通院空白期間に注意。退職後に傷病手当金がもらえなくなるケース

退職後傷病手当金 お金

退職後傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガで休業し、十分な収入が得られない場合に支給されるありがたい制度です。

公的医療保険制度(健康保険)から一定額の手当金が受け取れるため、本人や家族の生活を守るために重要です。

退職後でも一定の条件を満たせば支給されることがありますので、傷病手当金の定義や支給条件、もらえないケースや申請方法について詳しく見ていきましょう。

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うつ病などの精神的な病気で休職した場合に、どのような条件で傷病手当金を受け取れるのかについても触れています。これらの情報を把握することで、事前に対策を講じることができるでしょう。

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  1. そもそも傷病手当金とは
  2. 傷病手当金の受給条件
    1. 業務外の病気やケガの療養中であること
    2. 療養のため、仕事ができない状態である(労務不能)
    3. 連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかったこと
    4. 休業期間中に給与が支払われていないこと
  3. 傷病手当金を受給できる人
    1. 傷病手当金が受けられる人
    2. 傷病手当金が受けられない人
    3. 短時間労働者が健康保険に加入できる条件
    4. 任意継続被保険者とは?
  4. 傷病手当金の支給金額
  5. 傷病手当金を受給中に退職・転院したときは?
    1. 条件によって退職後も傷病手当金をもらえるケースがある
    2. 転院する際には治療の空白期間の有無に注意
  6. 傷病手当金がもらえない・減額されるケース
    1. 老齢年金を受け取っている場合(退職後の場合)
    2. 障害厚生年金や障害手当金を受け取っている場合
    3. 労災保険の休業補償給付を受け取っている場合
    4. 雇用保険の基本手当(失業手当)を受け取っている場合
    5. 出産手当金を受け取っている場合
    6. 国民健康保険の加入者やフリーランスである場合
    7. 待期期間が発生していない場合
    8. 休職中も給与をもらっている
  7. 退職後に傷病手当金を申請する方法
    1. 重要なポイント
  8. 傷病手当金の受給期間が終了した後は?
    1. うつ病が再発した場合に傷病手当金は再度もらえない?
      1. 再発した場合の傷病手当金
      2. 1年6か月を超えても受け取れるケース
      3. 注意点
  9. うつ病の方が利用できる傷病手当金以外の制度
    1. 労災保険
    2. 障害年金
    3. 障害年金の種類
    4. 支給条件
      1. 支給額と期間
      2. 申請方法
      3. 注意点
    5. 失業手当
    6. 自立支援医療
    7. 障害者手帳
    8. 生活保護
  10. うつ病の方が復職を目指すための支援
    1. 職場復帰支援(リワーク支援)
    2.  公共職業安定所(ハローワーク)
    3. 就労移行支援

そもそも傷病手当金とは

傷病手当金は、業務外の病気やケガにより働けなくなり、給与を受けられない場合に、生活を保障するために支給される給付金です。

この制度は、健康保険組合協会けんぽの被保険者が対象で、最長1年6カ月間支給され、うつ病を含む精神疾患で休職した場合」も含まれます。

 

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任意継続被保険者には原則として支給されませんが、健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている場合には対象者になりますので、検討してみてください。

 

この制度の支給対象には被保険者の家族も含まれており、特に精神疾患による支給が多いことが報告されています。

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傷病手当金の受給条件

傷病手当金を受給するためには、次の条件を満たす必要があります。

  1. 業務外の病気やケガの療養中であること
  2. 療養のため、仕事ができない状態である(労務不能)
  3. 連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業期間中に給与が支払われていないこと

これらの受給条件について、詳しく解説します。

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業務外の病気やケガの療養中であること

傷病手当金を受給するためには、業務外の病気やケガによる療養中であることが必要です。

入院していなくても、自宅療養であっても支給の対象となります。さらに、保険が適用されない自費診療の場合でも、仕事ができないことが証明できれば支給されることがあります。

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ただし、通勤中や業務中に発生した病気やケガは労働災害保険の対象となり、傷病手当金の対象外です。また、美容整形などの病気と見なされないケースも支給対象外となります。判断が難しい場合は、労働基準監督所に相談することをお勧めします。

