【令和6年(2024年)報酬改定】個別支援計画書(ISP)の書き方、留意点と記載例|放課後等デイサービス

個別支援計画 書き方 例 発達障害知的障害

個別支援計画 書き方 例

  1. 【令和6年報酬改定】個別支援計画作成の留意点と記載例
    1. 個別支援計画書(ISP)の作成が必要な障害福祉サービス
  2. 個別支援計画書(ISP)とは?
    1. 個別支援計画書(ISP)はサービスの契約書
    2. 法令で作成が義務付けられている
  3. 個別支援計画全般に係る留意点
    1. こどもの意思を尊重すること
    2. こどもと家族の意向を反映すること
    3. 5つの領域に基づいた支援
    4. 具体的な支援内容の記載
    5. 継続的な評価と改善
  4. 各記載項目の留意点
    1. (1) 利用児及び家族の生活に対する意向
    2. (2) 総合的な支援の方針
    3. (3)  長期目標・短期目標
      1. (3)-1 長期目標
      2. (3)-2 短期目標
      3. (3)-3 支援の標準的な提供時間等(曜日・頻度、時間)
    4. (4) 支援目標及び具体的な支援内容等
      1. (4)-1 項目
      2. 支援ごとの留意点
        1. 本人支援
        2. 家族支援
        3. 移行支援
        4. 地域支援・地域連携
      3. (4)-2 支援目標
      4. (4)-3 支援内容
      5. (4)-4 達成時期
      6. (4)-5 担当者・提供機関
      7. (4)-6 留意事項
      8. (4)-7 優先順位
  5. 個別支援計画書(ISP)を作成する際に押さえるポイント
  6. 個別支援計画書(ISP)に必要な項目
  7. 個別支援計画書(ISP)作成の流れ
    1. 個別支援計画の手順
      1. 1.アセスメント
      2. 2.個別支援計画の原案作成
      3. 3.カンファレンス
      4. 4. 計画の修正、保護者様の同意と署名
      5. 5. サービス提供(モニタリング)
      6. 6.更新
  8. 個別支援計画書の書き方・記入例
    1. 記入のポイント
      1. 記載項目
  9. 個別支援計画書(ISP)の作成に必要な書類とは?
  10. 実地指導でひっかかりやすい個別支援計画書(ISP)の注意点とは?
  11. 【未作成減算の対象になることも】個別支援計画書(ISP)の不備で基本報酬が減算されることがある
  12. 個別支援計画書に関するよくある質問
  13. まとめ

【令和6年報酬改定】個別支援計画作成の留意点と記載例

こども家庭庁より個別支援計画(ISP)作成の参考様式が示されました。これには、発達支援の4つの支援内容(「本人支援」「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」)の具体例や、「本人支援」と5領域との関連性の明確化、インクルージョンの観点の盛り込み、モデル例が含まれています。

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個別支援計画書(ISP)とは、療育センターや発達障害支援事業、放課後等デイサービスにおいて、利用者の発達を支援するために作成される計画書です。障害福祉サービスを提供する障害者施設でも必ず作成され、利用者にどのようなサービスを提供するかを示す契約書のような役割を果たします。

この計画書は法令で作成が義務付けられており、適切に作成されていない場合、報酬の減算や行政指導の対象となることがあります。療育においては、入所時に作成されたものを6カ月ごとに見直し・再作成しながら支援計画を立てていきます。

本記事では、個別支援計画書(ISP)の作成方法、作成の流れや様式、具体例や作成のポイントについて詳しくお伝えします。

個別支援計画書(ISP)とは?

