障害福祉サービスとは?
障害があることで日常生活や社会生活に困難を感じる方も多くいらっしゃり、そういった困難に対して手助けとなる福祉サービスを「障害福祉サービス」と呼びます。
障害福祉サービスを利用するには、受給者証を発行してもらう必要があります。たとえば、障がい者が社会参加や就労をするために、必要な知識や能力を養い、本人の適正に見合った職場への就労と定着を目指す「就労移行支援」に通所する場合でも、「障害福祉サービス受給者証」が必要となります。
障害福祉サービスには、大きく分けて、働くためのサポートである「訓練等給付」と、日常生活のサポートである「介護給付」の2種類があります。障害福祉サービスは、比較的成人に向けたサービスの数が多くなっていますが、ホームヘルプやショートステイなど子ども向けのサービスも存在します。
この記事では、それぞれの詳細や申請手続きの方法について解説します。
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障害福祉サービスの対象者はどのような人?
障害福祉サービスの対象者は法律のよって定められており、以下に該当する方々です。障害のある方に加えて難病のある方も一部対象です。
発達障害のある方も障害福祉サービスの対象となります。対象者には年齢制限などが設けられていませんが、後述する障害福祉サービス一覧においては、年齢や障害の種類に応じて利用できるサービスが異なります。
なお、難病に関する対象も特定の疾患に厳密に限定されているわけではなく、定期的な見直しが行われています。具体的な詳細については、厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
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障害福祉サービス利用に必要な受給者証とは?
障害者総合支援法や児童福祉法に基づいて運営をしている事業所の福祉サービスを受けるために、障害福祉サービス受給者証(以下、受給者証)を取得が必要になります。
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障害者手帳とは全くの別物で取得基準も異なるため、障害者手帳を持っていない方や取得が難しい方であっても、受給者証を取得できる可能性があります。ただし、障害者手帳をお持ちでない場合は、医師の診断が必要です。
受給者証には氏名・住所などの利用者の情報や受給者証の期限、支給決定期間、サービスを提供する事業所記載欄などがあります。障害者手帳とは違って、障害種別によって種類は分かれていません。
参考:障害者総合支援法とは?
参考:児童福祉法とは?
受給者証と障害者手帳の違い
受給者証と障害者手帳はしばしば似たものとして考えられがちですが、これらは全く異なるものであり、それぞれ異なる目的や発行機関が関与しています。
障害者手帳は、障害を抱える人が取得できる手帳全般を指します。自立と社会参加を促進する目的で都道府県が発行しています。
一方で、受給者証は障害福祉サービスを利用するために必要な証明書であり、発行機関は市区町村です。障害者手帳が取得できなかった場合でも、受給者証が発行される可能性がありますので、詳細については市区町村の担当窓口に相談してみてください。
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受給者証の見方
受給者証の外観やデザインは市区町村によって異なりますが、一般的にA3やA4サイズの紙を折り畳んだ形状や、カードサイズのものがあります。記載される事項は市区町村や受けるサービスによって変わりますが、一般的に以下の項目が含まれています。
・受給者証番号
・受給者の氏名、住所、性別、生年月日
・交付した市区町村名とその印
・障害支援区分
・認定有効期間
・サービスの種別
・支給決定内容(支給量、支給期間、事業所名など)
・利用者負担額
支給決定内容には、受けるサービスごとに具体的な情報が明示され、特記事項や支給期間中の変更に関する欄も設けられています。
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参考:障害者総合支援法とは?
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受給者証の「支給量」とは?
「支給量」とは、受給者が1ヶ月あたりに支援を利用できる日数を指します。これらの日数内で、サービス提供事業者から様々なサービスを受けることができます。複数の事業所を利用する場合は、利用日数を合計しても支給量を超えないように調整します。
支給量は、受給者証の申請時に提出される医師の意見書などを基に、自治体がサービスの種別ごとに判断します。例えば、就労移行支援の場合、原則として「当該月の日数から8日を控除した日数/月」(例:8月なら23日、9月なら22日)とされていますが、必要性が認められる場合は、支給量が増加することもあります。
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受給者証を取得するメリットやデメリットはあるの?
