大人の発達障害【ASD女性の特徴】女性特有の事例と対策6選

発達障害知的障害

ASD女性の生きづらさ

ASDは自閉症スペクトラム障害・アスペルガー症候群の総称で、以下の文章ではASDとして扱います。ASDは男性と女性の比率が 4:1 と言われており、圧倒的に男性が多いとされていますが、「生きづらさを抱えたまま、診断を受けていない隠れASD女性」も相当数いるのではないかと想定されています。ここではASD女性の生きづらさと原因、対策について書いていきます。

参考:ASDとは?

女性のASDの特徴

ASDも男児に比べて対人コミュニケーションの障害は一般的にASD男児よりも目立たず、大人になって二次障害が原因で診断される事も多いとされています。周囲の大人から見て目立たないため、放置されがちですが、本人は周囲との違いに強烈な違和感を抱えている事が多く日常生活に悩みが多いでしょう。

・寡黙で落ち着いている(キャピキャピしているのが苦手)

・過剰適応を起こしがち。擬態疲れで早く一人になりたい

・アニメキャラクターやアイドルなどが好きな人も多い

・メンズファッション、バンギャ系など個性的なファッションを好む。もしくは無頓着

・女性の場合、「ASD受動型」が多く流されやすい。断れない

・感覚が中性的。LGBTQと親和性が高い

・ASD優位タイプの場合、内向的なタイプの人がほとんど

・トラウマや二次障害を抱えがち

ASD女性(発達女性)の生きづらさについて具体的に例を挙げて説明して行きたいと思います。

1. 女性の輪の中に入りづらい

ADHD女性も共通ですが、発達女性は「極めて男性脳寄り」といわれており、共感や空気を読む事を重視する女性社会には馴染み辛い傾向があります。ガールズトークが苦手で女性のコミュニティでは浮いてしまうんですよね。女性からの悩み相談に対しても真剣に考えて、解決策を提示してしまうため、「共感してくれなくて冷たい」「変わった人」だと反感を買う事が数多くあります。

こちらも参考に:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介

発達女性本人は「目的のわからない会話」「オチの無い会話」の何が楽しいのか理解出来ませんし、時間の無駄と感じる事もあるでしょう。また、気が合うという理由で男性と話していると、女性から非難された経験がある方もいるのではないでしょうか?

女性のコミュニティは非常に複雑で空気を読む事が必須とされるため、思春期以降での人間関係では苦労する事が多いでしょう。

誤解が無いように言っておくと、発達女性は頭脳の構造とアプローチが定型女性と異なるだけで、基本的に親切で裏表の無い良い人が多いです。

こちらも参考に:軽度知的障害とは?診断基準や発達障害との関係。困りごとと対処法。受けられる福祉について

では、どうすれば定型女子に嫌われないのか、以下に対策を書いていきます。

発達女性が定型女性に悪く思われないための対策

相手を否定しない

とりあえず話を聞いているだけでもOKです。相手を否定せずにニコニコしていれば大丈夫なので、多少の慣れが必要でしょう。定型女性の中でも感覚が似ている人や付き合いやすい人とは個人的に交友を深めておきましょう。仲の良い人には自分の特性を話して負担にならないサポートをお願いしても良いと思います。

定型女性に恩を売る

少し雑な言い方になりますが、定型女性に「ある程度気を使ったり、恩を売っておく」と悪口を言われないというメリットがあります。具体的には仕事を代わったり、お菓子をあげるなどです。「変わった人だ」と感じても、自分に良くしてくれた人の事は悪く言えないものです。

男女問わず、合わない人と必要以上に仲良くする必要はありません。自分ができる範囲で少しずつ居場所を確保していく工夫が必要です。

2. 世間の考えている女性像を押し付けられる

ジェンダー平等と言われて久しいですが、男女平等に遅れを取る日本では、女性としての気遣いや振る舞いを強要される場面が多く存在します。

そういった環境で擬態が常態化しているASD女性は過剰適応を起こしやすく、気を遣いすぎて疲れ果ててしまいます。「早く一人になりたい」といった自分の心の声に耳を傾けることも時には必要でしょう。

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発達障害とLGBTQを併せ持つタブルマイノリティについて

また、発達障害はLGBTQとの親和性が高く、双方を併せ持つダブルマイノリティも多く存在します。

日本に住む「15人に一人は発達障害、13人に1人はLGBTQ」であり、両方を併せ持つダブルマイノリティーは発達障害の中で10%程度とされています。実際、筆者の周囲ではダブルマイノリティーの当事者は多く、比較的メジャーなものになってきたという実感があります。

参考:「発達障害とジェンダー」

女性像の押し付け対策について

正直言って余計なお世話なので、適当に付き合える範囲で付き合ってその場を離れるのが最適解かなぁと個人的には思っています。

自分たちもこうして来たから、下の世代にも強要しよう」という昭和の呪縛から解き放たれない人達に付き合う必要はないので、(ASDには難しいかもしれませんが)適当に流すことをおすすめします。