 

療養のため、仕事ができない状態である(労務不能)

傷病手当金を受給するためには、病気やケガにより「もとの仕事に就くことができない」状態、つまり労務不能であることが条件です。これは、医師の診断結果や対象者の業務内容などを考慮して総合的に判断されます。ただし、例外として、就業時間を短縮せずに配置転換などで同じ事業所内の軽い業務に従事できる場合は「仕事に就くことができる」と見なされ、傷病手当金が支給されないことがあります。

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連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかったこと

傷病手当金は、病気やケガの療養のために仕事を休んだ日から連続する3日間の「待期期間」の後、4日目以降に仕事に就けなかった日から支給されます。この待期期間には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれ、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。ただし、3日間連続で休まないと待期期間が成立しません。たとえば、2日連続で休んだ後に1日だけ出勤した場合、待期期間はリセットされますが、3日間連続で休んだ後に1日だけ出勤し、その後休日が続いた場合でも、待期期間は成立しているため、傷病手当金の受給対象となります。

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休業期間中に給与が支払われていないこと

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなり収入が途絶えたときに生活を保障するための手当で、原則として給与の支払いがある場合には支給されません。

ただし、支払われた給与が傷病手当金の日額を下回る場合、その差額が支給されます。また、給与の一部のみが支払われた場合でも、傷病手当金からその分を差し引いた金額が支給されます。

給与の支払い状況については、会社の証明が必要です。

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傷病手当金を受給できる人

傷病手当金は、病気やケガで仕事を休まざるを得なくなったときに、生活を支えるための制度です。しかし、誰でもが受けられるわけではありません。

傷病手当金が受けられる人

傷病手当金が受けられない人

  • 短時間労働者: 一定の条件を満たさない短時間労働者は、健康保険に加入できないため、傷病手当金も受けられません。
  • 任意継続被保険者: 会社を退職して、任意継続被保険者になった後に病気やケガをした場合は、傷病手当金は受けられません。
  • 国民健康保険加入者: 自営業者など、国民健康保険に加入している人は、傷病手当金は受けられません。
  • 業務上での病気やケガ: 仕事中のケガや病気の場合は、労災保険の対象となります。

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短時間労働者が健康保険に加入できる条件

  • 100人以下の事業所: 労働時間が通常の労働者の4分の3以上であること
  • 101人以上の事業所:
    • 1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
    • 報酬の月額が88,000円以上であること(年収がおおむね106万円以上であること)
    • 2カ月を超える雇用の見込みがあること
    • 学生でないこと

(2024年10月以降は、上記の「100人以下」は「50人以下」に、「101人以上は」は「51人以上」に変更されます。)

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任意継続被保険者とは?

会社を退職した後、一定の条件を満たせば、最長2年間、退職前の健康保険組合協会けんぽに加入し続けることができる制度です。

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傷病手当金の支給金額

傷病手当金の支給額は、給料のおよそ3分の2に相当し、以下の計算式で求められます。

支給額(日額)
=(支給開始日以前の直近12カ月間の標準報酬月額の平均)÷ 30日 × 2/3

例えば、標準報酬月額の平均が36万円の場合、1日あたりの支給額は8,000円となります。また、標準報酬月額が30万円の場合には、1日あたり6,667円、月額で約20万円が支給されることになります。

注意点として、支給開始日以前の被保険者期間が12カ月に満たない場合は、別の計算式が適用されます。たとえば、被保険者期間が12カ月未満の方の場合には、以下のいずれか低い額をもとに計算します。

  1. 被保険者期間中の標準報酬月額の平均額
  2. 保険者全体の被保険者の標準報酬月額の平均額

また、健康保険組合によっては「傷病手当金付加金」や「延長傷病手当金付加金」などの付加給付が支給されることもありますが、退職後はこれらの付加給付が支給されないことが多いので注意が必要です。

支給期間は最長で1年6カ月間で、途中で出勤して給与の支払いがあった場合でも、この期間は変更されません。

出典:厚生労働省|傷病手当金について

 

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傷病手当金を受給中に退職・転院したときは?