個別支援計画書(ISP)は、福祉サービスにおける契約書のようなもので、法令によって作成が義務付けられています。

適切に作成されていない場合、罰則が課せられることもありえます。

個別支援計画書(ISP)は、療育センターや発達障害支援事業、放課後等デイサービスにおいて、利用者の発達を支援するために明確な目標を持って作成されます。

入所時に作成し、その後6カ月ごとに見直し・再作成しながら支援計画を立てていくため、継続的な見直しが不可欠です。

この計画書を理解することで、より良い支援計画を作成することができます。

具体的には、どのような支援を提供するかを明確にし、利用者の発達や生活の質の向上を目指します。

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個別支援計画書(ISP)はサービスの契約書

個別支援計画書(ISP)は、事業所がどのようなサービスを提供するかを記載した、いわば契約書のようなものです。利用者の特定や必要な支援内容を明示し、事業所とスタッフはそれに基づいてサービスを提供します。これにより、計画的かつ効率的な支援が可能となります。

さらに、利用者やその保護者にとっても、個別支援計画書(ISP)があることで、安心してサービスを受けることができます。

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法令で作成が義務付けられている

法的にも、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」において、個別支援計画書(ISP)の作成が義務付けられています。また、計画書は児童発達支援管理責任者の有資格者が作成しなければならないことにも注意が必要です。

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個別支援計画全般に係る留意点

こどもの意思を尊重すること

計画を作成する際には、こどもの意思を尊重し、こどもにとって最善の利益を優先することが必要です。これは、こどもの年齢や発達段階に応じた意見を考慮することを意味します。

こどもと家族の意向を反映すること

計画の各項目について、こどもと家族の意向や評価を基に、一貫性を持って作成することが重要です。「こどもと家族の生活に対する意向」を踏まえ、「総合的な支援の方針」を設定し、それに基づいて「長期目標」や「短期目標」、そしてそれを達成するための「具体的な支援内容」を設定します。

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5つの領域に基づいた支援

「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5つの領域の視点を踏まえて、総合的な評価と支援を行うことが必要です。こどもと家族の状況を多様な情報から総合的に確認し、そのニーズや課題を捉え、必要な支援を組み立てます。単に5つの領域に当てはめるだけでなく、個別のこどもに合わせたオーダーメイドの支援を提供することが求められます。

具体的な支援内容の記載

「本人支援」「家族支援」「移行支援」の基本的な支援内容を必ず記載し、「地域支援・地域連携」についても必要に応じて記載します。医療機関との連携など、関係者が連携してこどもと家族を包括的に支援することが望ましいです。

継続的な評価と改善

PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を用いて、こどもの状態を定期的に評価し、適切な支援を提供します。個別支援計画(ISP)を作成した後も、継続的な評価と支援状況の把握を行い、支援目標の達成状況を評価し、計画を見直します。このため、支援目標や内容が長期間同じであることは想定されません。

参考:心身症とは?

参考:情緒障害とは?

各記載項目の留意点

個別支援計画書

参考資料
・こども家庭庁支援局障害児支援課 令和6年5月17日事務連絡 【別紙1】個別支援計画の記載のポイント
・こども家庭庁支援局障害児支援課 令和6年5月17日事務連絡 【別紙2】個別支援計画書の記載のポイント 参考様式版
・こども家庭庁支援局障害児支援課 令和6年5月17日事務連絡 【別紙3】個別支援計画書(参考記載例)

 

(1) 利用児及び家族の生活に対する意向

〇 こども本人や家族の意向を聞き取り、その情報やこどもの発達段階特性などを考慮して整理し、記載する。

【記載例】

  • 本人:「楽しく遊びたい」
  • 保護者:「場面に合った行動を自分で気付いて行えるようになってほしい」

参考:認知矯正療法

参考:認知行動療法(CBT)

(2) 総合的な支援の方針

〇 1年間を目途に(必要に応じてそれ以上の期間も可)、こどもや家族、関係者が共通の認識を持ち、支援の見通しやイメージを共有できるように、事業所としてのこどもの状況の評価と支援方針を記載します。

  • 障害児支援利用計画や障害児支援担当者会議(セルフプランの場合、事業所間連携加算などを活用し、複数の事業所を集めた支援連携のための会議)の役割
  • 支援場面だけでなく、家庭や通っている保育所、幼稚園、放課後児童クラブ(以下「保育所等」)や学校での生活や成長の視点
  • 保育所等の併行利用や移行、同年代のこどもとの仲間づくりなど、インクルージョン(地域社会への参加・包摂)の視点
  • こどもが事業所を継続的に利用している場合、個別支援計画のモニタリング結果を基にしたPDCAサイクルによる支援の適切な提供の視点

