この記事を読んでいらっしゃる発達・知的・精神障害の皆さんは障害や病歴を開示せずに働く「クローズ就労」について、どう思っていらっしゃるでしょうか?
障害や病気がある人が就職や転職を考える際には、クローズ就労とオープン就労、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分に合った就労枠を選ぶことが重要です。
本記事では、クローズ就労のメリットとデメリット、就職先の選び方について詳しく解説します。
さらに、障害ごとに分けてクローズ就労をする際の注意点もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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クローズ就労とは?:自分の障害を言わずに就労すること
クローズ就労とは、就職先に障害の内容を開示せずに働く就労形態です。障害者枠ではなく、一般枠での求人に応募し、伝えるとしても採用された後に障害を伝えることになります。
近年はクローズ就労を選択する人が増えています。しかし、メリットとデメリットを理解した上で、自分に合った働き方を見つけることが重要です。
クローズ就労のメリット3点
クローズ就労には大きく分けて3つのメリットがあります。これらのメリットは、障害者枠での就労となる「オープン就労」と比較して際立ちます。 後述するオープン就労のメリット・デメリットも併せて確認し、自分に適した雇用形態を選択することが重要です。 一番大切なのは、「あなたが長く働き続けられること」です。そのため、どの要素を重視すべきかを考えながら、順番に確認していきましょう。
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メリット①給与水準が比較的高い
クローズ就労のメリットの一つは、給与水準が比較的高いことです。
障害者枠と比較すると、クローズ就労では一般枠での正社員登用が多く、それに伴い給与水準も高めに設定されていることが多いです。
しかし、個人の給与は、実際の雇用形態や所定労働時間によって異なるため、一概に高額とは言い切れません。
業種や就労先によっては、特定の一般枠の給与よりも、他の専門的な職種での障害者枠の給与の方が高いというケースもあります。
そのため、給与水準の高さはあくまで傾向として理解し、実際の就職活動では、エントリー先の待遇を必ず確認してから、比較するようにしましょう。
以下、給与水準を比較する際のポイントをいくつか紹介します。
- 雇用形態: 正社員、契約社員、パート・アルバイトなど
- 所定労働時間: 1日あたりの労働時間、週あたりの労働時間
- 職種: 具体的な業務内容、必要なスキルや経験
- 福利厚生: 健康保険、厚生年金、雇用保険、各種手当など
- 昇給制度: 定期昇給、昇格制度など
- キャリアパス: 将来のキャリアプラン
給与水準は、就職活動の重要な判断材料の一つですが、それ以外にも上記のような要素を総合的に考慮することが重要です。また、最初から正社員での雇用が多いのもクローズ就労のメリットでしょう。障害者雇用はアルバイトまたは契約社員で正社員の登用が少ないとされています。
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メリット②求人数や職種が豊富である
クローズ就労の2つ目のメリットは、求人数や職種が豊富であることです。
2021年の障害者雇用促進法改正により、法定雇用率が引き上げられ、障害者枠の求人は増えています。しかし、一般枠の求人数と比較すると、依然として少ない状況です。
求人情報サイト「求人ボックス」で、「正社員/東京都/障害者採用の求人」という条件で検索してみると、2023年11月2日現在、2,599件の求人情報がヒットします。
一方、「障害者採用の求人」という条件を外した場合には、求人情報の数は1,596,584件となります。
つまり、クローズ就労では、一般枠と比べて約60万件もの求人情報の中から、自分に合った職場を見つけることができるということです。
求人数が多いというメリットは、以下のような点にあります。
- 希望に合った職場を見つけやすい: 自分のスキルや経験、希望する勤務地、福利厚生などを条件に、より多くの選択肢の中から選ぶことができます。
