまでさまざまな方向から行われ、その信頼性と妥当性については何度も論争の的となってきました。信頼性は、結果が一貫して安定しているかどうかを示す指標であり、一方で妥当性は測定しようとしている心理的な特性や状態を正確に反映しているかを示します。
信頼性に関して、ロールシャッハテストの集計や解釈が機械的に難しいため、検査者の職人技が求められる側面があります。このため、異なる検査者が同じデータを集計・解釈した場合に食い違うことがあり、ロールシャッハテストの信頼性が高くないとの意見もあります。ただし、一部の研究では、一定程度以上の経験年数を持つ検査者の場合、集計と結果が高い一致率を示すことが報告されています。
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妥当性については、ヘルマン・ロールシャッハ以来、さまざまな精神疾患や精神障害に対する判別研究が行われています。これにはヒステリー、強迫神経症、統合失調症、躁うつ病、てんかん、器質性精神障害などが含まれます。また、近年では自閉性障害やADHDなどの発達障害においてもロールシャッハテストが有用であるかどうかを検証する研究が進んでいます。これらの研究はまだ途上であり、具体的な結論は出ていませんが、重要な指標がいくつか検出されていると考えられています。
一方で、信頼性に関しては未だに疑問視されることがあり、批判的な意見も存在します。妥当性においては、指標の妥当性やデータの規準値における集団の偏り、検査への協力度や反応数の影響などが問題視されています。それでもなお、ロールシャッハテストは有力な性格検査方法の一つとして位置づけられており、包括システムに代わる新しい信頼性の高いシステムとして、R-PASの研究が進行中です。
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ロールシャッハテストを受けたい人へ
ロールシャッハ・テストは実施に時間がかかり、解釈にも専門的な知識と技術が必要なため、受検できる機関は限られています。テストが実施されている機関では、ロールシャッハテストだけでなく、バウムテストなど他の性格検査も一般的に実施されています。したがって、受ける際は医療機関に相談し、適切な検査方法を選ぶよう心掛けましょう。発達障害者支援センターや児童相談所から専門機関の紹介を受けることもおすすめです。
専門機関の例として、子どもの場合には保健センターや子育て支援センター、児童発達支援事業所、発達障害者支援センター、法務省少年支援センター、児童相談所などがあります。大人の場合には発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所などが挙げられます。国立障害者リハビリテーションセンターのホームページから全国の発達障害者支援センターを検索できます。
参考:発達障害者支援センター |出典:国立障害者リハビリテーションセンターホームページ
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特別な理由なくテストを希望する場合には、まず最寄りの検査機関を調べ、精神科や心療内科を開設している病院、臨床心理士のいるカウンセリングルームなどを候補に挙げてください。
施設でロールシャッハ・テストの受検を希望する場合、まずテストの解釈に精通した医師や臨床心理士が在籍しているかを確認し、相談してみましょう。ただし、多くの施設では通常、カウンセリングの一環としてテストが実施されるため、テストのみの実施が可能かについて事前に確認することが重要です。
日本では保険医療の診療報酬体系にロールシャッハ・テストが組み込まれていますが、テストだけを受けたい場合は保険が効かないことが一般的です。費用については保険の適用有無によって異なり、施設ごとに金額が設定されていることもありますので、事前に確認しておくことがおすすめです。
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