オランザピン(ジプレキサ)の効果と副作用
オランザピン(ジプレキサ)とは?
オランザピンは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)の一つとして有名で、色々な受容体に作用するとされ、MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)と呼ばれています。商品名はジプレキサ (Zyprexa)で、規制区分は劇薬および処方箋医薬品となっています。
オランザピン(ジプレキサ)の効果や効能が期待できる病気
統合失調症や双極性障害など心の病気の治療に使用します。また、抗がん剤薬の嘔吐にも有効です。
オランザピン(ジプレキサ)の統合失調症での効果
以下のような効果が期待できます。
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統合失調症でのオランザピン(ジプレキサ)の適合症状
・衝動性や過敏さが強まってしまう統合失調症の患者
・急性期の興奮が強い患者
・意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状
・認知機能障害や感情障害
・急性期+慢性期
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参考:精神薬について
統合失調症でのオランザピン(ジプレキサ)の臨床試験
中等度以上の改善率:44%(40/90人)でした。
海外での比較試験:旧来の定型抗精神病薬(ハロペリドール)に比べて、高用量服用によって陰性症状を有意に改善したとされています。
長期継続試験:統合失調症の再発防止により有効
パーキンソニズムや遅発性ジスキネジア(副作用)の発現率:定型抗精神病薬より低い
オランザピン(ジプレキサ)のうつ病・双極性障害での効果
以下のような効果が期待できます。
・双極性障害におけるうつ症状の改善
・気分の高揚をしずめ躁症状を落ち着かせる
・衝動コントロールや不眠のコントロール
双極性障害でのオランザピン(ジプレキサ)の適合症状
・うつ状態・躁状態のどちらも適応だが、特に躁状態に対しての効果が高い
・抗うつ剤で十分な効果が認められない場合。抗うつ剤にジプレキサを追加
・気分の波が大きい場合
・再発予防効果
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双極性障害でのオランザピン(ジプレキサ)の臨床試験
躁症状がある患者201人のうち、104人にはオランザピン。97人はプラセボを服用。
躁状態の時と鬱状態の時それぞれでプラセボを使って判定。
鬱状態の時:プラセボと比べて2.6ポイントほど効果あり
躁状態、鬱状態ともにオランザピン(ジプレキサ)が有効であることがわかる
オランザピン(ジプレキサ)の適応が正式に認められている病気
以下の病気でジプレキサの適応が正式に認められています。
オランザピン(ジプレキサ)の特徴
オランザピン(ジプレキサ)は、「うつ状態に対しては単独での適応は認められていません。」主に、統合失調症と双極性障害の躁状態が適応症状となっています。
オランザピン(ジプレキサ)のメリット・効果
・陰性症状や認知機能の改善が期待できる
・効果に即効性がある
・気分安定作用が期待できる
・鎮静作用で不眠や不安に効果が期待できる
・薬価が安い。後発薬(アメル)は薬価が5mgで21.1円
・1日1回の服用が可能
・剤形が豊富
オランザピン(ジプレキサ)のデメリット・副作用
・体重の増加が激しい(1年後で平均4.3 kg増加)
・血糖値の上昇
・眠気やふらつきが出やすい
・口渇・便秘
・タバコを吸う人は効果が弱まってしまう
またオランザピン(ジプレキサ)は、タバコを吸っていると効果が弱くなってしまうことがわかっています。可能であれば禁煙しましょう。
オランザピン(ジプレキサ)と他の抗精神病薬との比較
パーキンソン症状 | 高プロラクチン血症 | 便秘・口渇 | ふらつき | 眠気 | 体重増加 | |
リスパダール(SDA) | ++ | +++ | ± | ++ | + | ++ |
インヴェガ(SDA) | + | +++ | ± | + | ± | + |
ロナセン(SDA) | ++ | + | + | ± | ± | ± |
ルーラン(SDA) | + | + | ± | + | + | + |
ジプレキサ(MARTA) | ± | + | ++ | + | ++ | +++ |
セロクエル(MARTA) | ± | ± | + | ++ | ++ | +++ |
シクレスト(MARTA) | + | + | ± | + | ++ | + |
エビリファイ(DSS) | + | ± | ± | ± | ± | ± |
レキサルティ(SDAM) | + | ± | ± | ± | + | ± |
セレネース(定型) | +++ | ++ | ± | ++ | + | ± |
コントミン(定型) | ++ | + | +++ | +++ | +++ | ++ |
やはり、オランザピン(ジプレキサ)は効果も大きい分、副作用も辛そうですね。副作用を詳しくみていきたいと思います。
参考:SDAMとは?