【記載例】 ○○さんは、言葉よりも視覚的な手掛かりの方が理解しやすいと評価されています。このため、目の前の情報が動きに繋がりやすく、説明の理解が曖昧なまま活動に取り組むことがあり、集団での活動において流れに沿わない行動として捉えられることがあります。視覚的な情報処理が優位という特性を活かし、手順や活動の流れを視覚化・スケジュール化(構造化)することで、より確実な理解を促していきます。

また、本人が気持ちをタイムリーに表現できる手段(例:複数の絵カードや具体物から指差しする、該当するカードや具体物を大人に手渡すなど)を使用し、まずは大人とのやり取りの中で、「わかった」「伝わった」経験を楽しみながら丁寧に積み重ねていきます。

この取組を中心に保育園とも情報を共有し、必要に応じて訪問などの方法で連携を図り、保育園での生活の中でもより多くの「わかった」「できた」に繋がるよう支援していきます。

(3)  長期目標・短期目標

(3)-1 長期目標

〇 総合的な支援方針に基づき、概ね1年で達成を目指す目標を設定して記載します。

【記載例】

  • 視覚的なスケジュールを手掛かりに指示を理解し、わからない時には様々なコミュニケーション手段を用いて大人に聞くことができる。

(3)-2 短期目標

〇 長期目標を踏まえ、概ね6か月で達成を目指す目標を設定して記載します。

【記載例】

  • 見える化された手順やスケジュールを大人と一緒に確認し、設定された活動時に自分で動けるようになる。
  • 大人の介在のもと、絵カードやイラストを用いて「これで遊びたい」などの具体的な意思を友達に表現できるようになる。

参考:認知的技能訓練

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(3)-3 支援の標準的な提供時間等(曜日・頻度、時間)

【記載例】

  • 個別支援:毎週月曜日14:30-15:15(状況により週2回の利用も可能)
    心理担当職員(月3回)、作業療法士担当(月1回)
  • 小集団支援:毎週水曜日9:15-14:45(保護者の都合により2時間の延長支援の可能性有)

(4) 支援目標及び具体的な支援内容等

こどもの利用頻度や発達の程度に応じて、項目欄を増減させるなどの調整を適宜行うことができます。

(4)-1 項目

〇 「本人支援」「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」を項目欄に記載します。

〇 「本人支援」「家族支援」「移行支援」は必ず記載し、「地域支援・地域連携」については必要に応じて記載しますが、積極的に取り組むことが望ましいです。

支援ごとの留意点

本人支援
  • こどもの発達を支援するために、5つの領域(「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」)との関連性を含めて記載します。すべての領域が関連付けられるようにし、必要に応じて各領域に対応する記載を行います。
  • 保育所などと併行利用する場合は、他の事業所との役割分担を考慮し、自事業所の支援内容を記載します。

 

家族支援
  • 家族支援については、こどもの成長・発達の基盤となる親子関係や家庭生活の安定と充実を目的とします。

【家族支援の例】

  • こどもの発達状況や特性の理解に向けた相談援助や講座の実施
  • 子育てに関する困りごとの相談援助
  • レスパイトや就労支援などの預かりニーズへの対応
  • 保護者同士の交流の機会の提供
  • きょうだいへの相談援助や子育てに関する情報提供

 

移行支援
  • インクルージョンを推進するため、こどもや家族の意向を踏まえた「移行支援」を記載します。これは保育所などの他の施策との併行利用や移行に向けた支援を含みます。
  • 移行支援には、入園・入学などのライフステージの切り替えを見据えた準備や、地域社会での生活支援が含まれます。

【移行支援の例】

  • 保育所などへの移行に向けた調整、支援内容の共有、受入体制づくりへの支援
  • 移行に向けた発達支援や本人・家族への相談援助
  • 保育所などと併行利用する場合の情報共有と支援内容の調整
  • 地域の保育所や子育て支援サークルとの交流

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地域支援・地域連携
  • こどもと家族を中心に、保健・医療・福祉・教育・労働などの関係機関と連携して包括的な支援を提供します。
  • 個別支援計画では、こどもと家族への具体的な支援取組を記載します。