- 第一希望が叶わなくても、次点の就職先で十分に満足できる可能性が高い: 第一希望の職場に就職できなくても、その次に希望する条件に近い職場を見つけられる可能性が高くなります。
- キャリアアップの選択肢が広がる: 自分のキャリアプランに合わせて、より多くの職種に挑戦することができます。
職種の選択肢についても、一般枠の方が豊富です。
障害者枠のオープン就労では、事務職や一般職が多数であるのに対し、一般枠でのクローズ就労では、事務職・一般職に加えて、総合職や専門職などの多様な職種が選択可能なことが多いです。
具体的には、以下のような職種でクローズ就労を選択することができます。
- ITエンジニア
- デザイナー
- コンサルタント
- 営業職
- マーケティング職
- 研究開発職
求人数や職種の豊富さを優先したいという方には、クローズ就労は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
ただし、
- 希望する職種によっては、競争率が高くなる
- 障害をオープンにしていないため、周囲の理解を得る必要がある
などの点に注意する必要があります。
自分に合った働き方を見つけるためには、求人情報だけでなく、企業の理念や風土、障害者雇用への取り組みなども考慮することが重要です。
参考:指定特定相談支援事業者
メリット③キャリアアップしやすい
クローズ就労の3つ目のメリットは、キャリアアップしやすいことです。
求人数や職種が豊富なため、多様なキャリアを選択しやすいという点が挙げられます。
具体的には、以下のようなキャリアパスが考えられます。
- 特定の業務で専門性を深める: 自分の興味や強みに合わせて、特定の業務に集中してスキルを磨くことができます。
- ある部署で様々な業務を担当する: 異なる業務を経験することで、幅広いスキルを身につけ、視野を広げることができます。
- 異動する: 興味のある部署や、キャリアアップに繋がる部署へ異動することで、新たな経験を積むことができます。
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これらのキャリアパスを通して、
- 昇進・昇給: 能力や実績に基づいて評価されるため、昇進・昇給を目指すことができます。
- 転職・独立: 将来的に転職や独立を検討する際にも、豊富な経験やスキルが有利に働きます。
- 自己効力感の向上: 自分の力で成果を出すことで、「自分にはできる」という自信が生まれ、生きやすさに繋がります。
ただし、クローズ就労では、
- 希望した部署へ配属してもらえない: 障害の特性や企業の事情によっては、希望した部署へ配属してもらえない場合もあります。
- 障害に配慮した業務を担当できない: すべての業務が障害に配慮されているわけではなく、場合によっては無理な業務を任されることもあります。
このように、ある程度の「不自由さ」を受け入れる場面も起こり得るため、注意が必要です。
クローズ就労でキャリアアップを目指すためには、
- 自分のキャリアプランを明確にする: 自分がどのようなキャリアを積みたいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを明確にすることが重要です。
- 企業の障害者雇用への取り組みを事前に確認する: 企業の障害者雇用制度や、障害者に配慮したキャリア支援制度などを事前に確認しておきましょう。
- 周囲と積極的にコミュニケーションを取る: 自分の希望や考えを周囲に伝え、協力してもらうことが重要です。
参考:ジョブ型雇用とは?
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クローズ就労は、
- 希望する職種や業界で働ける可能性が高い
- 高い給与を得られる可能性がある
- キャリアアップしやすい
という3つのメリットがあります。
しかし、
- 障害をオープンにしていないため、周囲の理解を得る必要がある
- 希望した部署へ配属してもらえないことがある
- 障害に配慮した業務を担当できないことがある
などの注意点もあります。
自分に合った働き方を見つけるためには、
- メリットとデメリットを理解した上で
- 自分のキャリアプランや希望に合致するかどうか
を慎重に判断することが重要です。
障害や病歴に関する悩みを抱えている方は、一人で抱え込まずに、障害者就労支援機関や相談窓口などに相談することをおすすめします。
