無意識に汚い言葉やキツイ言葉が出て来てしまう「汚言症」の世界

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汚言症とは何か?

「汚言症」(Coprolalia)は、一般的には「トゥレット症候群(Tourette syndrome)=チック」と関連付けられる症状の一つです。トゥレット症候群は、神経系の発達障害で、様々な運動および音声の発作を伴うことで知られています。

汚言症は、この症候群の一部として特に注目され、特徴的な症状の一つとされています。以下の文章ではチック症状、汚言症などをまとめてトゥレット症候群として記述しています。

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チック症には、瞬きなどの身体の動きとして現れる「運動チック」と、咳払いなどの発声として現れる「音声チック」の2種類があります。そのうち、汚言症は音声チックの一種に分類されます。

  単純チック 複雑チック
運動チック ・まばたき
・顔しかめ
・首ふり
・肩すくめ
・顔の表情を変える
・腕を振る
・飛び跳ねる
・匂いを嗅ぐ
・他人や人に触る
・唾を吐く
音声チック ・咳払い
・鼻鳴らし
・鼻すすり
・「あっ」「うっ」などの単音
・動物のような叫び声
汚言症
・反響言語
・反復言語


汚言症は発達障害の一種とされていてADHDASDなどを併発している場合が多く見られます。筆者の周囲だとASDを強く持っている場合にチック(汚言症)を併発しているパターンが多いです。

「自分の意思に反して、突発的に不謹慎・卑猥・攻撃的言葉が口から出てくる」ため、生活への影響が大きく出てしまいます。

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汚言症の症状

汚言症はトゥレット症候群の患者の一部に見られる症状で、突然発声される非常に不適切な言葉や単語を含みます。突然知らない人から罵声を浴びせられたり、卑猥な単語を叫ばれたりしたら良い気分はしないですよね。

自身ではなかなか気づけず、周りの反応を見て初めて、自分が無意識に汚い言葉やキツイ言葉を発していることに気づくパターンが多いので、自分の発言に対する責任が取れない部分も汚言症のキツイ部分と言えます。

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自分の気づかないところで、自分がどんな発言をしているか分からないのは、とても怖いことです。汚言症は患者が言葉を抑えることが難しいため、人間関係の亀裂を生みやすく、時に社会的な問題を引き起こすことがあります。

誰かと話す時はいつも「症状が出たらどうしよう」「このせいで嫌われたくない」と思いながら話しているため、二次障害を起こす可能性もあり、少しでもこの症状を理解してくれる人が増えることを願います。

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汚言症の原因

トゥレット症候群自体の原因自体は完全には解明されていませんが、複雑な要因が組み合わさって発症することが考えられています。以下、汚言症の原因と考えられるものについて挙げていきます。

遺伝的要因

トゥレット症候群は遺伝的な要因が関与していると考えられており、家族内での発症傾向が認められることがあります。特定の遺伝子の変異や遺伝子座の関与が研究されていますが、一つの単純な原因ではなく、複数の遺伝的要因が影響を与えている可能性が高いです。

単純チック

5~6歳で発症し、一年を越え持続するは、10歳代中頃に軽快の方向をとり自然寛解するケースが多いとされていますが、成人以降も残るケースはあります。大脳基底核ドパミン神経系の発達障害が原因と予測されています。

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複雑チック

この症状は、一般的に10歳頃から現れるとされています。薬物に対する反応から、ドパミン神経受容体に異常がある可能性が示唆されていますが、強迫神経症を併発することが多く、症状が長期にわたって続き、治療が困難になるケースも少なくありません。その一例として「汚言症」が挙げられ、この症状は特に対処が難しいとされています。

 

上記の事柄からチックには少なくとも2つの病態の存在が考えられる。

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神経学的要因

トゥレット症候群の原因として、脳の神経伝達物質や神経回路の異常が関連していると考えられています。特に、ドーパミンと関連する神経回路の過活動が関与する可能性があります。

発達過程

トゥレット症候群は通常、幼少期に症状が初めて現れることが多く、発達の早い段階で影響を受けることがあります。脳の発達過程で何らかの異常が起き、それが後に症状を引き起こす可能性があります。

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環境要因

一部の研究では、環境要因(例: 出生時の合併症、母親の喫煙、感染症)がトゥレット症候群の発症に影響を与える可能性が示唆されています。ただし、環境要因は遺伝的要因と相互に作用することが考えられています。

 

具体的な原因についてはまだ完全に解明されておらず、研究が進行中です。治療やサポートの提供においては、患者とその家族に対する理解と専門的な支援が重要です。

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汚言症との併発症

汚言症は症状の特性上、二次障害を引き起こしやすくなります。ここでは、併発しやすい障害や症状を記述していきます。

強迫性障害(OCD)

トゥレット症候群強迫性障害には密接な関係があり、トゥレット症候群では約30%が強迫性障害を併発するれています

強迫性障害を伴うトゥレット症候群では、トゥレット症候群単独と比べてチックの発症時から複雑運動チックを認めるケースが多く、チックの発症年齢はやや高くて重症であるとされています。

自傷行為を行う割合が高く、強迫性障害以外の二次障害が多との報告あります

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注意欠如多動性障害(ADHD)

ADHD強迫性障害と並んでトゥレット症候群を併発する可能性が高く、50%以上に上るとの報告もあります。トゥレット症候群ADHDを伴うと衝動性や攻撃性が高くなり、社会適応がしづらくなるとされています。