 

【地域支援・地域連携の例】

 

個別支援計画 参考記載例

 

(4)-2 支援目標

〇 支援期間が終わる時点で達成していることが期待される「こども本人や家族の状況」を具体的な目標として記載します。

〇 こども本人や家族の希望だけでなく、アセスメントの結果も考慮して、必要と思われる支援も含めた目標を設定します。

〇 目標は基本的に、こども本人や家族を主語にして記載します。ただし、「移行支援」や「地域支援・地域連携」の場合、支援方針や連携体制によっては、事業所や関係機関、関係者が主語となることもあるため、柔軟に対応します。

(4)-3 支援内容

〇 支援目標(具体的な到達目標)を達成するために、事業所がどのような支援や工夫、配慮を行うかを具体的に記載します。

〇 「本人支援」については、具体的な支援内容と5つの領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)との関連性を記載します。支援内容が複数の領域に関連する場合は、すべての関連する領域を記載します。

〇 「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」については、家族や関係機関への具体的な働きかけや取り組みについて記載します。これらの項目については、5つの領域との関連性を記載する必要はありません。

(4)-4 達成時期

〇 支援目標を達成するために必要な期間を設定します。

個別支援計画(ISP)は、6か月に1回以上見直す必要があるため、達成時期は最長で6か月後までに設定します。1~3か月で達成できる目標も積極的に検討します。

 

(4)-5 担当者・提供機関

〇 主に支援を行う担当者の名前や職種を記載します。

〇 「移行支援」や「地域支援・地域連携」で関係機関との連携が支援内容に含まれる場合は、具体的な連携先の機関名なども記載します。

(4)-6 留意事項

〇 支援内容に含まれる取組が加算対象となる場合、算定する加算の種類や頻度を記載します(例:子育てサポート加算、家族支援加算、関係機関連携加算など)。

個別支援計画(ISP)とは別に計画を作成する必要がある加算についても、個別支援計画との関連性を記載します(例:専門的支援実施加算、自立サポート加算など)。

〇 家族の役割や支援の進め方など、支援に関する補足事項があれば記載します。

(4)-7 優先順位

〇 こどもや家族の意見を考慮しながら、こどもの支援ニーズや課題、現在とこれからの生活状況に基づいて「本人支援」の各内容について優先順位を決めます。こどもの発達段階特性について、こどもや家族と共通の理解を持ち、一緒に考えながら決めるのが望ましいです。

〇 優先順位を番号で示すだけでなく、二重丸や丸などで優先度を表すことも問題ありません。また、優先度がつけられない場合や判断できない場合は空欄にしたり、同じ番号を付けることも問題ありません。

〇 「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」については、優先順位の記載は必要ありません。

個別支援計画書(ISP)を作成する際に押さえるポイント

個別支援計画書(ISP)を作るときは、次のポイントを押さえましょう。

 

  • 利用者や保護者が望む生活を実現するための支援計画を立てる
  • 利用者に努力を求めるのではなく、どんな支援をすれば目標が達成できるかを具体的に書く
  • 児童発達支援管理責任者が一人で決めるのではなく、利用者や保護者、職員と一緒に会議をして作成する
  • 作成した計画書に基づいて支援を行う
  • 最低でも6カ月ごとに見直しをする

 

個別支援計画書(ISP)は、療育の進め方を示す重要な書類です。目標は、利用者や保護者が望むことや、利用者の生活の質(QOL)を向上させるためのものにしましょう。

また、利用者にとって不可能なことを書いたり、努力を求めるだけでは意味がありません。不可能を可能にする方法や、どんな支援が利用者の発達を助けるかに焦点を当てた内容にしましょう。

作成した計画書は、必ず利用者本人や保護者、他の職員と一緒に会議で確認し、最終決定を行います。利用者や保護者だけでなく、児童指導員、心理士、言語聴覚士、作業療法士理学療法士などの専門家の意見も取り入れて、効果的な個別支援計画書(ISP)を作成することが重要です。