障害者就労支援機関URL一覧
政府機関
民間団体
- 一般社団法人 障害者就業支援センター(DPIJ)
- 一般社団法人 就職支援機構JEED
- 一般社団法人 障害者雇用促進協会
- 一般社団法人 全国障害者就労支援ネットワーク
- 一般社団法人 障がい者就労支援ネットワーク北海道
相談窓口
- 厚生労働省「障害者雇用ホットライン」: 0570-066-340
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用相談窓口」: 03-5546-4561
- 一般社団法人 障害者就業支援センター(DPIJ)「障害者就業相談窓口」: 03-5269-7222
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クローズ就労のデメリット・注意点4点
このセクションでは、クローズ就労の不利な側面や留意点を3つ提示します。 特に重要なのは、最初に述べる「障害を秘密にすることによる不安の発生」という点です。 クローズ就労はキャリアの発展がしやすいという利点がありますが、一方で、「障害を秘密にすることが不安を引き起こし、仕事に集中できない」という意見もあります。 そのため、クローズ就労を検討する際には、利点だけでなく不利な側面や留意点も考慮することが重要です。
注意点①障害を隠すことで不安が生じる
クローズ就労の最大の落とし穴は、「障害を隠すこと」による精神的な負担です。
キャリアアップという魅力の裏側で、クローズ就労には誰もが直面する落とし穴があります。それは、「障害を隠すこと」による不安です。
表面的には問題なく働けても、「いつバレるのか」「理解されないのではないか」という不安が心の奥底に常に存在し、仕事への集中力を奪いかねません。
2. 二次障害
無理をして障害を隠し続けた結果、うつ病や不安障害などの「二次障害」を発症してしまうケースも少なくありません。
心身の健康を損なうだけでなく、本来得られるはずのサポートを受けられず、孤立してしまう可能性もあります。
3. 葛藤が生む悪循環
「障害を隠したい」という気持ちと、「隠すことに苦しい」という葛藤は、精神的な負担をさらに悪化させます。
周囲に相談しづらいという状況が続き、孤独感や無力感に陥ってしまうことも考えられます。
注意点②障害への配慮を受けられない
障害を隠して働くクローズ就労では、本来受けられるはずの配慮やサポートを受けることができません。
1. 苦手な業務への挑戦:苦痛と葛藤
障害特性によって苦手な作業であっても、周囲には障害を理解してもらえないため、非障害者と同じように担当させられる可能性があります。
例えば、不注意傾向のあるADHDの人は、細かな事務作業を苦手とする傾向があります。
しかし、障害を隠している場合、勤め先では非障害者と同様に事務作業を命じられることがあるでしょう。
2. コンディション管理の難しさ
体調に波がある場合、休暇取得が必要になることがあります。
しかし、障害を隠している場合、体調不良による休暇は「単なるサボり」と誤解される可能性もあります。
有給休暇を使い果たしてもコンディションを整えられず、本来のパフォーマンスを発揮できない状況が続くと、「仕事ができない人」というレッテルを貼られ、職場の同僚から孤立してしまう可能性もあります。
こちらも参考に:嗜癖行動
注意点③就職先と支援機関の連携したサポートが得られない
クローズ就労では、障害を隠しているため、就職支援機関と職場の連携が途切れてしまいます。
オープン就労であれば、就職支援機関が企業と連携し、あなたに最適なサポートを提供します。
三者合同の定期面談では、業務内容の調整やカウンセリングを通して、困難を乗り越え、パフォーマンス向上を目指します。
しかし、クローズ就労では、支援機関はあなたとのみサポートを行うため、職場との連携はできません。
結果として、
- 一人で悩みを抱え込む
- 有効な仕事術を見つけられない
- 会社への働きかけができない
といった状況に陥ってしまう可能性があります。
クローズ就労を考える際には、
- サポートを受けられないことによる影響
- 孤独な戦いを強いられる可能性
をよく 考えることが重要です。
フリーランス時代は過集中で心身を壊していましたが、障害者雇用に変えてからは規則正しい生活が送れています
