近年、「大人の発達障害」や「ADHD(注意欠如多動症)」という言葉が広く知られるようになり、その特徴や生活上の困りごとへの対処法が注目されています。
ADHDは発達障害の一種で、テレビや雑誌でもよく取り上げられるようになっています。この記事では、大人の発達障害の分類や特徴、男性と女性での特性の違い、そして特性が見過ごされやすいタイプについて、よくある事例を交えながら解説します。
この記事では、大人のADHDについて、診断基準や特性、日常や仕事でのよくある事例、対処法、治療方法などを詳しく紹介します。さらに、ADHDの方への配慮ポイントもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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- 大人のADHD(注意欠如多動症)とは?
- 男女で違いはある?ADHDの場合
- ADHDに見られる種類と特徴
- ADHDの原因
- ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の違い
- 職場での「困りごと」と「対処方法」
- 大人の発達障害の方への配慮のポイント
- 自分に自信が持てず二次障害に発展することも
- 大人のADHDは治療で改善できる?
- ADHD治療薬の副作用
- 治療薬以外で特性や症状を改善する方法
- ADHDとわかったら?知っておきたい相談先
- ADHDの方に向いている仕事
- まとめ
大人のADHD(注意欠如多動症)とは?
発達障害とは、生まれつき脳の機能発達に偏りがあり、コミュニケーションが苦手だったり、不注意で落ち着きがないなど、日常生活に支障をきたす状態を指します。
先天的な脳の特性によるもので、親の育て方や心の問題が原因ではありません。特に「大人の発達障害」は、大学生以上の年齢の人に見られ、子供の頃には症状が軽かったために気づかれなかったものが、大人になって複雑な人間関係や業務に直面することで顕在化することがあります。
大人の発達障害は、職場での人間関係のトラブルや頻繁なミスなどが原因で、仕事を続ける上で大きな壁となることが少なくありません。
特にADHD(注意欠如多動症)の場合、静かにしていられない、衝動的な行動、相手の話を遮る、貧乏ゆすりやペン回しの癖があるといった「多動・衝動性」が特徴です。これらの行動は、特に男性に多く見られ、職場でのトラブルや集団行動の場面で問題になることがあります。
さらに、発達障害のある人は真面目な性格の方も多く、他人のルール違反や間違いに敏感になり、注意してしまうことがあります。たとえその指摘が正しくても、融通が利かないという印象を持たれがちです。
また、場面ごとに適切な行動や発言を調整することが苦手なため、以前の状況で許された行動を別の場面でも同じように捉えてしまうことが多く、結果として応用がきかないと見られることもあります。
こうした特性は、職場のルールやマナーと合わない場合に問題を引き起こすことがありますが、一方で特定の仕事ではその特性が活かされることもあります。発達障害の特徴を理解し、それぞれの適性に応じた対応が重要です。
男女で違いはある?ADHDの場合
大人の発達障害については、男女間で特徴や困りごとの現れ方に違いがあるとされています。ADHDと診断される男性と女性の比率は、2.5:1から1.5:1程度で、幼少期には男性が診断されることが多いものの、大人になるとその差は縮まる傾向にあります。
ただし、これはあくまで現時点での一般的な傾向であり、すべての男性や女性に当てはまるわけではありません。男女それぞれの特性や困難が異なる場合もあるため、個別の対応が重要です。
男性は多動・衝動性、女性は不注意傾向が強い
ADHDには「不注意」と「多動・衝動性」という2つの特徴がありますが、男女によってその現れ方に違いがあることが知られています。男性には「多動」や「衝動性」が強く出る傾向があり、女性には「不注意」の特徴が目立つことが多いようです。
男性の場合、「学校でじっと座っていられない」などの多動や衝動性の行動は周囲からも目立ちやすく、気づかれやすい一方、女性の「不注意」は「授業中に別のことを考えていて指示されたことができない」など、外見からは分かりにくいため、見過ごされやすい傾向があります。
また、男性の多動や衝動性は身体的な動きに現れることが多いですが、女性の場合、「自分の話したいことを周囲を気にせず話し続ける」といった形で会話に現れることが多く、典型的なADHDの「じっとしていられない」イメージに当てはまらないため、見逃されがちです。このため、幼少期に女性のADHDが診断されることが少ない理由の一つと考えられています。
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ADHD女性は「女性らしい行動」を求められても困る
ADHDには、多動性・衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型の3つのタイプがありますが、女性には特に不注意優勢型が多い傾向があります。