傷病手当金を受給中に退職や転院した場合、その受給は継続されるのでしょうか。この記事では、退職や転院が傷病手当金に与える影響について詳しく解説します。

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条件によって退職後も傷病手当金をもらえるケースがある

退職後でも、一定の条件を満たせば傷病手当金を継続して受け取ることができます。その条件は以下の通りです。

  1. 退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者であったこと
  2. 退職時点で既に傷病手当金を受給しているか、または受給できる状態にあること
  3. 傷病手当金の受給期間が1年6カ月の期限内であること

これらの条件を全て満たしていれば、退職後も傷病手当金を受け取ることが可能です。ただし、退職日に出勤すると「労働不能な状態」とは見なされず、傷病手当金の支給が停止される可能性があるため注意が必要です。また、退職後に再び働き始めた場合も、それ以降は傷病手当金を受け取れなくなりますので、十分な注意が必要です。

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転院する際には治療の空白期間の有無に注意

病院を転院する際は、治療に空白期間ができないように注意しましょう。転院前の最終受診日から転院後の初診日までの間に期間が空いてしまうと、その期間中は傷病手当金が受け取れなくなります。これは、空白期間中に「就労できなかった」ことを証明するのが難しくなるためです。

傷病手当金を継続して受け取るためには、転院前の病院で証明書をもらうことや、同じ日または翌日に転院先で受診するなどの対策が必要です。転院を考えている方は、空白期間が生じないよう、十分に注意してください。

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傷病手当金がもらえない・減額されるケース

傷病手当金を受け取る際、以下の場合には支給が調整される、または支給されないことがあります。

 

  1. 老齢年金を受け取っている場合(退職後の場合)
  2. 障害厚生年金障害手当金を受け取っている場合
  3. 労災保険の休業補償給付を受け取っている場合
  4. 雇用保険の基本手当(失業手当)を受け取っている場合
  5. 出産手当金を受け取っている場合
  6. 国民健康保険の加入者フリーランスである場合
  7. 待期期間が発生していない場合
  8. 休職も給与をもらっている

 

これらのケースでは、傷病手当金が調整されたり支給されなかったりすることがあります。それぞれのケースについて詳しく解説します。

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老齢年金を受け取っている場合(退職後の場合)

退職後に老齢年金を受け取る場合、基本的には傷病手当金は支給されません。ただし、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた額)を360で割った金額が、傷病手当金の日額を下回る場合には、その差額が傷病手当金として支給されます。

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ただし、例外があります。障害厚生年金の年額を360で割った金額が、傷病手当金の日額を下回る場合、その差額が傷病手当金として支給されます。また、障害手当金を受け取る場合、傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまでは支給されません。その後、傷病手当金の支給が再開されることがあります。

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労災保険の休業補償給付を受け取っている場合

労災保険から休業補償給付を受けている場合、同じ傷病による労務不能であっても、傷病手当金は支給されません。

これは、休業補償給付傷病手当金が併給されないためです。また、仕事以外の原因で病気やケガをした場合でも、既に休業補償給付を受けている場合には、傷病手当金を受け取ることはできません。

ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額よりも低い場合には、その差額が傷病手当金として支給されることがあります。

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雇用保険の基本手当(失業手当)を受け取っている場合

雇用保険の基本手当(失業給付)は、働ける状態でありながら仕事が見つからない人に支給されるものです。一方、傷病手当金は、病気やケガで働けない人を対象とした支給です。そのため、雇用保険の基本手当と傷病手当金を同時に受給することはできません。

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出産手当金を受け取っている場合

出産手当金とは、女性が出産のために会社を休み、その期間中に給料が支払われない場合に支給される制度です。出産手当金の受給期間は、出産日の42日前から出産翌日以降の56日までが対象となります。

出産手当金傷病手当金の受給期間が重なる場合、出産手当金が優先して支給されます。ただし、出産手当金の金額が傷病手当金よりも少ない場合には、その差額が傷病手当金として支給されることがあります。

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国民健康保険の加入者やフリーランスである場合

傷病手当金は、健康保険に加入している方が利用できる制度であり、国民健康保険に加入している方は基本的に対象外です。これは、国民健康保険では傷病手当金の支給が義務付けられていないためです。