参考:心理的安全性
数字で見るオープン就労とクローズ就労の違い
障害者職業総合センターは、2015年度から2年間、公共職業安定所(ハローワーク)の職業紹介により就職した身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者の就職状況、職場定着状況及び支援状況等の就業実態を把握する本調査研究に取り組みました。 参考:障害者職業総合センター「調査研究報告書 No.137 障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年4月)」
1年間における職場定着率(表1)
就労継続支援A型求人 | 67.20% |
障害者求人 | 70.40% |
一般求人(障害開示) | 49.90% |
一般求人(障害非開示) | 30.80% |
その結果は障害者用に出ている求人の方が1年後の職場の定着率が良いとの結果になりました。
オープン就労との大きな違い
それでは、クローズ就労とオープン就労の大きな違いは何でしょうか? まず、オープン就労のメリットとして挙げられるのは以下の2点です。 ①支援機関による定期面談などのサポートを受けられる。 ②業務内容や配属先への配慮を受けられる。 クローズ就労のデメリットとして挙げられる点が、特に大きいのは「支援機関によるサポート」です。 クローズ就労の場合、特に就職後の「職場定着率」が課題とされています。 上記の表1を見ると、障害を非開示にして一般求人で採用されても、1年後に職場に定着している人は、「約30%」しかいないというデータがあります。そのため、障害を持つ方の就労においては、「職場に定着すること」が重要と言えます。 支援機関によるサポートが重要な理由は、その有無が職場定着率に大きな影響を与えるからです。 支援機関による定着支援の有無によって、就職1年後の職場定着率に「20%以上」の差が出ることがわかります。
職場定着を目指す上で、支援機関の果たす役割の重要性が理解できるでしょう。 一方、デメリット(注意点)としては、主に以下の2点が挙げられます。
・給与水準が比較的低い。
・求人数や職種が少ない。
こちらもクローズ就労のメリットの反対側に位置します。しかしながら、就職先や職種によっては、オープン就労での一般枠よりも給与やその他の条件が良いこともあります。 また、オープン就労の際には、基本的に障害者枠での採用となるため、障害者手帳が必要です。
クローズ就労での就職先を選ぶときのポイント3点
クローズ就労での就職先を選ぶときのポイントは以下の3つになります。
休職制度や福利厚生制度の整っている就職先を選ぶ
ひとつは、体調を崩したときでも安心して療養に専念できるような「充実した休職制度・福利厚生制度」を備えた就職先を選ぶことです。
例えば、長期の休職が可能であったり、休職中も一定額の給与が支払われる制度があれば、経済的な不安を抱えずに療養に集中できます。
また、復職後のキャリア支援制度などが充実していれば、安心して職場復帰を目指すことができます。
こちらも参考に:リワークプログラム・リワーク支援(心療内科・精神科)とは | メンタルヘルス不調により休職している方の職場復帰
もちろん、育児休暇や介護休暇など、ライフスタイルに合わせた制度も充実していることが望ましいです。こうした制度が充実している企業は、従業員のワークライフバランスを尊重し、個々の事情に柔軟に対応していることを示しています。
このように、休職制度や福利厚生制度は、将来の自分を守るための備えとして重要です。就職活動の際には、これらの制度内容をしっかりと確認し、自分に合った環境を選んでください。
こちらも参考に:休職期間満了による退職は解雇?それとも自己都合退職?注意点も解説
メンタルヘルス研修を行っている
近年、ストレスチェック制度の義務化など、労働者のメンタルヘルスへの取り組みが重要視されています。
2014年の改正労働安全衛生法施行や、2015年12月のストレスチェック制度の義務化など、社会情勢は大きく変化しています。こうした背景から、多くの企業が管理職だけでなく、一般職に対してもメンタルヘルス研修を実施するようになっています。
メンタルヘルス研修では、単にストレスチェックの結果を分析する方法を学ぶだけでなく、ラインメンタルケアの具体的な手順や、周囲の困りに気付き、適切なサポートを行う方法などを学ぶことができます。
