就労継続支援B型(非雇用型)とは?就労継続支援A型との違い。平均工賃や仕事内容もご紹介

就労継続支援B型 制度

就労継続支援B型

就労継続支援B型とは?

就労継続支援B型は、障害や難病、年齢や体力の制約から一般企業での雇用が難しい方に対して、就労や生産活動の場を提供する障害福祉サービスです。

一般企業で働く前に安心できる環境からスタートしたい、自分のペースを大切にしながら無理なく社会復帰を目指したいと考える方が主に利用しています。

このサービスを利用することで、自宅やクリニック以外にも居場所ができ、生活リズムを整えながら自分に合った仕事に取り組むことができます。

また、就労のために必要な知識や能力向上の訓練を受けることができ、生産活動に対する対価として「工賃」を受け取ることも可能です。知識や能力が向上した方は、将来的に就労継続支援A型や一般就労への移行を目指すこともあります。

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就労継続支援B型で働くことのメリットは?

就労継続支援B型の最大のメリットは、雇用契約を結ばないため、自由な働き方ができる点です。利用者は体調や精神面を優先し、「一時間だけ働く」「週に1日だけ働く」といった無理のないペースで働くことが可能です。

短時間の利用からスタートし、徐々に作業日数や時間を増やしていくことで、身体を慣らしながら目標に近づいていけるのも大きな利点です。

ただし、雇用契約がないため、最低賃金以上の工賃が保証されないことがデメリットになる場合もありますが、工賃を目的とするのではなく、自立した生活を送るためのトレーニングの場と捉えることで、将来的に一般企業への就職や就労継続支援A型事業所へのステップアップを目指すことができます。

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就労継続支援A型との違いは?

就労継続支援B型では、一般企業とは異なり雇用契約を結ばないため、労働関係の法令が適用されません。

このため、事業所内では自分らしく過ごしやすく、調子の良いときに仕事に取り組んだり、気分が乗らないときには読書など好きなことに取り組むことができます。

また、就職前に特定のスキルや知識を求められる一般企業とは違い、就労継続支援B型ではスキルや知識がなくても問題ありません。興味のある仕事にはサポートを受けながら取り組むことができ、実践を通じてビジネススキルやコミュニケーションマナーを学ぶ機会も提供されます。

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一方、就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働ける方を対象にしたサービスで、最低賃金が保証されます。利用にあたっては、書類選考や面接が必要となる場合がありますが、就労継続支援B型は、障害福祉サービス受給者証があれば、希望する事業所に空きがある場合に利用することが可能となります。

就労に関する障害福祉サービスには、「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「就労移行支援」の3種類があります。以下の表は、それぞれのサービスの特徴をまとめたものです。各サービスの概要を把握するための参考にしていただければ幸いです。

サービス名 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
利用期間 原則2年 なし なし
目的 就職に必要なスキルを身につける 働く場所を提供する 働く場所を提供する
対象者 一般企業への就職を希望する方 現時点で一般企業への就職が困難、または不安な方 現時点で一般企業への就職が困難、または不安な方
雇用契約 なし あり なし
賃金 一部事業所を除きなし あり/平均月収約7万円 あり/平均月収約1.5万円
年齢制限 65歳未満 なし なし
利用料金 前年度世帯収入による 前年度世帯収入による 前年度世帯収入による

 

就労継続支援B型の対象者

就労継続支援B型とは、障害のある方が、その方の障害の特性や希望に応じて、生産活動を通して社会参加や自立を促進するための障害福祉サービスです。

利用できる方は、以下のいずれかに該当する方です。

  • 就労経験があり、年齢や体力の面で、一般企業に雇用されることが困難になった方
  • 50歳以上の方、または障害基礎年金1級を受給している方
  • 就労移行支援事業所などによるアセスメントにより、就労面の課題が把握されており、かつ就労継続支援B型事業所を利用するほうが適切だと判断された方
  • 特別支援学校に通う学生が、卒業後すぐに就労継続支援B型の利用を検討している場合には、在学中に就労移行支援事業者などによるアセスメントを受ける必要があります。
  • 障害者支援施設に入所する方については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画の作成の手続きを経た上で、市区町村が利用の組み合わせの必要性を認めた方

 

具体的には、以下のような方が利用しています。

障害者手帳は必須ではありません。医師の診断があれば、手帳をお持ちでない方も利用できる可能性があります。

利用条件については、お住まいの自治体によって異なるため、自分が対象になるかどうかは相談窓口(障害福祉窓口など)に相談するようにしましょう。

2025年10月からは、就労選択支援という制度が開始されます。この制度を利用することで、より自分に合った就労支援を受けることができます。

就労継続支援B型は、障害のある方が、それぞれのペースで社会参加できるよう、様々な支援を行っています。

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就労継続支援B型の作業内容・工賃(給料)

