日常生活やビジネスシーンにおいて、会話は必須スキルです。 しかし、大人のADHDの方の中には、会話に対して苦手意識を持つ方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?
「自分の言いたいことがまとまらず、相手に伝わらない……」 「一方的に話してしまう自覚がある」 「少しでも改善したいけど、どうすればいいの?」
このようなお悩みを抱えている方へ、大人のADHDの話し方の特徴と改善方法をご紹介します。
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そもそもADHDとは?
ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性などの特徴が目立つ発達障害の一つです。
主な特徴
- 不注意
- 集中力が続かない
- 忘れ物や落とし物が多い
- 指示をよく聞き取れない
- 興味のないことはすぐに飽きる
- 多動性
- じっと座っていられない
- 落ち着きがない
- 常に動き回っている
- よく物を落としたり壊したりする
- 衝動性
- 突発的に行動したり発言したりする
- 順番を待てない
- 考えずに危険なことをしてしまう
ADHDは、脳の機能障害によって起こると考えられています。
症状は人によって程度や現れ方が異なり、 幼児期から発症することが多いですが、大人になってから診断される場合もあります。
ADHDは、適切な治療や支援を受けることで、症状を改善し、社会生活を送ることが可能です。
参考
- 厚生労働省 発達障害に関する情報: https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
- RITALIN® – 効能・効果 – くすりについて – 情報提供 – 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター: https://gunma-u.repo.nii.ac.jp/record/5174/files/m-k1789-1.pdf
- ADHD情報センター: https://www.youtube.com/watch?v=TeRh7l2zZnk
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前頭葉の働きが弱いとされている
発達障害は、明確な原因は未だ解明されていません。
しかし近年、研究が進み、ADHDは脳の「前頭葉」の働きが弱いために、様々な特性に繋がっているのではないか?という仮説が立証されてきました。
前頭葉は、物事を順序立てて考えることやコミュニケーション能力、感情をコントロールすることなど、理性的な行動を担っている重要な部分です。
前頭葉の活性化には、「ドーパミン」という神経伝達物質が必須です。
本来であれば、ドーパミンは「ニューロン」という神経細胞によって前頭葉まで運ばれるのですが、ADHDの場合はこの連携が上手くいかず、前頭葉がドーパミン不足になってしまうと考えられています。
前頭葉の機能低下は、集中力が続かない、衝動的に行動してしまう、感情をコントロールするのが難しいなどのADHDの特徴と類似しています。
特に、会話においては、状況を把握し、相手の発言を聞き、適切なタイミングで自分の考えを伝えることが重要です。
前頭葉の機能が弱いと、これらのことが上手くできず、会話に苦手意識を持つ可能性が高いのです。
近年では、脳機能画像研究などによって、ADHDと前頭葉の関係について、さらに詳しく解明されるようになってきました。
これらの研究成果は、ADHDの治療や支援の改善に役立てられることが期待されています。
頭の中が騒がしい
ADHDの特性を有する方は、注意散漫や多動性といった症状により、常に脳内が過剰な刺激に晒されている状態であるとされています。会話中においても外部刺激に対して敏感に反応しやすく、多くの情報に注意が分散される結果、ワーキングメモリの機能が低下し、重要な内容や記憶すべき情報を保持することが困難となる場合があります。
この原因としては、
- 同時に処理することや、情報の優先順位をつけることが苦手という特性が挙げられます。
- 脳内の情報量が増加すればするほど、状況に応じて適切な情報を選択し、迅速かつ正確に判断を下すことは、認知的負荷が高まり極めて困難になります。
- 注意を持続することや、じっとしていることが苦手というADHDの特徴も影響しています。
このように、ADHDの方にとって、頭の中を整理することは非常に困難です。
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大人のADHDの話し方の特徴5つ
ADHDの話し方の特徴としては下記のことがよく観察されます。
・話題が逸れる。会話の内容が急に変わり噛み合わなくなる
・早口で話が長い
・思ったことが口に出る
・聞くことが苦手
・かっときやすい
「動きが活発で落ち着きがない」「脳内が連想ゲームのようになっている」といった特徴があり、これらが話し方に影響していると考えられています。
1つずつ見ていきましょう。
参考:脳内マジカルバナナとは?
