この記事を読まれている精神障害・発達障害の方は休職に追い込まれ、診断書が必要になった方も多いのではないでしょうか?
病気や怪我によって仕事を休んで療養に専念する必要性があることを証明するために、医師が作成する診断書は重要です。診断書には、病名や症状の経過、通院や入院による治療の必要性、休職期間、療養事項などが記載されており、「病気休業診断書」と呼ばれることもあります。
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また、交通事故で残った後遺障害の等級認定においても、医師が作成する診断書は極めて大きな影響力を持ちます。診断書の内容は等級認定に直接影響するため、どのような記載内容になるのかが非常に重要です。
しかし、医師に診断書の作成を依頼しても書いてもらえない場合や、被害者に有利な内容ではない場合もあります。
本記事は、医師に診断書の作成を依頼した際に発生するトラブルへの対処法のヒントを提供することを目的としています。
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診断書とは
診断書とは、医師が作る正式な書類の一つで、患者の病気や症状について書かれたものです。法律で、診察した医師だけが診断書を作ることができると決められています。
広い意味では、「証明書」と書かれた書類でも、必要な内容が書かれていれば診断書と同じように扱われます。診断書には決まった形式がなく、病院や施設によって書かれる内容や方法が異なります。
休職や障害、病気のために会社に申請する場合や、福祉制度を利用する際には診断書の提出が必要です。
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診断書の項目
診断書に記載される主な項目は以下に記述した内容になります。
1. 患者情報
- 氏名
- 生年月日
- 年齢
- 住所
- 性別
- 連絡先(電話番号、メールアドレス等)
2. 病名(診断名)
- 確定診断名
- 疑い診断名(確定診断に至っていない場合)
- 診断に至った経過(経過観察中も含む)
3. 受診日
- 診断書作成日
- 初診日
4. 発症日
- 症状が現れた日
- 原因となったと思われる出来事があれば具体的に記載
5. 治療内容
- 服薬内容(薬剤名、用法、用量)
- 処置内容
- リハビリ内容
- その他、治療に関わる内容
6. 治療の見込み期間
- 回復までの見込み
- 経過観察の必要がある期間
- 再発の可能性
7. 治癒日(死亡・出生年月日など)
- 完治した日
- 死亡した日(死亡診断書の場合)
- 出生した日(出生診断書の場合)
8. 問診内容
- 既往歴(過去の病気や怪我、手術歴、アレルギー歴など)
- 主訴(患者が訴える主な症状)
- 現病歴(現在の症状の経過、日常生活への影響など)
9. 身体所見および検査結果
- 診察時の身体的所見(血圧、脈拍、体温、皮膚の状態など)
- 検査結果(血液検査、画像検査、その他)
- 診断根拠となった具体的な所見や検査結果
10. その他
- 診断書作成の目的(休職証明、保険請求など)
- 提出先
- 本人の希望があれば記載
- 医師が必要と判断した事項
診断書の項目は決まっていないため、本人の希望が反映されることもあります。また、提出先や目的によっては省略される内容や、特別に求められる内容があることもあります。
例えば、休職のために職場に提出する場合は、仕事ができるかどうかや病状の詳細が必要です。医療保険の利用が目的の場合は、手術内容や入院期間が記載されることがあります。
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診断書が求められる場面
診断書を求められる場面として考えられるのは主に以下4つになります。
- 休職
- 社会保障制度や福祉制度の利用
- 医療保険の利用
- 障害・疾患による業務内容の調整
それぞれのケースごとに詳しく見ていきましょう。
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休職
病気や怪我、障害などを理由に休職する場合、診断書を勤務先に提出して手続きを進めることが一般的です。診断書の提出は労働基準法で義務付けられているわけではありませんが、企業にとっては就労可能かどうかの重要な判断材料となります。
多くの企業は休職の理由や社員の状態を把握するために診断書の提出を求めており、就業規則で診断書の提出を定めている場合は必須となります。
従業員が休職を希望する場合、まずは会社の就業規則で診断書の提出について確認することが重要です。休職の可否を判断するには医学的な知見が欠かせないため、一般的には休職診断書の提出が求められます。
医師が休職が必要だと判断した場合、診断書を作成し、社員がそれを上司や人事担当者に提出して具体的な相談を行います。診断書には「一定期間の休養が必要」と記載されることが多く、休職期間は企業と相談して決める場合もあります。
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社会保障制度・福祉制度の利用