例えば、ある企業では、ストレスチェックの結果に基づいた個別面談を実施し、メンタルヘルスの問題を抱えている社員に対して、カウンセリングや休職などのサポートを提供しています。
また、メンタルヘルス研修を実施することで、管理職だけでなく、一般職の社員も周囲の困りに気付き、適切な声掛けを行うことができるようにしています。
クローズ就労する場合であっても、希望する勤め先がメンタルヘルス研修を実施しているかどうかは、重要な判断材料となります。
研修内容を確認することで、企業が従業員の健康をどの程度意識しているかを推測することができます。
企業のホームページや求人情報などで、メンタルヘルス研修に関する情報を積極的に収集しましょう。
このように、メンタルヘルス研修は、企業にとってだけでなく、クローズ就労者にとっても重要な取り組みです。就職活動や転職活動の際には、メンタルヘルス研修の内容をしっかりと確認し、自分に合った環境を選んでください。
こちらも参考に:令和5年度「障害者雇用納付金制度」とは?雇用調整金や助成金の種類
参考:メンバーシップ型雇用
長く働き続けられる職場であるかを考えて選ぶ
最後のポイントは、「あなたが長く充実したキャリアを築ける職場であるかどうかを考えて選ぶ」です。
障害がある場合の就労においては、職場定着が非常に重要です。就職先を選ぶ際には、どうしても給与やキャリアに注目しがちですが、長期的な視点で「自分がこの職場で輝き、成長できるか」を真剣に考えるようにしましょう。
具体的には、以下の点を確認することをおすすめします。
- 職場の雰囲気: 自分が気持ちよく働ける環境であるかどうか。
- 通勤時間: 長時間の通勤は心身に負担がかかります。無理のない範囲で通勤できる場所を選びましょう。
- 転勤制度: 頻繁な転勤は生活リズムを崩し、ストレスの原因にもなります。自分のライフプランに合った転勤制度かどうかを確認しましょう。
- 休職制度・福利厚生制度: 将来、体調を崩したときや育児・介護が必要になったときに、安心して休める制度があるかどうかを確認しましょう。
- 職場の理解: 障害について理解があり、サポートしてくれる環境であるかどうか。
- 柔軟な働き方: 自分の体調や状況に合わせて、働き方を選択できる制度があるかどうか。
上記のポイントを参考に、希望する勤め先が長期的に活躍できる環境であるかどうかをしっかりと見極めましょう。長く充実したキャリアを築ける職場こそが、クローズ就労者にとって最高の職場と言えるでしょう。
このように、就職先を選ぶ際には、給与やキャリアだけでなく、長く充実したキャリアを築ける環境かどうかを重要な判断基準とすることをおすすめします。自分に合った職場を見つけることで、障害があっても輝ける、充実した仕事を実現することができるでしょう。
参考:クラウドソーシング
精神障害でクローズ就労をする際に気をつけたいポイント3点
この項目では、うつ病、躁うつ病、統合失調症の3つに焦点を絞り、精神障害でクローズ就労をする際に特に気をつけたいポイントについて解説します。
これらの疾患は、症状の波が大きく、自己判断で無理をしてしまうと、悪化につながる可能性が高いのが特徴です。
そこで、最も重要なポイントは、医師の診断に従い、指示された治療を必ず守ることです。
医師は、定期的な診察を通して、あなたの状態を細かく観察し、必要な治療を調整します。また、何かしら不調を感じたときにも、すぐに診てもらうことで、早期発見・早期治療につながります。
中には、「今は大丈夫だから」と、自己判断で通院や服薬を中断してしまう方もいるかもしれません。
しかし、一時的な無理は、後々大きなツケとなる可能性があります。
こちらも参考に:発達年齢が平均的な子の7~8割の「境界知能」とは?支援や大人の特徴も紹介
こちらも参考に:大人の「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?特徴やセルフチェックなど
①うつ病でのクローズ就労:小まめに休む
うつ病でクローズ就労を選択する方は、「小まめに休む」という原則を意識しましょう。
うつ病の方は、気付かないうちに神経を使い、疲労を溜め込みやすいという特徴があります。
そこで、以下の方法で小まめに休みを取るようにしましょう。
- 業務の合間に、トイレ休憩のような小休止を挟む
- 定期的に有給休暇などを取得し、終日休む日を作る