参考:DSSとは?
オランザピン(ジプレキサ)の副作用
- 鎮静作用の副作用:眠気やふらつき
- 代謝系の副作用:体重増加や高血糖(糖尿病)
- 抗コリン作用による副作用:口渇・便秘
また、以下のような状態の患者にはオランザピン(ジプレキサ)を使用してはいけないとされています。
禁忌
- 昏睡状態の患者
- 中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者
- アドレナリンを投与中の患者
- 糖尿病の患者、あるいは糖尿病の既往歴のある患者
注意して使用しなくてはいけない人
・高血糖、肥満、糖尿病発症リスクを持っている人
・前立腺肥大などで尿の出の悪い人、腸の働きが落ちている人、緑内障、てんかん、肝臓病、低血圧、脳血管障害、心臓病、高齢の人
・希死念慮のある人
・寝たきり、または手術後などで長時間体を動かせない人、脱水状態の人、肥満の人は血栓症のリスク有り
・認知症の適応外使用例では死亡率が1.6~1.7倍高い
・双極性障害で24 歳以下で抗うつ剤を使用した場合、希死念慮を強めるという報告があります。本剤も抗うつ薬と同様に抗うつ効果を有することから、24 歳以下の双極性障害におけるうつ状態の人でこの薬を使う人は医師と十分に相談してください。(患者向医薬品ガイド)
飲み合わせ・食べ合わせでの注意(併用禁止)
・他の安定剤など脳の神経を鎮める薬と併用すると作用が強くなることがある
・パーキンソン病の薬では、お互いの作用が弱まることがある
・降圧薬との併用では、めまいや立ちくらみが起こりやすくなる
・抗コリン作用のある薬と併用すると、抗コリン性の副作用が出やすくなる
・アルコールといっしょに飲むと、眠気やふらつき、立ちくらみなどの副作用
・アドレナリンを投与中の患者
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ジプレキサの剤形と薬価
オランザピン(ジプレキサ)は以下のような形状の製品があります。
- 錠(2.5mg・5mg・10mg)
- 細粒(1%)
- ザイディス錠(2.5mg・5mg・10mg)
- 筋注(10mg)
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オランザピン(ジプレキサ)の用法と効果のみられ方
開始用量 | 維持量 | 用法 | 最高用量 | |
うつ状態 | 5mg | 10mg | 1日1回(就寝前) | 20mg |
躁状態 | 10mg | 1日1回 | 20mg | |
統合失調症 | 5~10mg | 10mg | 1日1回 | 20mg |
抗がん剤に よる吐き気 |
5mg | 1日1回 | 10mg |
症状によって使用方法に違いはありますが、以下のような共通点があります。
・鎮静作用を期待するときは10mgから、それ以外の場合は2.5mg~5mgより漸増していくことが多い
・作用時間が長いため、1日1回の服用でOK
・眠気が強いので夕食後や就寝前に服用とすること
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オランザピン(ジプレキサ)の半減期
多くの飲み薬には半減期と最高血中濃度到達時間(Tmax)が存在します。
最高血中濃度到達時間(Tmax)とは?:一番薬の効果を感じる時間
半減期とは?:(血中濃度が最も高くなってから)半減するのに要する時間
半減期が長いほど薬の効果は持続する。
オランザピン(ジプレキサ)の場合は4.8時間ほどでピーク(最高血中濃度到達時間)を迎え、時間経過(28.5時間)で半分の量(半減期)になるので、薬の効果が長く、1日1回の服用によって、効果が安定します。
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服用時期でみたオランザピン(ジプレキサ)の副作用
服用時期は「飲み始め」「服用中」「減薬時」と分けることができます。服用時期ごとに出やすい副作用を見ていきましょう。
飲み始め:眠気(中枢神経症状)
服用中:眠気(中枢神経症状) 体重増加、糖尿病(糖代謝異常) 肝機能障害
減薬時:離脱症状、悪性症候群(発熱や意識障害、パーキンソン症状、自律神経症状)