話題が逸れる。会話の内容が急に変わり噛み合わなくなる
ADHDの方は、
- 言いたいことや話したいことがポンポン頭に浮かぶ
- 思考が次々と移り変わっていく
という特徴があります。
そのため、会話の話題が飛び、まとまりにくく、本人も話題の変化に気づかない事が多いようです。
「話の要点がわからない」や「細かい点が抜ける」など人から指摘を受けたことがある方もいらっしゃると思います。
また、自身が発言した内容を短期間で忘却し、「冗長的に同一の内容を繰り返す」ことも頻繁に見られます。
例えば、
「頼まれていた〇〇〇をやっておきました。あっ、□□□って良いですよね。そういえば△△△って好きですか?」
といった形で、過去の発言と重複した内容を再度口にするケースが挙げられます。
これは
- 脳内が連想ゲームのようになっている
- Q&A以外のことについて、頭の中では同時並行でずっと思考が続いている
ことが原因です。
1つの質問に1つの答えを簡潔に答えることを意識すると相手に伝わりやすく、スムーズな会話ができるでしょう。
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参考:マインドフルネスとは?
早口で話が長い
ADHDの方は話したいことが次から次に湧きあがってくるために言葉が多く早くなり、人の話を遮ることもあります。
気づいたら自分ばかり話している状況になりがちです。
声が大きく、身振り手振りも大袈裟で一見魅力的に見えますが、相手に話をさせないため一方的にこっちの話を聞かされて消耗すると感じる人も多いようです。
威圧的に見えたり、感情的になる癖もあるので相手に避けられてしまうこともあるでしょう。
人は2分以上集中して話をきくのは、普通の会話だと難しいことが多いため、2分以内に言いたいことをまとめる練習をしてみると良いでしょう。
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思ったことが口に出る
ADHDの特性として、衝動性の高い行動や発言が顕著に見られるため、思考を経ずに即座に言葉にしてしまい、対人関係でトラブルを引き起こす場合があります。例えば、営業先で「わかりにくい場所にある会社ですね」といった、相手に失礼と受け取られかねない発言を無意識にしてしまうことがあります。
これは、言語表出において自己制御機能が低下しているため、発言が熟考を伴わない状態でなされることが多く、失言のリスクが高いとされています。
また、言ったことを覚えていないこともあり自己矛盾が生じてしまう可能性もあります。
いつも気をつけているけれど気がつくと空気が変な感じになっていた。という経験がある方もおられるでしょう。
コミュニケーションは1人で行っているのではないため、相手が話す時間を意識して作ることも必要です。
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参考:精神保健指定医とは?
聞くことが苦手
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参考:環境要因とは?
大人のADHDの話し方の改善方法5選
- 精神科や心療内科に相談をする
- 身近な人に特性を知ってもらう
- 話す時と聞く時を分けるイメージをする
- 同じ言葉を使ってさりげなく確認をする
- 書籍などを参考にする
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精神科や心療内科に相談をする
会話以外にも、仕事、勉強、人間関係など、様々な場面で「何か違う」「うまくいかない」と感じているのであれば、一度医療機関を受診することをおススメします。
大人の発達障害については、「精神科」や「心療内科」で診察・治療を受けることができます。
最近では、「発達障害外来」などを設置している病院も増えているようなので、気になる方は発達障害者支援センターなどでお近くの病院を紹介してもらってください。
前述したように、ADHDは脳内の神経伝達物質の乱れで、前頭葉が機能低下している状態です。
そうした状態を改善してくれる治療薬やカウンセリング、電気治療など保険適用の効く治療で特性が改善される可能性があるので、まずは相談することが大切です。
また、精神科などの医療機関には「精神科デイケア」というサービスが提供されており、精神的な不調や生きづらさを抱える場合、リハビリテーションの一環として定期的に通院し、社会適応能力の回復や向上を目指すことが可能です。
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身近な人に特性を知ってもらう
