就労移行支援がひどいと言われる理由
インターネットで「就労移行支援」と検索すると、「ひどい」という口コミを目にすることがあるかもしれません。実際に利用してみて、ひどい目に遭ったという方もいるでしょう。
しかし、すべての就労移行支援事業所が悪いわけではありません。中には、利用者一人ひとりに寄り添い、丁寧なサポートを提供している素晴らしい事業所も多くあります。
この記事では、就労移行支援が「ひどい」と言われる理由や、ひどい事業所を見分ける方法、ひどい事業所から脱却する方法などを詳しく解説します。
就労移行支援を利用しようと考えている方、現在利用していてひどい目に遭っている方は、ぜひ参考にしてください。
こちらも参考に:クローズ就労とは?両方で働いてみて分かったこと。メリットやデメリット
参考:相談支援事業所とは?
就労移行支援の訓練は単調な作業ばかり?
就労移行支援を利用して、「ひどい」と感じてしまう方は少なくありません。その理由は、主に以下の2点が挙げられます。
1. 期待とのミスマッチ
就労移行支援事業所は、それぞれ得意な訓練内容や就職先、サービス内容などが異なります。しかし、利用者の中には、事業所のホームページや説明だけで判断し、自分の希望と異なるサービスを受けてしまうことがあります。
例えば、
- 軽作業に特化した訓練しか行われていないのに、事務職を目指していた
- 同じ作業ばかり繰り返す訓練で、単調だと感じた
- 訓練内容が自分の能力や経験に合っていない
といったケースが考えられます。
2. 訓練内容への不満
就労移行支援の訓練内容に対して、「レベルが低い」「役に立たない」と感じる方もいます。
特に、
- 単純作業ばかりで、実際の仕事に役立つか疑問を感じる
- 訓練内容の説明が不十分で、理解できない
- 質問しても、支援員が答えられない
といった場合、不満や不信感につながりやすくなります。
近年は、IT特化型など、様々な訓練内容を提供している事業所も増えていますので自分に合った就労移行支援を見つけてみましょう。
事業所によっては、最低在籍期間が定められている場合も!?
就労移行支援事業所の中には、利用者の方の意思に反して、無理に通所させようと回数や時間を強要するところがあるという噂があり、事業所によっては最低在籍期間が設けられている場合もあります。
これは、利用者の方の体力面や訓練状況を考慮し、効果的なサポートを提供するためです。しかし、中には、報酬制度の絡みで、利用人数や利用日数を稼ぐために、必要以上に利用期間を延長しようとする事業所もあるようです。
利用者の利用期間が長ければ長いほど、事業所側が受け取る報酬も増えるため、財政的な理由で利用期間を延長しようとする事業所もあるかもしれません。
利用期間を強要することは、利用者の方の意思を尊重していないだけでなく、本来の就労支援の目的からも外れています。
もし、ご自身の意思に反して利用期間を延長させられていると感じた場合は、別の事業所への移行を検討することもできますので行政機関や相談窓口に相談しましょう。
「障害者の方にとっては、何年でも何度でもチャレンジできる制度にしてほしいから2年以上通いたい」という声を聴くこともあります。
就労移行支援は、原則2年の利用期限があります。これは、利用者の方に「就職」という明確な目標を意識させ、早期の就職を促進するためです。
就労移行支援の利用には、一人あたり約16万円/月の費用が掛かっているため、財源との兼ね合いが難しい部分もあります。
利用者の方と事業所が協力して、一人ひとりに合った就労支援を実現していくことが大切です。
こちらも参考に:障害手当金とは?申請方法と注意点
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そもそも就職できない(させてもらえない)
就労移行支援を利用している方の中には、「就職できない(準備ができているのに引き止められる)」という理由で、事業所を「ひどい」と感じている方もいるようです。