このタイプの女性は、整理整頓が苦手、忘れっぽい、仕事を始めたり続けたりするのが難しいといった特徴を持つことが多く、周囲から「ぼんやりしている」や「不思議ちゃん」と見られることがあります。しかし、これが単に「さぼっている」や「気が利かない」と誤解され、適切な支援を受けられないまま成長してしまうことも少なくありません。
子供の頃には「少し抜けている」程度で済んでいた行動も、大人になると「女性らしい細やかな気遣い」を求められるようになり、周囲からネガティブに評価されやすくなります。また、家事や片づけが苦手な人も多く、「女性だから家事ができて当然」というプレッシャーを感じたり、家事ができない自分を責めてしまうこともよくあります。
一方、多動性・衝動性優勢型や混合型であっても、女性は男性と異なる症状を示すことが多く、たとえばおしゃべりが止まらない、髪の毛をいじる、貧乏ゆすりをするといった行動が目立ちます。こうした特徴は気づかれにくいですが、本人にとっては非常に大変な状況であることには変わりありません。周囲が理解し、適切な支援を提供することが重要です。
ADHD男性は集団生活でのトラブルが起こりやすい
ADHDの多動性や衝動性の特性により、他人の話に必要以上に首を突っ込んだり、思わず相手の気に障ることを言ってしまうなど、人間関係や学校、職場でトラブルを引き起こしやすい傾向があります。
思いついたことをすぐ口にしてしまったり、人の話を聞かずに早合点してしまうこともあり、その結果、信頼を失うことや誤解を招くことも少なくありません。多動性によってじっとしていられず、集中して作業に取り組むのが難しく、仕事中に落ち着かない気分になることもしばしばです。時には席を離れたくなる衝動に駆られることもあります。
一方で、特性が目立ちやすい場合もあれば、見過ごされることも多くあります。特に男性の場合、「男の子だから元気なんだね」と多めに見られてしまい、行動を修正する機会が失われることがあります。また、不注意の特性が強い男性は、周囲からは問題行動が目立たないため、気づかれにくい傾向にあります。
どちらの場合も、成長するにつれて要求される振る舞いが高度になり、職場で集中して作業することを求められた際に、初めて問題が顕在化することがあります。ADHDの特性が表面化しやすい場面では、適切な支援と理解が必要です。
ADHDに見られる種類と特徴
ADHDの人は、集中力が続かなかったり、じっとしていられなかったり、思ったことをすぐに口に出してしまうといった特徴があります。これらの特徴は、大きく分けて「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分けられます。
不注意優勢型
不注意優勢型のADHDは、集中力が続かないために、うっかりしたミスや忘れ物が多くなる傾向があります。普通の人でもミスをすることはありますが、ADHDの人はその頻度や度合が大きく、本人のやる気や能力不足ではなく、脳の発達機能の偏りが原因とされています。特徴として、気が散りやすく、話を最後まで聞けなかったり、細かいミスを繰り返したり、整理整頓や時間管理が苦手といった点が挙げられます。
仕事の場面では、例えば上司の指示を聞いていても別のことに気を取られて聞き逃したり、電話で約束した日時をすぐに忘れてしまうことがあります。また、書類の紛失や記入不備、職場の雑音に気を取られて集中できず、作業が遅れることもよくあります。このようなミスが重なると、周囲から「やる気がない」「誠実でない」「仕事ができない」と誤解されやすく、本人も一生懸命やっているのにうまくいかないことに悩むことが少なくありません。
簡単に見えることでもミスをしてしまったり、大事な約束を忘れてしまうことがあるため、特性に対する理解が必要です。
多動性および衝動性優勢型
多動性および衝動性優勢型のADHDは、1つの物事に長時間取り組むことや、同じ場所にじっとしていることが苦手なタイプです。大人のADHDでは、なんとなく落ち着きがなく、体を小刻みに動かす、貧乏ゆすりをする、思いつきで行動する、失言するなどの特徴が見られます。加えて、すぐに飽きてしまったり、ケアレスミスを繰り返したり、時間管理が苦手な傾向もあります。
仕事の場面では、物事の優先順位をつけるのが苦手だったり、長時間の会議でじっとしているのが苦痛でイライラすることがよくあります。また、相手の話を最後まで聞かずに自分の意見を言ってしまったり、感情を抑えられずに衝動的に怒ってしまうこともあります。これが原因で「話を聞かない」「すぐに怒る」といった印象を持たれることもあり、対人関係でトラブルを引き起こすことも少なくありません。
このような特性から、衝動的な行動や感情のコントロールに悩む人も多く、周囲とのコミュニケーションが課題となることがあります。
混合型
混合型のADHDは、不注意優勢型と多動性・衝動性優勢型の両方の特徴を持つのが特徴で、どちらの特性が強く出るかは人によって異なります。不注意によって物事に飽きやすく、集中力が続かないため、ミスや忘れ物が多く、計画性に欠けることがよくあります。一方、多動や衝動性によって落ち着きがなく、じっとしていられないことや、衝動的な行動が原因で周囲とのコミュニケーションに問題を抱えることもあります。
例えば、順番を守れなかったり、大声を出すなどの衝動的な行動が原因で、人と衝突したり孤立してしまうことがあります。また、感情のコントロールが難しく、他人の気持ちを理解することが困難なため、人間関係でトラブルが生じやすいことも少なくありません。