ADHDの特性を周囲に伝えることは、自分自身だけでなく周りの人にとっても、日常生活や仕事をより快適に過ごすために重要です。
伝えるべき相手としては、会話をする機会が多い身近な人や会社の人などが挙げられます。しかし、発達障害はデリケートな問題であり、打ち明けることは簡単ではないことも事実です。
そこで、ここではADHDの特性を周囲に伝える際の大切なポイントと具体的なヒントをご紹介します。
伝える前の準備
- 相手のタイミングを見計らい、リラックスできる環境を作る
- 特性が原因で失敗した直後や落ち込んでいる時などは避ける
- 相手との関係性によっては、他の人から伝えてもらうことも検討する
- 発達特性は誰にでもあるという視点を持つ
- 日々の言動から、どの特性があてはまるかを事前に考えておく
伝え方のヒント
ステップ1:いきなり「発達障害」という言葉を使わない
初めて伝えるときは、いきなり「発達障害」や「ADHD」などの専門用語を使うと、相手が理解しにくいかもしれません。まずは、具体的なエピソードを交えながら、自分の困っていることを丁寧に伝えることが大切です。
ステップ2:具体的な事例を交えながら、共感と理解を促す
どのような状況で困っているのか、具体的な事例を交えながら説明しましょう。相手との共通点を見つけることで、共感と理解を促しやすくなります。
例:
「最近、よく書類をなくしてしまうことがあって、提出期限に間に合わなかったり、探すのに時間がかかってしまったりすることがあるんです。そのせいで、自分自身も周りも困ってしまいます。」
ステップ3:困りごとの解決策を一緒に考える
困っていることを伝えたら、具体的な対処法を一緒に考えることも大切です。自分自身と相手が協力することで、困りごとを解決できる可能性を高めることができます。
例:
「書類をなくさないように、ToDoリストをつけるようにしてみようかな。もしそれでもなくしてしまった場合は、一緒に探してくれると助かります。」
ステップ4:必要に応じて、発達障害の可能性や相談先を伝える
対処法を試しても解決できない場合は、改めて話す場を設け、発達障害の可能性や相談先について伝えることを検討しましょう。医療機関への相談を提案することも大切です。
例:
「色々と試してみたけど、うまくいかないんだよね。もしかしたら、私には発達障害の中のADHDの特性があるのかもしれないと思うんだけど、今度、一緒に専門医に相談してみるのはどうかな。」
伝える際の注意点
- 苦手な点ばかりでなく、得意な点やうまくできていることも伝える。
- 職場では、ラベリングにならないように配慮し、発達障害の診断があってもそれが本人の不利益にならないようにすることを説明する。
- 苦手なことがあっても、本人の工夫や周囲の支援によって対応可能であること(環境調整)を伝える。
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話す時と聞く時を分けるイメージをする
会話はよく「キャッチボール」に例えられます。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
キャッチボールでは、どちらかが一方的にボールを投げたり受け取ったりするのではなく、投げ手と受け手が交互にボールをやり取りすることで、楽しいゲームになりますよね。
会話も同じです。話す時間(ボールを投げる)と聞く時間(ボールを受ける)を意識して、相手と交互に言葉をやり取りすることで、より良いコミュニケーションを生み出すことができます。
例えば、
- 相手が話している途中で自分の意見を言ってしまう
- 相手が話している内容を聞いていない
- 自分の話ばかりしてしまう
といったことがないように、「○○○が気になるけど、今は聞く時間」**と意識してみると、自分の意見を伝えやすくなったり、相手に気持ちよく聞いてもらえるようになったりするかもしれません。
キャッチボールのように、相手とのタイミングを合わせ、気持ちよく会話をしましょう。
その他、会話のコツ
- 相手の目を見て話す
- うなずきながら話を聞く
- 相手の気持ちに寄り添って話す
- 質問をする
- 自分の意見を簡潔にまとめる
これらのコツを意識することで、より円滑なコミュニケーションを図ることができます。
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同じ言葉を使ってさりげなく確認をする
会話の中で「復唱をする」ことは、相手との理解を深め、円滑なコミュニケーションを築くためにとても有効な方法です。
