朝起きれない病気と対処法
朝起きれない原因について
睡眠外来で診察を行う中で、よく見られる医学的な原因には、睡眠の問題、生活習慣の影響、こころの病気、起立性調節障害、低血圧などがあります。
また、発達障害による脳の過活動が睡眠に影響し、起床困難の理由になることもあります。複数の要因が重なって起床困難を引き起こしている場合もありますので、あなたの状況に該当するものがないかチェックしてみてください。
人間の体内時計は約24.2時間のリズムで動いていると言われています。光や食事によって毎朝リセットされ、24時間のリズムに調整されています。このリセットがうまくいかないと、朝起きられなくなります。
体内時計のリセットがうまくいかない原因には大きく分けて以下の3つがあります。
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朝が起きれない3つの原因
病気
過眠症や双極性障害のうつ状態、発達障害などが原因で日中の眠気が強まることがあります。
起立性調節障害では、血圧が低下して脳循環に影響し、めまいや立ちくらみが起きて朝起き上がれません。
リズムの乱れ
夜勤などで生活リズムが乱れていると、朝起きるのが難しくなります。
日中にお昼寝をしてしまい、睡眠リズムが崩れていることも原因の一つです。
体内時計が長い
体内時計の長さは人によって異なります。体内時計が長い人は、毎朝大きな調整が必要となり、なかなか起きることができません。いわゆるロングスリーパーです。
これらの要因を理解し、自分の状況に合った対処法を見つけることで、朝の起床が楽になるかもしれません。
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体内時計とメラトニン
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睡眠障害の一覧
朝起きれない要因として、睡眠時間が足りているのか、睡眠リズムが整っているのか、そして、睡眠の質に異常はないのかに注目して考えてみましょう。
ポイント
- 睡眠時間が足りていますか?
- 睡眠・覚醒のリズムリズムが整っていますか?
- 睡眠の質に異常はないですか?
睡眠不足
毎日夜遅くに寝ると、翌朝は深い眠りの状態にあるため、目覚まし時計に反応せず、布団から出られません。普段から睡眠時間が短い生活を送っていると、朝起きるのが難しくなります。寝不足が起床困難の大きな原因になります。
参考:睡眠不足症候群。寝不足の症状と身体への影響について
睡眠相後退症候群
脳内にある体内時計は、私たちの睡眠と覚醒のリズムを調整していますが、夜に光刺激を受けると体内時計が遅れ、就寝と起床時間が後退します。
これにより、宵っ張りの朝寝坊のパターンとなり、夜は元気で活動できることが多いですが、目覚まし時計に反応せず、朝は起きられなくなります。
寝る前にスマホを見たり、深夜までオンラインゲームやSNSに没頭していて子どもの頃から夜更かしをしていると、睡眠リズムが遅くなります。
大人になってもその習慣が続くことがあり、これがひどくなると、昼夜逆転の生活リズムになってしまいます。
【参考記事】
睡眠相後退型の睡眠リズム障害:よくある原因、症状と対処法について。
自閉スペクトラム症と睡眠障害:起床困難、睡眠リズムの問題が起きやすいです。
スマホ依存と睡眠障害:不登校、テレワークとの関係について
閉塞型睡眠時無呼吸
睡眠呼吸障害によって睡眠が分断されると、睡眠の質が悪化します。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、上気道が閉塞して無呼吸や低呼吸状態になる症状で、睡眠時無呼吸症候群の原因の95%を占めています。
肥満、顎の形態、扁桃肥大などの原因で上気道が閉塞すると、眠っている間に呼吸が止まり、度重なる覚醒が生じてしまいます。
このため、睡眠が浅くなり、朝起きられない症状や日中の眠気が現れます。朝起きられないのは、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が原因かもしれません。
参考:「睡眠時無呼吸症候群」原因と主な症状、治療法について。
参考:フラッシュバック
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その他の睡眠障害
夜眠っているときに脚がピクッと動く「周期性四肢運動障害」や、激しい寝言や夢の内容に反応して体を動かしてしまう「レム睡眠行動障害」があると、眠りの質が低下します。これが原因で、ぐっすり眠れず朝起きられないことがあります。
また、小さい頃から睡眠時間が長い「ロングスリーパー」の体質の人は、睡眠不足になりやすく、前日の夜に早めに寝ないと翌朝起きられないことがあります。
女性では更年期による睡眠への影響、高齢者では認知症に伴う睡眠障害も、朝起きられない原因になります。
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参考:境界性パーソナリティ障害とは?