怒り発作(間欠性爆発性障害)

この症状は、「突然前触れもなく激しい怒りを爆発させ、社会生活に支障をきたす」とされています。怒りの持続時間は比較的短く、その後に強い後悔の念を抱くことが多いのが特徴です。理性では「いけない」と理解していても、その瞬間に湧き上がる激しい怒りや感情を抑えることが非常に困難である点が顕著です。

筆者の父がこの症状を持っており、逆鱗に触れると飲食店やタクシーの中などで暴れ回り「瞬間湯沸かし器」というあだ名がついていました。

ADHDの衝動性を持つ方には特に多い症状だと感じています。

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気分障害及び不安障害

うつや不安の傾向は健常者よりトゥレット症候群を持つ者の方が高いとの報告があります。

抑うつ症状についてはチックの重症度との相関性は証明されていません。精神科を受診するトゥレット症候群の学生では不登校の報告が多く見られます。

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ASD(アスペルガー症候群)

トゥレット症候群ASDを併発しているケースは多く見積もって50%程度と言われています。

健常者よりASD者の方が高頻度と言えます。ASDは「ぐるぐる思考」など、気持ちの切り替えが困難である特性から、PTSD不安障害離人症などを起こしやすくなっています。

また、汚言症ゆえの暴言なのか、ASDの正直すぎる失言なのか分かりづらく、本人自身が悩むこともあるでしょう。

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汚言症の治療について

トゥレット症候群の治療で家族ガイダンスや心理教育及び環境調整は基本となっています。

周囲がトゥレット症候群をよく理解した上で、薬物療法DBS治療などと併せて使うことで症状をの軽減が可能でしょう。

 

家族や本人に理解して欲しいポイント

チック症状やそれに伴う併発症状について、本人が感じている気づきや困難さも含めて、共感的な態度で丁寧に話を聞くことが大切です。そして、本人や家族と共に情報を整理して理解を深めていくことで、チックや汚言症に対する受け入れが徐々に進み、より前向きに向き合えるようになる可能性があります。こうしたサポートによって、安心感が生まれ、症状への不安が軽減されることも期待されます。

発達障害の治療でもよく言われることですが、「自分の症状を認めて受け入れる」ことがファーストステップになります。チック症状は緊張が高まる時、または緊張が解けた瞬間に起こりやすいと言われています。些細な変化で一喜一憂しないことを勧めると共に、不必要な緊張を取り除くよう心掛けましょう。

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認知行動療法について

チックをしたくなった時に拮抗する運動を行なってチックを軽減させようという「ハビットリハーサル」という方法が蓄積されつつあるようです。ハビットリハーサルは「気付き訓練」「チックのセルフモニタリング」「リラクゼーショントレーニング」「抵抗反応訓練」「動機づけ技法」から構成されています。

ハビットリハーサルはチックに一層気づくことでチックの予防や防止を使用という考えから出来ていますが、順序立てて行わなくても意識的に考えを取り入れて行動していれば有用に働きます。

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薬物療法について

汚言症など、症状が重篤なチック症に対しては、薬物療法が検討されることがあります。アメリカの「トゥレット症候群協会医療アドバイス委員会」が、エビデンスに基づいてまとめた「薬物療法ガイドライン」では、アメリカ国内で利用可能な様々な薬物が紹介されています。

チックに対して十分にエビデンスのある向精神薬

ハロペリドール」「ピモジド」「リスペリドン」

チックに対していくつかのエビデンスのある向精神薬

「フルフェナジン」「チアプリド」

チックに対して積極的に実験されている向精神薬

アリピプラゾール

ドパミンセロトニンに作用して安定化を図るものです。

 

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チックに対して有効性は低いが副作用も軽度のため使用される薬

「クロニジン」

血圧を降下させる薬でADHD症状にも有効とされます。

 

チックに対してADHD併発の場合に使用される薬

アトモキセチン

ADHD薬でチックを増悪させず、いくらかマシになるといった見解が示されています。

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DBS治療


トゥレット症候群を治療する方法として、1999年に最初の症例報告がThe Lancetという有名な臨床医学雑誌に掲載されたことが起点となり現在に至ります。

脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)は、手術によって脳の奥深くに位置する「大脳基底核」と呼ばれる領域に電極を埋め込み、そこに微弱な電流を流すことで脳を刺激する治療法です。この方法は、脳内の特定の神経回路を調整し、症状の緩和を図るために行われます。特に、薬物療法では効果が得られにくい神経疾患や運動障害などに対して、有効な治療手段として注目されています。

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脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)そのものは、すでにパーキンソン病やてんかんなど他の疾患領域の治療法とし使用されていましたが、難治症トゥレット症候群でも保険適用され、10万円程度費用で手術を受けることができます。

筆者の知り合いでもDBS手術を受けている子がいますが、汚言症がずいぶん改善し、一般就労が可能になったと喜んでいました。

 

現在、DBS手術を受けることができるのは以下3箇所の病院になります。

・国立精神・神経医療研究センター(東京都)

・福岡大学病院

・名古屋医療センター

YGTSS(Yale Global Tic Severity Scale)というチックの重症度を測るスコアがあり、35/50以上であることがDBS手術を受けることが出来る1つの目安となっていますので気になった方は調べてみてください。

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