確かに、精神疾患や発達障害などで就労移行支援を利用する方は、基本的に就職を目標としているでしょう。
平成30年に報酬制度が改定されて、基本的には就職者を出したほうが施設にお金が入るようになったため、すこしずつマシになっているはずですが、まだまだ利用者よりも事業所の都合を優先してしまう悪質な事業所も存在します。
前述した通り、事業所側が報酬制度の影響で、利用期間を延長しようとするため起こる問題です。
しかし、客観的に見て「まだ就職できる段階ではない」と判断される場合もあります。最終的には利用者の意思が尊重されるべきですが、事業所側が一方的に就職を推奨しない場合もあるということを理解しておくことが大切です。
「就職までどのような訓練を行っていくか」という計画で、3ヶ月に1回は必ず更新される計画になっています。
この計画により着実に就職に向けてステップアップしていく大事な計画なので作成時にスタッフに希望を伝え、今後の展望を話し合いましょう。
就労移行支援ではアルバイト禁止。お金がなくて通えない
就労移行支援を利用している間はアルバイトができないため、収入がなく、経済的に厳しい状況になる方も少なくないようです。
生活費はもちろん、通所にかかる交通費や昼食代なども必要となります。収入を得られないことが、就労移行支援制度に対する不満につながるケースもあるでしょう。
アルバイトやパート、派遣社員などの「一般就労」とみなされる仕事は、原則禁止されています。これは、「就労移行支援は、一人で就職するのが困難な障害者が対象」だからです。
ただし、市区町村や事業所によって判断基準が異なる場合があり、障害福祉関係者の中でも見解が分かれているという実態があります。
短期・単発アルバイトや、月数千円~数万円程度の収入を得るアルバイトであっても、「一般就労だから就労支援の必要なし」と判断されるケースもあり、障害者の生活実態に十分配慮されていないという指摘もあります。
現状では、アルバイトが許可されていない場合、生活費をまかなうために、家族からの援助、貯蓄、行政からの給付金などに頼らざるを得ません。
障害者や生活困窮者の方には、活用できる給付金制度が多くあります。以下に、代表的な制度を紹介します。
お住まいの市区町村の窓口で、自分に該当する制度について相談することができますが、就労支援が必要な人も、「アルバイトできないからやめとけ」と言われ、就労移行支援の利用を諦めてしまうケースもあるようです。
行政にも事情があると思いますが、障害者の生活実態に寄り添い、柔軟な制度の改善が期待されます。
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参考:休職制度
通っている就労移行支援のスタッフの質がひどい
就労移行支援を利用している方の中には、「通所する事業所に嫌いなスタッフがいる、相性が合わないスタッフがいる」という声も聞かれます。
また、精神疾患や障がい特性への理解がなく、素人同然のスタッフがいる事業所もあるようです。
全国には多くの就労移行支援事業所があり、令和4年度時点では3300事業所を超えています。
就労移行支援事業所は、特別な資格がなくても働くことができます。これだけ多くの事業所があると、中には疾患や障がい特性への理解が乏しいスタッフがいることも考えられるでしょう。
専門的な資格を持っている職員が多く配置されている事業所を選ぶのも、良い事業所探しのポイントかもしれませんね。
通う前にスタッフの質を見抜くのは難しいですが、就職者や就職実績を参考に事業所選びをすることで、その事業所全体の質を見極める目安になるかもしれません。
さらに、以下の点にも注意して、自分に合った就労移行支援事業所を見つけるようにしましょう。
- 支援員の資格や経験を確認する
- 事業所のプログラムやカリキュラム内容を確認する