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参考:精神科デイケア

個別支援計画書(ISP)に必要な項目

個別支援計画書(ISP)には、次の項目を書きます。

  • 利用者の今の状態
  • 利用者のニーズ
  • 主要な目標とその達成時期
  • その他の目標とその達成時期
  • 個別支援(ISP)の内容
  • 支援を行うときの注意点

 

個別支援計画書(ISP)作成の流れ

正しいプロセスで個別支援計画(ISP)を作成するにはどのようにすればいいのか考えてみましょう。作成書類も含め、作成の流れを児童発達支援の場合を例でご紹介します。

 

個別支援計画の手順

  1. アセスメント
  2. 個別支援計画の原案作成
  3. サービス担当者会議
  4. 計画の修正、保護者様の同意と署名
  5. サービス提供(モニタリング)
  6. 更新

上記のサイクルを繰り返す

 

1.アセスメント

個別支援計画書(ISP)を作成するために、まず保護者様と面談し、アセスメント(聞き取り)を行います。原則として、児童発達支援管理責任者(児発管)が面談を担当し、見学や体験時に行うこともあります。

 

面談では、利用者(子ども)の障害特性を把握し、現状の課題や本人、家族のニーズを整理します。特に児童発達支援の場合、本人が上手く意思表示できず、家族のニーズが優先されることがあるため、支援者は専門家として本人の意向もくみ取りながらアセスメントを行うことが重要です。

 

児発管は、アセスメントで次の内容について聞き取りを行います。

 

  • 利用者の特性(得意なことや不得意なこと、保護者の視点も含む)
  • 利用者の今後の希望(何をしたいか、何をできるようになりたいか)
  • 保護者の今後の希望(療育でどのような支援をしてほしいか)

 

アセスメントを行った日時や内容について記録を取り、情報を保管しておくことも重要です。これらの記録は、個別支援計画書(ISP)の作成や今後の支援方法を考える際に必要となる場合があります。

作成書類

  • アセスメントシート
  • 面談記録

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参考:障害者職業生活相談員

2.個別支援計画の原案作成

アセスメントを元に、児童発達支援管理責任者(児発管)個別支援計画書(ISP)の原案を作成します。この段階では、OJT中の児発管でも作成が可能です。

原案には、利用者や家族の生活に対する意向や総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、提供するサービスの目標と達成時期、サービスを提供する上での留意事項などを盛り込みます。利用者の気持ちに寄り添い、適切な支援方法を記載していくことが大切です。

また、フェイスシートやサービス等利用計画案もこの段階で用意するとスムーズです。

作成書類

 

3.カンファレンス

個別支援計画書(ISP)の原案ができたら、他のスタッフを交えてカンファレンス(担当者会議)を行います。カンファレンスには、利用者と関わるすべてのスタッフが参加することが望ましいです。

児童指導員、保育士、心理士理学療法士作業療法士、言語聴覚士など、各専門分野のスタッフから意見を募り、個別支援計画書(ISP)について詳細を話し合います。原案の内容で利用者の希望に沿った支援が可能か、他に効果的な支援方法がないかなど、様々な意見を交わしながら、個別支援計画書(ISP)の内容をブラッシュアップしていきましょう。

アセスメントと現状にずれがないかを確認し、話し合いを基に短期目標や長期目標など計画の詳細な内容を作成します。支援内容は、「〇〇を頑張る」といった不明瞭なものではなく、「いつ」「どこで」「誰が」「どんな」といった形で、具体的かつ明確に定める必要があります。

カンファレンスの内容もアセスメント同様に記録しておきます。開催日時や話し合った内容などの議事録を保管しておくことが重要です。

作成書類

  • 担当者会議の議事録

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参考:特定理由離職者

4. 計画の修正、保護者様の同意と署名

担当者会議を元に修正した個別支援計画書(ISP)を最終的に作成し、保護者様に説明して交付します。内容について十分に説明し、利用者と保護者が同意した場合に署名をもらいます。押し印が慣例となっていますが、自治体によっては署名のみで良い場合もあります。心配な場合は、念のため印鑑ももらっておくと安心です。

作成した個別支援計画書(ISP)は、正式な支援指針として担当スタッフにも公開し、支援を行う上でのガイドラインとして利用します。計画書の署名付きのコピーと受給者証のコピーも保管しておきます。