診断書は、社会保障制度や福祉制度を利用する際に必要な場合があります。これらの制度を申請するには、医師に診断書を作成してもらい、所定の機関に提出する必要があります。申請する制度によって診断書の書式が異なるため、医師に具体的な用途を伝えて作成してもらうことが重要です。
診断書が必要となる主な社会保障制度・福祉制度は以下の通りです。
- 療養費(国内・海外)
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 傷病手当
- 自立支援医療(精神通院医療)
- 障害者手帳の取得
- 障害年金
- 労災保険(休業補償等給付、障害補償等給付、傷病補償等年金)
- 介護保険
- 指定難病医療費助成制度
これらの制度では、申請書類の中に「医師の証明欄」が設けられている場合もあります。診断書には病気や障害の状態を証明するための情報が記載され、各制度の受給資格を判定するために使用されます。
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福祉制度の申請では、診断書の費用を負担しても、それ以上のメリットを受けることができます。例えば、自立支援医療を利用すれば、精神障害の外来治療にかかる医療費が1割負担となり、さらに世帯の所得に応じて1カ月あたりの負担上限金額も決まっています。
福祉制度を利用するには、対象となる病気や障害に関する基準があります。診断書の費用を無駄にしないためにも、制度の利用が可能かどうかを事前に主治医に相談することをおすすめします。
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医療保険の利用
入院や手術に伴う医療保険の給付金請求を行う際は、通常、医師の診断書を提出して手続きを進めます。診断書は、病気やケガの症状、診断内容、治療内容などを証明するために、医師が作成する書類であり、医師法により医師のみが作成できます。保険会社は、この診断書の内容を確認し、給付金の支払い条件に該当するかや、告知義務違反がないかどうかを判断します。
保険会社や医療保険のプランによっては、一定の条件を満たせば「簡易請求」が認められ、診断書が不要となる場合があります。その際、退院証明書や領収書、診療明細書で代用できることがあります。
保険会社が診断書の書式を定めている場合、給付金を請求するためにはその書式で作成してもらう必要があります。医療保険の給付金請求手続きは各保険会社で異なるため、保険の担当者または相談窓口に問い合わせることが重要です。
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参考:発達障害者支援センター
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障害や疾患による業務内容の調整
障害の特性や疾患によって業務や職場環境に困難を感じる場合、必要かつ合理的な範囲で調整を行うことを「合理的配慮」と言います。この合理的配慮による業務の調整には、診断書が求められることがあります。
例えば、聴覚過敏がある場合には周りの話し声や設備の機械音が気になって集中しにくいことがあります。このような場合には、静かな座席に移動させる、在宅勤務やリモートワークを認めるなどの対応が行われます。また、視覚過敏がある場合には、席を一番奥にする、席の周りにパーテーションを設置して周りの動きが目に入らないようにするなどの配慮が行われることがあります。
精神疾患や発達障害(神経発達症)などの症状によって現在の職場環境に困難を感じる場合もあります。このような場合、本人の希望や医師の判断を会社に伝えることで、業務内容や職場環境の調整がスムーズに進むことがあります。診断書は、このような個別の要望を受け入れてもらうために有用です。
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医師が診断書を書いてくれない理由
法律では、医師は患者さんから診断書の作成を依頼されたら、医師法第十九条二項の法規定によって基本的には診断書を発行する義務が生じます。
でも、実際には、色々な診断書で、主治医が診断書作成を拒否するケースは多々存在します。以下は障害年金の診断書の場合になります。
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「初診日」が特定できない場合
「初診日」が特定できない場合、医師が障害年金申請用の診断書を作成するのを躊躇することがあります。しかし、心配しないでください。適切な資料を用意して説明すれば、医師は障害年金用の診断書を作成してくれます。
まず、医師にしっかり説明することが重要です。医師は初診日が特定できないことで障害年金が却下されるのを心配し、あなたの病状の変化を懸念しているのです。実際には、医師は障害年金申請用の診断書を作成するために、あなたの情報を求めています。
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参考:てんかんとは?