- 見学や体験を利用して、事業所の雰囲気やスタッフの対応を確認する
- 複数の事業所を比較検討する
就労移行支援は、就職や社会復帰を目指す施設です。どんなに優しく人当たりが良い人でも、専門知識がなく就職支援を行ってくれないとなれば、利用者さんはいつになっても就職できません。
例えば、就職に有用な資格保持者としては支援者面では
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・キャリアコンサルタント
などが、支援と就労に関わる面で大きく関連付いた資格と言えます。
他にも技術面では需要の多い、PCソフトや実務で言えば
・Office系ソフトウェア(Excel・Word・PowerPoint)
・日商簿記検定などが一般的です。
そのため、就職につながるような指導やアドバイスをしてくれる、質の高いスタッフがいる事業所を選ぶことが大切です。
スタッフの質について不安がある場合は、事業所選びの段階でしっかりと確認しましょう。
利用者同士の人間関係での悩み【環境が合わない事も】
就労移行支援を利用している方の中には、「おかしい人がいるから、事業所に行きたくない」「いじめがしんどい、つらい」と感じている方もいるようです。
確かに、就労支援施設に限らず、いじめや人間関係のトラブルが全くないというわけではありません。
就労移行支援事業所には、うつ病などの精神障がい、発達障がいなど、様々な方が通所されています。そのため、利用者同士でのトラブルや、利用者同士が馴染めないといった事態に陥ることもあるでしょう。
人との距離感やコミュニケーションが苦手な人も多いため、トラブルも起こりやすいと言えます。しかし、苦手だからこそ、それを改善したくて、みんな通っているという側面もあります。
人間関係のトラブルは、以下のような原因で起こることが考えられます。
- 相手の理解できない言動にとまどったり、自分も言いたいことを言えなかったり
- 障害特性によるコミュニケーションの難しさ
- 利用者同士の価値観や性格の違い
- スタッフによる対応不足
人間関係のトラブルは、利用者さんの精神面に大きな負担をかけるだけでなく、就職活動にも悪影響を及ぼす可能性があります。
もし、人間関係のトラブルで悩んでいる場合は、事業所を変更することも検討しましょう。
就労移行支援を利用する前に、利用層について確認しておくことも大切です。
こちらも参考に:精神障害者雇用にまつわる誤解 | 就業上の配慮と雇用時のポイント
参考:精神障害者の障害等級
就労移行支援は作業をしてもお金がもらえない
就労移行支援は、就労継続支援と異なり、基本的に給与や工賃は発生しません。
しかし、企業から仕事を受注しているなど、一部の就労移行支援事業所では、工賃が支払われる場合があります。
「何時間も拘束して作業させるくせに1円ももらえない。障害者を食い物にしている、ただ働きなんておかしい」という不満や不信感を持った方の口コミも見られます。
確かに、作業をしたのなら、労働対価として給与をもらいたいと思うのは自然な気持ちでしょう。
しかし、就労移行支援は「労働」ではなく「訓練」であるため、給与が支払われないのです。
労働ではないため、雇用契約も結びません。 むしろ、利用者は、(ほとんどの場合は無料で)訓練や就職サポートを受ける場として、就労移行支援事業所を利用することになります。
多くの就労移行支援事業所では、企業に通って実際の職場を体験する「職場実習」が行われています。
この職場実習でも、給与や工賃は基本的に支払われません。
これは、職場実習の目的が「仕事に慣れること」ではなく、「働くためのスキルを身につけること」だからです。
就労移行支援を利用する前に、給与や工賃の有無について確認しておくことが大切です。
また、職場実習に参加する場合は、給与や工賃が支払われないことを理解した上で参加する必要があります。
参考:償還期間とは?参考:職業訓練受講給付金とは?