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オランザピン(ジプレキサ)は糖代謝異常を起こしやすい薬で肝臓や腎臓に負担がかかってしまって機能が低下してしまうことがあるため、定期的に採血して確認する必要があります。
お薬の増減の後に、咳や鼻水などがなくて高熱が認められた場合は、悪性症候群に注意が必要です。
オランザピン(ジプレキサ)の副作用の対処法
オランザピン(ジプレキサ)の副作用が認められた場合は「経過観察」が基本的な対処法になります。
薬を飲み続けるうちに身体が少しずつ慣れていき(耐性がつく)、落ちついてくることが多いためです。
副作用が出ていてもオランザピン(ジプレキサ)を使い続けた方がよい場合は症状を和らげるお薬を併用することがあります。以下の表に副作用別の解消法と緩和方法をまとめました。
解消法 | 副作用緩和 | |
便秘 | 食物繊維・水分・運動習慣 | 大黄甘草湯・グーフィス・モビコール・マグネシウム |
口渇 | 唾液腺マッサージ・口呼吸 | 白虎加人参湯 |
ふらつき | ゆっくり起き上がる | メトリジン・リズミックなど |
眠気 | 昼寝習慣 | ー |
体重増加 | 食事管理・運動習慣 | ー |
吐き気 | 控えめの食事 | 胃薬・ガスモチン・レパミドなど |
下痢 | ー | ー |
対処薬が無く、副作用として出やすい「眠気」と「体重増加」に関しては以下の章で対処法を調べてまとめています。
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オランザピン(ジプレキサ)と眠気・不眠
オランザピン(ジプレキサ)に関しての眠気対処法は気休め程度の情報しか見つかりませんでしたが、以下のことを心がけると良いようです。
- 薬を分割して飲む回数を増やす
- 夕食後や就寝前に服用する
- 減量する
- アルコールや相互作用のある薬を見直す
- 他の抗精神病薬に変える
引用:ジプレキサの眠気と6つの対策
こちらも参考に:大人の発達障害【ASD女性の特徴】女性特有の事例と対策6選
オランザピン(ジプレキサ)と体重(太る?痩せる?)・糖尿病
オランザピン(ジプレキサ)で太った場合のダイエット方法を調べてまとめてみました。
そばの実ダイエット:https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail?id=793
サミドルファンの活用:https://www.momijizaka-clinic.com/single-post/samidorphan-olanzapine-weight
オランザピン(ジプレキサ)との併用が可能な薬なのか双方の医師に確認を取って使うことが重要です。
最後の「オゼンピック」を紹介しているのは事件のあった「東京クリニック」ですので、処方の際は、違う病院に行かれた方が良いでしょう。
オランザピン(ジプレキサ)の離脱症状と減薬方法
オランザピン(ジプレキサ)で離脱症状が起こることがあり、2週間ほどで収まっていくことが多いとされています。
オランザピン(ジプレキサ)の離脱症状では抗コリン作用による離脱症状が比較的起こりやすいとされていて減量していく際には少しずつ行っていく必要があります。
オランザピン(ジプレキサ)の運転への影響
統合失調症や双極性障害でも症状がコントロールできる状態であれば運転免許の取得は可能です(要診断書)。薬を服用しながらの運転は推奨されませんが、症状が安定していて、無理をしないことを条件に自己責任で運転しておられる方も多くいらっしゃいます。
オランザピン(ジプレキサ)の妊娠・授乳への影響
基本的に推奨されませんが、薬の説明は「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。」となっています。オランザピン(ジプレキサ)を中止すると病状が不安定になってしまう恐れがある場合は、「投薬を最小限に抑えながら継続する」ことが多いです。
統合失調症や双極性障害の場合は、減薬が症状の悪化を招くリスクもありますので、服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいという判断をされることが多いようです。
妊娠中のリスク:奇形のリスクに関しての報告はありません