受診歴が初診時と症状固定時のみ
精神科に初診時と症状固定時にしか通院しない場合も診断書の作成をお断りするケースが多いです。
精神科を受診される患者様の中には、初診時と症状固定時のみ通院される方がいらっしゃいます。
診断書は、患者様の症状や治療経過を詳細に記録したものです。そのため、正確な診断書を作成するためには、定期的に通院していただき、症状の変化や治療の効果などを把握する必要があります。
医師の立場からすると、これまでの経過を全く知らない患者さんの診断書を安易に作成することで、予期せぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。これが、診断書の作成をお断りする際の正直な気持ちだと言えるでしょう。
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参考:コルチゾールとは?
専門外の事案
受診状況等証明書(初診日証明)や休職用、精神障害者保健福祉手帳、自立支援医療の診断書に比べ、年金診断書は断られることが多い傾向にあります。
医師は障害年金の専門家ではないため、審査に不利な文言などを理解している医師は少ないでしょう。精神障害の診断書はほぼ医師の主観で判定されるため、検査数値がある身体の障害に比べ、医師の負担が大きくなります。
また、「日常生活状況」(食生活、清潔保持、金銭管理など)を普段の診察で確認している医師は少なく、そのため診断書が実態とは異なることがあります。さらに、診断書が審査に通らない場合や、不支給になった患者からのクレームなどのリスクもあるため、医師が診断書作成を避けたがるのは理解できます。
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診断書には有効期限がある
診断書には一般的に有効期限があり、発行から3ヶ月とされています。期限を過ぎた診断書は証明書としての効力を失い、必要な手続きに利用できなくなります。福祉サービスの利用手続きや障害厚生年金の申請、精神障害者福祉手帳の申請でも、診断書の有効期限は3ヶ月以内がほとんどです。発行から時間が経つと病状が変化する可能性があり、診断書の信頼性も失われるため、再発行を依頼する際には費用も時間もかかります。
そのため、診断書を依頼するタイミングをよく考慮し、有効期限内に提出することが大切です。
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【弁護士必見】医師が診断書を書いてくれない場合の対処法
診断書は医療機関で医師に作成してもらいます。大学病院などの大きな機関では、診断書や各種証明書発行専用の窓口で申請することもあります。
まず、疾患や症状に詳しい医師の診察を受ける必要があります。精神的な不調の場合は精神科や心療内科を受診し、診察時に「診断書を発行してほしい」と申し出ましょう。
診断書を依頼する際は、「仕事の休職」や「医療保険の申請」など、診断書の目的と提出先を具体的に伝えることが大切です。必要な情報を正確に伝えることで、スムーズに発行してもらえる可能性が高まります。大きな病院で窓口を通して依頼する場合は、手紙などを使って必要事項を明記すると良いでしょう。
診察時には、「日常生活で困っていること」や「心身に現れている症状」、「診断書が必要な理由」を医師にしっかりと伝えましょう。
医師は診察時の話の内容や様子で病状を判断するため、ありのままの自分を伝えましょう。いつも通りに話すのが難しい場合は、「どのような症状があるのか」「日常生活で困っていること」などを事前にメモに書いておくと伝えやすくなります。メモを読みながら話すか、緊張する場合はそのままメモを医師に渡すのもよい方法です。
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休職の診断書に記載される内容
職場を休むために必要な記載事項は、以下の通りです。主治医と相談して、項目を増やすこともあります。
必須記載事項
- 病名または病状: 休職の原因となる病気の名前または症状を具体的に記載します。
- 初診の日付: 最初に医療機関を受診した日
- 症状の経過: 初診以降の症状の変化を時系列で記載します。
- 具体的な治療の内容: 服薬内容、リハビリ内容、カウンセリング内容などを具体的に記載します。
- 医師が必要と判断した休職の期間: 具体的な休職期間を記載します。
- 通院の間隔または入院日数: 通院の場合は通院間隔、入院の場合は入院日数を記載します。
- 医師が提案する環境調整の指示: 職場での環境調整が必要な場合は、医師が提案する具体的な内容を記載します。
- 療養指導の内容: 医師から受けた生活指導や療養に関する指示を記載します。
その他記載しておくと良い事項
- 連絡先: 休職中の連絡先(電話番号、メールアドレス等)
- 本人希望の復職時期: 希望があれば復職時期を記載
- 署名・捺印: 本人および主治医の署名と捺印