就労移行支援には闇があると言われるのはなぜ?【運営のからくりと実態】
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づき運営されており、国や自治体の監視下のもと支援が行われます。
しかし、中には「お金儲けしか考えていない」と感じるようなグレーな運営を行う事業所も存在するようです。
この項では、このような「グレーな運営」の実態と、利用者にとっての適切な支援とはどのようなものかについて考察します。
就労移行支援事業所の収入源
就労移行支援について、「利用者様より(一部負担金がある世帯区分のみ)1割を徴収し、残りの9割を国や都道府県、市町村が負担している」という仕組みをご存知でしょうか。
この費用は、利用者数、利用日数、就職定着率によって変動します。利用者が多いほど、利用日数が多いほど、就職定着率が高いほど、報酬が高くなるという仕組みです。
就労移行支援事業所は、利用者の在籍状況により月の売上(給付額)が変動制がとられており、国民健康保険団体連合会(国保連)より事業の運営資金の給付を受けることで運営されています。
この国保連から給付される報酬金額は毎月同額ではなく、1カ月の利用人数や利用状況によって変動します。
さらに、利用者が就職して6カ月間、就職先で辞めることなく働き続けたら報酬単価が上がり支給される金額も増える仕組みです。
つまり、より就職者を輩出し就労定着率の高い就労移行支援事業所は自然に売上が上がるという仕組みとなっています。
まとめると・・・
- 利用者の利用人数が多い
- 利用者の利用日数(時間)が多い
- 就職後6カ月間働き続けると報酬単価が上がる
多ければ多いほど事業所への支給額が上がる仕組みになっています。
この仕組みを悪用し、利用者にとって不必要な利用日数や在籍時間を強要する事業所も存在します。
しかし、就職を見据えて、就労に必要な基礎体力を高めるため、利用日数や活動時間の延長を勧めることは珍しくありません。そのため、利用日数や活動時間の延長を提案する事業所が一概に悪いとは言えないことをご留意ください。
大切なのは、利用者にとって適切な支援が行われているかどうかです。
利用人数や利用日数ばかりを重視するのではなく、利用者一人ひとりのニーズに合わせた支援を行っているかどうかを確認しましょう。
こちらも参考に:ADHD(注意欠如・多動症)の薬 | アトモキセチン(ストラテラ)について
こちらも参考に:令和5年度「障害者雇用納付金制度」とは?雇用調整金や助成金の種類
利用者自己負担という義務付けられた利用料も収入源となる
就労移行支援を利用する場合は、国からの給付金に加えて、利用者自己負担額が発生する場合があります。
この自己負担額は、厳格に定められており、事業所側の意向で変動することはありません。安心して利用することができます。
利用者自己負担額は、前年度の所得や世帯の所得区分によって異なります。
利用料金体系は以下の通りです。
利用者負担額表
区分 | 世帯収入の状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます。
上記の通り、自己負担額は最大でも37,200円と限度額が定められています。
このように、就労移行支援事業所の運営は、利用者からの自己負担額だけでなく、国からの給付金によって支えられています。
さらに、給付金の単価は就職率や定着率によって決まるため、事業所は利用者の就職に向けて積極的に支援を行う仕組みになっています。
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時間を無駄にしてしまう就労移行支援の特徴は?
就労移行支援を利用して「時間の無駄だ」「意味がなかった」と言う意見もよく耳にします。
事業所の特徴とご自身の目的が合致しなかった場合、決められた2年間と言う利用期間は勿論のことせっかく大事な時間を使って利用するのですから、無駄にならない事業所を選びたいと思うのは当然ですよね。
それでは、「時間の無駄になってしまう就労移行支援事業所」
について具体的に見ていきます。
こちらも参考に:精神科訪問看護のサポート内容。需要や具体的な事例をご紹介!