小まめに休みを取ることで、以下の効果が期待できます。
- 疲れをため込み、ベッドから起き上がることもできない状態を防ぐ
- 疲労を軽減する
- 周囲の人に対して、「定期的に休みを入れるのが、この人の働き方なのだ」と認識させる
また、長期休養が必要になった場合にも備えて、セルフケアで体調を維持する習慣を身につけることが重要です。
医師から長期の休養を打診された際には素直に従う方がよいですが、セルフケアで調子を戻すことに慣れるためにも、小まめに休みを取るようにしましょう。
周囲の理解を得ることも大切です。定期的に休みを取ることを周囲に理解してもらうことで、安心して休むことができます。
うつ病と上手に付き合いながら、長くクローズ就労を続けるためには、小まめに休みを取ることが重要です。
上記を参考に、自分に合った休暇の取り方を見つけてください。
参考:うつ病の残遺症状
躁うつ病(双極性障害)でのクローズ就労:業務量のコントロールについて
躁うつ病をお持ちの方は、「業務量をコントロールする」ことが大切です。
躁うつ病は、気分が沈む「抑うつ状態」と、気分が高揚する「躁状態」の両極端の状態を行き来する病気で、現在は「双極性障害」という名称で知られています。
躁うつ病の症状の中で特に警戒しなくてはならないのは、躁状態、もしくは抑うつ状態から躁状態に切り替わる「躁転」のタイミングです。
こちらも参考に:双極性障害、一型と二型の違い
躁状態では、衝動性が強くなり、抑制が効かなくなるため、周囲の人に迷惑を掛けたり、感情を抑えきれなくなったりするからです。
そして、躁状態のサインや躁転のきっかけになるものとして、特に過労が挙げられます。
躁のときには疲れ知らずになり自信にも満ちているため、つい過度に熱中して仕事をこなします。
しかし、そのまま続けて仕事をすると、症状を悪化させる可能性もあります。
そのため、躁うつ病での就労をお考えの人は、特に「業務量をコントロールする」ことが重要になります。
とはいえ、ご自身の力だけではどうにもならないこともあります。
障害を開示しないまでも、上司や同僚に「自分はスイッチが入ると働き過ぎてしまう傾向があるから、気づいたときに声をかけてください」など、働きかけるのがよいでしょう。
こちらも参考に:炭酸リチウム(リーマス)の特徴・作用・副作用
参考:ルネスタ
具体的には、以下のような方法があります。
- 業務量やスケジュールを事前に相談し、無理のない範囲で調整する
- 休憩時間をこまめに取る
- 周囲に、自分が躁状態になった時のサインを伝えておく
- 必要に応じて、休職制度を活用する
周囲の理解と協力を得ることで、業務量をコントロールし、躁うつ病と上手に付き合いながら働くことが可能になります。
上記を参考に、自分に合った働き方を見つけてください。
統合失調症でのクローズ就労:服薬の時間をきちんと守る
統合失調症をお持ちの方は、「服薬の時間をきちんと取る」ようにしましょう
統合失調症は、脳の様々な働きをまとめる機能に障害が生じたことで、幻覚や妄想などの症状が出る病気です。非常に再発率の高い病気であり、服薬を中止した場合には1年以内に「約80%」、2年以内に「98%」の方が再発することが知られています。
こちらも参考に:統合失調症とは原因、症状、治療方法を解説
統合失調症の治療には、幻覚や妄想を抑える抗精神病薬による薬物療法と、カウンセリングなどによる精神療法の2つがあります。
この2つはどちらも欠けることなく、両方を組み合わせることが重要ですが、中でも抗精神病薬の服用は治療の「前提」となるものだと考えられます。
もし統合失調症向けの薬であることを知られたくないという場合は、サプリメントや持病のためという言い方で茶を濁すのもひとつの手段でしょう。
統合失調症は、適切な治療によって、症状をコントロールし、社会生活を送ることが可能です。
服薬を継続することは、再発を防ぎ、症状を安定させるために非常に重要です。
上記を参考に、自分に合った治療法を見つけてください。
参考:電気けいれん療法
クローズ就労のよくある質問
-
Qクローズ就労とはどういう意味ですか?
-
Aクローズ就労とは、企業に障害があることを明かさずに就職する働き方です。一般求人に応募することで、障害者雇用に比べて、より多くの求人から自分に合った仕事を選ぶことができます。
こちらも参考に:うつ病で現れる初期症状・行動・対策や仕事復帰を目指すときのポイント 参考:コルチゾールとは?