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休職の診断書を提出するタイミング
メンタル不調で重大な意志決定が難しい場合は、医師のアドバイスを受けてから職場に休職の診断書を提出しましょう。
適応障害やうつ病などの抑うつ症状、意欲の低下、メンタル不調に伴う身体症状が現れているときは、療養に専念する必要があります。まずは職場の上司や人事部と相談し、診断書を提出するのが良いです。
体調不良の原因は個々で異なるため、担当医と話し合いましょう。「職場に行けない」「仕事に行くのがつらい」と感じたときは、一人で悩まず、相談することが大切です。
診断書の料金と作成期間
診断書の作成は原則有料であり、料金は医療機関や記載項目によって異なります。一般的な相場は1,000円から10,000円程度ですが、病院ごとに設定されています。診断書の料金は自費扱いとなり、医療保険や自立支援医療制度の対象にはなりません。
診断書の作成には通常1〜2週間かかります。初診日に診断書をもらえることもありますが、即日発行はあまり多くありません。また、診断名が確定していない場合や再度の診察が必要な場合には、1ヶ月以上かかることもあります。急ぎの場合でも、必ずしも希望通りに発行してもらえるとは限りませんので、必要なタイミングを考慮して早めに医師に相談しましょう。
診断書の料金は病院に掲示されていますので、費用が気になる場合は受診する病院に問い合わせると確実です。
参考:所得状況届とは?
傷病手当金の制度を活用する
休職期間中は給与が支給されないため、経済的に困ることが多いです。その救済措置として、健康保険に加入している人は傷病手当金を申請することができます。傷病手当金は、病気や怪我で会社を休む間、健康保険の加入者とその家族の生活を守るための制度です。
以下の条件をすべて満たした場合に、傷病手当金を受け取ることができます。
- 業務以外の理由による病気・怪我で休業していること
- 仕事ができない正当な理由があること
- 3日間連続で休んだ後、さらに休業していること
- 休業期間中に給与の支払いがないこと(給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます)
傷病手当金の金額は、休業前の給与の2/3が目安です。給付期間は通算で1年6ヶ月までとなり、途中で出勤して給与の支払いがあった期間は通算されません。
傷病手当金の申請には診断書は不要ですが、通院している医療機関の医師から意見書を書いてもらう必要があります。意見書の代わりに診断書を提出することはできないので注意しましょう。
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診断書に関するよくある質問
-
Q診断書の費用を会社に負担してもらうことはできますか?
-
A
診断書の発行費用は、ほとんどの場合自己負担となります。これは、職場や業務に関連がない病気やけがの場合、個人の都合と見なされるためです。明らかに仕事が原因でない限り、会社は従業員に対して自費で診断書を取得するよう求めるのが一般的です。心身の不調が仕事以外の理由で発生することもあるため、やむを得ないと言えます。
ただし、会社と交渉の余地がある場合もあります。例えば、「発達障害があり、このような特性があるため配慮してほしい」と伝えた際に、会社から「診断書を提出してください」と求められた場合、その診断書が業務に関わるものであれば、「費用は会社側で負担してください」と交渉することも可能です。
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-
Q診断書の記載内容について希望は通りますか?
-
A
診断書に記載してほしいことや、記載してほしくないことについての希望は伝えられますが、最終的には医師の判断によるとしか言えません。
医師は問診や診察の結果に基づいて診断書を作成するため、事実と異なる内容の記載をしてもらうことはできません。
注意すべき点として、担当医師が専門外であるために、希望する診断書を書いてもらえない場合があります。
一例をあげると、発達障害の症状はグラデーションがあるため、専門知識を持った医師でなければ適切な診断書を作成できないことが多いとされています。
そのため、希望する診断を書いてもらうには、自分の症状をよく理解し、信頼できる専門医に依頼することが重要です。
参考:発達障害者支援センター
参考:社会福祉士とは?
診断書は早めに準備しておこう
診断書は、休職や福祉制度の利用、医療保険の給付金申請など、さまざまな場面で必要とされます。医師が作成した診断書を提出することで、安心して休業や業務の調整を依頼でき、手続きがスムーズに進むという利点があります。
診断書の作成には通常1〜2週間かかりますが、診断名の確定に時間がかかる場合は1ヶ月以上かかることもあります。そのため、診断書が必要になりそうな場合は、早めに医師に相談することをお勧めします。