就労継続支援B型ではどのような作業を行い、どの程度の工賃がもらえるのかについて紹介します。

就労継続支援B型の作業内容

就労継続支援B型で行われる仕事は「生産活動」と呼ばれ、その内容は事業所によってさまざまです。パンやお菓子の製造、手工芸品の制作、農作業、清掃業務、袋詰めや値札付け、簡単なパソコン入力、製品の梱包や発送作業などが一般的な例です。

一方で、最近ではパソコンを使ったデータ入力や、アニメ・マンガ制作、動画編集といったサブカルチャーに特化した作業を提供する事業所も増えてきています。また、事業所が運営するカフェやレストランでの接客や調理、工場でのパッキングやピッキングなども行われています。

どのような仕事が提供されるか、在宅勤務が可能かなどは事業所によって異なるため、具体的な内容については事業所に問い合わせて確認することが大切です。

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勤務時間や勤務日数

就労継続支援B型では、雇用契約を結ばないため、勤務日数や作業時間は事業所の方針や本人の希望に応じて柔軟に調整できます。

たとえば、1日数時間だけ働いてその後は自由に過ごしたり、帰宅することも可能です。また、1日3時間×週3日で働く方や、1日5時間×週5日で働く方など、勤務時間は個々の状況に応じてさまざまです。

中には「週1回、短時間の利用からでも可能」とする事業所もあり、慣れてきたら徐々に勤務時間を増やすこともできます。体調が悪いときは療養のためにしばらく休むこともできるため、無理なく自分のペースで働ける環境が整っています。

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就労継続支援B型の工賃(給料)について

就労継続支援B型では、雇用契約を結ばないため給料の代わりに「工賃」が支払われます。工賃は、生産活動に対する対価であり、仕事内容や仕事量によって異なります。たくさんの作業を行えば工賃も増えますが、作業量が少なければ支給される工賃も少なくなります。

工賃の支払い方法は事業所によって異なり、作業の出来高に応じて支払われる歩合制のところもあれば、「1日いくら」と定額で支払う事業所もあります。

厚生労働省の令和3年度の調査によると、就労継続支援B型事業所の平均月額工賃は約14,393円、時給に換算すると平均233円です。

参考として、以下、地域別の平均工賃はこのようになっています。

東京:15,563円
福岡:14,691円
北海道:19,523円
沖縄:16,016円

ただし、工賃は地域や作業内容、勤務時間などによって異なるため、上記はあくまで参考となります。

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就労継続支援B型の利用期間と利用料

就労継続支援B型の利用期間と利用料を下記で説明していきます。

就労継続支援B型の利用期間

就労継続支援B型の利用には期間の制限がなく、受給者証に記載された期限を迎える前に更新すれば、継続して利用することができます。

自分の病気や障害の状況に応じて、自分のペースでゆっくりと就労訓練を続けることが可能です。

また、A型事業所や一般企業への就職を理由に利用を一旦中止しても、いつでも再開することができ、年齢制限もないため、中長期にわたって利用することができます。

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就労継続支援B型の利用料

就労継続支援B型の利用に関する費用負担について

就労継続支援B型は「福祉的就労」の場であり、障害福祉サービスを受ける場所でもあります。そのため、世帯所得に応じて障害福祉サービスの利用料が発生する場合があります。

この利用料は、世帯所得に基づいて月ごとの上限額が設定されており、「負担上限月額」と呼ばれます。利用者が支払う金額は、利用したサービス量にかかわらず、この上限額を超えることはありません。

世帯所得による負担上限額の区分

区分 世帯の収入状況 負担上限額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 (注1) 0円
一般① 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)(注2)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く(注3)
9,300円
一般② 上記以外の世帯 37,200円

注釈

  • 注1: 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象
  • 注2: 収入が概ね600万円以下の世帯が対象
  • 注3: 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般②」となる

世帯の範囲(所得判断の際)

種別 世帯の範囲
18歳以上の障害者 (施設に入所する18、19歳を除く) 障害のある方とその配偶者
障害児 (施設に入所する18,19歳を含む) 保護者の属する住民基本台帳での世帯

負担額の概要

就労継続支援B型の利用にかかる自己負担額は全体の約1割で、残りの9割は市区町村が補助金で負担します。例えば、元の利用料金が1万円の場合、利用者の負担は1,000円程度になります。

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就労継続支援B型事業所の選び方

就労継続支援B型事業所の利用を検討する時は、自分に合った事業所を選ぶために押さえておきたいポイントがいくつかありますのでご紹介します。

 

作業内容

就労継続支援B型事業所では、作業内容が多岐にわたります。パソコンを使う作業や、お菓子作り、箱詰め、シール貼りといった軽作業、さらには清掃業務や農作業のように身体を動かす仕事もあります。