さらに、ADHDは他の発達障害、例えばASD(自閉スペクトラム症)やLD(限局性学習症)と合併することもあり、その場合はさらに多様な症状が現れることがあります。
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ADHDの原因
ADHD(注意欠如多動症)の原因はまだ完全には解明されていませんが、脳機能の偏りがその一因とされています。
特に「前頭前野」、そして「線条体」や「小脳」といった脳の部位の働きが弱いことが研究で示されています。前頭前野は、集中力や行動計画を担い、思考や判断、自己抑制など「人間らしい」行動に関わる重要な部分です。
ADHDの人では、この前頭前野の機能調節に偏りが生じていることが、不注意や多動、衝動といった特徴の原因と考えられています。
また、脳内の神経伝達物質の影響も大きいとされています。神経伝達物質の一つである「ドーパミン」は、学習や作業に必要な情報を一時的に保持・処理する「ワーキングメモリー」を司る役割がありますが、ADHDの人ではこのドーパミンの働きが低下し、不注意や衝動性、多動性などの特性が現れやすくなります。さらに、「ノルアドレナリン」など他の神経伝達物質も、意欲や興奮、抑制に関わり、これらの物質の不足や不調が情報伝達に影響を与えていると考えられています。
加えて、状況に適した反応や行動を取るための「実行機能」にも問題がある可能性が指摘されています。これらの神経生物学的な要因が、ADHDのさまざまな症状を引き起こしていると考えられています。
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ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の違い
ASD(自閉スペクトラム症)は発達障害の一つで、対人関係において相手の気持ちを察したり、表情や話のニュアンスから感情を読み取ることが苦手とされる「相互的反応の障害」が特徴です。また、特定の対象に強い興味を持ち、反復的な行動を繰り返す「同一性へのこだわり」も目立ちます。
一方、「ADHD(注意欠如・多動症)」は、不注意や多動性、衝動性が特徴的で、活動に集中できない、物をなくしやすい、じっとしていられないといった問題が多く見られます。
ASDとは異なる障害ですが、ADHDとASDの特性が両方同時に見られる場合や、併存しているケースもあり、診断が難しいことがあります。例えば、ADHDでは不注意が原因で相手の話に集中できないことがありますが、ASDでは話に興味が持てないため集中できないことが多いとされています。
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また、ADHDでは衝動的な行動やコミュニケーションが得意な人も多い一方、ASDでは対人関係やコミュニケーションが苦手で、感情のやり取りに困難を感じることが多いです。このように、両者は同じ発達障害というカテゴリーに属しながらも、特性や困りごとに違いが見られます。
さらに、ADHDでは集中力の維持が難しいとされる一方で、ASDでは特定のことに対して高い集中力を発揮することがあります。また、ASDの特徴としては、感覚過敏や鈍感さ、不器用さ、睡眠障害、特定分野での記憶力の高さなどが挙げられます。
診断の際にADHDとASDの区別が難しいことがあり、最初にADHDと診断され、その後ASDと診断されるケースや、その逆のケースも珍しくありません。
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職場での「困りごと」と「対処方法」
困り事①: タスクやスケジュールの管理が苦手
ADHD(注意欠如多動症)の方は、仕事の優先順位をつけることや複数のタスクを同時に進めるのが苦手な傾向があり、そのため、予定や計画の管理に困難を感じることが少なくありません。
対処方法
予定や計画管理が困難になるケースとその対策
予定や計画管理が難しい状況は、大きく分けて2つのケースに分けられます。
1. 計画自体に無理がある場合
- 時間の見積もりと優先順位の確認: 各タスクにかかる時間を正確に見積もり、優先順位を明確にしましょう。締め切りが近いものや、重要度の高いものから優先的に取り組むことで、効率的に作業を進めることができます。
- 第三者の意見を参考に: 周りの人に計画を見てもらい、客観的な意見をもらうことも有効です。
- 柔軟な計画の見直し: 計画はあくまで目安です。状況に合わせて柔軟に見直し、修正を加えていくことが大切です。
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2. 計画は適切だが、想定外の事態が発生する場合
- 事前の対策: 計画を立てる段階で、想定外の事態が発生した場合の対応策を具体的に考えておきましょう。例えば、「もしも〇〇が遅延した場合、△△に連絡する」など、具体的なアクションプランを立てておくことが重要です。
- 視覚的な管理: タスクリストや進捗状況を視覚的に管理することで、全体像を把握しやすくなります。
- こまめな振り返り: 定期的に計画と実際の進捗状況を比較し、必要に応じて計画を修正しましょう。
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困り事②: 「うっかり」ミスが多い