3. 表情が乏しく、感情表現が苦手

筆者の父方の家系はASDが強く、親族の写真は見事なまでに、全員無表情で固まっています。普段から表情が少ないためか表情筋がガチガチに固まり、どう笑ってよいか分からない時がありますね。

基本的にASDの人は表情が少なく、気を抜くと無表情になるため、不機嫌に見られたり、怖いという印象を持たれやすいです。ASD男性に比べてASD女性は多少マシと言われるようですが、定型発達者よりは表情が少ない印象ですね。

参考:ADHDの顔つきについてはこちら

ASDは「喜怒哀楽」の表現をすることに、人一倍「エネルギー」を使うため、定型発達者の表現方法とは異なります。定型発達者は辛い時は「辛い!」という表情や表現をしますが、表現に労力を要するASDが辛い時、表現そのものが出来なくなります。一つ一つの感情表現にエネルギーを使うため、反対にフリーズ(思考停止)してしまうのです。

端からみると、「無表情」「無反応」のように見えて、やる気がないのかと思われてしまいがちですが大きな誤解です。

また、表情が乏しいことは時に生命の危機につながります。

筆者は出産の際に「陣痛で痛い」事を伝えて入院しましたが、表情や体勢から痛さが伝わらなかったようで、「痛くないでしょ!」助産師に叱咤されて産まれる直前まで放置されていました。

演技をする気力も残っていなかったので仕方ないと感じますが、ASDは緊急の時ほど大袈裟に演技をしなくてはいけないと感じた出来事でした。

自分の特性を事前に説明しておきましょう

『無表情』は定型発達者にとっての「何も考えていない」反応だからこそ、最悪の形で誤解されてしまいます。上司や友人などには事前に自分なりの感情表現」がどのようなものなのを伝えておくことで誤解が少なくなります。

また、ASDは自身の感情や疲れに鈍感で急に電池切れするといった特徴もあります。無理をすると心身共に疲れ果ててしまうという事も自覚しておきましょう。

こちらも参考に:【発達障害 一人でできる仕事】職種、業務、職場環境など

4. 性被害に遭いやすい

ASD女性が性被害に遭いやすい理由は以下になります。

・言葉を文字通りに受け取るため、相手の悪意に気付けない

・距離感がバグっているため、初対面の男性にも好意があると誤解される

・ASD受動型の場合、Noと言えず押し切られてしまう

・大人しく見えがちなので、ターゲットになりやすい

多くの定型発達者は思春期あたりから何となく「性」を意識し始め、異性との関りや距離の取り方を身につけていきます。人間関係全般にある「曖昧な正解」が理解しづらいASD女子は異性との関係づくりに困り感を持っている場合も多く見受けられます。

ASD受動型女性は意見が言えず流されやすい

「ホテルでトランプをしよう。と誘われたので文字通り信じてついて行ってしまった」というのはASD受動型女性によくある話です。嫌だと思っても「No」と言えないため、性的被害のターゲットになりやすく、自己嫌悪に陥るパターンが後を断ちません。ASD女性は「過剰適応」する傾向があり、結果自分の「軸」が不明確になり流されやすくなります。また、「感情などの言語化の苦手さ」で「自己主張がしにくい」面があります。

また、発達女性全般に言えることですが、周囲との違いや失敗から自己肯定感が低く、「こんな自分を受け入れてくれた」と感じ、望まない性行為を行ってしまう事がよくあります。

これは「自傷行為」の一種で、摂食障害やリストカットなど、自分を傷つけることで安定剤の役割を果たすとされています。本人が認識することの難しい「心の問題」を、痛みとして認識しやすい「身体の問題」に置き換えることで不快感情を軽減しているとも言えます。

性被害の対策について

性被害を報告すると「自分に落ち度があったんじゃないの?」と言われてしまう当事者は少なくないと思います。警察にそのような対応をされたり、筆者の場合は親がそのパターンだったので、「メンタルを抉られてまで相談したくない」気持ちもよく解ります。

そういった場合は「性被害専門のカウンセリング」を利用してみてください。

【性暴力被害】少ない負担でカウンセリングを受ける方法。THYME運営が実際に利用した窓口も紹介。では、チャットなどのオンライン機能も充実しており、不安に寄り添ってくれるでしょう。

あとは、予防策として、アスピーガールの心と体を守る性のルールの書籍がオススメできます。

ASDの女性の場合、相手との体の距離が近すぎる(ボディタッチを気軽にしてしまうなど)、知り合って間もなくても親しく接しすぎてしまうなど心の距離が近すぎてしまうために、異性に「この人は自分に好意があるのだ」と誤解されてしまうことがあります。

アスピーガールは海外書籍の翻訳ですが、上記のような事例を解りやすく解説してくれていて納得できました。

5. マルチタスクの苦手さで家事や育児に支障が出る

発達障害ママの中では夕飯で悩む方が多くいらっしゃいます。

例えば、「お味噌汁をかつおぶしを削るところからやって疲れ果ててしまい、夕飯がお味噌汁だけになった」だとか、「スーパーで悩み過ぎてしまい、3周回ったが何も買っていなくて困った」といった声です。