就職者の割合が少ない!?就職率が低い事業所
就労移行支援事業所を選ぶ際に、就職率は重要な指標の一つです。
しかし、単に就職率が高いだけでは、必ずしも利用者にとって良い事業所とは限りません。
重要なのは、希望の働き方で就職できているかどうかです。
例えば、正社員を希望している利用者が、パートやアルバイトにしか就職できていない事業所は、利用者の希望を十分に叶えていない可能性があります。
また、継続支援(A型・B型)などにとりあえず就職させるような事業所も注意が必要です。
継続支援は、一般就労への移行を前提とした支援ではありません。
利用者の希望が継続支援であれば問題ありませんが、一般就労を目指している場合は、一般就労への移行実績がある事業所を選ぶことが重要です。
さらに、就職率だけでなく、就職定着率も確認しましょう。
せっかく就職しても、すぐに辞めてしまっては意味がありません。
就職定着率が高い事業所は、利用者が長く働けるよう、就職後のフォローもしっかりしている可能性が高いと言えます。
就職率、就職定着率を確認する以外にも、以下の点もチェックすることをおすすめします。
- 事業所の理念や方針
- 支援内容
- スタッフの経験や資格
- 利用者の声
- 見学・体験の制度
こちらも参考に:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の詳細と申請方法
こちらも参考に:ハローワークの障害者求人探す方法。相談窓口の活用
もう限界!と感じたら?就労移行支援を途中でやめる方法や事業所の変更方法
現在、利用している就労移行支援が合わなくて時間の無駄だと思っているも多くいらっしゃると思います。
どうしても就労移行支援を変えたい場合、今通っている就労移行支援にまず相談しなくても市の福祉窓口に相談することで利用をしている事業所を退所して他の就労移行支援事業所に転所することが可能です
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他の就労移行支援に相談する
現在通っている事業所に相談しにくい場合は、他の就労移行支援事業所に相談することもできます。
相談する際には、
- なぜ変更したいのかを正直に伝える
- 事業所と合わなかったなどの具体的な理由を説明する
ことが大切です。
なんとなくという理由では、
- 「本当に困っているのか?」
- 「トラブルの多い人なのか?」
と疑問を持たれてしまう可能性があります。
他の就労移行支援事業所も、困っている利用者に対しては協力してくれますので、遠慮なく相談しましょう。
こちらも参考に:精神障害者手帳3級取得のメリット | 割引や控除割引や支援を紹介
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相談支援専門員に相談する
他の就労移行支援事業所への相談に抵抗がある場合は、相談支援専門員に相談することができます。
相談支援専門員は、障害者の相談や支援を行い、適切な就労移行支援事業所を紹介してくれる専門家です。
相談内容は秘密厳守なので、安心して相談できます。
相談支援専門員に相談することで、
- 自分に合った就労移行支援事業所を紹介してもらえる
- 転所後の過ごし方などのアドバイスをもらえる
などのメリットがあります。
担当の相談支援員に相談するのが気まずい場合でも、他の相談支援専門員に相談できるので、一人で悩まずに相談しましょう。
障害福祉課に相談する
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就労移行支援にそもそも向いてない人
就労移行支援を利用に向いていない方も障害者の中にはいらっしゃいます。
具体的には次のような方々です。
・利用期間中の生活費がない人
・2年間で就職できそうにない
・専門職で生きてきた人
・就職活動をひとりで進めていくことができる方
いわゆる向いていない方が就労移行支援を利用することで
結果的に「就労移行支援はひどいところだ!」という声になってしまうケースも見かけます。
こちらも参考に:二次障害とは?
こちらも参考に:国民健康保険料の免除について」
就労移行支援に向いている人は?