ADHDの方に見られる特徴の一つが、「うっかり」ミスや「うっかり」忘れです。日常生活では笑い話で済むこともありますが、仕事となるとそう簡単にはいきません。
対処法
ミスを減らすための具体的な対策
ミスを減らすためには、まずどこでミスが起こりやすいのかを特定し、その状況に合わせた対策を立てることが重要です。
1. ミスの原因を分析する
- ミスが起こりやすい状況を特定: 仕事中、どのような時にミスが多いのかを具体的に書き出してみましょう。例えば、「電話対応中にメモを取り忘れる」「締め切りが迫ると焦ってミスをする」など、具体的な場面を思い浮かべることが大切です。
- 共通点を見つける: 書き出した状況に共通点がないか探してみましょう。例えば、「複数のタスクを同時に行う時」や、「急な依頼が入った時」など、共通するパターンが見つかるかもしれません。
2. 対策を考える
特定した状況に対して、どのような対策が考えられるか具体的に書き出しましょう。例えば、
- 電話対応中にメモを取り忘れる場合: 電話中にメモをとる専用のノートを用意する、電話が終わる度にメモを取る習慣をつけるなど
- 締め切りが迫ると焦ってミスをする場合: 締め切り日の数日前から余裕を持って作業を始める、タスクを細かく分割してこまめに休憩を取るなど
3. チェックリストを作成する
考えた対策を箇条書きにして、チェックリストを作成しましょう。チェックリストを作成することで、自分がすべきことを可視化し、漏れなく対策を実行することができます。
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4. 周りの人に協力してもらう
もし可能であれば、同僚や上司にチェックリストを見てもらい、意見を聞くのも良いでしょう。客観的な視点から、より良い対策が見つかるかもしれません。
5. 完璧を求めすぎない
「うっかりミスを完全に無くす」ことは難しいことです。大切なのは、ミスを恐れるのではなく、ミスから学び、改善していくことです。
6. ミスをした後の対応を考える
ミスをしてしまったときに、どのように対応すれば良いか考えておきましょう。例えば、
- 上司に報告する: 早めに上司に報告し、適切な指示を仰ぎましょう。
- 原因を分析する: なぜミスをしてしまったのか、原因を深く掘り下げてみましょう。
- 再発防止策を考える: 同じミスを繰り返さないために、どのような対策をすれば良いか考えましょう。
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困り事③: 重要な予定や締め切りを忘れてしまう
ADHDの方は、「うっかり」ミスや「うっかり」忘れが比較的多く、そのため、仕事の予定や締め切りを守れず困ることが少なくありません。
対処方法
「忘れることがないように、自分に合った方法でタスク管理をすることが大切です。例えば、
- 視覚的な情報が得意な方: タスクリストをデスクに掲示したり、カラフルな付箋を使うなど、視覚的に分かりやすい方法で管理しましょう。
- 聴覚的な情報が得意な方: スマートフォンのリマインド機能を活用したり、音声メモを取ったりするなど、音声を活用した方法がおすすめです。
- 書くことが好きな方: ノートに手書きでタスクリストを作成したり、手帳を活用したりするなど、書くことを通して記憶に残る方法が有効です。
また、周囲の人と協力することも大切です。
- 同僚に頼んで、重要なタスクについて確認してもらう
- 上司に、メールやチャットで指示をいただく
- 定期的に進捗状況を報告する
さらに、環境を整えることも効果的です。
- デスクを整理整頓し、必要なものがすぐに取り出せるようにする
- 作業スペースを確保し、集中できる環境を作る
大切なのは、自分に合った方法を見つけることです。 様々な方法を試してみて、最も効果的な方法を見つけてください。
困り事④: 仕事中、集中を保つのが難しい
ADHDの方の中には、一つのことに長時間集中するのが苦手な方もいます。特にデスクワークなど、同じ場所で同じような作業を続けていると、途中で集中力が切れてしまうことがあります。
対処法
集中力を維持するための具体的な対策
集中力が続かないと感じるときには、以下の対策を試してみましょう。
1. ポモドーロテクニックを取り入れる
「1時間ごとに5分の休憩」という方法は、ポモドーロテクニックと呼ばれる時間管理法の一種です。25分間集中して作業し、5分間休憩するというサイクルを繰り返すことで、長時間集中力を維持することができます。タイマーアプリなどを活用すると、時間の経過を視覚的に把握しやすくなります。
2. 集中できる環境を整える
- 視覚的な刺激を減らす: デスクにパーティションを設置するだけでなく、不要なものをデスクから片付けたり、壁紙をシンプルなものに変えたりするのも効果的です。
- 聴覚的な刺激を減らす: ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンを使用したり、静かな場所に移動したりして、周囲の雑音を遮断しましょう。
- 照明を調整する: 明るすぎる光は目に負担をかけ、集中力を低下させることがあります。適切な明るさの照明を選び、目に優しい環境を作りましょう。