料理や買い物というのは実はマルチタスクで「同時進行で物事を進める力」「目標の到達度を予想しながら作業の効率化を図る力」などが必要なのですが、「最終的にどんな状態になれば ”完成” と言えるのかがわからず戸惑う」という声もよく聞きます。

ASDの場合、「完璧を求めすぎず手を抜いても良い妥協点を探しておく」というのがとても苦手なのです。

夕飯対策方法

家事・育児がテーマだとあまりにも広すぎるので、今回は「夕飯」だけに絞ってお伝えしようと思います。

① ミールキットを使用する

Oisixやヨシケイなど、生食から冷凍タイプまで充実しています。キットを開封して盛り付けるだけの簡単なものも多いので、価格は張りますが試してみると良いと思います。

② ヘルシオ ホットクック

入れておくだけで料理が完成するミラクルボックスです。材料のミールキットもついているので食材をカットするサイズに悩むことなく夕飯が完成します。

③ 在宅介護を頼む

家庭にホームヘルパーを派遣してもらい、夕飯を一緒に作るサービスが利用できます。障害者手帳を持っていた方が有利ですが、無くても利用自体は可能なようです。

詳しくは精神障害者居宅生活支援事業の実施についてをご覧ください。

①と②は金銭に多少余裕がある人向けですが、③は所得によって利用料が変わってくるので上記URLから確認してみてください。

6. 毒親の影響を受けやすい

発達障害の遺伝は8割程度の確率で遺伝すると言われており、「自分が発達障害であれば、親も当然発達障害」です。発達障害者は家事・育児に苦手を抱えやすく、精神疾患を引き起こすことも多いため家庭環境に恵まれないケースが多いのです。また、発達特性から来る「こだわり」や「厳格さ」を押し付けられて苦しむケースもあります。

特にASD女性は受動型が多く、「人のいいなりになりやすい」ので親が間違ったことを言っていても反抗できない場合が多く、親の影響を受けやすいと言えるでしょう。

毒親には「否定タイプ、過干渉タイプ・過保護タイプ、無関心タイプ、嫉妬タイプ…」などがあり、筆者は両親揃って「否定&過干渉」の「子供を自分の思い通りにしたい。自慢したい」タイプの親でした。発達障害者の親の話を聞いていると 過干渉 or 無関心 の大きく分けて2つに分かれる気がしています。不思議なことに親の傾向も似てくるのですよね。

毒親対策

「距離を置く」以外に無いと思っていますね。身内に対しては特性全開で来るので、大きめに拒否反応をしてもよいと思います。

過干渉タイプの親の場合は、いらない服やおもちゃを大量に押し付けてきたりしますが、はっきり「置き場所がなくて迷惑!」と伝えましょう。言っても買ってくるので、捨てるor 売るなどでも大丈夫です。

ASDの二次障害について

発達障害の二次障害と呼ばれる疾患や症状は、大きく分けて「内在化障害」と「外在化障害」の二つがあります。個人によって異なる発達障害の重症度、ストレス環境や周りの状況により、二次障害の発症の仕方や症状も変わってくるという特徴があります。

内在化障害と外在化障害の区分

疾患・症状
内在化障害うつ病、抑うつ状態
適応障害
不安障害
強迫性障害
依存症
心身症、自律神経失調症
不登校、引きこもり
対人恐怖症
慢性的な意欲低下
自己肯定感の低下
外在化障害反抗挑戦性障害
行為障害
暴力、暴言
家出
イライラ
感情不安定、自傷
他者に対する敵意、攻撃性
非行などの反社会的な行動

簡単に言えば「内在化障害」は「自分に対する苛立ちや精神的な葛藤が自分に向けて表現されること」で、「外在化障害」は「他者にたいして影響を及ぼすような行動面での問題」を意味します。

発達障害者が二次障害を起こした場合は、同じ病気や症状でも定型発達者とは治療法が異なってきます。

医療機関や支援機関などを利用し、専門家によるサポートを受けながら周囲の人は環境調整をし、当事者は日常生活における対処法を学ぶことが大切でしょう。

参考:内在化障害について

参考:外在化障害について

女性ASD早期発見の必要性

ASD女性の早期発見の必要性は、本人の心の負担を減らしたり、二次障害を防ぐことに役立ちます。学童期から、不登校や抑うつとして症状が出る場合が多く、母親になっても養育困難感を持っているため、一時的でなく、継続的に保護者への支援が必要であることが明らかになっています

ASD女性は、ライフステージごとに変化する課題をもつため一時期の支援だけでなく、成人しても継続
的に相談できる専門家、専門機関が近隣に必要であるとされています。今後はさらにASD女性が理解され、適切な支援が受けられて関心がもたれることが望まれています。

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