最大の利点は、障害福祉サービスを活用できる点です。障害福祉サービスには、自立した生活や社会参加のために様々なサービスが提供されており、これらを利用するには受給者証の取得が必要です。
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デメリットは特にありませんが、受給者証の交付には時間がかかります。自治体によって異なりますが、申請から証明書の発行までには通常1~2ヶ月ほどの期間がかかることが一般的です。
この期間は、申請後に受給者証を発行するために必要な認定調査やサービスの利用計画案の作成と提出、支給決定などの手続きを経ているためです。具体的な手順については後述します。
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障害福祉サービス受給者証の発行に必要なもの
障害福祉サービスの受給者証を申請する際に必要な主な書類は以下です。
また、利用者の状況や自治体によっては、収入を示す書類など、追加で必要なものがある場合があります。事前に電話で問い合わせたり、担当窓口を訪れて確認すると良いでしょう。
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障害福祉サービスの種類とは?訓練等給付と介護給付を紹介
障害福祉サービスで中心となるのが「訓練等給付」と「介護給付」です。その2つの中でもさらに多くの種類があって、サービス内容も異なっています。これから一つずつ紹介していきます。
訓練等給付
就労支援 | ・就労移行支援 ・就労定着支援 ・就労継続支援(A型・B型) |
自立訓練 | ・機能訓練 ・生活訓練 |
居住訓練 | ・自立生活援助 ・共同生活援助(グループホーム) |
介護給付
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【自立訓練】
・機能訓練
身体障害者が身体機能を維持または回復させるための障害福祉サービスであり、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションなどが提供されます。
・生活訓練
精神障害者と知的障害者を対象にした障害福祉サービスで、社会生活の能力向上を目的とした訓練が行われます。このサービスでは、事業所への通所や利用者の自宅への訪問を通じて訓練が提供されます。
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【就労支援】
就労移行支援
障害のある方が一般企業への就職を目指すための福祉サービスであり、必要な能力や知識を獲得するサポートが提供されます。就職後は通常、最初の6か月間は就労移行支援事業所からの定着支援が受けられ、その後は「就労定着支援事業所」と契約して最大3年間の定着支援が可能です。
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就労定着支援
就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)を活用して就職した方に提供される障害福祉サービスで、利用者が働き続けるためのサポートが行われます。利用者の生活や仕事に関する悩みに対する相談や解決策の提案、企業との連携による働きやすい環境の整備などが含まれます。サービスは就職後6ヶ月以降から利用可能で、利用期間は3年間です。
就労継続支援(A型・B型)
一般企業への即時の就職が難しい状況の方に提供される障害福祉サービスで、就労や生産活動の機会を提供し、能力や知識の向上を促進します。A型とB型の2つのタイプがあり、いずれも利用期間に制限はありません。
- 就労継続支援A型: 雇用型で、利用者は事業所と雇用契約を結びます。労働基準法や最低賃金が適用され、給料が支給されます。一般企業への就職を目指す支援が提供されます。
- 就労継続支援B型: 非雇用型で、利用者は事業所と雇用契約を結ばず、「工賃」が支給されます。就労移行支援やA型への移行、一般企業への就職へ向けたトレーニングが行われます。
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【居住支援】
自立生活援助
障害者支援施設などを利用した後、一人での生活を望む方に対して提供されるサービスで、自立した生活をサポートします。定期的に利用者の自宅を訪れ、必要な助言や支援を行います。
共同生活援助(グループホーム)
障害のある方が共同で生活し、世話人などから生活の支援を受けることができるサービスです。共同生活を営みながら、食事の提供、入浴、排泄、金銭管理、健康管理、緊急時の対応など、様々な面で支援が行われます。
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介護給付とは?
介護給付とは日常生活で必要な介護支援を提供するサービスになっています。自宅での介護の支援や行動の援助などのサービスがあります。
【訪問】
居宅介護(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーが介護が必要な方の自宅に訪れて行うサービスで、日常生活の中での困難な事柄に対して援助を行います。主なサービスには、「身体介護」「家事援助」「通院等介助」「通院等乗降介助」が含まれています。
重度訪問介護
ホームヘルパーが、重度の障害を抱える方の自宅へ出向いて支援を提供するサービスです。居宅介護との違いは、入院時のサポートも含まれる点です。
参考:重度訪問介護とは?