反対に障害者の中には就労移行支援を利用した方が就職に有利になる方もいます。具体的に説明していきましょう。
ひとりで就職活動を行うことが不安な方
就労移行支援の内容としては、自己分析や書類作成、面接対策など、就職活動を行うための色々なカリキュラムが組まれています。
特に障がい者枠での就労(障害者雇用)となると、障がい特性に関することも面接で話題になるため、自己理解が必須となってきます。
これらを自分ひとりでこなしていくのはなかなか大変だと思われます。
サポートを受けながら就職活動を行っていきたい方には、就労移行支援の利用が向いていると言えるでしょう。
こちらも参考に:感覚過敏とは?症状や原因、対処法、発達障害との関連性
自分の障がい特性についてよくわかっていない、対処法を学びたい方
自分の障害の状態や症状を十分に理解していないと、就職後に体調が悪化し、再び仕事を辞めることになる可能性があります。
就労移行支援は障害福祉サービスの一環として、障がいの特性の理解や、それを企業にどのように伝えるかについて共に考えてくれます。
自分の障がいについて理解が不十分だと感じている方は、主治医とともに、就労移行支援のスタッフの助けを借りて障害について深く理解していくことが大切です。
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生活リズムや通勤・勤務訓練からステップアップしたい方
外出や電車が不安で、通常の週5日勤務が難しい方には、就労移行支援の利用をおすすめします。
就労移行支援は、事業所のルールによりますが、通常週1日から利用可能です。自分のペースで通所日数や時間を少しずつ増やしていけます。
そのため、少しずつ就職を目指したい方にも適しています。
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通うべき就労移行支援の特徴
就職実績が公開されている
就労移行支援を選ぶ際は、就職実績(就職率や職場定着率)を必ず確認しましょう。
就職率や職場定着率が高いほど、
- 就職に必要なスキルを学べる
- 就職後に長く働ける
可能性が高いという証拠になります。
ホームページで確認できない場合は、直接事業所に問い合わせてみましょう。
それでも教えてくれない場合は、
- 情報公開に消極的な
- 実績自体が芳しくない
可能性があります。
このような事業所の利用は控えた方が良いでしょう。
自分に合った就労移行支援事業所を見つけるために、積極的に情報収集を行いましょう。
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事業所の雰囲気が良い
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専門的なスタッフを配置している
交通費等の通う方の事情に配慮してくれている
就労移行支援の中には、昼食費や交通費、テキスト代を負担してくれる事業所もあります。
これらの費用は通所日数が増えると負担が大きくなり、通所日数を減らす人もいます。収入がない中で生活費が必要な状況では、事業所がこれらの費用を負担してくれると金銭的に助かり、安心して通所日数を増やせます。
利用者負担額早見表
厚生労働省が出している障害者の利用者負担を見ていきましょう。
所得区分 | 世帯の収入状況 | 利用負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満 ※2) ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く※3 |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1 3人世帯で障害基礎年金1級の受給の場合(300万円以下の世帯対象)。
※2 収入600万円以下の世帯対象。
※3 20歳未満の入所施設利用の、市町村民税課税世帯においては一般2。
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障害者雇用促進法と障害者雇用について
企業が障害者を雇用するには、障害者雇用促進法を遵守しなければなりません。
障害者雇用の目的は、障害の有無にかかわらず、全ての人が希望する仕事で活躍できる社会を築くことです。
企業が障害者を雇用するためには、まず障害者への理解を深め、ハローワークや地域障害者職業センターなどの支援機関と連携して職場環境を整える必要があります。また、企業側の社員にも障害者雇用に関する研修を行い、理解を促すことが重要です。
近年、障害者雇用を行う企業は増えており、令和3年度には過去最多数となったと厚生労働省が発表しています。
さらに、厚生労働省は「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正として、就労パスポートを作成しました。これは、障害者本人が自分の特徴や希望する配慮を整理し、職場や支援機関と円滑に情報を共有するためのフォーマットです。
就労パスポートを活用することで、障害者は自己理解を深め、企業と適切なコミュニケーションを取ることができ、職場定着が図れます。
障害者雇用の制度は、全ての人が共生する社会の実現を目指しています。
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まとめ
現在の就労移行支援制度には、「利用期間が短い」「事業所の質にばらつきがある」
などの問題点や課題も存在します。
しかし、昔は障害者の就労支援自体がなかったことを考えると、障害者と一般社会の間にある就労支援は、大きな進歩を象徴するものと言えるでしょう。
就労移行支援事業を行うには、厚生労働省が定める要件を満たし、指定を受ける必要があるため、多くの事業所は一定の質を保って運営されていると考えることができます。
不安を抱えながらも自分に合った事業所を見つけることが、充実した就労移行支援での生活そして、将来の就職への第一歩となるでしょう。
制度の課題に目を向けつつ、前向きな気持ちで就労移行支援を活用していくことが大切です。
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