作成書類

  • 個別支援計画(署名あり)
  • 受給者証のコピー

 

5. サービス提供(モニタリング)

個別支援計画に基づき、サービスを提供します。支援を行う際は、スモールステップを意識し、達成できた目標について振り返りを行いましょう。また、経過をモニタリングとして記録しておきます。

個別支援計画書(ISP)は作成して終わりではなく、定期的に見直しを行います。特に、計画作成後は6ヵ月に1度以上のペースでモニタリングを行い、目標が達成できているか、計画通りに適切な支援が行えているかを確認します。モニタリングの日時や内容も記録し、適切に保管することが大切です。

特に年齢の低い子どもの場合、成長や発達のスピードが速いため、短期間でのモニタリングが必要です。支援内容を変更する場合には、再度個別支援計画書(ISP)を作り直します。

作成書類

  • 支援記録
  • モニタリング記録

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6.更新

「PDCA」サイクルに従い、6か月以内に個別支援計画(ISP)を更新します。このとき、目標を達成したかどうかだけでなく、支援が効果的だったかどうかを客観的に評価することが重要です。更新の際には、保護者の同意と署名が必要です。

これは、個別支援計画(ISP)を作成するまでの流れです。管理者や児発管としての業務と並行して行うため、効率良く進めることが大事ですが、以下の点も考慮しましょう。

 

  • 児童と保護者が何に困っているか
  • 事業所が提供する療育との整合性
  • 保護者が理解できる内容になっているか

 

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個別支援計画書の書き方・記入例

個別支援計画書(ISP)の書き方と記入例について、実例に近い形で説明します。個別支援計画書(ISP)には決まった形式がなく、障害福祉サービスごとに異なります。自治体によっては、参考様式を公開しているところもあるので、迷ったときはまず所属の自治体に様式があるか確認すると良いでしょう。

 

おおよそ以下のような項目を記載する必要があると考えられますので、参考になさってください。

➀利用者氏名:利用者の名前を記載します。

➁作成日:年月日入りで作成日を記載します。他の書類の日付と前後しないように注意しましょう。

③次回モニタリング日:必須ではありませんが、記載しておくと管理がしやすくなります。

➃ニーズ:本人や家族のニーズを記載します。アセスメントの内容と矛盾がないように注意しましょう。

➄目標:長期目標と短期目標を設定します。短期目標は3か月から半年、長期目標は1年程度を目安に考えます。

⑥支援項目:発達に関する支援(発達支援)、家族への支援(家族支援)、地域とのつながりや生活についての支援(地域支援)を記載します。割合は発達3:家族1:地域が望ましいとされています。

⑦具体的な到達目標:支援期間終了後に利用者や家族がどうなっているかを記載します。主語は利用者や家族にしましょう。

⑧支援内容:目標達成のためにどんな支援や工夫をするかを具体的に記載します。家族支援や地域支援の場合も具体的に記載し、主語は事業所にします。

⑨支援期間:目標達成までの支援期間を記載します。長期目標や短期目標の期間と整合性を保ちましょう。

⑩担当者:誰が支援の中心となるかを記載し、役割を明確にします。

⑪優先順位:ニーズや現在の状態に合わせて支援の優先順位を記載します。

⑫説明者:個別支援計画(ISP)を説明する人を記載します。

⑬署名欄:説明者、児童発達支援管理責任者、保護者の署名と交付日を記載します。保護者の印鑑については、自治体ごとに取り決めが異なる場合があります。

※紹介した様式は一般的なものです。

自治体によっては様式が用意されている場合があるので必ず障害福祉課等で確認するようにしましょう。

記入のポイント

個別支援計画(ISP)には決まった形式はありませんが、ガイドラインに基づいて以下の項目は必ず記載しましょう。特に支援内容は、誰が見てもどんな支援を行っているか分かるように具体的に書き、担当スタッフも明確にします。

記載項目

  • 本人、家族のニーズ:本人や家族が何を必要としているかを書きます。
  • 長期目標、短期目標:達成したい目標を長期と短期に分けて設定します。
  • 支援内容:発達支援、家族支援、地域支援の具体的な内容を書きます。
  • いつ、誰が、どこで、どのように、どのくらい支援するか:支援の詳細を具体的に記載します。
  • 説明者、児童発達支援管理責任者、保護者欄:これらの人の名前や署名欄を設けます。

こちらも参考に:障害手当金とは?申請方法と注意点

参考:自己破産

個別支援計画書(ISP)の作成に必要な書類とは?