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同行援護
視覚障害のある方が外出する際に、情報提供や同行を行うサービスです。移動のサポートや排泄・食事の介護、役所や病院での代筆・代読、危険回避のための援助などが含まれます。日常生活での買い物や通院、公的機関への外出、余暇活動などが対象です。
行動援護
知的障害や精神障害があり、行動時に介護が必要な方に対して、危険回避の援護を行うサービスです。行動や感情のコントロールが難しい場合に、外出時の介護を提供します。
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重度障害者等包括支援
重度の障害を抱え、複数の種類の支援が必要な方に対して、包括的なサービスを提供します。居宅介護や行動援護など、様々なサービスを継続的に提供します。
【日中活動】
短期入所(ショートステイ)
介護者が不在となる際に、介護を必要とする方を一時的に施設で預かり、介護や支援を提供する事業所のことです。障害のある方だけでなく、介護者の家族などにとっても負担を軽減する手段となります。
療養介護
医療機関に入院し、食事や排せつの介助だけでなく、医療行為も提供するサービスです。長期の入院や常時の介護が必要な方が対象となります。
生活介護
支援施設に通所し、日常生活上のサポートを受けるとともに、創作的な活動や生産活動を行うサービスです。手芸やパンの製造などを通じて、社会生活への参加意欲などを高めることが目的とされています。
【施設】
施設入所支援
日中に自立訓練や就労移行支援を利用している方に対し、夜間の支援を提供するサービスです。施設に入居し、主に夜間の入浴や排せつ、食事などの介助を行います。
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障害福祉サービスの申請の流れ
介護給付の申請手続きについて詳しくご紹介いたします。 介護給付の利用手順を申請からサービス開始まで説明しています。※東京都の手続きを基にしています。
① 利用の申し込み・申請
障害のある方やその保護者は、利用を希望するサービスに関して、居住地の自治体の窓口や相談支援事業所で相談を行います。アドバイスや施設の見学を経て、利用を希望するサービスが確定したら、障害福祉サービスの利用申請を行います。
利用を希望する本人(または家族や代理人)が、指定の窓口で申請手続きを行います。受付窓口は通常、居住地の市区町村にある障害保健福祉課や障害福祉課などです。
スムーズな手続きのために、事前に必要書類を確認しておくことがおすすめです。
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② サービス等利用計画案の作成と提出
どの期間において、どのようなサービスを利用するかについての利用計画を作成します。計画案は本人が自ら作成することも可能ですが、難しい場合は通常、指定された相談支援事業所に作成を依頼することが一般的です。
③ 認定調査
心身の状況を包括的に判断するために、認定調査員が訪問して調査が行われます。
この調査では、約80項目にわたる障害者の心身の状況を詳細に把握するためのアセスメントや、介護者の状況、本人の日中の活動状況、居住状況などについてのインタビューが行われます。障害のある子どもについては、調査項目が一部異なる場合がありますのでご留意ください。
④ 障害支援区分の認定
提出された申請書類をもとに、申請した自治体の審査会がこれまでの状況を包括的に評価し、障害支援区分の認定が行われます。
⑤ サービス等利用計画案の提出
②で作成したサービス等利用計画案を、申請をした市区町村の窓口に提出しましょう。
⑥ 支給決定・受給者証の交付
審査会の意見、サービス等利用計画案等の内容をふまえて、支給決定が行われると、受給者証が交付になります。
⑦ サービス事業者と契約
利用したいサービスを提供する事業所を選んで、サービス利用契約を行います。
これで障害福祉サービスの利用が正式に開始されます。障害福祉サービス利用までの手続きには2か月程度かかる可能性があるので、検討されている方は早めに一度相談しに行くといいでしょう。
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障害福祉サービスの利用者負担
障害福祉サービスの利用には、利用者負担として料金が発生することがあります。
全額を支払うわけではなく、世帯の所得に基づいて4つの区分に分類され、それぞれの区分にはひと月の上限負担額が設定されています。したがって、上限額を超えることはありません。
以下は、4つの区分とそれぞれの負担上限額です。
1. 生活保護世帯: 負担額0円
2. 市町村税非課税世帯(おおむね世帯収入300万円以下): 負担額0円
3. 市町村税課税世帯で世帯収入おおむね670万円以下: 月負担上限9,300円
4. 上記以外の世帯: 月負担上限37,200円
参考:無料低額宿泊所とは?
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困ったときの窓口になる相談支援事業者とは?
障害福祉サービスにはさまざまな種類があり、その申請手続きは複雑です。一人で進めるのが難しい場合があるかもしれません。そんなときに頼りになるのが「相談支援事業者」です。
相談支援事業者では、障害に関する悩みや障害福祉サービスに関する相談ができます。二つのタイプがあり、「指定一般相談支援事業者」と「指定特定相談支援事業者」があり、それぞれ異なる役割を果たしています。
・指定一般相談支援事業者: 障害のある方から社会生活上の様々な困難に関する幅広い相談を受け付けています。
・指定特定相談支援事業者: 障害福祉サービスの利用に関する相談だけでなく、サービス等利用計画案の作成も行うことができます。
特定のサービスについて悩んでいる方は、一般相談支援事業者に相談すると良いでしょう。