3. 身体的な状態を整える
- 姿勢を正す: 猫背になると呼吸が浅くなり、集中力が低下する可能性があります。姿勢を正して、深呼吸を心がけましょう。
- ストレッチをする: 長時間同じ姿勢でいると、体が凝り、集中力が途切れてしまいます。定期的にストレッチを行い、体をリフレッシュさせましょう。
- 睡眠をしっかりとる: 睡眠不足は集中力の低下に直結します。質の高い睡眠を心がけましょう。
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4. 心理的な状態を整える
- 目標を明確にする: 何のために作業をしているのか、目標を明確にすることで、モチベーションを維持できます。
- タスクを分割する: 大きなタスクを小さなタスクに分割することで、達成感が得やすくなり、モチベーションが維持できます。
- 休憩時間を有効活用する: 休憩時間には、軽い運動やリフレッシュできることを行い、気分転換しましょう。
5. 周囲に協力を求める
- 同僚に相談する: 周りの人に、集中したい旨を伝え、協力をお願いすることも有効です。
- 静かな場所を確保する: ライブラリやカフェなど、静かな場所で作業するのも一つの手です。
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大人の発達障害の方への配慮のポイント
大人の発達障害のある方との共働:円滑なコミュニケーションのためのヒント
大人の発達障害のある方と一緒に働く場合、どのように接すれば良いか悩まれる方も多いのではないでしょうか。発達障害のある方への配慮は、本人だけでなく、周囲の働きやすさにもつながります。
まずは、基本的な考え方から
大人の発達障害のある方と円滑な関係を築くためには、以下の3つのポイントが重要です。
- 本人の特性を知る: 家族や専門家の方から、その方の特性や得意なこと、苦手なことを詳しく聞きましょう。
- 発達障害を理解する: ADHD、ASD、LDといったそれぞれの特性について、正しく理解を深めましょう。
- 環境調整: 本人の特性に合わせて、働きやすい環境を整えましょう。
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各特性に合わせた具体的な配慮
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の方への配慮
- 指示は簡潔に: なるべく短く、簡潔な言葉で指示を伝えましょう。
- 視覚的な工夫: チェックリストやスケジュール表などを活用し、視覚的に情報を提示すると、忘れ物が減る可能性があります。
- こまめなフィードバック: 励ましの言葉や具体的なフィードバックをこまめに行うことで、モチベーションを維持し、自信につなげましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)の方への配慮
- 言葉を選び、丁寧に: 抽象的な表現ではなく、具体的な言葉で伝えましょう。
- 視覚的な支援: 図やイラストなどを活用し、視覚的に情報を提示すると、理解が深まります。
- ルーチンワーク: 同じ作業を繰り返すようなルーチンワークを任せることで、安定したパフォーマンスを発揮できることがあります。
LD(学習障害)の方への配慮
- 多様な表現方法: 口頭だけでなく、図や表、文章など、様々な方法で情報を伝えましょう。
- 柔軟な評価: 課題の量や質を調整したり、評価方法を工夫したりすることで、本人の能力を最大限に引き出すことができます。
- 得意分野を活かす: 苦手な分野だけでなく、得意な分野を活かせるような仕事を任せることで、自信とやりがいを感じてもらえます。
その他の配慮
- 個性を尊重する: 発達障害のある方は、それぞれ個性を持っています。その個性を尊重し、一人ひとりに合った働き方をサポートしましょう。
- オープンなコミュニケーション: 何か困ったことがあれば、お互いに遠慮せずに話し合い、解決策を見つけましょう。
- チームワーク: チーム全体で協力し、それぞれの強みを活かせるような働き方を目指しましょう。
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自分に自信が持てず二次障害に発展することも
ADHD(注意欠如多動症)のある人は、幼少期から失敗経験が多く、自己肯定感が低くなることがあります。「どうしてみんなと同じようにできないのか」「頑張っても結局うまくいかない」「気をつけても同じミスを繰り返してしまう」といった否定的な考え方を抱くことが少なくありません。
ADHDの不注意や多動性・衝動性は、日常生活に困難をもたらすだけでなく、それによって心理的な傷つきや精神的な不調が引き起こされることがあります。このように、発達障害の特性そのものではなく、それに伴って生じる精神的・身体的な不調を「二次障害」と呼びます。
二次障害の具体的な症状としては、以下のようなものがあります。
ADHDに伴うこれらの二次障害は、日常生活にさらなる影響を与えることがあり、特に抑うつなどの精神的な不調に発展するリスクもあります。
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大人のADHDは治療で改善できる?