しかし、新型コロナウイルスの影響により、一部の市町村では国民健康保険加入者にも傷病手当金を支給するケースがありました。そのため、状況によっては国民健康保険でも傷病手当金を受け取れる可能性があります。

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待期期間が発生していない場合

傷病手当金は、連続して3日間休んだ後、4日目から支給される仕組みで、この最初の3日間を「待期期間」と呼びます。

たとえば、2日休んで1日出勤し、再び2日休むと待期期間が成立せず、傷病手当金は支給されません。しかし、3日連続で休んだ後に1日出勤し、その後休日が続く場合は待期期間が成立しているため、傷病手当金を受け取ることができます。

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休職中も給与をもらっている

傷病手当金は、ケガや病気で働けず、職場から給与が支払われない場合に支給される制度です。

休んでいる期間に給与が支払われている場合、基本的に傷病手当金は支給されません。ただし、支払われる給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額分が支給されます。

たとえば、休職期間中の給与が日額5,000円で、傷病手当金の日額が1万円の場合、差額の5,000円を受け取ることができます。

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退職後に傷病手当金を申請する方法

以下は、傷病手当金の申請方法について、在職中と退職後の違いを表にまとめたものです。申請業務の概要を把握し、スムーズに申請を進めるための情報を提供します。

項目 在職中 退職後
申請方法 会社を通じて申請 健康保険組合協会けんぽに直接申請
申請タイミング 継続して申請が必要。受給要件が整ったら2年以内に申請
必要書類 – 傷病手当金支給申請書(オンライン取得可)
– 障害厚生年金、障害手当金、老齢年金、労災保険給付、または第三者からの傷病の証明書類(該当者のみ)
申請方法詳細 健康保険組合または協会けんぽに書類を提出
(窓口、郵送、オンライン申請可能な場合あり)
申請後の流れ 支給の可否や支給日は、健康保険組合協会けんぽにより異なる。書類不備や医師への照会がある場合、時間がかかることがある

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重要なポイント

  • 申請のタイミング: 退職後も傷病手当金を受け取り続けるためには、継続して申請を行う必要があります。傷病手当金の受給には時効があり、要件が整ったら2年以内に申請を済ませましょう。療養中などで申請が難しい場合でも、必ず2年以内に申請するようにしてください。

 

  • 必要書類: 提出すべき書類には、「傷病手当金支給申請書」が必要です。また、障害年金や労災保険からの給付を受けている場合や、第三者が原因の傷病の場合には、関連する証明書類も合わせて提出する必要があります。

 

  • 申請方法: 退職後は、健康保険組合または協会けんぽに直接申請書類を提出します。提出は窓口や郵送、場合によってはオンラインでも可能です。

 

  • 申請後の流れ: 支給の可否や支給日のタイミングは各健康保険組合協会けんぽによって異なります。書類に不備があったり、医師に照会が必要な場合は、支給までに時間がかかることがあります。書類の書き方が分からない場合や、オンライン申請が可能かどうかは、会社や健康保険組合協会けんぽに問い合わせて確認してください。

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傷病手当金の受給期間が終了した後は?

傷病手当金の受給期間が終了しても、うつ病の症状が改善していない場合は、「障害年金」の申請を検討することをお勧めします。

1年6カ月の受給期限を超えても症状が改善しない場合、その時点で症状が固定されたと判断され、障害厚生年金の申請が可能となります。シームレスに支援を受け続けるためには、傷病手当金を受給している間に申請の準備を進めておくと良いでしょう。

ただし、申請のタイミングが早すぎると、傷病手当金と障害厚生年金を同時に受給してしまう可能性があります。その場合、障害厚生年金が優先され、傷病手当金が支給されないか、調整されることがあるため注意が必要です。

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うつ病が再発した場合に傷病手当金は再度もらえない?