薬の副作用
不眠症の治療のために、睡眠薬を服用されている方の中には、長時間作用型のものを処方されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長時間作用型の睡眠薬は、効果が長く持続するため、夜中に目が覚めにくくなるというメリットがあります。しかし、その反面、朝まで薬の効果が続いてしまうというデメリットもあります。
長時間作用型睡眠薬の主な副作用
- 朝まで続く眠気:起床後も眠気が残り、日常生活に支障をきたすことがあります。
- 倦怠感:朝から体がだるく、集中力が低下することがあります。
- ふらつき:薬の影響でふらつき、転倒する危険性があります。
- 記憶障害:前日の記憶が曖昧になることがあります。
長時間作用型睡眠薬を服用する際の注意点
- 服用量を守ること:医師の指示に従い、決められた量を守って服用しましょう。
- 服用時間を守ること:一般的には、寝る直前に服用するように指示されます。
- アルコールを控えること:アルコールは睡眠薬の効果を強めるため、服用中は控えるようにしましょう。
- 車の運転や機械の操作を控えること:睡眠薬の影響で、注意力や判断力が低下することがあります。
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低血圧
朝が苦手で午前の仕事が捗らない人の中には、低血圧が原因の場合があります。最高血圧が100mmHg以下が目安です。低血圧の人は、普段から疲れやすく、食欲がなく、立ちくらみが多く、朝スッキリ起きられないといった症状が出ます。脳への血流が不十分になることがあり、女性の場合、貧血が合併すると症状がさらに悪化します。
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起立性調節障害
起立性調節障害は、自律神経の働きが悪くなり、立ち上がったときに血圧が上がらず、体や脳への血流が低下する病気です。このため、朝起きられない、朝の食欲不振、全身のだるさ、頭痛、立ちくらみなどの症状が現れます。特に午前中に症状が強く、午後になると回復することが多いです。
この病気は、小学校の高学年から中学校の思春期の子どもによく見られますが、成人でも発症することがあります。症状が続くと、徐々に夜型の生活になり、概日リズム睡眠覚醒障害を併発することもあります。朝起きられないために不登校になるケースも多く知られています。
学校の先生や職場の上司に事情を説明し、病気について理解してもらうことも重要です。
参考:起立性調節障害。病気の特徴と対処法について。
ストレス
職場や学校での人間関係やさまざまなプレッシャーがあると、眠っているときにも緊張が続き、目が冴えてしまいます。その結果、夜遅くまで寝付けない、眠りが浅いといった症状が現れ、朝起きられず目覚めが悪くなります。
このような状態が続くと、環境の変化に順応できずに長期間強いストレスを受けることになります。これにより、抑うつ、不眠、起床困難、やる気が出ないなどの症状が現れる「適応障害」という病気になることがあります。
過度の負担が原因で、適応障害による睡眠障害が起こると、夜遅くまで寝付けず、眠りが浅いため朝の目覚めが悪くなります。このような症状が続く場合は、適切な対応が必要です。
参考:ストレス。よくある原因と身体への影響について。
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参考:医師の意見書とは?
うつ病
参考:冬季うつと睡眠。抑うつ気分、過眠、過食の特徴を有する精神の病気について。
朝起きれない症状の対策
もし何らかの病気が背景にある場合は、その治療が必要です。しかし、生活習慣を見直して朝起きられるようにする方法もあります。体内時計のリズムをリセットし、太陽のリズムに合わせることが大切です。
体内時計を整えるためのコツは、次の2つです。
- 起床時間を一定にすること
- 昼寝を30分以内にすること
毎日同じ時間に起きて、昼寝を短時間にすると、自然に夜になると眠気が出てきます。この自然な眠気を大切にして眠ると、生活リズムが整っていきます。
多くの人が早く寝ようと意識しますが、これは逆効果です。リズムに合わない時間に無理に寝ようとしても、なかなか寝付けません。実際、本来のリズムの1~2時間前はもっとも睡眠がとりにくいと言われています。小さいころ、遠足前に「明日は早いから早く寝よう」と思ってもなかなか眠れなかった経験があるのではないでしょうか?
ですから、眠る時間を気にしすぎず、起きる時間を大切にしましょう。
参考:TEACCH
起床時間を一定にする
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参考:精神障害者の障害等級
まとめ
しっかりとしたセルフケアを行っても、朝起きられない状況が続いている場合は、医師の診察が必要です。単に気持ちの問題と決めつけないことが重要です。医療機関の診察では、まずどんな睡眠の問題があるか、その原因を調べることから始まります。
睡眠障害が疑われる場合は睡眠外来を、こころの病気が影響している場合は精神科や心療内科を受診してください。