授乳中のリスク:血中濃度の0.46倍が母乳に移行する(乳児に影響があったとの報告はありません。妊娠中に体内で移行する量と比較すると格段に少ないため(1~10%以下)、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性は少ないと考えられます。)
海外の妊娠と授乳に関する基準
オランザピン(ジプレキサ)は海外の妊娠と授乳に関する評価では以下のようになっています。
海外の「FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準」では妊娠への影響は5段階中の3で「危険性を否定することができない」に分類されています。
「Hale授乳危険度分類では授乳への影響」では5段階中の2で「比較的安全」に分類されています。
オランザピン(ジプレキサ)の作用機序
オランザピン(ジプレキサ)の薬効は大きく分けて「ドーパミン」「セロトニン」という2つの物質が関係してきます。下記のような症状を調整するのがオランザピン(ジプレキサ)の役割になります。
中脳辺縁系:幻聴や妄想などの陽性症状がドーパミンの過剰で起こる
中脳皮質系:感情鈍麻や意欲減退などの陰性症状がドーパミンの不足で起こる
黒質線条体:パーキンソン症状やジストニアがドーパミンの不足で起こる
視床下部下垂体系:生理不順や性機能低下といった高プロラクチン血症がドーパミンの不足で起こる
ドーパミンを全体的にブロックしてしまうと、他の部分では必要なドパミンの働きが抑えられてしまい、上記のような副作用が起こるため、ドパミンを抑制する働きのあるセロトニンを抑えることによって中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待できます。
ドーパミンに対する作用
オランザピン(ジプレキサ)は、「D2受容体遮断薬(アンタゴニスト)」として機能します。ドーパミンD2受容体は、ドーパミンによって活性化され、運動の調節や意欲、学習などの情報伝達に関与しています。脳内のドーパミンが不足するとパーキンソン病が発症し、逆に過剰になると統合失調症の原因になるとされています。統合失調症の治療薬は、ドーパミンD2受容体に結合してその活性を抑えることで効果を発揮します。
こちらも参考に:場面緘黙とは?症状や治療方法・仕事選び
非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)とは?
非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬と比べて副作用が比較的少ないとされています。定型抗精神病薬は主に脳内のドパミンを抑制することで効果を発揮しますが、非定型抗精神病薬はドパミンだけでなく、セロトニンなど他の神経伝達物質も抑制し、総合的に作用します。この違いが、副作用の差につながっています。
参考:非定型抗精神病薬について
セロトニンに対する作用
オランザピン(ジプレキサ)はセロトニンに対して、「セロトニン2A受容体の遮断作用」と「セロトニン2C受容体の遮断作用」という2つの働きをします。
セロトニン2A受容体をブロック:中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを間接的に強めます。これがジプレキサでの陰性症状の改善や副作用の軽減につながります。
セロトニン2C受容体をブロック:食欲増加などの副作用に関係する。
抗うつ剤の作用ポイントであるセロトニン1A受容体に対しては、ジプレキサはほとんど作用が認められないため、うつ状態に対するエビデンスは少ない。
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オランザピン(ジプレキサ)のまとめ
統合失調症や双極性障害の治療において、アメリカ国内で最も多く使用されている良い薬ですが、副作用とリスクが多く存在するため、適切な投与量と継続的な医療監視が必要です。特に高用量や長期間にわたる使用は、生活習慣病のリスクを増大させます。オランザピン(ジプレキサ)の効果は個人によって異なる為、定期的な医師の診察と健康モニタリングが重要です。
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