ADHDは生まれつきの特性であり、完治するものではありませんが、治療薬によってその特性を緩和・改善することが可能です。
ADHDの主な原因は、脳内のドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の不足や機能異常とされており、治療薬はこれらの物質の働きを強化したり、シグナル伝達を改善することで「不注意」や「多動・衝動性」の症状を抑える効果があります。薬の作用は種類によって異なり、特に成長期の子どもでは、食欲減退などの副作用に注意が必要です。
治療は精神科や心療内科で行われ、定期的な通院が必要です。治療には、薬物療法に加え、行動療法や心理療法、環境調整なども併用されるのが一般的です。行動療法ではグループ・プログラムを通じて適切な行動を学び、心理療法ではカウンセリングを通してストレスを軽減し、自分の行動や考え方を整理します。さらに、生活リズムの見直しや職場環境の改善などを行う環境調整も、特性の緩和や改善に有効です。
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ADHDの代表的な治療薬
ADHDの特性を緩和・改善するために、日本で処方が認められている治療薬には、コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセがあります。これらの薬は、効き始める時間や効果の持続時間、身体への影響がそれぞれ異なります。
以下に、代表的なADHD治療薬の概要を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
コンサータ
コンサータ(メチルフェニデート)は、ADHDの治療薬として日本で初めて厚生労働省に承認された薬で、主に不注意の特性に効果があります。コンサータは脳内のドーパミンの再取り込みを抑え、ドーパミンの働きを強めることで、ADHDの症状である不注意や多動・衝動性を改善します。集中力の低下、過活動、衝動性、日中の眠気、疲労感、抑うつ状態などの緩和が期待されます。
この薬は、1日1回朝に服用し、日中まで効果が続くのが特徴で、薬が切れるタイミングも明確です。ただし、コンサータは処方医として登録された限られた医師のみが処方できるため、すべての病院で手に入るわけではない点に注意が必要です。
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ストラテラ
コンサータ(メチルフェニデート)は、ADHDの治療薬として日本で初めて厚生労働省に承認された薬で、主に不注意の特性に効果があります。コンサータは脳内のドーパミンの再取り込みを抑え、ドーパミンの働きを強めることで、ADHDの症状である不注意や多動・衝動性を改善します。集中力の低下、過活動、衝動性、日中の眠気、疲労感、抑うつ状態などの緩和が期待されます。
この薬は、1日1回朝に服用し、日中まで効果が続くのが特徴で、薬が切れるタイミングも明確です。ただし、コンサータは処方医として登録された限られた医師のみが処方できるため、すべての病院で手に入るわけではない点に注意が必要です。
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インチュニブ
インチュニブは、コンサータやストラテラに次ぐ3番目のADHD治療薬で、特に多動、衝動性、感情の不安定さに効果が期待されます。脳内の情報伝達効率を高め、脳の機能を改善する作用がありますが、コンサータやストラテラとは作用の仕組みが大きく異なるのが特徴です。1日1回の服用で効果が得られます。
コンサータとストラテラは、シナプス前(情報伝達物質を放出する側)に作用し、情報伝達物質が再取り込みされるのを防ぐことで、シナプス間の情報伝達を促進します。一方、インチュニブは後シナプス(情報を受け取る側)のα2Aアドレナリン受容体に結合し、情報伝達の効率を高めて脳の機能不全を調整します。
インチュニブの成分であるグアンファシンは、もともと高血圧治療薬として開発され、交感神経の働きを抑え、神経の緊張を和らげる効果があります。そのため、ADHDだけでなく、チックや反抗挑戦性障害を併発している人や、衝動性が目立つ人にも特に効果が期待されています。
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ビバンセ
ビバンセは、6~18歳の小児を対象とした国内で最も新しいADHD治療薬で、コンサータと同様に中枢神経刺激薬に分類されます。欧米では第一選択薬として広く使用されています。ビバンセは「プロドラッグ」という性質を持っており、体内に吸収されるとアンフェタミンに変化し、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを高めて、神経伝達物質の濃度を増やすことでADHDの症状を改善します。
アンフェタミンは「覚せい剤」の一種であるため、その名前に抵抗を感じるかもしれませんが、ビバンセはプロドラッグとして設計されており、血中のアンフェタミン濃度が急激に上がることはなく、効果が長時間持続します。これにより、薬物依存や乱用のリスクが低くなっています。
ビバンセは、ドーパミンやノルアドレナリンの再取り込みを抑えるだけでなく、これらの神経伝達物質の分泌も促進する新しいタイプの治療薬です。この作用により、ADHDの不注意、多動性、衝動性といった症状の改善が期待されます。さらに、ビバンセはセロトニンの増加作用も持つとされ、衝動性のコントロールにも効果があると考えられています。
ビバンセは、脳内の神経伝達物質を増やし、情報伝達を円滑にすることで、集中力や記憶力の向上に寄与することが期待されています。
その他の治療薬
ADHDの症状緩和だけでなく、発達障害に伴う二次的な精神疾患や、併存する他の疾患に対して、様々な薬物が処方されることがあります。
主な薬物とその目的