再発した場合の傷病手当金

一般的には、最初の傷病手当金の支給開始日から、勤務再開期間を除いて1年6か月以内であれば、再発した場合も傷病手当金を受け取ることができます。

これは、一度症状が安定し、社会復帰を目指したにも関わらず、再び病気によって働けなくなった場合を考慮した制度です。

1年6か月を超えても受け取れるケース

1年6か月を超えていても、以下のケースでは傷病手当金を受け取れる可能性があります。

  • 元の病気が完全に治癒していた場合:
    • 一度完全に症状が消失し、その後別の病気として再発した場合には、別の疾病として扱われる可能性があります。
    • この場合、再び傷病手当金の対象となる可能性があります。

ただし、重要なのは、別の疾病と判断されるかどうかは、最終的に健康保険組合協会けんぽなどの保険者が判断するということです。

注意点

  • 診断書: 医師から、病気の状態や仕事に就くことができない期間などについて記載された診断書が必要になります。
  • 申請期間: 傷病手当金の申請には、期限があります。
  • 支給額: 傷病手当金の支給額は、健康保険の種類や、休業中の賃金などによって異なります。
  • 保険者の判断: 傷病手当金の受給については、健康保険組合協会けんぽの判断が最終となります。

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うつ病の方が利用できる傷病手当金以外の制度

労災保険

労災保険とは、仕事中や通勤中にケガや病気が発生した際に、休業補償給付を受け取ることができる制度です。うつ病の場合も、以下の条件を満たせば労災保険を利用することができます。

  1. うつ病を発症していること
  2. うつ病発症前の約6カ月間に、業務による強い心理的負荷があったこと
  3. 業務以外の原因でうつ病を発症したわけではないこと

労災保険休業補償給付として受け取れる1日あたりの金額は、直近3カ月間の給与を日割りした額の80%です。

この給付は、療養が必要で働けず、給与が支払われない場合に支給されます。しかし、1年6カ月を経過しても症状が改善しない場合は、労災保険の「傷病(補償)年金」に切り替わることになります。

 

障害年金

うつ病の方が利用できる制度の一つに「障害年金」があります。障害年金は、病気やケガで働くことが難しくなった場合に、生活を支えるために支給される年金です。うつ病などの精神疾患によって長期間にわたり日常生活や社会生活に支障をきたしている場合、障害年金の対象となる可能性があります。

障害年金の種類

障害年金には、障害基礎年金障害厚生年金の2種類があります。

  • 障害基礎年金: 国民年金に加入している方が対象で、うつ病などの精神疾患で日常生活が困難な場合に支給されます。主に自営業者や学生、無職の方が該当します。
  • 障害厚生年金: 厚生年金に加入している方が対象で、うつ病などによる障害で働けなくなった場合に支給されます。会社員や公務員が該当します。

支給条件

障害年金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 初診日が国民年金または厚生年金の加入期間中であること
    うつ病初診日が、年金保険に加入している期間中であることが重要です。初診日とは、うつ病などの診断を初めて受けた日を指します。
  2. 一定の障害等級に該当すること
    うつ病による症状が重く、日常生活や社会生活に支障がある場合、障害等級が認定されます。障害等級は1級から3級まであり、等級に応じて支給される年金額が異なります。
  3. 保険料の納付要件を満たしていること
    初診日の前日において、一定期間の年金保険料を納付していることが必要です。原則として、初診日の前々月までの期間で、2分の1以上の保険料を納付していることが求められます。

支給額と期間

障害年金の支給額は、障害等級や加入している年金の種類によって異なります。また、支給は原則として障害が続く限り行われますが、定期的に更新手続きが必要です。

申請方法

障害年金の申請には、医師の診断書や病歴・就労状況などの詳細を記載した申立書が必要です。申請は市区町村の年金事務所や、年金相談センターで行うことができます。申請には時間がかかることもあるため、早めに準備を始めることが重要です。

注意点

障害年金を申請する際には、診断書や申立書の内容が非常に重要です。専門家に相談しながら準備を進めることで、申請がスムーズに進む可能性が高まります。

障害年金は、うつ病で生活が困難な方にとって、経済的な支援を受ける重要な制度です。状況に応じて、適切に利用することを検討してください。

 

失業手当

失業手当とは、失業した方が生活の不安を軽減し、再び働けるようになるために支給される手当です。

失業手当を受け取るための条件は以下の通りです。

  1. 現在、失業していること
  2. 離職前の2年間で被保険者期間が通算で12カ月以上あること
    (※倒産ややむを得ない事情で離職した場合は、離職前の1年間で通算6カ月の被保険者期間があれば可能)