個別支援計画書(ISP)の様式や作成する書類には法令上は明確な決まりはありませんが、条例や自治体のガイドラインで定められている場合がありますので、必ず確認しましょう。下記は一例となります。

  • サービス担当者会議録
  • アセスメントシート
  • 面接記録
  • 個別支援計画原案
  • 担当者会議録
  • 個別支援計画書(ISP)の(作成者、保護者等の署名)
  • 支援記録
  • モニタリング

参照:事例1「地域の関係機関との連携により、母の障害受容を支援しながら療育につなげた事例」

 

 

実地指導でひっかかりやすい個別支援計画書(ISP)の注意点とは?

個別支援計画書(ISP)は、障害福祉サービスの契約書のような重要な書類です。実地指導の際には特に厳しくチェックされます。不備があると報酬の減算や行政指導の対象となり、場合によっては指定取り消しの可能性もあります。以下は、実地指導で問題とされた項目です。

  • 作成者が児発管ではなく、指導員や管理者の名前になっている
  • 更新日が6か月以内ではない(日付はよく確認してください)
  • 保護者に署名をもらっていない(署名だけでなく、日付も必要です)
  • 原案、会議録、モニタリングが抜けている(更新時のモニタリングも注意)
  • 氏名や日付を間違っている
  • 記載すべき加算を記載していない(必要な加算は別途確認が必要です)
  • 個別支援計画未作成減算をせずに不正に請求していた
  • 個別支援計画(ISP)が画一的である

各都道府県が公表している指導内容を参考に、これらの点に注意して計画書を作成しましょう。

こちらも参考に:ハローワークの障害者求人探す方法。相談窓口の活用

参考:総合法律支援法

【未作成減算の対象になることも】個別支援計画書(ISP)の不備で基本報酬が減算されることがある

個別支援計画書(ISP)に不備がある場合について、特に注意したいのが個別支援計画未作成減算です。

未作成とみなされると【減算が適用される月から2月目までは所定単位数の30%を減算、3月目からは所定単位数の50%を減算(厚生労働省告示第五百二十三号)】と大幅減算が適用になります。

個別支援計画は、サービス開始前に速やかに作成することが原則です。

こちらも参考に:精神障害者雇用にまつわる誤解 | 就業上の配慮と雇用時のポイント

こちらも参考に:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の詳細と申請方法

個別支援計画書に関するよくある質問

Q
個別支援計画書(ISP)は誰が作成するのですか?
A

個別支援計画(ISP)は、児童発達支援管理責任者が作成します。 障害児支援利用計画における総合的な援助方針等を踏まえて、事業所が提供するサービスの適切な支援内容等について検討をし、児童又は保護者の同意のもと作成にあたります。

こちらも参考に:障害福祉サービス受給者証について【障害福祉サービス】種類、申請から利用までの流れ

こちらも参考に:炭酸リチウム(リーマス)の特徴・作用・副作用

Q
個別支援計画(ISP) いつまでに作成?
A

個別支援計画書(ISP)6か月以内の再作成が必須となります。

参考:障がい者雇用とは?

参考:障害者雇用促進法とは?

まとめ

2024年度の報酬改定により、個別支援計画(ISP)は、より質の高い支援を提供するために重要な役割を担っています。

こども家庭庁のガイドラインに基づき、5領域(「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」 「人間関係・社会性」)の視点を取り入れた個別支援計画を作成することが求められています。

個別支援計画書(ISP)は、障害福祉サービスを提供する上で最も重要な書類であり、実地指導でも特に厳しくチェックされるポイントです。 利用者一人ひとりに寄り添った質の高い支援を提供するために、各自治体の規定に基づいて正確に作成することが重要です。

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