- 精神疾患に対する薬: リスペリドン(リスパダール)、アリピプラゾール(エビリファイ)、エスシタロプラム(レキサプロ)など。不眠、不安、抑うつ状態といった、発達障害に伴う二次的な精神疾患の症状を改善する目的で処方されます。
- てんかん治療薬: 発達障害とてんかんを併発している場合、抗てんかん薬が処方されることがあります。
- 睡眠薬: 睡眠障害がある場合、睡眠導入剤が処方されることがあります。
薬の組み合わせと副作用
薬には、効果を高め合う相乗効果があるものもあれば、逆に副作用を強める相互作用があるものもあります。そのため、自己判断で薬の服用を中断したり、量を調整したりすることは非常に危険です。
必ず医師に相談し、指示に従うことが重要です。 薬の量や種類を調整する際には、医師は患者さんの状態や他の薬との相互作用などを考慮し、最適な治療計画を立てます。
副作用について
全ての薬に副作用のリスクが伴います。眠気、倦怠感、体重増加など、一般的な副作用から、まれに重篤な副作用が出ることもあります。薬を服用する際には、副作用について医師から十分な説明を受けることが大切です。
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ADHD治療薬の副作用
ADHD治療薬の副作用について、より詳しく、分かりやすく説明します。
ADHDの治療薬は、注意欠如や多動性を改善する効果が期待できますが、一方で、様々な副作用が起こる可能性があります。
ADHD治療薬の副作用例
- 食欲不振: 食欲が減退し、体重が減ってしまうことがあります。
- 吐き気: 吐き気や嘔吐感を感じる場合があります。
- 頭痛: 頭痛がする、または悪化することがあります。
- 眠気: 眠気が強く、日常生活に支障が出る場合があります。
- 不眠: 逆に、眠れなくなる場合もあります。
- 心拍数の増加: 心臓がドキドキする、脈が速くなることがあります。
- 血圧の上昇: 血圧が上昇することがあります。
これらの副作用は、人によって感じ方や現れ方が異なります。また、同じ薬でも、服用量や体質によって、副作用の出方も変わってきます。
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服薬の際の注意点
ADHD治療薬の服用に関する注意点
ADHDの治療薬は、症状の改善に役立つ一方で、長期的な服用や依存性など、注意すべき点もあります。
1. 耐性と依存性
- 耐性: 長期に渡って同じ量の薬を服用していると、効果が薄れてしまうことがあります。これを耐性といいます。耐性が生じた場合は、医師に相談し、薬の量や種類を調整してもらう必要があります。
- 依存性: ADHD治療薬の依存性は、他の精神科薬物に比べて低いとされています。しかし、中には「この薬がないと不安」といった心理的な依存を感じる人もいます。
2. 服用をやめるタイミング
- 薬への依存から脱却: 薬への依存を感じ始めたら、医師と相談し、徐々に減量していく方法を検討しましょう。
- 生活の変化: 薬の効果により、自信がつき、仕事や私生活で上手くいくようになれば、薬をやめることを検討しても良いでしょう。
- 医師の判断: 薬の服用をやめる際は、必ず医師に相談し、指示に従ってください。
3. 薬以外の治療
薬物療法だけでなく、認知行動療法などの心理療法も、ADHDの治療には有効です。薬と併用することで、より効果的に症状を改善できる場合があります。
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治療薬以外で特性や症状を改善する方法
ADHDの特性や症状の改善には、治療薬だけでなく、カウンセリング、生活習慣の改善、認知行動療法(CBT)なども効果的です。これらを組み合わせて同時に取り組むことで、より効果的な結果が得られることがあります。
以下に、4つの改善方法について詳しく解説します。
カウンセリングでの自己理解
認知行動療法は、「認知」と「行動」に働きかける心理療法で、「認知療法」と「行動療法」を組み合わせたものです。認知療法では、考え方の癖や思考の偏りに気づくことで自己理解を深め、心のバランスを整えることを目指します。一方、行動療法は、恐怖症や行動上の問題に焦点を当て、適切な反応が学べていない場合や不適切な反応が出ている原因を探ります。
ADHDの人にとって、自分の心の動きを「認知」することは非常に重要で、気づきを得ながら行動パターンを変えることで、ストレスの軽減が期待できます。
また、カウンセリングを通じて、自身の状態や症状を客観的に見つめ直し、自己理解を深めることが可能です。カウンセリングは医療機関や支援機関で受けることができ、生活や仕事での成功体験を共有することで自信につながります。さらに、医師や専門家とのカウンセリングに加え、友人や家族とのコミュニケーションも自己理解を深めるために有効です。自分自身を知るためにも、身近な人に相談してみることが大切です。
規則正しい生活習慣を身につける
ADHDの特性を持つ人にとって、規則正しい生活習慣を身につけることは、日常生活をスムーズに過ごすために非常に重要です。不注意や衝動性、多動性といった症状は、生活リズムの乱れによって悪化することがあり、生活習慣を整えることは症状管理に大きな効果があります。また、カウンセリングを受けることで、自身の状態や症状を客観的に理解し、自己理解を深めることができます。医師や専門家のサポートを受けるだけでなく、友人や家族とコミュニケーションをとることも自己理解に役立ちます。さらに、薬の服用によって生活や仕事での成功体験を積み重ねることで、自信を持つことも可能です。
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認知行動療法(CBT)