失業手当の日額は、以下の計算式で算出されます。

  • 離職直前の6カ月間の賃金の合計 ÷ 180 の約50〜80%

ただし、支給額には年齢に応じた上限があり、それ以上は受け取れません。受給期間は離職翌日から1年間ですが、その間にケガや妊娠・出産などの事情がある場合は延長が可能です。

自立支援医療

自立支援医療とは、うつ病をはじめとする精神疾患に対する治療時に、医療費の自己負担額を軽減する制度です。

この制度の対象者には、精神疾患を持つ方や身体障害者手帳の交付を受けた方、身体に何らかの支障をきたしている児童などが含まれます。

対象者によって軽減される自己負担額は異なりますが、精神疾患の方の場合、医療費の上限自己負担は1割となります。

また、所得によって自己負担額の軽減幅も異なるため、詳しい内容については、厚生労働省の「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」を参考にすると良いでしょう。

障害者手帳

障害者手帳は、障害を持つ方が申請することで、公共料金の割引や税金の控除などのサービスを受けられる制度です。

うつ病の方が申請できる障害者手帳には、「精神障害者保健福祉手帳」があります。この手帳は、うつ病統合失調症などにより、長期間にわたって日常生活や社会生活に支障がある場合に申請が可能です。また、手帳を申請するためには、うつ病統合失調症などの症状が初診日から6カ月以上経過していることが必要です。

手帳は2年更新になっており、有効期間は交付日から2年間で更新が必要です。更新手続きは有効期間が終了する月の末日までに行います。

 

生活保護

生活保護とは、生活が困難な方に対して必要な費用を支給する制度です。

生活保護を受けるための条件は、以下の通りです。

  1. 利用できる資産がないこと
  2. 就労が困難、または就労しても生活に必要な収入を得られないこと
  3. 年金や手当などを活用しても生活が維持できないこと

これらの条件に該当する場合、最低生活費から収入を差し引いた額が「保護費」として支給されます。

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うつ病の方が復職を目指すための支援

うつ病の治療を経て復職を目指す際には、どのようなサポートが受けられるのでしょうか。ここでは、復職に向けた支援サービスについてご紹介します。

職場復帰支援(リワーク支援)

リワーク支援とは、休職中の方が職場復帰するためのリハビリテーションプログラムで、復職支援や職場復帰支援とも呼ばれます。

このサービスは、生活リズムの調整、体調管理、職場復帰に向けた課題の実施、講座の提供、そしてコミュニケーション能力の向上を支援します。

また、休職者だけでなく、企業の担当者や主治医とも連携し、スムーズな職場復帰をサポートします。リワーク支援は、医療機関や地域障害者職業センター、企業などで実施されています。

 

 公共職業安定所(ハローワーク)

ハローワークは、求職者に対して幅広いサポートを提供する機関で、求人情報の探し方や応募書類の添削指導など、求職活動全般をバックアップします。全国に500カ所以上設置されており、どこにいても利用しやすいのが特徴です。

特に、障害を持つ方やうつ病を抱える方に対しては、専門的な知識を持つ職員や相談員が、個別に対応します。その方に適した求人の提供や、必要に応じた面接への同行など、きめ細かい支援が受けられます。さらに、障害者を対象とした就職面接会も開催され、障害者手帳を持っていない方も利用可能です。

参考:ハローワーク:障害のある皆様へ

就労移行支援

就労移行支援とは、障害やうつ病などを抱える方が一般就労を目指すための通所型の障害福祉サービスで、職探しや就労後の職場定着をサポートします。このサービスは、65歳未満の方を対象としており、就労に向けたトレーニングやサポートを提供し、就職および職場での定着を支援します。利用期間は基本的に24カ月までで、その間に就労を目指します。

就労移行支援事業所は国から補助を受けて運営されており、利用料は世帯の所得に応じて月ごとの負担上限額が設定され、利用者はその総額の1割を上限に支払う仕組みとなっています。

こちらも参考に:働きながら障害年金をもらえる人。障害者雇用枠フルタイムで仕事をしている場合

こちらも参考に:法テラスの立替制度を利用できる人の条件 | 収入や資力基準

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