事業所を選ぶ際には、提供されるプログラムや活動内容が利用者の興味や能力に合っているか、無理なく続けられるかを確認することが重要です。多くの事業所では、見学や体験の機会が用意されているため、実際に試してみることで自分に適した作業を見つけやすくなります。

特に、特定の職種や分野に関心がある場合は、それに関連したプログラムが提供されているかどうかを確認するとよいでしょう。多様な活動が用意されている事業所であれば、利用者が自分に合ったものを選ぶことが可能です。

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事業所の支援方針や雰囲気など

就労継続支援B型事業所は、支援方針や雰囲気が事業所ごとに異なります。スキルアップに力を入れている事業所もあれば、心身共に無理なく働き続けることを重視している事業所もあります。また、事業所の雰囲気も多様で、明るく元気な雰囲気の事業所や、落ち着いて作業を進める方針の事業所などがあります。

作業内容や支援方針だけでなく、事業所の雰囲気が自分に合っているかを確認することが重要です。利用者同士やスタッフの様子、サポート体制が自分の性格や働き方に合わない場合、ストレスを感じることもあります。そのため、事業所を選ぶ際には、「自分が就労継続支援B型に通う目的と合っているか?」という視点を持ち、見学や体験を通じて、実際に自分が無理なく利用できるかどうかをしっかりと確認すると良いでしょう。

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働き方、工賃など

就労継続支援B型の工賃は事業所によって大きく異なります。厚生労働省が公表した令和3年度の全国平均工賃は「月16,507円」ですが、実際には事業所ごとに大きな差があります。

工賃の高さだけで事業所を選ぶべきではありませんが、工賃があまりにも低いと、長く続けるモチベーションに影響することも考えられます。

そのため、事業所を選ぶ際には、自分が何を重要視するかを考え、工賃も重要な要素であれば、事前に確認しておくと良いでしょう。

また、経済的な支援として、自立支援医療や障害年金、生活保護などの制度も利用できる場合があるため、自分が該当するかどうか確認しておくことをお勧めします。

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事業所までのアクセスについて

事業所までのアクセスは、利用を続ける上で非常に重要なポイントです。作業内容や雰囲気が良くても、遠すぎる事業所だと、時間的にも体力的にも負担が大きくなってしまいます。週に何回利用するかによっても影響が異なるため、交通費や往復の負担も含めてしっかり確認しておくことが大切です。

また、自治体によっては交通費の一部を助成してくれる場合や、事業所によっては交通費の支給や送迎サポートがあることもありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。

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就労継続支援B型の利用手続きについて

就労継続支援B型の利用を検討する際には、まず主治医に相談してみると良いでしょう。利用に向けたアドバイスや、自分に適した仕事についての助言を受けられるかもしれません。

利用開始までの一般的な流れは以下の通りです。

 

  1. 主治医に相談して、B型利用についての許可やアドバイスをもらう。
  2. 利用したい事業所を探す。
  3. お住まいの地域の障害福祉窓口で利用申請を行い、「サービス等利用計画書」を作成して提出する。
  4. 受給者証(障害福祉サービス受給者証)が発行される。
  5. 事業所と契約を結び、利用を開始する。

 

それぞれのステップで必要な対応を確認しながら進めることが大切です。

主治医に相談して、B型利用についての許可やアドバイスをもらう。

事業所を探し始める前に、まずは主治医に就労継続支援B型の利用が適切かどうか確認してもらう必要があります。就労継続支援B型の利用を検討していることを伝え、主治医の判断を仰ぎましょう。

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事業所と契約を結び、利用を開始する

必要書類を提出し、障害福祉サービスの利用が認められると、自治体から『障害福祉サービス受給者証』が発行されます。受給者証が交付されたら、希望する事業所と契約を結び、就労継続支援B型の利用を開始することができます。

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まとめ

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばず、自分のペースで働ける障害福祉サービスで、多くの方に利用されています。事業所によって仕事内容や雰囲気が異なるため、事前に見学や体験を通じて、自分に合った環境かどうかを確認することが重要です。利用者が多いことから、事業所も豊富にあり、選択肢が広がっています。1つの事業所が合わないと感じた場合でも、別の事業所を見学してみるのがおすすめです。

また、医療機関に通院している場合は、主治医に現在利用している事業所の名前や作業内容を伝えることが大切です。障害年金や障がい者手帳の申請時には、その情報が必要となる場合があります。さらに、障害のある方への就労支援には、就労継続支援B型だけでなく、『就労継続支援A型』や『就労移行支援』などもありますので、自分の目指す生活や働き方に応じて、適したサービスを選ぶことが大切です。

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