認知行動療法(CBT)は、物事のとらえ方や行動の偏りを見直し、ストレスを軽減するための心理療法です。もともとはうつ病の治療としてアメリカのAaron T. Beckが開発しましたが、不安症や強迫症など、さまざまな疾患にも効果があり、再発予防にも役立つとされています。
認知行動療法(CBT)は、固まってしまった考えや行動を柔軟にし、自分の力で自由に考えたり行動したりすることをサポートします。医療機関での治療提供はまだ限られていますが、グループで特性に対する困りごとを話し合う「グループ・プログラム」も有効な方法の一つです。こうした場では悩みを共有し、対処法を学ぶことで自己理解を深めることが期待できます。
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ADHDとわかったら?知っておきたい相談先
ADHDと診断された場合や「ADHDかもしれない」と感じた際には、専門家への相談を検討することが大切です。大人のADHDによる日常生活や仕事での困りごとを早めに解消するためには、適切な支援を受けることが効果的です。ここでは、ADHDに関する悩みを相談できる専門機関や公的機関を紹介します。これらの機関では、就労や日常生活に関する問題についてサポートを受けることができるため、ぜひ利用を検討してみてください。
適切な支援を受ける
問題を抱えている方は、一人で悩まず、適切な支援機関に相談することをおすすめします。
支援機関は、あなたの抱えている問題によって、様々な種類があります。例えば、
- 日常生活の困りごと: 発達障害者支援センター、精神保健福祉センターなど
- 就労に関する相談: 就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなど
これらの機関では、専門のスタッフがあなたの話を聞き、あなたに合った支援を提供してくれます。
支援機関を選ぶ際のポイント
支援機関はたくさんありますが、それぞれが目的や支援内容が異なります。そのため、自分に合った支援機関を選ぶことが大切です。
- どんなことを相談したいか: 生活全般なのか、仕事のことなのか、など、相談したい内容を明確にする
- どんなサポートを求めているか: 情報提供が欲しいのか、具体的な行動の支援が欲しいのか、など、期待する支援の内容を具体的に考える
主な支援機関とその役割
- 発達障害者支援センター: 発達障害に関する相談全般を受け付けており、情報提供や、地域の医療機関や福祉サービスの紹介などを行います。
- 精神保健福祉センター: 精神的な問題を抱えている人の相談に応じ、治療や生活上の支援を行います。
- 就労移行支援事業所: 就職を希望する発達障害のある方が、職場体験や職業訓練などを通して、社会に出て働くための準備をする場所です。
- 地域障害者職業センター: 就職活動の支援や、職場定着のためのサポートを行います。
自分に合った支援機関を探すには
- インターネットで検索: 住んでいる地域の支援機関を検索してみましょう。
- 市区町村の福祉課に相談: 地域の福祉課で、相談窓口を紹介してもらうこともできます。
- 主治医に相談: かかりつけの医師に相談し、紹介してもらうことも可能です。
ADHDの方に向いている仕事
最近では、日本でもADHD(注意欠如多動症)をカミングアウトする有名人が増えてきました。不注意や多動・衝動性といった特性が注目されがちなため、ADHDに対してネガティブなイメージを持たれやすいのが現状です。
しかし、ADHDの当事者が持つ才能や個性を活かして活躍している姿を通じて、ADHDの強みを社会に伝えていくことは非常に有意義です。
ADHDの特性に合う仕事には多くの魅力的な選択肢があります。
例えば、興味関心があることに没頭できる職種として、編集者、記者、研究者、学者、プログラマーなどが挙げられます。
これらの職業では、ADHDの強みである「興味のあることをとことん追求する」特性が活かされます。また、自由な発想が必要なWebデザイナーや広告ディレクターなど、想像力を生かせる仕事も適しています。
さらに、エンジニアやIT関連の職種など、専門的な知識や技術を必要とする仕事も、集中力を発揮できる分野としてADHDの方に向いています。
特にデジタルやIT分野では、ADHDの特性が活かされる可能性があり、これらの分野で人材不足を感じている多くの企業にとって、ADHDの方が重要な戦力となることが期待されています。
懸念点としては、どの職業でも顧客や上司の要望に応えることが求められるため、自分のアイデアを形にするだけでなく、相手の意向をしっかりと理解し、それに応じる姿勢が必要です。仕事を進める際は、自分と相手の双方が納得できるポイントを見つけながら進めることが重要です。
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まとめ
ADHDは脳の特性によるものであり、完治させる治療法は現代医学では確立していませんが、特性を活かしつつ生活をコントロールする方法は多くあります。
不注意や多動性、衝動性といった特性により、日常生活や仕事で困難を感じることがあります。特にケアレスミスや不注意は、周囲からやる気や努力不足と誤解されやすい現状があります。
ADHDはネガティブに捉えられがちですが、アイデアを形にするものづくりや、自分の考えを発信する仕事に適しているという強みもあります。
近年、ADHDの当事者がその個性を活かして活躍するケースが増え、カミングアウトする有名人も増加しています。
ADHDと向き合うには、治療薬やカウンセリング、生活習慣の見直しなど、症状を緩和し日々の生活を送りやすくする方法がさまざまあります。日常生活や仕事に関する悩みがある場合は、専門機関への相談を検討してみましょう。
また、ADHDに加え、うつ病や更年期障害など広く対応しているクリニックもあります。話を聞いてもらうだけでも心が楽になることがありますので、気軽に相談してみてください。
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