復唱とは、相手の言葉を言い換えて繰り返すことです。
例えば、
相手:「最近、新しいことに挑戦しようと思っていて、プログラミングを勉強し始めたんだ。」 あなた:「プログラミングを始められたんですね!何かきっかけがあったんですか?」
このように、相手の言葉を言い換えて、質問を添えて復唱することで、
- 相手の話にしっかりと耳を傾けていることを示すことができます。
- 相手の言っていることを理解していることを伝えることができます。
- 会話を発展させることができます。
「○○○ってこういうことなんですね」とさりげなく再確認をすることで、会話の内容をしっかりと記憶していることを示すことができます。
多くの人は、会話の内容をすぐに忘れてしまうものです。そのため、復唱することで、相手は自分の話を聞いてもらえていると感じ、安心して話すことができるようになります。
その他、効果的なリアクション
- 適度に相槌を打つ
- 相手の言葉を少し借りて反応する
- 表情や声のトーンで気持ちを伝える
大切なのは、「あなたの言葉をしっかり聞いていますよ」とアピールすることです。
全て自分発信のリアクションでなくてもいいと考えることで、気持ちにもゆとりが出てくるのではないでしょうか。
復唱を意識的に取り入れて、相手との距離を縮め、より良いコミュニケーションを築いていきましょう。
書籍などを参考にする
近年、ADHDの認知度が向上し、関連書籍や当事者の方からの発信も活発になっています。インターネット上には膨大な情報が溢れていますが、時間をかけて専門家の方が執筆した書籍からは、思わぬ発見や専門的な知識を得ることができます。
書籍を選ぶ際のポイント
- 信頼できる著者が執筆しているか
- 内容が自分の興味やニーズに合っているか
- レビューや口コミで評判が良いか
おすすめの情報収集方法
- ADHD関連のウェブサイトやブログで書籍紹介記事を読む
- 書店や図書館で実際に書籍を手に取って内容を確認する
- ADHDに関するセミナーやイベントに参加して、専門家や当事者に書籍選びについて相談する
- X(旧:Twitter)での情報収集
書籍を活用して、ADHDについてより深く理解しましょう
図書館を利用すれば、無料で様々な書籍を借りることができます。複数冊読む場合は、図書館の利用を検討してみるのも良いでしょう。
書籍で得た知識は、自分自身や周囲の人への理解を深め、より良いコミュニケーションや社会生活を送るためのヒントとなるでしょう。
ぜひ、自分に合った書籍を見つけて、ADHDについてもっと学んでみてください。
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まとめ
ADHDは、前頭葉の働きが弱いとされており、情報の取捨選択や整理整頓が苦手であることが特徴です。そのため、頭の中が常に騒がしい状態であり、おしゃべりや一方的な話、会話内容の突然の変化などがみられます。
悪気はないものの、相手を怒らせてしまう、長い会議や興味のない会話についていけないといった問題も起こりやすいです。
このような症状でお困りの方は、精神科や心療内科への相談が大切です。身近な人に特性を知ってもらうことも有効です。具体的な対処法が書かれている書籍なども参考になります。
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専門機関への相談
ADHDが疑われる症状が6か月以上続いている、日常生活に支障が出ている、自尊心がひどく低下している、強い劣等感を抱いているなどの場合は、病院で検査や治療を受けることをおすすめします。
ADHDを放置すると、日常生活に支障が出たり、うつ病などの精神疾患を患ったりする恐れがあります。できるだけ早く診断を受けましょう。
ADHDの検査は、精神科や心療内科で受けられます。医療機関によっては専門が異なる場合があるため、事前にウェブサイトや電話・メールで確認してから受診することをおすすめします。
会話は、日常生活において重要なコミュニケーション手段です。適切な治療や工夫により、ADHDの特性による会話の苦手意識を改善することができます。一人で悩まず、専門機関に相談しましょう。
その他、ADHDに関する情報は以下のサイトなどで入手できます。
- https://www.jasdd.org/
- https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.html
まずは一歩踏み出し、専門家に相談してみましょう。
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